Side:高町なのは
はやてちゃん達が戻ってくるのと同時に戻ってきたリヒトさんがリインさんにプロポーズ、それをリインさんが受け入れた事でリヒトさん達は晴れて新婚さんになった。そこから更にリヒトさんが夜天の魔導書の中にいた時に助け出したユーリちゃんを娘として引き取った事で、いつの間にかお父さんにもなっていた。
そんな幸せいっぱいの中、はやてさんに促される形で防衛プログラムをどうするのかが話し合われた結果、この世界の問題はこの世界に住まう者達で解決するべきだという意見から、まずは私達だけで防衛プログラムのコアを露出させて、その後の修復作業をはやてさんとリヒトさんに任せる事になった。……でも、そんな私達の考えを吹き飛ばしてしまう光景が今、私達の目の前に広がっていた。
防衛プログラムと思われる黒い塊が、二つに増えていた。
流石にこの光景を前にして私達が絶句していると、何が起こっているのかを把握したリヒトさんがどういう事がを説明し始めた。
「成る程。そう来たか、ナハトヴァール。防衛プログラムから自らを切り離した上でユーリが発生させた膨大な魔力を利用して実体化、戦力を少しでも増やそうといった所か」
……ナハトヴァール?
私が首を傾げていると、リヒトさんと一緒に夜天の魔導書に関する情報の洗い直しをしていたユーノ君が教えてくれた。
「夜天の主や夜天の魔導書が緊急事態に陥った時にしか発動できない様になっている防衛プログラム。それを常時使用できる様にする為の追加ツールの事だよ。だけど、結果的にこれが夜天の魔導書を闇の書へと変貌させる決定打となってしまったんだ」
「それだけではない。追加ツール、即ち付属品に過ぎない筈のナハトヴァールは今や防衛プログラムを完全に乗っ取ってしまっている。その為、防衛プログラムを修正する為にはナハトヴァールの方にも手を打たねばならない。……そして今、こうして二つに分かれてしまった以上、防衛プログラムとナハトヴァールの双方のコアを露出させなければならないのだ」
ユーノ君の説明の後でリヒトさんが補足してくれたけど、それなら一体どうしたらいいのか、正直に言うと私には解らなかった。そこで、リヒトさんはその場に跪くとはやてさんに参戦の許可を求めた。
「主上。この事態に至ったのは私がユーリを起こした事が原因。故に、どちらか片方は私が対処せねばなりませぬ。どうか、私に出陣の許可を」
このリヒトさんの申し出に対して、はやてさんは単にリヒトさんだけでなく自分達も一緒に参戦する事を言い出した。
「それにあっちがこうまでして戦力を増やそう思ったんは、どう考えてもわたしのせいやと思う。解った。それなら、片方はわたし達が担当しよか」
すると、リヒトさんとリインさんの子供になったばかりのユーリちゃんも参戦を言い出して来た。
「あの、だったら私にも手伝わせて下さい。そもそも、私の魔力が原因ですから」
このユーリちゃんの発言に対して、リインさんが理解を示す。
「そうか。エグザミアは紫天の書の機能不全といった緊急時に備えて、夜天の書でも一時的に制御可能な様になっている。そうすれば、無限の魔力を持つと言っても過言ではないユーリも戦力として数える事ができるな。ただあくまで緊急処置の一環である為、ユーリの出せる力はせいぜい全力の三分の一程度。しかも、はやてか私のどちらかがエグザミアの制御に専念しなければなりませんが……」
……えぇっと?
