仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
まさかの事態に、俺は少なからず驚いてるよ。だってそうだろ? 玉子から産まれるのは恐竜と思ってたのに、まさかの動物とか。しかも、俺が召喚する様な普通の動物とは言い難い動物……カンガルーだった。
「ちっさ! ってか、ちっさ!」
サイズは本当に小さく、かなりミニチュアだった。だって、仔猫の俺の手のひらに収まるサイズなんだぜ?
「か……可愛い」
確かに可愛いけど、このサイズに何の意味があるんだろうか?
皆がカンガルーに夢中になってる中で、俺だけはそれ程夢中にはなれなかったよ。
だってそうだろ? 動物を召喚は俺の特権だ。いや……それに関しては、俺が勝手にそう思ってるだけだからあれだけど。問題は、そこじゃないと思うんだ。
どうして玉子から出て来るのがカンガルー……動物である必要があったのか? これだ。
まるで誰かが俺達を見てて、それに合わせて作ってる。そんな風にさえ思えてしまう。実際、現実世界がどうなってるのか分からないけど、動物を召喚というシステムは、現実世界で誰かが操作してるんじゃないか? って、思う時がある。
「……なあ皆。ちょっと良いか?」
カンガルーに夢中になってた砂紗達は、俺の声に耳を傾ける。
「恐竜が産まれる。そう思ってたらカンガルーだった。これについては、もうこの世界自体がおかしくなってるから、五十歩百歩譲ってスルーしても良いかなって思う。でもさ……」
手乗りカンガルーを見るとスカートの汚れが気になるのか、両手ではらっていた。
「勝手な解釈になるけど、動物ってのは俺の特権みたいな物だって思ってる」
カンガルーをブタさんの身体の上に乗せて、猫らしく後ろ足で顎をかいたよ。
「そもそもさ? 召喚された動物達は、どうやって姿を形成してるんだ?」
上手く言える自信なんて俺にはない。だって頭の中で分かってはいても、言葉にすると難しいってやつはあるだろ? それと同じさ。
「誰かがリアル……現実世界でそれを作ってる。そう考えても不思議はないよな?」
俺自身、何が言いたいのか……よく分からん。
「えっと……リアルでこんな状況になったこの世界や私達を見て、楽しんでる奴が居るって事?」
エルサは何となく分かってくれたらしいけど、それでもやっぱり上手く説明出来なくて、悩んでるな。
「あのさ。話を振っといてなんだけど、もうこれでこの話は終わりにしよっか? あれこれ考えてもどうしようもないし」
憶測だけならいくらでも言える。でも、確たる証拠がある訳じゃない。これ以上女の子達を怖がらせるのはよそう。
「そうね。何か変わる訳じゃないし……それじゃあ、これからどうするの?」
「ん? 取り敢えず、こほカンガルーをどうにかしないとだな。ってかこいつは、どう扱えば良いんだ?」
俺は手乗りサイズのカンガルーをわジッと見つめた。
「ブヒッ!?」
何を思ったのかブタさんは、俺の腕をグイッって 引っ張った。
「何だよ!?」
【あたしという者が居ながら、そんな何処の馬の骨とも分からない奴に……!】
「……何時からお前と俺は、そうゆう関係になった!?」
何かこのブタさんの中では、俺はどうやら恋人になってしまってるらしい。
いや。ってか、マジで勘弁して下さい。
「クリス……」
ちょっ!? 女の子達が、めっちゃ引いてるんですけど!?
「ブヒヒ」
ポッて頬を赤らめてるブタさんは、俺の腕を強く引っ張ったまま俺の頬にキスをした。勿論俺は、ぶわって全身の毛が逆立った訳よ。
女の子達は、助けてくれないし。俺……泣いていいですか? 滅茶苦茶片道狭くなって来てるんですけどね!?
そんな何か分からない一時(?)を過ごしていたら、カンガルーさんにちょっとした変化が現れ始めていた。
「あれ? カンガルーさん、何か変だよ?」
それに一番早く気付いた綺羅が、カンガルーを指さした。
見てみると……身体が少しずつ大きくなって行ってるじゃないか。
「ってか、大きくなりすぎ……な」
ミシミシって音が洞窟全体に響いて、天井の岩がパラパラと崩れ始めた。
「ちょっと……これ、ヤバくない!?」
何時も冷静なエルサですら、慌てふためいてるのを見ると、かなりヤバイって分かるよ。
「ヤッベェ……に……逃げろーー!」
どんどん大きくなるってレベルじゃないだろ!? 遂には天井を突き破って、洞窟を壊し始めた。
「うわぁー!」「きゃあー!」「うわーん」もう誰がどんな悲鳴をあげてるのかさえ分からないって位に、悲惨だった。
やっとの事で洞窟の外に出た俺達を待っていたのは、あの恐竜……ではなく、ミニマムサイズで可愛いかったカンガルーだった。
「う……そお……」
開いた口が塞がらない。そんな言葉がピッタリな状態の俺達は、何て答えたら良いのか……もう何も考えられなかった。
さっきまで呑気に日記に落書きしてたブタさんですから、日記に【怖い怖い。ひぃーー!】なんて、恐怖を表してたし。
そしてカンガルーの今の姿は、東京タワー並みに大きなバナナの木よりも、遥かに空に近い位置に頭があった。
「でっ……か」
皆同じ意見だったらしく、うんうん。て、必死に首をを上下に振ってる。
「な……何で、こんなにデカく……」
デカくなりすぎて、頭すら見えないよ。
「……!? クリス、皆。足音がするよ。きっとあの恐竜だよ!」
エルサの耳はエルフ特有で結構耳が良いのか、遠くの音すら聞き逃さなかった。
「なっ!? 冗談じゃねえぞ。こんな状況……はっ! まさか、このカンガルーさんの本当の役目って」
最初はミニマムだったけど、洞窟を突き破る程に大きくなったカンガルーさん。そしてタイミングを合わせたかの様に近付いて来る恐竜……もしかして、これは。
「皆、聞いてくれ。これはあくまでも予想に過ぎないけど、このカンガルーさんは、恐竜と戦う為に現れたんじゃないか?」
取り敢えず、巻き込まれない様に遠くへと走る。
「どうゆう事?」
俺は砂紗の頭の上に乗りながら説明し続ける。ってか、ここが定位置になりつつあるのに、ちょっとだけ照れくささを感じるんだけどな。
砂紗のシャンプーの良い匂いが、一瞬俺の顔を歪ませちゃったよ。だから、ブンブンと煩悩を降り張った。
「いや……あくまでも、そう思っただけだからな」
後ろをチラリと見ると、カンガルーさんが恐竜の足音らしき音がする方向に身体を動かした。
その際にスカートの中が丸見えになっちゃって、両前足音で「イヤァーン」って感じに隠してたけど……。
「カンガルーさーん! 恐竜と戦うのかあー?」
俺の声に気付いたらしく、右拳を俺に見せる。
やっぱりこのカンガルーさんは、恐竜と戦う為に産まれて来たんだ。そう思ったけど、何故玉子なのか……どうして、俺の召喚なしに出現したのか。それは謎のままだった。