仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
さあ! 最終ランウンドだ。
「いいか、キリンさん。あいつはでっかくなるかもだけど、ただそれだけだ。爆発する訳じゃねぇ」
俺のアドバイスを黙って聞いてくれてるキリンは、カツ(ネコパンチ)が効いたんだろう。
「じゃあ……行ってこい!」
背中を軽く押してやり、応援する為にリングから降りた俺はキリンさんに熱いファイトをを送るために、ある事をした。
「それって、粉?」
砂紗達が興味津々にこの白い何かを見ているけど、取り敢えずはキリンさんに注目してあげなきゃ! そう思ったから、たった一言で終わらせる事にした。
「塩」
本当に一言だけ。これ以上の説明は要らない。だってこれは……
「敵に送る塩だから……さ!」
両手いっぱいに塩を持ってた俺は、あの玩具に向かって塩を思いっきりぶちまけてやった。
「敵に塩を送る……」
「間違っちゃいないかもだけど……」
砂紗とエルサは物言いたげな表情をしてたけど、今の俺は、キリンさんしか目に入ってないんだ。
「頑張れよ」
俺のガッツポーズを確認すると、キリンさんはニヒルな笑顔をして立ち上がる。
「さあ……男の生きざま、見せてやれ!」
俺の応援を合図に、戦いのゴングが鳴った。
「再び始まりましたぁ~♪ キリンさんと玩具の試合です。 実況は引き続きキラが、おおくりしまぁーす」
案の定直ぐ近くでカンペを見せているマナが居たりするのだが……取り敢えずは、キリンさんの応援に集中しよう。
「頑張れーー!」
誰もが我を忘れてキリンさんの応援に入る。
サングラスに隠れてて目は見えないが、口元が笑っている所を見ると、余裕を取り戻したんだろう。そう思った俺は、自然と胸を撫で下ろしていた。
キリンさんは、前足をカツカツとヒヅメとリングの床を擦り合わせた。そして、その勢いを保ったまま玩具目掛け、突進する。
首を玩具に巻き付け、かなりきつく絞めているかの様な音さえさせていた。
「頑張ってーー!」
「負けるなー!」
もう自分達が女の子だって事を忘れるかの様に、砂紗達も必死に応援してた……んだけど、手には何故か【キリンさんファンクラブ】とかいう、訳の分からないタオルを持っていた。
敢えてそれには触れず、キリンさんの応援だけをひたすらし続ける俺は、
「良いか!? 弱音を吐いたら敗けだ。俺達がついてるって事を忘れんな!」
キリンさんは俺の姿を横目でチラリと見ただけだったが、ニカッと笑っていたので、もう大丈夫なんだろう。
「モーー!!」
気合いを入れるかの様に、巻き付けながら鳴くキリンさんは、直ぐ様四本の足にぐっと力を入れた。
その力が強いのか、玩具は錆び付いた様な音を滲ませながら小刻みに揺れていた。
あの玩具は巻き付けられながら巨大化しようとしている様だが、キリンさんの巻き付けが凄まじいらしく、今以上の大きさになる事は出来なかった。
ブルブルとおかしな動きを始めた玩具は、身体を大きくさせる――のではなく、身体を光らせていた。
俺はそれがなにを意味するのか……何となく気付いたが、キリンさんも砂紗達もそれに気付いていないらしく、必死に応援や締め付けをしていた。
「ヤバい……。キリンさん! そいつ自爆する気だ! 離れろーー!」
俺は喉がちぎれそうな位の声を張り上げた。
その声に即座に反応したキリンさんは締め付けを即座に止めて、慌ててリングから飛び降りた。
玩具の目が気味の悪い黒光りを放ち、大きな爆発音を産んだ。
「きゃあーー!」
女の子達は余りの凄さに目を閉じたり、両手で顔を庇ったりしていた。
俺は……リングから飛び降りたキリンさんが庇ってくれたよ。
爆発が徐々に収まったので、そっと目を開けると……リングは跡形もなく砕け散っていた。あちこちにリングの破片らしき物体が転がっていたの同じに、玩具の頭も無惨に転がっていた。
「頭……だけですね? 他は、爆発してしまったのでしょうか?」
綺羅を抱き締めながら右手に大きなハンマーを持っていたマナを見ると、恐らくそのハンマーを盾に爆発を防いだのだろう。
「……みたいだな。まさか自爆するとは、思わなかっ……ブフォー!」
突然の俺の吹き出しに、皆が俺に注目した。
「え? どうし……ブフォー!!」
砂紗達も吹き出したよ。
キリンさんが俺を見て、どうしたの? って感じに首を曲げた。
「キ……キリンさん」
そう。俺達が吹き出した理由は、キリンさんのある部分のせいだった。
『このキリンさん、めっちゃ美人じゃん!』
普段の突っ込み役の俺と砂紗とエルサだけでなく、マナですら突っ込んでしまった。
サングラスの下には、厳つい目があるとばかり思っていたのに……まさかの、絶世の美女の様な美しい瞳だった。これが狐だったら、古代中国で名を馳(は)せた某美女と思われてもしかたない。って位なんだろうけど。
「意外な顔立ちだな……」
虚しく転がっている玩具の頭の事を忘れて、キリンさんの美女ぶりに呆けてしまう。
俺達に見つめられているキリンさんは、恥ずかしさの余り、顔をぐるんと後ろに引っ込めてしまった。
そんなこんなで、玩具退治は終了。
予想外の展開に驚いている俺達だったが、この時下へと続く階段付近で起きている異変に、誰も気付く事はなかった。