仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
地獄へのご案内とか、滅茶苦茶な事を言い出すこの玩具は、動きを止める。
「ん? 止まっ……た?」
キリンさんの頭の触角部分を、コントローラの様な感覚で持つ俺の心は、ちょっとだけロボットに乗って操縦室で操縦している。そんな気分になったんだよね。
『第一段階、解除します……シュポシュポシュポシュポポ♪』
何処かで聞いた様な音楽が流れて来たよ。
「この音楽って、汽車ナンチャラだよな?」
「うん。ってか、あの玩具からこの音楽は、おかしい様な……」
俺の後ろ姿に向かって話しているから、砂紗がどんな驚いた表情をしているのかさえ、俺には分からなかった。
「って……! 何かでかくなってないか!?」
さっきよりも遥かにでかく……いや。
「でかくなりすぎだろーー!!」
そう。目の前のこの動くあれは、キリンさんとほぼ同じ位の大きさへと変わって行った。
「不思議なゲームだとは思ってたけど……流石に、不思議で片付けて良い事じゃ、ないだろう」
そんな引きつきにも似た表情をしている俺の身体は、突然宙に浮いた――と、思ったら、キリンさんの長い首に巻かれて、地面へと降ろされた。俺を降ろした後は、砂紗達を次々と降ろして行く。
「キリンさ……はっ!」
そう、このキリンは決意していたんだ。目の前に現れた、このおかしな玩具と戦う決意を!
全員降ろした後、綺麗に垂直になって……敬礼をした。
俺はそんなキリンさんの心に打たれ、ピシッと垂直に立って敬礼した。
それを見ていたエルサと砂砂の二人は……
「何あれ?」
「男って、分からない生き物よね?」
うん。明らかに呆れてる声出してるね? いいじゃないかよ。キリンさんの気持ちは、本物なんだから! そう言いたかったけど、女の子達の反撃は半端なく怖いんだろうなぁ~と、思ってしまい、これ以上は言わないでおくよ。
そんな俺達の目の前では、何とも不思議な怪獣……もとい! キリンVS玩具の戦いが、幕を切った。
「頑張れ~♪」
綺羅の、この場の状況が全く分かっていないであろう陽気な応援を合図に、キリンが「モオー」と、一声あげた。
「「「え!? 滅茶苦茶可愛い声じゃん!」」」
はい。俺と砂砂とエルサで突っ込みました。
キリンさんはあのヤクザもどきっぽい顔の傷のせいもあって、図太い声と思い込んでいた。けれど、その思い込みを百八十度裏切る美声だよね……。
まるで、世界をまたぐ歌姫の様な声だった。
「あの傷は、オプションなのか?」
強面に見せる為のオプションだと思い、キリンさんに聞こえるか聞こえないかって位の小さな声で呟く。
「チッチッチ……」
キリンさんが始めて発した言葉……だと思う。
俺の言葉が聞こえていたらしく、首を大きく振って「違うよ」と、否定した。そして口を開けて、俺の方へと長い舌が距離を縮めてくる。
舌の上には、何やら紙が置かれていた。口の中に入っていた割には、濡れてもいなく臭くもなかった。
「キリンの舌って、本来凄い臭いらしいんだけどなぁ~……」
現実世界の常識が通じないのは、勿論知ってた。だから、このヴァーチャル世界ではそんなにおかしい事とは思っていないしな。
「そうなの?」
俺のの独り言に割り入った形で、砂紗が話しかけてきた。
「ん? ああ。聞いた話しだから、あれだけど……。キリンの舌って、ヒンヤリしてて気持ち良い代わりに、もの凄く臭いんだと」
これ以上言ってしまうと、キリンさんに失礼に当たる。そう思って、早々にこの話題作を終えた俺は、渡された紙を広げる。
『自分のこの傷は、昔ボディーガードをしていた時に付けた傷さ。プライバシーの問題もあるから、誰のボディーガードかは、秘密』
……だった。
「「「動物なのに、ボディーガードって!?」」」
動物の世界にも色々ある……のかもしれない。そう思う事に決めたよ。
ともかく、俺達は見守るしかない訳だ。このキリンさんと、あの不気味な玩具との戦いを。