仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
ウェディングドレスとタキシードの服の調整が終盤に差し掛かった頃、俺は誰も居ない場所でちょっとした実験をしていた。
「……あのスキル。【デスフラワー】ってのが、ちょっと気になるんだよなあ」
新たに追加されたであろう、この謎の名前。誰が何の為に……何処からこれを俺に送り付けて来るのか。
そもそも、召喚なんてスキルはなかった筈なんだ。
「それが、ログアウト不可になった途端現れるなんて……不吉にも思える。まあ、助かってるのは事実だけどさ」
メニュー画面を宙に浮かべ、改めて全ての画面を見直した。
「変わったのは、【デスフラワー・召喚】かあ。一番後ろのVRG……これも訳分からないけど」
一人で考えても分からないのは知ってるけど、誰かに相談しても何も分からないんじゃないか? って思う。
「……やっぱりどっかの町に行って、情報集めないと無理っぽいな」
って、そんな事考えてたら、砂紗が俺を呼ぶ声が聞こえてきた。サボってるって思われてるのかな?
「仕方ねえな~。行く……ギニャア!」
足元に何故かバナナの皮が落ちてる事に気付かなかった俺は、それに足を滑らせてしまう。
「いってぇ~~……何でバナナの皮が? あっ」
滑った瞬間俺の右前足は、【デスフラワー】って所押しちゃった訳よ。
「……やっ、やっべえ」
何が起きるか分からないスイッチを押してしまった感じになっちゃったよ。
俺は慌てて砂紗達の元へ走って行った。
「砂紗ー!」
「クリス。貴方何処行ってたの? もうそろそろ始まる……」
「それ処じゃねえー! まずい事になったんだよ」
俺の慌てようご尋常ではないと思ったのか、作業を止めて皆を集めてくれた。
「それで? 何があったの?」
エルサの声にはんのうして、恐竜とカンガルーさんがチラッと此方を心配そうに見てたけど、あの二匹には結婚式に集中して貰いたいから、何でもないよって言ってやった。
「お前ら。俺のステータス画面に、【デスフラワー】とかいう訳の分からないやつがあったの、覚えてるか?」
誰もが、何を言い出すんだろう? って顔してるな。まあそりゃそうか。
「さっきそれが気になってメニュー画面見てたんだけど。ちょっとした操作ミスで、押しちゃったんだよ」
皆俺を見て溜め息付いちゃった。怒られると思ったんだけど、呆れられるとか。
「うっ!!」
誰か、何か言ってくれよ! 泣きたくなっちゃうじゃないか。
「結婚式に影響あるんでしょうか?」
「わ……わかんなにゃいです」
ついつい猫語になっちゃった。
マナはあの二匹を見てちょっと笑ってから、俺の方を見た。
「名前からして、死を連想しそうなお花だとは思うのですが……それを押してしまってから、どの位たちました?」
中々に冷静でまともな質問だったから、ちょっとだけ驚いた。今まで、ちょっと変わったシスターだなって思ってたけど、もしかしたら、一番常識があるのかも知れないな。
「マナお姉ちゃん。どうしたの?」
普段余り見せないマナの真剣な表情に、綺羅がちょっと驚いてるな。
「……いいえ。そのデスフラワーというスキルが何なのかは分かりませんが……私思うんです」
俺達は皆して同じ方向に首を傾げた。
「デスフラワーとは、死神……若しくは、それを連呼させる名前の花だと。そこで思ったんです」
皆、ごくりって唾を飲んだ。
「そんな素晴らしく刺々しい花があるのなら、何て素敵なんでしょう? って♪」
頬を赤らめ、デスフラワーなる物に想いを募らせるマナを見て、俺は後悔した。
だって、まともだと一瞬でも思ったんだぜ? それが、この期待を簡単に裏切る本音。
--もう、何も言えないよ。
あれ? おかしいな……涙が出ちゃったよ。
「やっぱりマナよね?」
「だね」
「一瞬でもまともだと思った俺の気持ちは?」
俺と砂紗とエルサは同じ気持ちだったらしく、明後日の方を向くしかなったよ。綺羅は喜んでるみたいだけどさ。
「兎に角だ! あの変なスキルを押してしまったのは、ほんの数十分前。何が起きるか俺にも予想出来ないんだ」
最新の注意を払って……って言おうとしたんだけど、時既に遅し。だった。
「ん? 何だか空が急に暗く……って、えーー!?」
俺のこの声と共に、砂紗達も上を向く。
向いた先は--大きく赤い花がたった一本だけ、ジャングル全体を多い尽くす形で、屋根の様に巨大化していった。
「な……何、あれ? ん? ……何か音がする」
一番耳の良いエルサが花の近くから何かの音を察知したらしく、白熊さんとペンギンさんに此方に来る様に叫んだ。
料理をしていた白熊さんと、その材料を取りに行っていたペンギンさんが、慌てて集合した。
「カンガルーさん! 何か出て来るぞ。気を付けろ!」
恐竜とイチャコラしてたカンガルーさんは、あの花が出現したと同時に、立ち上がって戦闘体勢に入っていた。
恐竜さんは恐竜さんで、カンガルーさんの前に立って大事な人を守るかの如く、凛々しく花を睨み付けていた。
この二匹を見ると、やっぱり相思相愛なんだって思う。
「これは、是が非でも結婚式あげないとな」
ペンギンさんは綺羅を守る形で側に付いて、白熊さんは料理で使っていた血生臭い包丁を片手に戦闘体勢へ。
ブタさんは……相変わらず俺の腕を掴んでは、投げキッスとか。
「状況を考えろよ!」
それでもめげないブタさんは、ますます頬を赤らめた。
「皆! 音が大きくなってる。来るよ! ……それにこの音って」
エルサは、徐々に顔色を真っ青へと変えていった。
「まずいよ。この音……蜂だよ! 蜂の群れ!」
慌てて数歩後ろへ下がり始めるエルサを見て、俺が何かを言おうと口を開いた時、花から大量の蜂の群れが現れた。
しかも一匹一匹が普通の蜂よりも遥かに大きく、白熊さん並みに巨大だった。