仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
まさかの景色に俺達は、呆けてしまう。
「はっ! どうなってるの?」
誰よりも一番早く我に返ったエルサは、目の前に生えている大きな葉っぱを触る。
「どうって、言われても……ねえクリス……」
「俺が知るかよ」
俺だって、誰かに聞いてみたいんだもん!
「あのバナナ、美味しそうだよね? 猫のお兄ちゃん。食べて良い?」
どうして俺に聞くのか……そこら辺を問いただしたいが、相手は子供だったからそれは止めておいたよ。
「……止めなさい。何があるか分からんからな」
俺に止められて頬をプゥと膨らませる綺羅は、ふてくされかの様に、側にあった石を蹴っていた。
「でも……本当に美味しそうよね?」
砂紗さん? お腹鳴ってます! グゥーって、鳴ってますけど!?
ヴァーチャルの筈なのに、五感がちゃんとあるとか……やっばり、何か今までは違うのかも知れない。
そして、何時の間にか皆俺の方を向いていた。
「……え? 皆さん。そんなにあれ、食べたいのでごさいますか!?」
何故か敬語になっちゃった俺だけど、皆の視線がバナナの木に向かっていたから、何がなんでも食べたいんだろうなぁ。って、思う。
女の子達が一斉にに、うん。って、頷いたし。
俺はちょっとだけ考えてから、ある事を思いついた。
それを実行する為に、砂紗の頭から降りた。
「どうしたの?」
不思議そうに俺を見る砂紗の赤い髪はこのジャングルの緑の中では、一際目立っていた。さしずめ、ジャングルに落ちた太陽……若しくは、沈み行く夕日なんだろうな。そう思っちゃう程に、綺麗な髪をしていた。
俺はそんな幻にも近い何かを追い払う様に、強く首を振った。
「こほんっ。バナナを食べる動物って何だと思う?」
超簡単な謎なぞを出す。恐らく子供でも分かる謎なぞなんだろうけどね。
「お猿さん!!」
「正解!」
綺羅の元気の良い答えに、俺もちょっとだけ元気良く答えたよ。
「味見してもらえば、良いかな? って、思うよ」
魔法陣を地面に浮かび上がらせ、皆を少し後ろに下がらせる。
「んじゃまあ、お呼びしますか? バナナ好きのどなたか、お出でませー!」
正直言うと、猿をイメージしても猿が出て来るのか怪しい。だから大まかな猿化として、呼んでみた。
「バナナ好き……って」
大ざっぱ過ぎる俺の言い方に砂紗は、顔が引きつってたよ。
「細かい事は、気にするな!」
魔法陣が光り出して、何かが出て来たよ。
「ウキキ……」
出て来たのは、猿だった……んだけど……。
「なあ皆? 猿って、眼鏡掛けてたっけ?」
誰もが強く首を振るうのを確認すると、俺の記憶違いじゃないんだと思って、ちょっとだけホッとした。
「だよな。じゃあ、あの眼鏡は?」
猿は茶色い体毛に人の様な五本の指を持つ、至って普通の猿だった。
けれど猿とは言えないあるオプションが、俺達を混乱させていた。
「私、知ってます。あれ、眼鏡ザルって言うんですよね?」
マナがニコニコしながら、またうっとりとした眼差しで見つめていた。
「メガネザルって、そうゆう意味じゃないぞ? 」
黒縁眼鏡もそうだけど、手に持ってる本も気になるな。
取り敢えず聞いてみるか! そう思ったから、聞いたんだけど、
「お前、その本と眼鏡何?」
「……ウキ(ぷいっ)」
この猿は、やけに反抗的だったよ。そっぽ向いちゃうしさ。
「おい……」
今までは呼び出した本人の俺が頼めば、すんなりと引き受けてくれてたのに。
「こいつ……!!」
猫パンチでも食らわせてやろあかと思った矢先、砂紗達が俺を押し退けて猿に詰め寄った。
放り出される形で俺は、ポツンとなっちゃったよ!
「ねえお猿さん。その眼鏡は?」
「うわあー。毛並みフサフサ♪」
「その本、中身を見せてもらっても宜しいですか?」
「お猿さんは、お勉強とかするの?」
あれれ? 俺の存在無視されてない? ますます疎外感が……。
「な……なあ。俺の毛並みもフサフサだぞ?」
俺は必死に皆に呼び掛ける。だってこうでもしないと、俺、忘れられちゃうんだもん!!
必死にアピールするんだけど、誰も気に止めてくれなかった。
「おかしい!! マナと綺羅は兎も角、エルサと砂紗が俺のこの毛並みフサフサ云々に反応しないなんて……」
その時俺は気付いた。あの召喚した猿が、白い歯を見せて笑っていたのを!
もしや!? と思い、急いでパーティーメンバー全員のステータス画面を見ると……【魅了】という文字が砂紗達四人のステータスに記載されていた。
「なっ!?」
呼び出した動物が、俺の仲間をバッドステータスにするとか……そんなのあり得るのだろうか?
いや。実際に起きているんだから、あり得ない事じゃない。
「はは……どうにも俺は、呼び出しす動物は全て仲間! って、思い込んでたみたいだ。いわゆる先入観ってやつか?」
俺は悟った。こいつは……この猿は、敵なんだと。
遂には、ニタッて笑う猿から仲間を取り戻すべく、戦いのゴングが鳴る。