ジュエルシードを巡る事件から三ヶ月後に向こうの世界の主上であるはやてと湖の騎士シャマルと出くわしてしまったと先程語ったが、それには訳がある。実は、ミッドチルダに渡ってから半月程経った後になのはとユーノの様子を見に行ったのだが、その際に主上が兵藤家へと引き取られる前に住まわれていた家のある場所にも行ってみたのだ。そこで見た、こちらでもあり得たかもしれぬ光景は今でもよく覚えているよ。
……はやての周りに
「平行世界の主上もまた夜天の書、いやあの分では闇の書に選ばれていたのか。しかし、こちらの雲の騎士達はモチーフとなった騎士達の性格を発現しつつある。これなら殺戮と破壊に走る事もないだろう。静かに、そして穏やかに暮らしている今は接触を避けた方が良いな」
今はあちらの夜天の主従との接触を避けるべし。そう判断した私はそれ以降、はやての様子を窺う事もしなかった。下手に私が近付く事で、はやてが魔法に関わってしまうのを避ける為だ。そうして三月程経った後、私はここ数年で起こった出来事を調べる為に海鳴市の市立図書館に入った。もし、こちらの世界と同様に世界が動いているのであれば、ヒドゥンも同様に襲来するのではないかと思ってな。
「フム。どうやら年代で言えば、こちらの世界は私達の世界より二十年程前の様だな。そうなると、私の知識では当時の世相や政治経済が私達の世界と一致しているのかの判断は難しいか。ただ、魔法体系そのものが全く違う上にこちらのなのはの魔法に対する適性も向こうとは全くの別物である以上、こちらの世界の者達だけでヒドゥンを抑え込むのは難しいだろう。少々情けないが、二十年の後にヒドゥンが襲来しない事を祈るしかないな」
結局、時間のずれが想像以上に大きい事が解っただけであったが。そうしてヒドゥン襲来の可能性について判別不能と見切りをつけた私は新聞を元の位置に戻した後、そのまま図書館を出ようとした時だった。
「……アレは、こちらの主上か?」
車椅子に座っているが故に手の届かぬ場所にあった本を返そうと懸命に手を伸ばしているはやての姿を私は見てしまい、そして愕然とした。
……平行世界の同一存在とは言え、主上のその様な姿を見て見ぬ振りなどできる筈もない。
私は内心決意を固めると、はやての元へと向かったのだ。
Overview
「あ、ありがとうございます。お陰で助かりました。本を片付けようにも手の届かん場所にあったのを付き添いに取ってもらったモンやったから、わたし一人じゃどうにもならんかったんです」
見知らぬ大人の男性に本を片付けてもらった車椅子の少女 ―八神はやて― は恐縮しながらも丁寧に感謝を伝えた。すると、その大人の男性 ―リヒト・ツァイトローゼ― は当然の事だと伝えた上で、はやてに一つ助言をした。
「いや、その様な体だ。今の様に手助けが必要ならば、手助けするのは当然の事だよ。むしろ、本当にどうしようもない時には、見知らぬ
はやての中にあった同情を嫌がる想いを看破した上でのリヒトの忠告を聞いたはやては、その眼を驚きで見開いた。そして、自分の胸に手を当てて、リヒトの忠告を少しずつ噛み締めていく。
「……本当にどうしようもない時には、他人に助けを求める勇気を持て、か。それだけやったらただの甘ったれになってしまうんやけど、その後の言葉で
はやてが年上のリヒトに敬語を使わなかった事に対して謝罪するが、リヒトは特に気にしていない事をはやてに伝える。
「いや、それは構わないよ。私もそこまで気にしている訳ではない」
……それも当然だろう。如何に平行世界とはいえ、リヒトにとってはやては忠誠を尽くすべき主なのだから。むしろ、リヒトの方がボロを出さない様に必死で言葉使いを普通の物にしていた程だった。すると、リヒトに対して尊敬の眼差しを向け始めたはやては、自分の名前をリヒトに名乗った上でリヒトに名前を教えてもらう様に頼んできた。
「何や、カッコいい大人ってこんな人を言うんやなぁ。そうや、わたしは八神はやてと言います。はやてと呼んで下さい。それで、お名前を教えてもらってもえぇですか?」
(さて、どうしたものか)
リヒトがそう内心で悩んでいる時だった。
「あ、あのう……」
金髪の女性が遠慮がちに二人に声をかけて来た。年の頃は二十歳を少し超えた程度で、おっとりとした雰囲気を纏っている。その女性を確認したはやては親しげに声をかける。
