仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
俺たちは、何故か世話しなく動いていた。
「……俺、何やってんだろ?」
遊園地もどきのアトラクション(?)の玩具が現れて、巨大化した。途方に暮れてた俺達を助けてくれたのがキリンさんだった。そのキリンとあの玩具の戦いのゴングが切って落とされる……のだが、
「だから何で、ボクシングのリングなんか作らなきゃならねぇーんだ!?」
キリンは俺達の苦労何か知らないかの様に、呑気に煙草吸ってるし……。
「納得、行かねーー!」
叫んでもしょうがないのは分かるけど、叫ばないと、やって行けないんだよね……。
「クリス。リンク設置終わったわよ」
金髪が汗でベットリ張り付いてしまっているのか、ちょっと鬱陶しい感じに見えるな。
「……もう、今更どうこう言っても仕方ないけどね」
ホロリと涙が出て来るよ。
◇◇◇
「れでぃーすあんど、じぇんとろま~ん。お待たせしましたぁ。只今より、キリンさんバーサスオモチャの、プロレス試合を始めたいと思いまぁす。マナお姉ちゃん。これで合ってるの?」
「おいおい……綺羅さん。カンペ見ながら言うなよ……」
まあ、子供だから仕方ないと言えばそうなるけどさ。マナに教えられた通り、カンペの文字を読んでいる綺羅は、子供らしい無邪気な笑顔を見せていた。
「あっ。始まるよ」
カンカンカンという合図と共に、誰も見た事のないプロレス試合が始まった。
キリンさんは四本足に力を入れて、勢いよく地を蹴った。蹄(ひずめ)の音がリズムを奏でている。その音は徐々に速さをまして、玩具の前で急ブレーキを掛けて止まる。
そのまま自慢の長い首で玩具を縛り付ける。ミシミシと玩具が軋む音がして、玩具は逃げ出そうと小刻みに、上下左右にもがいていた。
「……ねえ、クリス。プロレスってこんな……」
「砂紗。それは言っちゃ駄目。突っ込んだら負けだよ?」
砂紗の言いたい事が分かったエルサは、即座にその台詞に待ったを掛けた。
「いや……言いたい事は、分かるけどね」
俺も砂紗と同じ事を言おうとした時に、エルサに止められてしまった。
ぶっちゃけると、プロレスじゃなくね? これだもんな。
「おおっと? キリンさんどうしたのか? 先程迄の勢いがなくなったよぉ?」
カンペを見せる位なら、自分で実況すりゃ良いのに。そう思ったけど、色々と面倒臭くなりそうだから、心の奥底に止めるだけにする。
それよりも、心配なのは……キリンさんだった。
「本当に、どうしたんだ?」
あんなに優勢だったのに……俺はふと玩具に目が行った。
「ん? あっ!」
砂紗とエルサだけでなく、実況班の綺羅とマナまでもが俺の声に反応して、俺を見る。
「え? ど……どうしたの?」
砂紗が心配して、俺の顔を覗き込む……ついでに、触ろうとしたから、久々の『シャーー!』をお見舞いしてやった。
「いや。あの玩具……さっきより大きくなってないか?」
誰もが玩具に視線を向けたその時、玩具はミシミシと音を立てて、どんどん大きくなっていった。キリンさんの首はその大きさに耐えきれず、玩具から首を離してしまう。
そのままリングの床に叩きつけられてしまった。
「キリンさん!?」
俺達は、慌てて駆け寄った。気絶してはいない様だが、サングラスの下から水……つまりは、涙が流れて来ていた。
ぷるぷると身体も震えている。もしかしたら、怖いのかも知れない。
けれど!! ここで諦めて貰っては困る。そう思った俺は玩具に待ったを掛け、リングに上がった。
リングを作る時にも思ったが、この玩具はかなり律儀らしく、待ってくれていた。
「キリンさん。頑張るんだ! このままじゃ、俺達だって危ない。ゲームオーバーにだけは、絶対になっちゃ駄目なんだ。頑張ってくれよ、な?」
必死に励ますのだが、キリンさんはますます泣いてしまって、首を振り始めた。
その時それを見た俺の何かが、プツンと切れた。そのまま右前足をキリンさん目掛け……
「「「「あっ! 初めて見たネコパンチ!」」」」
そう俺は、始めてネコパンチを使った。
「バッキャッロー!! 諦めてどうすんだよ! お前のそのグサランは、飾りか!? 違うだろ? その傷は、何なんだよ。名誉の証……勲章なんだろ!?」
何時の間にか暑く語ってしまっていた俺を見ている女の子達(綺羅だけは、目を輝かせいたけどね)の目は、暑苦しい者を見る様な目に変わっていた。
でも俺は気にする事なく、暑く語る。
「ボディーガードやってた時の気持ちを思い出せ。戻るんだよ、あの頃にさ? 強かった自分を思い出すんだ」
右前足を出して、キリンさんを元気付ける。
キリンさんはゆっくり立ち上がり、俺の出した右前足をその舌でベロリと嘗める。
ヒンヤリしていて気持ち良いのだが、いかんせん臭い為に、空いている左前足で鼻を覆う。
「まだ行けるな?」
気持ちを落ち着かせたキリンさんは、玩具にガンくれていた。
「待たせたな? ここからが本番さ」
リングから降りて、見守る事にした。
さあ、キリンさん。君の本当の雄姿を俺達に見せておくれ。闘いは、これからなんだからさ。