仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
お猿さんを改心させ、ようやくジャングルの中を進んで行く俺達は、お猿さんに頼んで取って貰ったバナナを味わっていた。
「甘くて美味しいわね」
砂紗……君のその剥き方は、猿剥きだよ? 思わず口が滑りそうになっちゃったけど、喉まで来たやつを一生懸命腹の中に戻した。だってそんな事言ったら、俺殺されるじゃん!?
「もぐもぐ……旨いけど、不思議だよなあ~」
砂紗の頭の上に居た俺に砂紗がバナナをくれたから、遠慮なくがぶりついてやった。
お猿さんは、綺羅が抱っこしてるみたいだけど……お猿さん!? 顔赤いよ? 犯罪者にならない様にね!? なんて、ちょっと思ってる俺が居たりする。
「不思議? 何が?」
俺に喋り掛けると見せ掛けて、俺をモフリに来たエルサを見て、ちょっと思った。"技術上げてきたな!"ってね。何の技術かって? 触り方とかもだけど、何も気付かれずに触る行為さ。ちょっと前までは触ろうとすると俺が威嚇するとかだったけど、今は威嚇すらする暇がなかったな。
「恐るべし!」
ついつい口に出してしまって、慌てて口を塞いだよ。
「こほん。俺が言ってる不思議ってのは、五感の事さ」
直ぐに話題を変えてしまえば、とやかく言われる事はなかった。ほら、俺の言った五感って言葉に皆不思議がってるじゃん?
「悪寒?」
「綺羅ちゃん……幽霊とかそうゆうの関係ないからな?」
子供だからしょうがないとは思うけども……良い機会だ。お勉強タイムと行こうかな?
「五感の事知ってるやつは、いるか?」
意外にも、マナが素早く手を挙げたよ。俺的には、エルサ辺りが手を挙げるとばかり思ってたけど、エルサは何か悩んでるッポイな。
「私はそれ聞いた事あるけど、よく分からない。私はこう見えても、小学生だから」
俺は、ちょっとだけ驚いた顔をしてしまう。てっきりもっと年上かと思ってたからだ。
「あれ? でも見た目は、リアルの顔をそのままって説明書に書いてあったわよ?」
砂紗の言う様に、見た目だけはリアルの情報をコンピューターが読み取って、そのままヴァーチャルに写し出してるってだけだった。
「顔だけはね。でも体型とかは、後から一度だけ変える事出来るよ?」
「え!? そうなの!? 今も出来る? 私、この胸邪魔でしょうがないのよ!」
どうやら砂紗は、完全にリアルそのままの姿らしい。しかし、胸って……何とまあ、贅沢な。
「……今は無理じゃないかな? 運営にすら繋がらないし。何もかもが私達の知ってた世界とは違う感じになっちゃってるし……ってか、砂紗。貴女何て羨ましい悩み持ってるの!?」
珍しく表情を表に出したエルサは、砂紗の髪を引っ張ってたよ。
「え? ごめん」
砂紗のこの反応を見ると、分かってないんだろうな。本当に、女心は複雑だよ。
「あのぉ~……お話戻しませんか?」
マナのこの一言で、じゃれてた二人は軽い咳払いをしてた。
「そ……そうだったわね」
「えっと、何の話だっけ?」
「五感のお話で御座いますよ。お嬢様方」
呆れた視線を二人に送る俺は、ちょっとだけ尻尾が太くなっちゃってた。
「五感……触る感覚は触覚。見る感覚は視覚。匂いを嗅ぐ感覚は嗅覚。聞く感覚は聴覚。舌の感覚は味覚と呼ばれていますね」
マナの説明の通り、これが五感だった。
「そう。マナの言う通りだ。この五感の内、ログアウト出来なくなる前に感じられたのが、味覚と嗅覚以外だ。どのゲームも見たり聞いたりしなきゃ始まらないだろ?」
俺の説明に、皆が耳を傾けてくれた。お猿さんはメモってるし……まあ、良いか。
「でもログアウト不可になった途端、ゲームでは感じられない筈の残りの三つが当たり前の様に感じる事が出来てる」
触覚に関しては、俺達動物を触る事で確認済みだ。匂いだって、キリンさんの舌の匂いで確認済みだしな。残りの味覚は、もうバナナとか色んな物を食べてるから問題ない。
「……不思議だとは思いませんか? ヴァーチャルなのに、何故手触りや味が分かるのか。私は思いました。バグ……これで片付けられる様な何かではない。そんな気がします」
どうして五感があるのか……俺ですら、それは分からないんだよな。
「ウキッ!?」
綺羅に抱っこされてたお猿さんが、突然暴れだした。
「わっ! お猿さん、どうしたの?」
抱っこされながら日記帳に何かを書き込んでいるな。俺達は、それを見て驚愕してしまう。
日記帳には、こう書かれていた。
【気配察知した。動物じゃない。首の長い何億万年前に存在していた者達の気配。】
何億万年前という言葉に俺は青ざめてしまう。
「おいおい……まさか!」
【そう……】
突然地震の様な震動が俺達を襲ったと思ったら、大きな木をむしり取るかの様に現れたのは……
「て……ティラノザウルスゥーー!?」
【恐竜の気配がする】
まさかのあり得ない生き物の姿に俺達は、皆硬直してしまった。