赤き覇を超えて 外伝 夜天光の騎士   作:h995

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2019.1.19 修正


エピローグ

Overview

 

 リヒト達が元の世界へと帰っていくと、はやては何処か寂しげに言葉を発した。

 

「……行ってもうたな」

 

 その言葉に反応したのは、フェイトだった。

 

「ウン。でも、いい人達だった。次に逢えるのは相当後になるけど、けして忘れる事はないと思う」

 

「そやな、フェイトちゃん」

 

 はやての相槌を聞いて、それならなのははどうだろうかとフェイトがなのはの方を向いた時だった。

 

「なのは、泣いているの?」

 

 ……なのはが再び涙を流しているのに気付いたのは。

 

 そして、フェイトに尋ねられたなのはは自分の気持ちを正直に話し始める。

 

「うん。リヒトさんとお別れして、今気付いたの。お父さんやお兄ちゃん、それにユーノ君やクロノ君とも違う。とっても暖かくて、でも切ない気持ちに。わたし、女の子としてリヒトさんの事が好きだったんだって。……わたし、本当にバカだよ。目の前で別の人にプロポーズして受け入れられたのを見た時には全然解らなくて、お別れの挨拶の時に励まされて、諭されて、そうしてお別れした後で、初めてその人の事が好きだったって気づいちゃうなんて」

 

 なのはは自分自身の気持ちに鈍感だった事に気付いて、もはや呆れる事しかできなかった。それにも関わらず、この後に出てきた言葉は負け惜しみややせ我慢の類のものではなかった。

 

「でも、だからって全然寂しくはないの。だって、とても大切な事をいっぱいリヒトさんは教えてくれたから。本当に大切な事を見失わない様にする事。誰かと解り合うには、相手の想いを尊重して、その上で己の意志を崩さない事。そして、自分の夢を叶えられるのは自分だけだけど、時には人に頼る事も必要だって事を。……だから、リヒトさん。ユーリちゃんの問題が解決したら、約束をちゃんと守って下さいね。わたし、その時までにリヒトさんに胸を張って会える様に頑張りますから」

 

 そこにいたのは、幼心に抱いた初恋の終焉を自覚して、それでも前に向かって踏み出そうとしている一人の少女だった。

 

 なのははこの後、正式に時空管理局に入局するが別の平行世界の様に無理を重ねる事はなく、更に兵藤はやてと魔法に関する情報を共有した八神はやての協力を得て修得したフルムーンレクトも相まって、絶望を希望に変える真のエース・オブ・エースへと成長していく。

 やがて、エース・オブ・エースとは別に「管理局の最後の希望」の二つ名をも得る事になったなのはは、時空管理局の闇が生み出した無限の欲望とその娘達と対峙する事になる。

 

 ……そして。

 

Overview end

 

 

 

Side:高町なのは

 

「それで、その後どうなったの? なのはママ」

 

 闇の書の闇ともいうべきナハトヴァールとの最終決戦が終わり、当時のはやてちゃんの家にリヒトさん達が泊まる事になったところまで話すと、今から二年前に紆余曲折を経て私の娘となったヴィヴィオが興味津々といった感じで続きを急かしてきたので、私はその後で起こった事についてヴィヴィオに話し始めた。

 

「色々大変だったみたいだよ。はやてちゃんの方は病室に戻ってみると、偶々病室に来ていた石田先生に見つかっちゃって散々叱られたみたいだし、クロノ君とリンディさんも当時拠点にしていたマンションの部屋でクライドさんと一晩中語り明かしたみたい。私の方も玄関で待ち構えていたお父さん達に問い詰められて、とうとう魔法について白状しなくちゃいけなくなったから、もう大変。……それで、一晩明けた次の日にも色々あったの」

 

「色々って?」

 

 ヴィヴィオが首を傾げて尋ねてきたから、私は翌日にあった出来事を語っていく。

 

「シグナムさんがリヒトさんに本人曰く「改めて」弟子入りして少しだけ剣の手ほどきを受けたり、ダメだって解っているのにシャマルさんがあえてリヒトさんに告白して見事玉砕しちゃったり、その日は雪が降って積っていたからヴィータちゃんがユーリちゃんと一緒になって遊んだり、はやてさんとはやてちゃんがそれぞれの魔導書に記載されている魔法に関する記録を共有したり、ホントに色々あったんだよ。それにヴィヴィオもよく知っているなはとについても、一つになって狐に生まれ変わった防衛プログラムとナハトヴァールの新しい名前を皆で話し合って「なはと」にしようって決めたら、はやてさんが「それなら、なぁちゃんやな」って言っちゃったんだ。そうしたら、それを聞いたなはとが凄く喜んじゃって、その後「なぁちゃん」以外の呼び方になかなか反応しなくなっちゃったから、「なはと」で反応してもらうまで本当に苦労したの。それで最後に、リヒトさん対はやてさんとリインさん、そしてユーリちゃんを除いた私達全員という組み合わせで模擬戦をしたの。そうしたら……」

 

「そうしたら?」

 