私が首を傾げていると、はやてさんがエグザミアというものの制御を担当すると言い出した。
「それやったら、わたしがやるで。そもそもアレの為に魔力を温存する必要がある以上、わたしは前には出られへん。できてせいぜい援護くらいやろ。そやから、リインはわたしの代わりにリヒトやユーリ言うたかな、この子と一緒に戦うたらえぇ。……リヒトと夫婦になってからの初の共同作業、頑張ってな」
「はい、はやて」
リインさんははやてさんに背中を押される形でリヒトさんと一緒に戦う事になった。そこに、今度ははやてちゃんがザフィーラさんの参加を提案してくる。
「そんなら、ザフィーラはそっちに加えてくれへんかな?」
「主、流石にそれは……!」
ザフィーラさんははやてちゃんに思い留まる様に言おうとしたけど、その前にはやてちゃんがザフィーラさんを説得し始めた。
「ザフィーラは、そっちの世界のザフィーラの魂と記憶も継承しとるんやろ? そやから、夜天の王と書、そして書に収められとるたくさんの魔法や知識を守護する防衛プログラムとして最後まで諦めへんで運命と戦い続けたリヒトさんを、夜天の守護騎士の長として心から敬うてる。それに、この件にカタがついたらリヒトさん達は元の世界に帰ってしまうから、ひょっとしたらザフィーラがリヒトさんの元で一緒に戦えるんは、これが最初で最後になるかもしれへん。それやったら、我慢したらあかん。えぇな、ザフィーラ?」
最後は強く念を押す様に言い聞かせたはやてちゃんに対して、ザフィーラさんは感謝の言葉をはやてちゃんに伝える。
「主……! ご厚意、有難くお受け致します」
こうして、私達の側からはザフィーラさんだけがリヒトさん達に協力する事になった。これらの事態を受けてはやてさんは少し考え込んだ後、最終的な決断を下した。
「……リヒトの最新の情報は既に受け取っとる。今のリヒトなら一人でも十分いけそうやし、そこにリインとユーリ、そしてザフィーラさんがおるんなら問題なしやな。ほな、片方はリヒト達に任せるで。そん代わり、防衛プログラムとナハトヴァールの両方のコアが剥き出しになった後は、わたしに任せてもらうで?」
「承知致しました。あの魔法については付け焼き刃に過ぎぬ私ならともかく、慣熟なされている主上であれば問題ございませぬ」
……あの魔法?
コアが露出した後の事についてははやてさんに任せる事を承知したリヒトさんから飛び出したこの言葉が、私は何故か凄く気になった。……そう言えば、私がヴィータちゃんに襲われてリヒトさんが助けてくれた時、「悪意ある力を浄化する事で万全の状態へと回帰する魔法を用いる事で夜天の魔導書をバグの発生以前の状態に戻す事を強行できる」みたいな事を言っていたけど、ひょっとしてその魔法なのかな? もしそうなら、リヒトさんかはやてさんに頼み込んで私にも教えてもらおうと思う。
こうして、片方をリヒトさん、リインさん、ユーリちゃん、ザフィーラさんの四人で、もう片方をこの四人以外の私達全員で対処する事が決まり、はやてさん達がユーリちゃんと夜天の書の接続作業を開始すると、転移魔法で誰かがここに来ようとしていた。
「今回は、私も前線に出ます」
そう言って現れたのは、リンディさんだった。余りに予想外な人の登場にクロノ君は凄くビックリしたみたいで、リンディさんに問い質す。
「か、艦長! それじゃアースラの指揮は、いざという時のアルカンシェルは一体どうするんですか!」
でも、リンディさんがこっちに来たのにはちゃんとした理由があった。
「それについては、こちらに来られたグレアム提督が引き継いでいます。それと同時に、私に陣頭指揮を執る様に指令を受けました。だから、私がここに来ても全く問題はありません。……という事だから、私をしっかり守ってね。クライド」
リンディさんがそう言いながらウインクを飛ばした先には、クライドさんがいた。クライドさんは軽く溜息を吐いた後で、リンディさんに釘を刺す。
「解ったよ、リンディ。ただ、やるなら援護に専念してくれ。君はけして前線で戦うタイプではないんだからな」
