仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました)   作:猫つまみ

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和解? スケベだったのね……

 俺と仔トラちゃんの、ナイスコンビネーションでマナを戦闘不能に出来た俺は、お猿さんと一対一の対決を望んだ。

「そろそろ決着つけようか? グダグダやるのも飽きただろ?」

「……ウキィ」

 心なしか元気がない様にも思えるが、そんなの今の俺には関係なかった。

「呼び出した主に逆らって無事で済むなんて、思ってないよな?」

 お猿さんの返事を待つ事なく俺の右前足が、相手の頬目掛けて振り出される。

 お猿さんも負けじと右手を俺の頬に炸裂させた。

「ぐあ!」

「ウキィ!」

 互いの右頬に炸裂したパンチが、俺達の顔を少しだけ変形させる。

 

 倒れ込む俺達は、暫くの間地面とお友達になっていた。

 砂紗達が心配して俺の所へと駆け寄ってくれたけど、俺を起こす為に貸してくれた手を拒否した。

「へへ……やるじゃねえか。俺のネコパンチを受けて生きていられるなんてさ」

 生きて云々はちょっと大袈裟かもだけど、こうでも言わないと、俺の心臓はドキドキな訳ですよ。元々小心者だった俺がこんな事やってるなんて、本当にヴァーチャル世界様々だよな?

 

 俺もお猿さんも背中を地面につけて、空を見た。

 

「なあ……何で反発したんだ?」

 何となく聞いてみた。答えなんか返って来ないだろ。そう思ってたら、お猿さんが手に持ってた本に何かを書き始める。

 

「本に落書き駄目なんだよ?」

 綺羅はお猿さんに近付いて、注意する。

「あっ! 猫のお兄ちゃん。お猿さん何か書き終わったみたいだよ?」

 むくりと起き上がり、四本足でお猿さんの元へと歩いて行く。

 

「何書いたの?」

 赤く長い髪が垂れて鬱陶しのか、耳にかける砂紗。

 

『自分は、女の子大好き。主、女の子独り占め羨ましい』

 ……だった。

 

「逆恨みかよ!? しかも、ムッツリだし!」

 どうしようもない猿だな。俺は、かなり呆れてしまったよ。

「まあいいや。言っとくけど、女の子だけの中に男一人って、相当辛いんだぞ!? 外から見ればハーレムって思うかもだけど、実際それを体験すると、地獄その物なん……はっ!」

 後ろから漏れる殺気に気づいて、慌てて自分の口を塞いだ。

「「クーリースー?」」

 砂紗とエルサが怖い顔して、ジリジリと距離を縮めて来る。

 

 ヤバい。殺されるよ! 俺は必死に考えた。この状況を打破する為の何か……そうだ!

「お……お猿さん。それ見た目は本だけど、本当は本じゃないんだろ? さっき書き込みしてたし」

 気になってはいたから、丁度良いのかも知れない。

 二人は納得いかないって感じで頬を膨らませてたけど、触らぬ神になんとやらだからな。

 

「で? どうなんだ?」

 チラッと覗くと、俺の予想の遥か斜め上の中身でしたよ……?

 

【◯月◇日晴れ。今日は可愛い女の子見つけて声かけちゃった。いわゆるナンパってやつさ。でも……失敗した。『毛深過ぎる』ってのが、理由らしい。仕方ないじゃん! 猿なんだもん】

 

「…………」

 

 はい。誰も何も言えなくなりました。いわゆる日記ってやつだもんね。

 

【◯月★日曇り。初めて彼女が出来て浮かれすぎた俺は、彼女にパンチを食らった。なんで食らったかって? 彼女に無理矢理キスを迫ったからだ。そしたら彼女は怒って、俺の尻を何回も叩いた。お陰で、真っ赤だよ。慰謝料請求したら『猿なんだから、初めから赤いくせに!』って、正論言われちゃった(涙)】

 

「…………」

 俺達は、生暖かい目でお猿さんを見た。お猿は恥ずかしさの余り、両手で顔を隠す。

「これが本当の、見ザルってやつだな?」

「上手い事言うわね……」

「座布団欲しい?」

「要らない」

 俺達は何て言ったらいいのか分からなくて、変な事を言ってしまったよ。砂紗とエルサもどうしたらいいのか分からず、俺のくだらない何かに付き合ってくれた。

 

 

 空しい風だけが、俺達の周りを横切る。

 

「ってか、あの魅力魔法は何だったの? かなり中途半端っぽかったけどさ」

 俺はこの話しを早々と終わらせた。だって何か、悲しいんだもん!

「ウキ!」

 

【未完成だから、不完全なんだ。この魔法は、『パラドクスアビリティー』だから】

 聞いた事のないスキルに、俺達は首を傾げる。

「パラ……何とかって、何?」

 エルサも気になるらしく、どうしてもその答えてが知りたいって感じだな。

【パラドクスアビリティーとは、数日前に出来たばかりのスキル。誰もがこの世界に閉じ込められた日に、誰かが造り出した。残念ながら、そこまでしか分からない】

 誰が何の為に、そんな物を創ったのだろうか? 残念ながらこのお猿さんもそこまでは知らないらしく、これ以上の情報は聞けなかった。

「ログアウト出来なくなった日にって……関係ありそうよね?」

 砂紗も俺と同じ事を考えてたらしいけど、これだけの情報量じゃあ、何も分からない。そう思って諦めた顔をしちゃったよ。

 

「あの……ずっと気になってた事あるのですが」

 俺の頭突きで気絶してたマナが目を覚まして、会話に参加した。まだ頭がズキズキ痛むらしく、さすってたけどね。

 

「ん? 何をだ?」

 俺はしゃがんでと言って、マナの頭をさする。半分俺のせいでもあるからね。

「ふふ。肉球柔らかいです。……えっとですね? クリスさんの召喚する動物さん達は、一体どうゆう仕組みなのかな? と、思いまして……」

 今までそんな事も考えずに召喚してた俺は、はっとなって仔トラちゃんを見るけど、仔トラちゃんは首を振るだけだった。多分、知らないんだろう。

「お猿さんは?」

 そう聞かれる事を予想していたかの様に、サラサラと書いていた。

 

【自分達は、完全なNPC……だった。でも、何時しか自分達を造り出した集団が消えてしまった】

 元は、NPC……では、今は? このお猿さんを含むあの動物達は?

 

 

 分からない事が、ますます分からなくなるだけだった。

 

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