仔猫をモフリたいなら、一緒にヴァーチャル世界を旅しないかい?(旧:キャラメイキングで猫選んだら、ログアウト出来なくなりました) 作:猫つまみ
スライムなのに、燃やしても生きてるって……。ログアウト出来なくなった事と、何か関係があるんじゃないか?
「クリス。どうするの? スライムって、剣が殆ど効かないのよ?」
あのブヨブヨした身体だから、仕方ないと言えば終わりかもなんだけど……。
「あっ」
俺は器用に後ろ足で、喉の辺りをかく。
「どうしたの?」
砂紗は、俺の目線と同じ高さになる様にしゃがむ。
「いや……凍らせれば、何とかなるかも」
また俺の尻尾が自然と動く。しかも、今度は左右に。
それを見た砂紗は我慢出来なくなったのか、遂に俺の尻尾を触り出す。
もう怒るのも飽きた。
だから、好きに触らせる事にした。
「ちゃんと戦ってくれるんなら、好きにしても良いよ。でも……」
そのまま尻尾を触っていた手を、その尻尾で叩く。
「あう~」
もの凄く残念そうな顔だったけど、あのスライムを退治しない事には始まらない。
だから俺は、再び【シャーー!】と、威嚇した。
「あのスライムさ。何かおかしい気がするんだよね?」
具体的に何が? と言われると、あれなんだけど……。
「ん? どうゆう事? スライムじゃないの?」
首をコトリと傾げる姿は、なんとも可愛いらしいのだが、今はそれを気にしてる場合じゃないな。
そう思った俺だったが、どうにもこの女は俺を怒らせたいらしい。
ことある毎に、俺の身体をあちこち触って来やがる!
「絞めたろか?」
俺のかなり低い声を聞いて、ようやく大人しくなった砂紗。
「はあ。話戻すけどさ、スライムだとは思うよ。でも……ログアウト出来ないとかトンでもな状態である以上は、普通なんて通じないのかもな?」
そう。俺たちは、ログアウトすら出来ない状態のままだった。運営会社には一切の連絡が取れず、ログアウトボタンを押しても、【不正アクセスです】だの【このシステムは、存在しません】だの、冗談がキツイだろ? って思える位、最悪の状態だった。
俺達の現実世界での身体は、今どうなっているんだろうか?
それが気がかりでならない。
「兎に角さ。俺達だけじゃどうしようもないだろ? ただけど、生きていくためには、お金が必要」
再び尻尾をタシタシ!! としちゃう。どうにも勝手に動くらしい。
「そうね。でも……あのスライムを倒せないのよ? 氷魔法持ってるの?」
うーん……問題は、そこなんだよなぁ~。そう言いつつも本当の事言うと、策がない訳じゃなかった。
ただ……使えるか分からないやつに頼って、いざという時に発動しなかった。
「正直それじゃあ、困るんだよね」
俺は何時の間にか、心の声を口に出していた。
「ん? 何が困るの?」
首を傾げながら金の髪を耳に掛ける砂紗は、やっぱり綺麗だって思えてしまう。
「兎に角さ? あれを倒さなきゃな。普通のスライムじゃない以上は、注意して行こう」
コクリ。俺と砂紗は、一瞬だけど顔を見て頷く。
「氷魔法持ってるか、調べてみるよ」
俺たちは何時の間にかスライムとの距離を取っていた。他の誰かに刈られるんじゃないか? そう思って聞いてみると……
「ここってさ、相当レベル低い場所だから、初心者以外来ないと思うわよ?」
そんな砂紗の言葉を聞いて、ちょっと意地悪してやろうか? そう思った俺は、ニヤッと笑ってしまう。
「へえ? キャラメイキングしてレベルがリセットの俺は分かるけど……じゃあ砂紗は、何でここにいるの? 家があるから?」
正直、面白半分のつもりだった。レベルが低い訳でもないだろうに……。
「うっ!」
まさかそんな質問が来るなんて、思ってもみなかったんだろう。かなり動揺してる。
「わ……私、子供の頃にさ、凄いいじめに合ってたの。それ以来、誰かと話したり長時間一緒にいると、ガタガタ震えちゃって」
ああ。だから、誰も居ないここに家を構えた訳か。
ちょっと悪い事しちゃったかな? 見ると、両手を身体に巻き付ける様な形で震えてるじゃないか。
「ごめんな? そんなつもりじゃなかったんだよ」
俺は自分の右前足の肉球を、そっと彼女の頬に当てる。それを見た砂紗は一瞬驚いた様に目を見開いたが、すぐ元に戻った。そのまま、俺の差し出した右前足をそっと触り返して来た。
「ううん。ありがとう」
「今だけは、仕方ない。半分俺が悪いようなものだしな」
ショボンとな心が落ち込むと、俺の耳や尻尾も何故か一緒にショボンとなっていた。
◇◇◇
「取り敢えず、試してみたいやつあるんだ。この召還ってやつ。これ何だか分かる?」
四本足で座りながら首を傾げる俺を見て、再び触りたい症状でも出た砂紗は、くっ!! とか、言ってるし……。考えてる事が、面に出てる女って可愛いんだよなあー。
「……っと、今は、それ所じゃなかったな。召還かぁ~……砂紗は、どんなのか知ってる?」
ふるふる。首を左右に振った時、金の髪が一緒に揺れていて、何か面白いかな。って思っちゃったりもするけど、それは、今の状況では関係ない。
――そう。
俺達の成すべき事は、この世界で生きていく為の資金集め。
その為には、あのスライムもどきをどうにかしなきゃならなかった。
「ちょっと試してみるから、離れてて」
召還魔法なんて、前のキャラクターの時にはなかった筈だ。勿論今の俺と同じ、魔術師選択してた訳だけど……。
「……」
チリーーン。
何時の間にか尻尾についていた鈴が、静かな音を奏で始める。
自然と頭に思い浮かぶ呪文の様な物を、唱え始めていた。
『我、契約者なり。その声に答えよ……』
目を瞑り、足元に魔方陣が展開される。
ボン!!
ゆっくりと目を開ける俺の目に写っていたのは……。