「自分の事だもの、十分解っているわ」
こうして、リンディさんも最終決戦に加わる事になったんだけど、その前に私達の姿を見たリンディさんは表情を険しくした。
「でも、リヒトさんが一時戦線離脱してからリヒトさんの主である兵藤はやてさんが来るまでの間、リインフォースさんと戦っていたクライド達は本当にボロボロね。流石にこのままだと不味いわ」
ここで、接続作業が無事に完了したユーリちゃんが手を上げてきた。
「それなら、私に任せて下さい。私の力を、皆にお裾分けします。……ホーリーベール!」
すると、ユーリちゃんの背中から翼の様な物が現れて白く輝き始めた。まるで天使みたいな姿になったユーリちゃんは、その白く輝く光の翼で私達を優しく包み込む。……干し立てのお布団に包まっている様にポカポカした感じがして、凄く気持ちよかった。異変に気付いたのは、そのすぐ後だった。
「あれ……? バリアジャケットも怪我も完全に治ってる」
「なのは、それだけじゃないよ。殆ど空に近かった筈の魔力もほぼ満タンといっていいくらいに回復してる」
フェイトちゃんの言った通り、最後に使ったエクセリオンバスターで魔力がもう殆どなかったのに、今は病院の屋上でヴィータちゃん達と戦う前と変わらない位に魔力が回復していた。それは、クロノ君やクライドさん、そして実は一番怪我が酷かったザフィーラさんも一緒だった。
「元々、私の役目はこんな風にエグザミアで生成した魔力を皆に分け与える事なんです。だから、たとえエグザミアがアイドリングモードで殆ど魔力が生成されていなくても、魔力と一緒に傷も癒せるこのホーリーベールと自分の身を守るインペリアルガードだけは使えます。それに今ならインペリアルガードを自分以外も対象にできますし、魄翼の攻撃転用もある程度はできそうです」
ユーリちゃんがそう説明してきたので、私はユーリちゃんにお礼を言った。
「ありがとう、ユーリちゃん。これで、もうひと頑張りできそうだよ」
私が伝えた感謝の言葉が嬉しかったのか、ユーリちゃんは笑顔で応えてくれた。
……ただ、魔方陣の隅の方ですっかりいじけてしゃがみ込んだ上で指で「の」の字を書いているシャマルさんについては気にしない様にしようと思う。「リヒトさんへの想いが叶わないのなら、せめて私のいい所だけでも見せたかったのに……」なんて声は、絶対に聞こえてないの。
そうして、夜天の書と接続した事でユーリちゃんも全力全開で頑張れる様になり、皆が元気いっぱいで準備万端整った所で、ついに防衛プログラムとナハトヴァールが実体化を完了した。黒い塊の周りから、次々と真っ黒な魔力が立ち上っていく。
「始まる」
クロノ君がそう呟くと、はやてちゃんが言葉を続けてきた。
「夜天の魔導書を闇の書と呼ばせた防衛プログラム。それと、防衛プログラムを常時利用する為の追加ツール「ナハトヴァール」の侵食暴走体。……闇の書の、闇」
「そして、夜天の書の防衛プログラムである私が絶望と諦観に沈んでいれば、あの様になっていただろう」
平行世界の防衛プログラムであるというリヒトさんがそう言うと、リインさんがそれをすぐに否定してきた。
「違いますよ、リヒト。あの様になっていたのは、むしろ私の方です。数百年に渡って絶望しかなかった筈の運命に一人立ち向かい、兄上殿に救われるその時まで戦い抜いた貴方は、闇夜にあってもけして潰える事の無い夜天の光そのものなのですから」
「リイン……」
リインさんの言葉にリヒトさんが言葉を失っていると、ユーリちゃんもまたリインさんと同じ様に闇の書の闇がリヒトさんの可能性である事を否定する。
「そうです。それに、悪意に染められて
ここで、リインフォースさんがはやてちゃんに戦いを始める様に促してくる。
「参りましょう、我が主。悪意の闇に囚われた私達を救いに来てくれた真なる夜天の守護騎士と彼を迎えに来た夜天の王達が、心置きなく本来あるべき世界へと帰る事ができる様に」
そこで、はやてちゃんはリインフォースさんの言葉に応じる形で呪文を唱え始めた。
