のんびり平和に鎮守府運営。
10月15日は熊野の進水日。
進水おめでとう~。
スーパー短編。
時系列的には今書いてる本編より未来の話ですね。
まあ外伝扱いで。
昼下がりの執務室。
これから出撃を控えた熊野はイスに腰掛け本を読んでいる。
ときおり耳に入る紙のめくれる音が、それとなく心地よい。
「装備の点検とかはしなくて大丈夫なのか?」
「午前のうちに済ませておきましたわ。それにこうしている方が落ち着きますのよ?」
「そっか、なら邪魔して悪かった」
「いいえ、お気になさらずに」
近く始まる作戦に僕も緊張しているのかもしれない。
彼女には第一艦隊の旗艦を任命した。
その表情から緊張は見えない。
補佐で鎮守府に残ってもらうという考えもあるのだろうが、それでは熊野が納得しないだろう。
なによりこの作戦に出撃するのは彼女たっての頼みだったのだ。
任務地は『サマール沖』。
重巡洋艦・熊野が第七艦隊から落伍し、鈴谷と別れ、長き本土回航の道の始まりとなった海戦のあった場所でもある。
煙幕からの魚雷にやられたのは今となっても苦い思い出として彼女の心に残っているらしい。
「提督。私は私の力で切り開ける未来があると信じていますわ」
「本音を言うと心配だが、それ以上に僕は君を信じているよ」
「当たり前ですわ」
「おっ? 二人ともいるね~! チーッス!」
そんな話をしていると鈴谷が執務室に入ってくる。
そのまま真っすぐに熊野の座っているイスの背もたれに手をつく。
「こんにちは鈴谷。どうした?」
「朝にやるの忘れてたんだけど、ここで熊野の髪を梳くっていい?」
「もうっ、いつも自分でやっているからいいと言っていますのに」
「いいじゃんいいじゃん。鈴谷は付いて行けないんだからこれくらいさ!」
「仕方ありませんわね。もう髪はまとめてしまったので、このままでお願いします」
「あいよ~」
任された鈴谷は優しく撫でるように髪を梳かしていく。
先程まで読んでいた本は膝の上に、熊野は目を閉じて気持ちよさそうにされるがままになる。
窓から差し込む光が二人を包み込み、出撃前とは思えないほどゆったりと時間が流れる。
この姉妹は本当に仲がいい。
『前の時』と同じでいつも行動を共にしているし、離れていれば常に相方を案じている。
その性格からイロモノ扱いをされいじられることもままある二人。
しかしその本質では他の
自分たちの守りたいものを護り抜く。
この海を――。
この街を――。
そして、この
「今度は帰ってきますわ。
少女の小さな呟きは静かな執務室にこだました。
--あとがき
誤字脱字とかあったら教えてね。
今は電子の海ですが、帰るべき場所に帰り続けられることを祈るばかりです。
作戦というのは原作ゲームのイベントのことではなくて、この話の中の架空の作戦です。