仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
温泉に浸かった事でさっぱりしたのか、砂紗達の顔は艶々してるね。うん。女の子は、こうでなくちゃ……俺、今現実逃避してるんだよ。
「ブヒィ~」
何か無駄に色っぽい声を出すこのブタさんは、俺の腕を掴んで離さない。
「お前ら……見てないで助けてくれよ!」
誰も俺を助けてくれない……どんどん肩身狭くなってないか? そう思うと、何でか涙が出て来ちゃうよ。
「ええい! 離れろ!」
俺は思いっきりブタさんの腕を振りほどいた。そしたらブタさんは、ヨヨヨ……って泣き始めたよ。
「クリス……可哀想だよ」
「お前ら……オカマやオナベに引っ付かれた自分を想像してみろ。可哀想って思えるか!?」
うん。可哀想って思わないらしいのか、皆そっぽ向いたな。砂紗とエルサに至っては、吐きそうな顔してるもん。
「……兎に角だ! もう寝る」
俺は味方が居ないこの状況で、泣く泣く眠る事にした。
◇◇◇
「……す……リス」
俺がスヤスヤと安眠していると、誰かが俺を起こしに来た。
「クリス!」
眠い目をこすり、四本足を使って身体を伸ばす俺は、正しく猫その物だった。
「何だよ?」
まだしょぼしょぼした目と、回らない頭を無理矢理動かす。
「あのね……向こうに変なのがあるんだよ?」
……綺羅さん? この世界その物が変なのだから、その表現はどうかと思うぞ? なんて、子供に言っても分からないんだろうから、取り敢えず案内された場所へと向かう。
歩いている途中で、洞窟の中にある鍾乳石とかが綺麗に光ってたりして、ちょっと幻想的な雰囲気もあったかな? なんて、ロマンチストになってる俺が居たりする。だってさ……
「ブタさん! 離れてくれないかな!? そして俺に投げキッスすんな!」
鳥肌……もとい! 毛をブワッと逆立てながら、ブタさんを睨み付ける。
「ブヒ」
ポッて赤くなる頬を見て、俺は真っ青になったよ。
「そ……それで!? 何があるって言うんだ?」
強く引っ張っても全然離してくれないこのブタさんに、俺は遂にキレてネコパンチを食らわせた。
「ブ……ブヒィ~」
乙女座りでポロポロ涙流してるみたいだけど、結構グロテ……気持ち悪いものがあるな。そんでもって、何か顔が溶けてる様な?
「って……溶けてる!? ちょっ!? えっ!?」
オロオロしてしまう俺に、砂紗は耳打ちを打ってくれた。
「心配ないわよ。あれは化粧だから。泣いて落ちちゃっただけなのよ」
なんだ、化粧かよ…………ん?
「ブタの癖に、何で化粧してんの!?」
もうツッコミ所満載なんですけど!?
そんなちょっとした事をワイワイと騒ぎながら歩いていると、小さな穴を見ながらマナが座っていた。
「マナ。何やってんだよ?」
スカート汚れるよ? って言ってもよかったんだけど、あんまりそこら辺を気にするタイプじゃないマナだから、それはお腹の中にしまう事にした。
「クリスさん。これ、何だと思いますか?」
マナが指を差した先には、小さな白い玉が一つころがっていた。
本当に白くて、大きさはウズラの卵よりもほんの少しだけ大きいって感じのする玉子だった。
「何で玉子?」
皆分からないらしく、何も言わなかった。
「これ……どうするの?」
エルサが俺の頭を撫でながら、玉子の方をチラッと見る。
「恐竜の玉子って可能性も、あるんじゃねえの?」
何も考えずに言ってしまった俺のこの言葉に、誰もが硬直した。
「……あっ。いや、だってさ? この洞窟出ると、恐竜居るだろ? そんなのが産まれてもおかしくないと思うかなって……」
ヤバいな! 女の子達怖がってるよ。怖がらせるつもりなんて、なかったのに……よし。まずは、謝ろう。ここでぼっちになっちゃったたら、俺本当に泣けちゃうし。仲間外れは勘弁して欲しいからな。
そう思って口を開こうとした俺の気持ちとは裏腹に、女の子達はとんでもない事を言い出した。
「食べれるかな?」「目玉焼き美味しそうよね?」「ゆで玉子でも良いですよね?」「マナお姉ちゃん。これ食べよう」だった。
「女って、逞しいっていうか何ていうか……怖い」
ブルッと身体を震わせる俺の腕を、どさくさに紛れて掴んでくるブタさん。それを強く振りほどく俺。食べ物の事しか頭にない女の子達。なんとまあ……
「まとまりまない事か……」
遠い目をしてしまう俺に、ブタさんのウィンクと投げキッスが、しつこい位に付きまとう。
「何の玉子なのか分からないんだから、止めろよ?」
案の定女の子全員から、ブーイングが来た。ブタさんもそれに紛れてブーイングしてるし。ムカついたから、つねってやったよ!
「まあ何があるか分からないし。クリスの言う通りにしよっか?」
一番常識のあるエルサが、ちゃんと俺の気持ちをくみ取ってくれたよ。
「いざとなったら、食べれば良いかなって思うから、持ってこうよ」
……前言撤回。やっぱりこいつもダメだ。涙を流す俺の腕を、何だかブタさんがグイグイ引っ張ってた。
「ん? な……何だよ?」
オカマのブタさん相手だから、俺の心は警戒心でいっぱいな訳ですよ。
「ブヒツ」
お猿さんの日記帳に、また何かを書き始めた。ってか、お猿さんが可哀想だから、もう落書き止めなさいって言おうとしたんだけど、書かれた内容の方が強烈だったせいで、お猿さんという単語が一瞬でぶっ飛んだ。
「えっ!?」
書かれた内容は、こうだった。
【あの玉子は、恐竜じゃないわ。何かまでは分からないけど、鼓動が聞こえるわ(ハート)】
語尾にハートを付けるのは癖なんだろうなって思ってたら、マナの叫びに近い声が聞こえよ。
「おい、どうした!?」
マナは慌てて駆け寄る俺の方は見ないまま、玉子を指さしている。
「玉子が……割れて」
砂紗達も、思わず玉子に見入ってしまう。
【産まれるわよ】
慌てて書いたのか、ブタさんの文字は、ちょっとぐちゃぐちゃになっていた。
「あっ……」
ピシピシッて亀裂が走り、玉子が割れて行く。そして、完全に割れた玉子から出て来たのは……
「うっそ……」
俺だけじゃなく砂紗達やブタさんですら、驚愕してしまう。
茶色い体毛に二本足。お腹には袋があり、鼻をふんふんと鳴らす……カンガルーだった。
「はあ!? 何で動物が出て来るんだよ!?」
しかも長靴履いて、右手には傘。肩から長い紐で吊るされた黒い鞄を左に垂れ流し、口には食パンを加えていた。
よく見てみると、下半身には紺のスカートを履いているじゃないか。
「「「どこの女学生だよ!?」」」
俺も砂紗もエルサも同じ考えにたどり着いたらしく、ついつい突っ込んでしまった。
けれどちょっとおかしな事に、そのカンガルーは、俺の手のひらに収まる位の大きさ……かなりミニマムサイズだった。