「そやな。ほんなら、行くで! 夜天のひか……」
……んだけど、それを途中でやめてしまった。
「っと。これはあかんな。私にとっても、夜天の光はリインフォースを救ってくれたリヒトさんや。それを「集え」言うんは、流石におかしい。そやからこうしようか。……夜天を彩る数多の叡智よ、星となりて我が手に集え。祝福の風、リインフォース。セェット、アップ!」
すると、リインフォースさんが光の球へと姿を変えてはやてちゃんの胸の中へと入っていった。そして、はやてちゃんのバリアジャケットがその形を変えていったんだけど。
「んっ? シュベルトクロイツはともかく、騎士甲冑はわたしのと結構
はやてさんの言った通り、さっきはお揃いだった筈のはやてさんのバリアジャケットとはかなり形が変わっていた。……何だか、私のバリアジャケットの色を黒系統に変えてスカートの裾もレース状にした物の上から丈の短いコートを羽織っている様な感じだった。それに、頭にはベレー帽を被っているのも特徴だ。因みに、髪の色も変わっている。すると、はやてちゃんがタネ明かしをしてきた。
「流石に今のままやと完全に丸被りやからな。それで、なのはちゃんのを参考にデザインを少し変更したんよ」
……それはそれで、ちょっと恥ずかしいかも。
私がちょっと照れていると、二つの黒い塊が割れて防衛プログラムとナハトヴァールがその姿を露わした。と言っても、完全に形が一緒だから私には全く見分けがつかない。すると、リヒトさんは向かって右側の方へと向かい出し、私達にはもう一方を任せると伝えてきた。
「ナハトヴァールは我々が担当する! 防衛プログラムは任せたぞ!」
つまり、リヒトさん達が向かった右側の方がナハトヴァール。という事で、最終決戦における私達の相手が決まった。
……防衛プログラム。必ず、乗り越えてみせる!
最初はユーノ君とアルフさん。
「ケージングサークル!」
「チェーンバインド!」
ユーノ君が防衛プログラムを光の帯で囲っていき、アルフさんのチェーンバインドがその光の帯に防衛プログラムを縛り付ける。でも、防衛プログラムが激しく体を動かすとアルフさんのチェーンバインドは次々と千切れてしまった。ただユーノ君のケージングサークルは未だ健在で、防衛プログラムをその場に固定していた。
……ユーノ君、やっぱり凄い。
ここで防衛プログラムが何本も長い触手の様な物を伸ばすと、そこから黒い魔力で砲撃してきた。私達は散らばって回避すると、そのまま防衛プログラムへと攻めかかる。
「先陣突破! ヴィータちゃん、なのはちゃん、お願い!」
「オウ!」
そして、同じく指名された私に声をかけてきた。
「ちゃんと合わせろよ。高町にゃ、なにょ、にゃのは、なにょは……」
……んだけど、いくら何でもそれはあんまりだった。
「ヴィータちゃん。わたしの名前、まだ上手く発音できないんだね……」
ヴィータちゃんと二回目に戦った時、私は自分の名前を伝えたんだけど、ヴィータちゃんは「なのは」という名前を上手く発音できなかった。そして、今回もダメだったみたいだ。すると、ヴィータちゃんは顔を真っ赤にしながら私に怒鳴りつけてきた。
「う、うるさい、うるさい、うるさ~い! とにかく! お前はアタシに合わせりゃいいんだ!」
「うぅっ、解ったよ。……わたしの名前、そんなに発音が難しいのかなぁ?」
私が名前を上手く呼んでもらえない事に落胆しながらもヴィータちゃんに合わせる事を承知すると、ヴィータちゃんはそっぽを向いたまま、小さな声で初めて会った時の事を謝ってきた。
「それとその、なんだ。初めて会った時にいきなり襲って、……ゴメン」
この瞬間、ヴィータちゃんに対して心の何処かで抱えていた蟠りは嘘の様に消えていった。
「ウン! ちゃんと謝ってくれたから、もういいの!」
「……アリガト」
ヴィータちゃんは小さな声で私に感謝を伝えると、私の前に出て防衛プログラムへと突っ込んでいった。
「やるぞ、アイゼン!」
『Gigant Form』