 ヴィヴィオが期待に目を輝かせて私を見ているけど、対戦結果が余りに酷いだけにかなり言い辛い。でもだからと言ってうやむやにはできないから、なけなしの勇気を振り絞って対戦結果をヴィヴィオに伝える。

 

「……開始一分で全滅しちゃった。というか、実際は十秒も経たない内に私達はやられちゃって、リインフォースさんとユニゾンしたはやてちゃんがかろうじて十秒持ったってところ。そして残ったザフィーラさんとクライドさんのコンビで何とか一分持たせたって言った方が正しいかな。結局の所、ザフィーラさんが言った「長が本気を出せば俺など一分も持たん。お前達では十秒持てば奇跡だろう」って言葉は真実だったの」

 

 デバイスにカートリッジシステムを導入した事で初めて模擬戦した時より私もフェイトちゃんも強くなっているし、はやてちゃん達も一緒で戦力は倍増以上している筈なのに、一分しか持ち堪えられなかった。それは私達が強くなった分よりリヒトさんがずっと強くなっていたのか、それとも私達の成長を認めて手加減をやめてくれたのか。……たぶん、両方だよね?

 

「なのはママ達が総出で掛かっても一分で全滅する光景って、ちょっと想像できないなぁ。皆の中でも一番強いザフィーが負けている光景が特に……」

 

 ……ヴィヴィオはザフィーラさんを凄く慕っている。

 

 それは二年前、私が仕事でヴィヴィオの面倒を見れない時に代わりに面倒を見てくれたり、自分を目当てに攻め寄せて来た敵の大軍から最後まで自分を守り抜いてくれたりしたのがザフィーラさんだったからだ。更に、ザフィーラさんの事を明かした後に一度総当たりで模擬戦をした結果、ザフィーラさんが全勝優勝して身内最強である事を示した事で決定的となっている。

 今もストライクアーツに興味を持ったり、防御系のレアスキルである「聖王の鎧」があるにも関わらず主に防御魔法や拘束魔法を熱心に練習しているのは、実は私と交わした「強い子になる」という約束の他に盾と謳われるザフィーラさんに憧れての事である事を私は知っている。

 

「でも、長さんの話をしてる時のザフィーの誇らしげな表情やなのはママの尊敬してるって表情を見たら、解るよ。長さんはとっても凄い人なんだって」

 

 そんなヴィヴィオが、リヒトさんの事を詳しく知った事で尊敬の念を抱いてくれる。……血は繋がっていなくても、やっぱり私達は親子なんだなって、そう思えてくる。

 

「うん、そうだよ。だから、私は今でもリヒトさんに憧れているの。それに、リヒトさんの主であるはやてさんにもね。でもリヒトさんはもちろん、はやてさんの方はもう十歳くらい私が年上になっている筈なんだけど、未だに勝てる気しないなぁ」

 

 十年以上の間、皆と一緒にいっぱい努力して、現場で色々な経験を積んで、立ち塞がる困難を幾つも乗り越えてきた。その結果、ザフィーラさんとは何とか勝負ができる様になったけど、それだけにザフィーラさんより格上であるリヒトさん達にはまだ届いていないって、そう断言できてしまう。

 でもだからこそ、少しでもリヒトさん達に追い付きたい、できれば追い越したいって思えてくる。私の中にある不屈の心は、諦める事をまだ認めていないのだから。

 

「なのはママが憧れている人達かぁ。……私、会ってみたいなぁ」

 

 そんな私の目標であるリヒトさん達にヴィヴィオが会いたいと口にした所で、私は向こうの世界ではもうすぐ一年が経つ事を思い出した。そして、お別れの時に交わした約束の事も。

 

「そう言えば、向こうはもうすぐ一年か。……だったら、もうすぐ会えるかもしれないよ。ヴィヴィオ」

 

「えっ? 本当?」

 

 ヴィヴィオが私の言った事に驚いて反射的に確認してきたから、私は頷いてみせた。

 

「ウン。だって、約束しているから。ユーリちゃんの問題が解決したら、一度こっちに来るって」

 

 ですよね? はやてさん。……リヒトさん。

 

「わぁっ……! 私、すっごく楽しみ!」

 

 ヴィヴィオがはやてさん達に会えるかもしれないという期待に心躍らせている中、私もまたそう遠くない内に憧れの人達と再会する事への期待に胸を膨らませていた。

 

 ……リヒトさん。

 

 私、大人になりました。今では、血は繋がらないけどヴィヴィオという大切な娘もいるお母さんです。それに、リヒトさんの知っている人達はもちろん、知らない人達とも言葉を重ねて仲良くなって、そして力を合わせて色々な困難を乗り越えてきました。

 

 ……今なら、堂々と胸を張ってリヒトさんに会う事ができる。

 

 フェイトちゃんも、はやてちゃんも、そして私も、そう断言できます。だから、ちゃんと約束を守って、必ず会いに来て下さいね。

 

 私の憧れの、夜天光の騎士さん。

 

Side end

 




いかがだったでしょうか?

これにて「赤き覇を超えて外伝 夜天光の騎士」は終了でございます。

ご愛読、真にありがとうございました。
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