仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
「お? 着いた着いた。ありがとな、ラクダさん」
ラクダさんの背中に悠々と乗ってた俺は見知った顔を発見し、少しホッとした。
「暑いわね。ヴァーチャル世界だって事忘れてしまいそうだわ」
家の前で洗濯物を干しながら、この照り付ける太陽の光と必死に格闘している少女は……
「おーい。砂紗ー!」
この世界で知り合った女の子だった。
「あら。お帰りなさ……」
俺を乗せたラクダさんは砂紗に興味津々といった感じで、近距離まで顔を近付ける。
「ら……ラクダァー!?」
ビックリする余り、洗濯物を落としてしまう。
「おうよ。あっ、スイカ食べるか?」
「……え? は? スイカ?」
ラクダさんの後ろのコブの毛を優しく触り、毛の中からスイカを取り出して、砂紗に渡した。
「スイカ……って、フタコブじゃなくて、ヒトコブだったの!? このスイカは、何!?」
砂紗の反応を見た俺とラクダさんは、したり顔になり「やった」と、笑ってしまう。
何の事か分からない砂紗はスイカを両手で持ちながら、首を傾げていた。
「いや……実はな? 俺も砂紗と同じで、最初コブについて驚いたんだよ。このラクダさん言葉通じてるッポイから、同じ事砂紗に仕掛けれないかな? って、思ってさ」
簡単に言うと、イタズラだった。
「……子供ね」
呆れてしまう砂紗に対して俺は、ちょっとだけ開き直る。
「仔猫だもん」
俺はこんなやり取りをしていたけど、本音を言えば、少しの不安が募っていた。
ログアウト出来ないのは俺だけじゃない事がせめてもの救いだったのだが、この猫の姿でこの魔物がはびこる世界で生きて行けるか……それが、不安でならなかった。
こんな事件に遭遇する前までのこのゲームでの常識--マップに表示される物語など--が、通用しなくなっている事は勿論、このゲームの運営会社に連絡すら取れなくなっているという現実。
これらが、何を意味するのか……現時点では、何も分からないままだった。
「考えても仕方ないか。ラクダさん……ありがとな」
お土産に貰ったスイカを地面に置いて、俺と砂紗はラクダさんに手を振ってさようならした。
ラクダさんの姿が遠くの地平線に消えて行くのを確認すると、俺はこれからについてどうするべきか……腕を組みながら考え込む。
「さて……これから、どうするか。アバを元に戻す事かは不可能だし……」
砂漠の太陽の光というのは、どうしてこんなにも暑いのだろうか? 俺の脳ミソが溶けてしまう気がする。
そんな事を考えてる内に、アクビが出てしまった。
ふとある考えが頭を過る。一応俺は猫なので、一番最初にする事は……
「寝る」
だった。
「こらこら!」
そんな俺の行動に意義を唱えた砂紗は、考えながらうとうととし始めてしまっていた俺の身体を、両手で鷲掴みする。
「……貴方、猫生活満喫してるでしょ?」
引きつった顔をしながら、こめかみに青筋を立てていた。
「だって、猫の姿じゃ何も出来ないじゃん? おっ? そうだ!」
これからどうすれば良いのか分からない以上、少しでも同じ境遇の人と共に過ごす事になるだろう。そうなったら、必要なものがあるのではないだろうか?
「おい、こら……」
俺を起こすと見せ掛けて全身をモフりに来た砂紗を俺は睨み付け、肉球をひたすら触っているので払いのける。
「え? あっ! ごめんなさい。肉球が余りにも柔くて……」
このアバについている肉球。余程フニフニなのだろう。心なしか、砂紗の顔がかなりほころんでる気がする。
そんなこんなで、俺とこの砂紗の奇妙な物語は、始まった。