ここでヴィータちゃんがカートリッジシステムを起動すると、グラーフアイゼンはヴィータちゃんと同じ位の大きさに変わった。……明らかに破壊力重視のフォームだけど、その分動きが少し遅くなっている。だから、私がやるべき事はヴィータちゃんの援護だ。
『Don't you use Divine Buster?』
そこでレイジングハートからそう尋ねられたけど、今はディバインバスターを使うときじゃない。リヒトさんから「たとえ得意であっても、砲撃魔法は無暗に撃つな」と注意されているのもあるけど、それ以上にリインフォースさんを相手に皆で戦った事で解った事が一つある。
「うん。だって、今必要なのはそういう強い魔法じゃないから。それにわたし、わたし一人だけで頑張るよりも皆で一緒になって頑張る方がいいって、解ったから!」
『OK, Master』
レイジングハートも納得してくれた様で、私はヴィータちゃんの援護を始める。
「アクセルシューター、バニシングシフト!」
私はアクセルシューターの新モードを起動し、砲撃を放つ触手を次々とターゲットに収めていく。
『Lock on』
そして、制限いっぱいまでロックすると、私に向かって放たれた攻撃を自前の防御障壁でやり過ごた後、一気にアクセルシューターを放つ。
「シュート!」
私のアクセルシューターは寸分違わず触手を次々と撃ち落としていく。その隙に防衛プログラムの懐へとヴィータちゃんが入り込んだ所で、ヴィータちゃんに向かって攻撃が二発飛んで来ているのが見えた。私はとっさにアクセルシューターを放ってそれを撃ち落とすと、ヴィータちゃんがこっちを見てきたので軽く微笑んで応えた。
「アイツ、やっぱやるな。名前、ちゃんと言えるように練習しなきゃな。……次は、アタシだ!」
ヴィータちゃんがちょっと嬉しい事を言ってくれた後、カートリッジシステムを再び起動させる。すると、今までヴィータちゃんと同じ位の大きさだったグラーフアイゼンが十倍くらいに巨大化した。
「轟天爆砕! ギガントシュラーク!」
ヴィータちゃんの叫びと共に振り下ろされる超巨大なハンマーは、防衛プログラムが展開している障壁を破壊した。でも、その内側にもう一枚障壁を張っていた様で、ヴィータちゃんの攻撃はそこで止まってしまった。それを見たシャマルさんは早速次の指示を出す。
「次! シグナム、テスタロッサちゃん!」
指名されたシグナムさんは軽快な動きで防衛プログラムの攻撃を躱しながら海面スレスレを進んでいるフェイトちゃん近づいていき、声をかける。
「行くぞ、テスタロッサ」
「ハイ、シグナム」
二人はそれだけ言葉を交わすと、フェイトちゃんはフルドライブのザンバーフォームにしたバルディッシュを思いっきり振り抜いた。
「ハァァァァッ!!」
それによって斬撃の衝撃波が前へと飛んでいって触手を薙ぎ払ったけど、障壁を破るまでには至らなかった。フェイトちゃんはそれを確認すると防衛プログラムの上空へと舞い上がり、シグナムさんのいる所から向かい側へと移動し始めた。この時、私達は二人の援護の為に防衛プログラムの側を飛び回る事で囮になっている。
こうしてフェイトちゃんが移動している間、シグナムさんはレヴァンティンの柄尻に鞘を取り付けると、そこでカートリッジシステムを起動させた。すると、レヴァンティンは剣から弓へとその形を変えてしまった。そして、シグナムさんがゆっくりと弓となったレヴァンティンの弦を引くと、魔力が集まって一本の矢を作り上げた。……まるで、リヒトさんのドラッヘボーゲンの様に。一方、シグナムさんの向かい側に到着したフェイトちゃんはそのままバルディッシュを構える。
「翔けよ、隼!」
『Sturmfalken!』
そして、シグナムさんがカートリッジを二発起動させると同時に、フェイトちゃんも魔法を発動した。
「撃ち抜け、雷刃!」
『Jet Zamber』
二人はタイミングを合わせると、まずシグナムさんが魔力の矢を放った。この魔力の矢は鳥を象った炎を纏って障壁を撃ち抜くと、防衛プログラムに着弾して障壁の中で爆発した。それに続く形でフェイトちゃんは雷を纏った魔力の刃を巨大化させると、真っ直ぐに振り下ろす。
