のんびり平和に鎮守府運営。
一転して重くしてみる。
「もうっ! どうして提督も一緒になって寝ているんですか!」
工廠へと向かう外の廊下で僕の少し前を歩く熊野のポニーテールが不機嫌そうに揺れる。
艦隊演習の視察を二人してすっぽかしてしまった。
正確に言えば、先に目が覚めた熊野が慌てて俺を起こして演習場へと向かうが、既に終了してミーティングをしているところだった。
そこで揃って担当の子からのお叱りを頂いたのだ。
演習に関しては優秀な
目を閉じる前は頂点近くにあった太陽も茜色。
「午後に私主導の任務がなかったから良いものの、出撃の指揮とかがあったらどうするつもりだったんですの?」
「面目次第もない」
「さあもう時間もありませんし、チャキチャキ行きますわ!」
「はい」
少し早足で彼女の隣に並び横顔を盗み見ると、その翡翠の瞳は既に前を見据えていた。
その真っ直ぐな瞳がこちらに気づき、僕と視線が交わす。
――次に同じことをしたら許しませんよ?
声に出さなくとも、彼女の意志はこちらに届いた。
工廠の中にある装備の開発部を尋ねると、軽巡洋艦用に注文してあった15.5cm三連装砲ができたところらしい。
熊野はその装備を懐かしむように右手で砲身の部分を触れる。
「懐かしいですわ。これを積んでいた時期も私たちにありましたね」
「そう……らしいな」
「上品とまでは言えませんが、使い心地が良かったんですのよ?」
今でこそ重巡洋艦との認知が広まってはいるが、当時は条約などもあって最上型は軽巡洋艦として作られた。
重巡慣例の山の名前ではなく、河川名であることが最上型の特徴であり由来である。
最上型の船体強度不足が明らかになったために1、2番艦とは多少構造が違うために『鈴谷型』と呼ばれることもある。
ただここではまとめて最上型と決められているので彼女は4番艦に当たる。
「それはそうと提督……? 艦である熊野のことは知ってますか?」
「文献やらで調べたことがあるよ」
「私もその時のことを事細かに覚えているわけではありませんが、艦に宿った"魂"をうっすらと」
「今でも本土回航を成せなかったことは無念かい?」
昨日彼女に出会ってから聞いてみたかったことを、何気なく聞いてみる。
少し逡巡するような仕草を見せたが、熊野は瞼を閉じ静かに語る。
「正直に言えば後悔がないといえば嘘ですね。
痛くて、辛くて、皆をあそこに帰らせてあげることができなくて。
そんな自分に憤りを覚えることもあります。
ですが、例え私が歩んだ道が茨で満たされた果てなき道だったとしても。
それでも私"達"は最期まで前を向いて進んでいけたことを。
――誇りに思っていますわ」
ああ、この子はなんて強いんだろうと。
先ほど感じた瞳に宿る意志の強さは、艦娘としての原点から湧き上がっているものなのだと理解した。
彼女は瞼を開けると、僕を正面から見据える。
「今度はそう簡単にやられませんわよ? 提督。私達をうまく導いてくださいませ」
視線を外すことが出来ない。
いや、そうしようと思わないほどに惹かれている。
彼女の気高い心に呼応するように、僕の心臓も高鳴る。
心地の良い昂揚感。
恋とかそういうものではなくもっと違うなにか。
--あとがき
誤字脱字とかあったら教えてね。
で、優秀な艦娘とはつまりだれだってばよ。