のんびり平和に鎮守府運営。
鈴谷さんがログインしました。
髪と瞳の色は既出ネタですがゴメンニ。
-- Kumano Side --
春を運ぶ風を浴びながら鎮守府の施設を散策していると、一人の少女に出会う。
風に揺られる翡翠の髪――。
晴れ渡る空を見据える栗色の瞳――。
ここに着任して数人の艦娘を目にしてきましたが、言いようのない感覚に囚われたのはこれが初めてでした。
例えるならそう、ようやく会えた――と。
彼の大戦で泣き別れのような状態になったまま再度の邂逅を果たすことはなかった。
何度もへこたれそうになったけれど、最期の時まで本土回航を夢見ることが出来たのはひとえに彼女の存在が大きいとも言える。
「鈴谷……?」
口からこぼれたその名前はかつての相方。
第七戦隊で長くの時間を共にした最上型の姉。
私の呟きが届いたのか、彼女はこちらに振り返る。
「お? 熊野じゃない? 久し振りだね~!」
「鈴谷――っ!」
名前を呼ばれたこと、それ以上に姿は違えど私を『熊野』だと気づいてくれたことが嬉しくて思わず駆け出し、胸に飛び込む。
「おおっ? どうしたのさ。お姉ちゃんに会えて嬉しくなっちゃった?」
「お久しぶりですわ。ずっと……ずっと、この日を……」
「冗談で言ったつもりだったんだけど、いやぁでもあの時以来だね。元気してた――、はなんか違うか」
右手で髪をいじくりながら微笑む鈴谷。
溢れだす感情が抑えきれず、強く抱きしめることで想いを伝えると、私を受け止めてくれた腕をそのままに抱き返してくれた。
「いたた、ちょっと強いよ熊野~」
「ごめんなさい。つい……」
慌てて彼女から離れ、近くにあるベンチに腰掛け積もる話を語り合う。
そして話題は現在の事。
「聞いたよー? 着任早々、秘書艦に指名されたんだって?」
「私も少々驚いているのですが、ここの提督はどんな方ですの?」
まだほとんど会話を交わしていない彼のことは、どうしても気になる。
初対面のはずなのに重要である秘書に任命するなど常識的に考えてないだろう。
「あぁー、提督ね。変わってると思うよ」
「変わっている?」
「本当は本営でもやっていける実力はあるのに、こんな辺境の前線で指揮を執ってさ」
現在では鎮守府の運営を任されるものを、階級問わず『提督』と呼ぶ慣習があるそうだ。
しかしここの鎮守府の提督は若く見えましたが、それほどまでとは意外なことでした。
「なにかあったのですか?」
「ま、そのへんは本人から直接聞きなよ。色々あったみたいだしね」
「わかりました。そのうち聞いてみることにしますわ」
辺境に配属ということだけでもイチモツ抱えていることは察していましたが、色々ありそうですね。
「でもさ。提督は、真面目で真っ直ぐな人だと思うよ。ここ何ヶ月か接してみて、鈴谷はそう思ったよ」
「へぇ、鈴谷がそこまで言うのなら私も相応の態度で接しないといけませんわね」
目を閉じ、ほんの少ししか言葉を交わしていない提督の姿を思い浮かべながら決意を固める。
「そういうわけでさ、これからよろしくね。熊野」
「ええ、今度こそ一緒に」
--Kumano Side end--
この様子を見ていた者の姿が一人あったが、彼は二人の再会に水を差すことなくすぐに立ち去っていった。
期待に応えるために、これ以上に励まなければいけない。
戦闘に関しては無力な自分達の代わりに戦いに行く艦娘たちを支えるために。
この鎮守府が少しでも彼女たちにとっての安息の地になるように。
最善を、最良を尽くそう。
何よりも大好きな、この海を取り戻すために――。
--あとがき
七戦は初期最上型4艦。
後期は熊野鈴谷利根筑摩ですね。
結局しんみりモードなのは変わんないですね(諦