熊野とのんびり提督   作:sarah_nox

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--まえがき
のんびり平和に鎮守府運営。

一転して重くしてみる。


Day5 -熊野と記憶-

「もうっ! どうして提督も一緒になって寝ているんですか!」

 

工廠へと向かう外の廊下で僕の少し前を歩く熊野のポニーテールが不機嫌そうに揺れる。

艦隊演習の視察を二人してすっぽかしてしまった。

正確に言えば、先に目が覚めた熊野が慌てて俺を起こして演習場へと向かうが、既に終了してミーティングをしているところだった。

そこで揃って担当の子からのお叱りを頂いたのだ。

 

演習に関しては優秀な艦娘()に任せていたので、内容自体は滞りなく終えたようだ。

目を閉じる前は頂点近くにあった太陽も茜色。

 

「午後に私主導の任務がなかったから良いものの、出撃の指揮とかがあったらどうするつもりだったんですの?」

「面目次第もない」

「さあもう時間もありませんし、チャキチャキ行きますわ!」

「はい」

 

少し早足で彼女の隣に並び横顔を盗み見ると、その翡翠の瞳は既に前を見据えていた。

その真っ直ぐな瞳がこちらに気づき、僕と視線が交わす。

 

――次に同じことをしたら許しませんよ?

 

声に出さなくとも、彼女の意志はこちらに届いた。

 

 

工廠の中にある装備の開発部を尋ねると、軽巡洋艦用に注文してあった15.5cm三連装砲ができたところらしい。

熊野はその装備を懐かしむように右手で砲身の部分を触れる。

 

「懐かしいですわ。これを積んでいた時期も私たちにありましたね」

「そう……らしいな」

「上品とまでは言えませんが、使い心地が良かったんですのよ?」

 

今でこそ重巡洋艦との認知が広まってはいるが、当時は条約などもあって最上型は軽巡洋艦として作られた。

重巡慣例の山の名前ではなく、河川名であることが最上型の特徴であり由来である。

 

最上型の船体強度不足が明らかになったために1、2番艦とは多少構造が違うために『鈴谷型』と呼ばれることもある。

ただここではまとめて最上型と決められているので彼女は4番艦に当たる。

 

「それはそうと提督……? 艦である熊野のことは知ってますか?」

「文献やらで調べたことがあるよ」

「私もその時のことを事細かに覚えているわけではありませんが、艦に宿った"魂"をうっすらと」

「今でも本土回航を成せなかったことは無念かい?」

 

昨日彼女に出会ってから聞いてみたかったことを、何気なく聞いてみる。

少し逡巡するような仕草を見せたが、熊野は瞼を閉じ静かに語る。

 

「正直に言えば後悔がないといえば嘘ですね。

 痛くて、辛くて、皆をあそこに帰らせてあげることができなくて。

 そんな自分に憤りを覚えることもあります。

 ですが、例え私が歩んだ道が茨で満たされた果てなき道だったとしても。

 それでも私"達"は最期まで前を向いて進んでいけたことを。

 ――誇りに思っていますわ」

 

ああ、この子はなんて強いんだろうと。

先ほど感じた瞳に宿る意志の強さは、艦娘としての原点から湧き上がっているものなのだと理解した。

彼女は瞼を開けると、僕を正面から見据える。

 

「今度はそう簡単にやられませんわよ? 提督。私達をうまく導いてくださいませ」

 

視線を外すことが出来ない。

いや、そうしようと思わないほどに惹かれている。

彼女の気高い心に呼応するように、僕の心臓も高鳴る。

心地の良い昂揚感。

恋とかそういうものではなくもっと違うなにか。

 

熊野(この子)と今の世を共に歩みたいと、そう思った。




--あとがき
誤字脱字とかあったら教えてね。

で、優秀な艦娘とはつまりだれだってばよ。
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