「ケージングサークル、解除!」
ここで、ユーノ君がこの時まで維持していた魔法を解除するのと同時に、フェイトちゃんの攻撃が二枚目の障壁ごと防衛プログラムを切り裂いた。すると、防衛プログラムの体の一部が崩れ始める。これを見たアルフさんは思わず、ある言葉を口にしてしまった。
「やった……?」
でも、それを否定した上で畳みかける様に言って来たのは、クロノ君だった。
「まだだ! まだ防衛プログラムの魔力は死んでいない! だから、障壁が回復する前に畳みかけるんだ!」
このクロノ君の指示を受けたシャマルさんは、ここではやてちゃんを指名する。
「それなら、はやてちゃん!」
すると、防衛プログラムの上空にいたはやてちゃんは魔法の準備を始めた。……これは後で聞いたんだけど、実はこの時、はやてちゃんだけじゃなくリインフォースさんも一緒に呪文を唱えていたとの事。
「彼方より来たれ、やどりぎの枝」
『銀月の槍となりて、撃ち貫け』
「石化の槍!」
『「ミストルティン!」』
二人の呪文詠唱が終わると同時に、七本の白い魔力の槍が防衛プログラムに向かって放たれ、次々と突き刺さっていく。そこから防衛プログラムが石化していき、とうとう体中が石になってしまった。そして、そのまま海の中へと落ちていく。
「これで、暫くは時間稼ぎができるな。今の内にエターナルコフィンの準備を始めよう」
クライドさんはそう言うと、その手に持ったデバイスに魔力を注ぎ込み始めた。
「こっちはどうにか順調に進んでいるな。では、リヒト師匠達の方は……?」
そう言ってクロノ君がリヒトさん達の方を向くと、クロノ君の顔が引き攣った。
「……リヒト師匠。お願いですから、せめてご家族だけでも自重させて下さい」
クロノ君の口からそんな言葉が飛び出して来たので、私もそちらを向いた。……クロノ君の気持ちがよく解った。
「夜天の主に集いて災禍を遮る雲の一騎。盾の守護獣、ザフィーラ! 貴様には、攻撃はおろか身動き一つさせはせん! 覇を阻むは、鋼の軛!」
ザフィーラさんは以前も使った事がある鋼の軛という束縛魔法でナハトヴァールの本体や全ての触手を貫いていて、ナハトヴァールがいくら暴れても鋼の軛はビクともしない。……それにザフィーラさん、何だか凄く生き生きしている。
「夜天と朝日の間に生まれし紫天の子、ユーリ・エーベルヴァイン。砕け得ぬ闇として重ねた過ちにけじめをつける為、一生懸命頑張ります! ……セイバー!」
そこでユーリちゃんがとんでもない長さの炎の剣を両手から伸ばすと、そのまま動けなくなったナハトヴァールを上下に挟み切ってしまった。……しかも、ヴィータちゃん・シグナムさん・フェイトちゃんの三人がかりで破壊した二枚重ねの障壁を一人で破壊した上で。
「夜天の誓約の元、主たる王に不朽の祝福を齎す叡智の風。リインフォース・ツァイトローゼ・フォン・ナハトヴァール。同じ名を冠しておきながら夜天の誓約を穢す者よ、去れ! ストライクノヴァ!」
そして、リインさんは頭上に右手を掲げると、そこから大きさはアクセルシューターぐらいしかないけど見ているだけで凄く熱そうな火の球を作り出した。そして、そのままユーリちゃんによって切り離されたナハトヴァールの下半分に投げ付ける。
……見てない。私は見てないの。あんな小さな火の玉が触れただけで、あんな大きなナハトヴァールの下半分が文字通り消し飛んだ所なんて、絶対に見てないの。
「あっちはもうすぐ終わりそうだね。しかも、リヒトさんもはやてさんも手を出す必要が全くなさそうだし。……リヒトさん達が敵でなくて、本当に良かったよ」
冷や汗を流しながらそう語るユーノ君に、私は心底同意した。
Side end
いかがだったでしょうか?
最終決戦の模様は以下の通り。
リリカルチーム:ザフィーラが抜けているものの、おおむね順調。
夜天光チーム:消化試合。しかもまもなく終了。
では、また次の話でお会いしましょう。