Overview
兵藤一誠がオブザーバーとして三大勢力の首脳会談に臨んでいる頃。
兵藤家では、既に眠りについたはやての側でリヒト・ツァイトローゼ・フォン・ナハトヴァールが愛妻であるリインフォースと共に護衛に就いていた。主の義兄である一誠からは、首脳会談の最終的な目的に勘付いている者達が自分の家族を狙って来る可能性が高い為、リヒトを中心として家族の護衛に回ってほしいと言われていたからだ。外部からの襲撃者に備えて精神を集中していたリヒトに対し、リインは静かに語りかけて来た。
「……そう言えば、あれからもう一年ですね?」
すると、リヒトは精神集中の為に閉じていた瞳を開くと、リインからの問い掛けに答え始めた。
「そうだな。お前に対する想いを再確認し、数百年前のお前の告白をプロポーズで返事した後、武藤神父の教会で結婚式を挙げたのは、ちょうど一年前の今頃になるか」
話している内容が周囲を警戒する険しい表情と全く一致していないリヒトにリインは少しばかり落胆してしまったが、この際だからとあの時の自分の心境がどのようなものであったかを気付いているのか、確かめてみる事にした。
「貴方が平行世界に飛ばされた時、世界中を探しても貴方を見つけ切れなかった私が一体どのような想いをしたのか、解りますか?」
すると、リヒトから意外な答えが返ってくる。
「さて。この場合は、むしろ解らない方がいいかもしれないな。解ってしまえば、私はお前と離れて別行動をする事が敵わなくなってしまいそうだ」
余りに直球過ぎる夫の言葉に対し、嬉しい半面かなり恥ずかしくなったリインは主であるはやてが既に眠っている事に感謝したくなった。
「……全く、貴方という人は。何故こういう時に限って、私の望む以上の言葉を仰ってくれるのでしょうね?」
たくさんの歓喜の中に少しばかり拗ねも入ったリインの問い掛けに対して、リヒトは主の両親に触れる事で答えとした。
「それについては、私自身も解らないな。だが、夫婦とはそういうものではないのか? 主上達のご尊父とご母堂のお二人を見る限り、私にはそう思えてならない」
「……確かに、その通りですね」
その言葉に、極自然にお互いを思いやる行動を取れる二人の姿を思い出したリインは、ただただ同意するだけであった。
それから暫くの間、心地良い静寂が二人の間にあったのだが、リインはやがて一年前に出会った者達の事を話題に上げた。
「……所で、
リインにとって、僅かな時間しか接する事のなかったが、それでも深く印象に残った少女達だった。その様なリインの想いを察したリヒトは警戒こそ続けていたが、リインの方に顔を向けてはっきりと断言する。
「大丈夫だ。
最後の方は少し
「それでも、まだ二十代前半ですよ? それどころか、時間の流れのズレが小さくなっていれば
リインの遠慮のない言い様に、リヒトは少し苦笑いを浮かべる。
「まぁ例えばの話だ。そこまで気にする必要もないだろう。だが、こうして話題に上がったのだ。この際だから、あの時の話をしようか。主上とお前が向こうに来たのは、本当に最後の最後というべき局面だったからな」
このリヒトからの提案を、リインは快く受け入れた。
「えぇ、お願いします。貴方が私の告白に応えるに至った
そうして、リヒトは一年程前に己が経験した事を語り始めた。
これは、主とその義兄から新しき名と称号を授かった一人の騎士と平行世界に住まう魔法少女達の物語である。
Overview end
引き続き、第一話をお楽しみ下さい。