仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
こいつを大人しくさせなければならない! そう思った俺は、決闘を申し込む事にした。
「おい、猿! お前が砂紗達に何をしたのか、もう調べたんだ。これ以上変な真似したら、どうなるか分かってんだろうな!?」
四本足を地面に着けて尻尾をブワッと太くした俺は、目で猿を威嚇した。
「ちょっとクリス!? 何もそんなに威嚇しなくても良いじゃない。可哀想よ?」
砂紗達に掛けられた魅了魔法のせいか、四人共猿を庇うかの様に前に立ち、俺の行く手を塞いだ。
下手をすると、五対一なんじゃないのか? そう思えて仕方なかった。
この状況は、明らかに俺が不利だ。マズイ!! どうすれば……?
「くそ! 仲間が皆、魅了されてるとか……最悪なんですけど!? ん? ……仲間? 」
俺は、ある事を思い付いた。
即座に魔法陣を展開させ、ある動物を呼び出す。
「お前、調子に乗ってられるのも今の内だぜ?」
これが人の姿だったら、どれだけ極悪顔だったか。そんなくだらない事を考えながら、目を瞑る。
「ウキ!?」
はは……何か驚いてる声が聞こえるけど、そんなの知った事か!!
そんな事を考えていると、「ミャア」っていう凄く可愛い声が聞こえて来た。
目を開けるとその声の主は、俺の顔に自らの肉球を押し付けていた。フニフニとした柔らかい感触が、俺の悲しい心を癒してくれるかの様にも思えたよ。
「サンキューな……仔トラちゃん」
そう。俺が呼び出したのは、ネズミ退治の時にちょっとしたミスで猫の中に混ざってしまった、猫科のトラだった。
「ミャウ!」
くそう!! こんな状況じゃなかったら、このトラをギュッて抱き締めてあげるのに!
思わず、両手前足を器用にグーの形にしてしまった。
「はは……成功って事かな?」
俺と仔トラは魅了魔法に掛かってしまった女の子達を取り戻すべく、行動を開始した。
「良いか仔トラちゃん。あの猿をどうにかしなきゃ、彼女らを元に戻す事なんか出来やしない」
「ミャウ?」
分かってるのかそうじゃないのか、どっちたなんだろうなぁ……? まあ可愛いから、許すとしよう。
「仔トラちゃん。君のその可愛いさがあれば、あの中の誰か一人位元に戻すのは簡単だろうさ。良いか? 最低一人は元にしてくれ!」
俺のかの言葉に反応して、可愛く敬礼してくれたよ。
「よし! 行くか」
俺と仔トラは同時に走り出した。仔トラが誰目掛けてるのかは分からないけど、口を開けて牙を覗かせているのを見ると、真剣にやってくれてるんだなって、思うよ。
やっぱり猫科の動物は、最高だよね。
「さてと俺は、砂紗から行くかな!」
今の俺は極悪顔になってるであろうさ。でも、それでも一人ぼっちよりは良いと思う。こんな訳の分からないヴァーチャル世界で誰にも頼れないままポツンと居るとか、そんなの俺には無理だ。
「俺は、弱いからさ」
猫の姿になって……いや。この世界に閉じ込められてから、ようやく分かった気がするんだ。砂紗達と一緒に居る時間が、自分にとってどんなに楽しいのか。勿論、ログアウト不可とか死ぬ事も出来ないまま石になってしまうとか、それを忘れてる訳じゃない。
「でもさ? こんな世界だから、楽しんだって良いんじゃないのか?」
俺は砂紗の前で止まり可愛く首を傾げながら、こう言った。
「……もう触らせてやらにゃいよ? 良いのかにゃ?」
取り敢えず瞳を潤ませて、尻尾を振ってみた。
「え!? それは嫌!」
意外に早く反応したな。魅了魔法を掛けてるあのお猿さんですら砂紗のこの言葉を聞いた途端、「え!?」って顔してたよ。目ん球飛び出てたし……。
「そんなの嫌よ! 貴方をもふり続ける事が、私の目下の目標なのに」
何でか泣いちゃってるし。ってか、何ちゅうもんを目標にしてるんだこの女(アマ)は。
「そう思うんだったら、そんなやつの下らない魔法なんかに惑わされずに、戻って来たらどうだ?」
本当は、くだらない魔法じゃないんだけどな。色んな意味でくだらないから、この表現で十分だろうさ。
「ご……ごめんねクリス! 私が間違ってたわ」
俺をギュッと抱き締める砂紗だったけど、正直言うとその大きくてふくよかな胸が当たって、内心理性ぶっ飛びそうな訳ですよ、はい!
「分かったから、離れろよ!」
ジタバタと全身を動かす俺を見て、苦しそうにもがいている様にも見えてしまったらしく、「ごめん。苦しかった世ね?」って、謝って来たよ。
本当の事言うとあれだから、そういう事にしておこうかな。
まずは一人目の砂紗を取り戻せたのかどうかを確認する為に、パーティー画面を表示する。見てみると、先程まであった【魅了】の文字が消えていた。
成功したみたいだな。
こんな方法で成功するとは思わなかったけど、やってみるもんだよな? ってか、やっぱり猫の可愛いさは全国……いや! 宇宙共通と言うべきだろう。
仔トラちゃんの方も綺羅を取り戻せたみたいで、一緒にこっちに歩いて来てるからな。
「猫のお兄ちゃん。私、何してたの?」
綺羅にはまだ早いと思い、かい摘まんだ説明だけをしてやった。
だって子供には言えないだろ? 『色気とかそう言った大人の世界みたいな魔法で操られてたんだよ』なんてさ。
「ウ……ウキィ!」
二人を取り返された事で敵意剥き出しにし始めたあのお猿さんは、今度は何をしでかすのか……。
俺と仔トラちゃんは、ただ睨み続けるだけだった。