「あっ、シャマル。戻ってきたんやな。どうやらわたしの付き添いが戻ってきたみたいです。シャマル。この人はな」
はやてがリヒトの世話になった事をシャマルと呼んだ女性に話そうとすると、彼女はそれを遮って既に知っている事を伝えた。
「知ってますよ、はやてちゃん。手の届かない所にあった本を戻すのを、手伝ってもらったんでしょう?」
シャマルから一部始終を見ていたと言われたはやては、リヒトからの助言に従って助けを求める事を伝える。
「何や、見とったんか。それなら、その後の話も聞いとったな。……シャマル。わたし、もう皆に遠慮したりせぇへんよ。これからは、本当に助けて欲しい時にはちゃんと皆に頼むし、辛かったり痛かったりする時もちゃんと言うから。そうした方が、皆が動きやすうなるんやろ?」
はやての中から、自分達に対する遠慮が消えた。それを悟ったシャマルは感極まりつつも、はやての言葉を肯定した。
「はやてちゃん……! えぇ、そうよ。その通りよ」
その様な二人の様子を見届けたリヒトは、はやてと雲の騎士達との間に確かな絆がある事に安堵した。そして、口元に笑みを浮かべつつ、この場を去る事を二人に伝える。
「では、私はこれで失礼しよう」
すると、シャマルがリヒトを呼び止めてその名前を教える様に頼んできた。彼女にしてみれば、リヒトは辛い事や悲しい事を一人で抱え込む癖のあるはやてを変えてくれた恩人である。その恩人の名前を聞かないという選択肢など、彼女にはなかった。
「あっ、待って下さい。せめて、お名前だけでもお聞かせ願えませんか? 私は、シャマルと言います」
自らの名を名乗った上で、名前を尋ねられた。ここまでされて名を名乗らないのは流石に無礼になる。そう判断したリヒトは己の名を二人に教える事にした。
「……リヒト。リヒト・ツァイトローゼだ。私の名前であるリヒトには、ドイツ語で「光」という意味がある。この名前には、いつまでも心に光を絶やさない様にという願いが込められているのだ」
いつまでも心に光を絶やさない様に。はやては、リヒトの名の由来を聞いて感じた事を素直に伝える。
「素敵な人ですね、その名前を考えた人は」
すると、リヒトははやてのその言葉を肯定した。
「君の言う通りだよ、はやて。……だからこそ、胸を張って言えるのだ。この名前は、私の誇りだと」
何ら恥じる事無く堂々と胸を張って語るリヒトに、はやては黒い鎧甲冑と赤い
(何や、まるで何処かの国の立派な騎士さんみたいやな)
先程の幻視もあって、はやてはリヒトの事を内心でそう評した。
それから程無くリヒトと別れ、はやて達は自分達の家へと帰る事にしたのだが。
「……マル。シャマル!」
シャマルははやてからの呼び掛けにハッとなり、何かあったのかを尋ねてみた。
「はやてちゃん、何かあったの?」
すると、はやては呆れた様な表情でシャマルがどんな状態だったかを話し始めた。
「シャマル、それはこっちの台詞や。さっきからずっと呼んどるのに、ちぃとも気付かんでボーっとしとったで。お陰で、もう少しでシャマルが電柱に正面衝突する所やったんやで?」
(仮にも守護騎士である私が、主であるはやてちゃんの側にいながら放心状態になってたなんて)
はやてから自分が放心状態だった事を聞かされたシャマルは、守護騎士としては致命的とも言える失態を犯した事で完全に血の気が引いてしまった。一方、はやては普段と全く違う様子のシャマルにある事を尋ねてみた。
「なぁ、シャマル。……ひょっとして、リヒトさんに惚れてしもうたんか?」
はやてから思ってもみなかった事を尋ねられたシャマルは思わず動揺してしまい、受け答えがしどろもどろになってしまう。
「えっ! そ、そんな事は……」
……だが、動揺しているシャマルは気付いていなかった。傍から見ても明らかな程に、自分の頬が赤みを帯びている事に。そして、それが意味する所を理解できない程、はやては鈍くも幼くもなかった。
「……怪しいなぁ。これは家に帰ったら、すぐにでも八神家緊急家族会議を開かんとアカンなぁ。議題はズバリ「シャマルに春が来た! お相手はカッコいい大人のリヒトさん!」で決定や!」
はやてはそう宣言すると、一刻も早く家に帰る為に車椅子のスピードを上げた。
「は、はやてちゃん! ちょっと待って! 違うの、違うのよ~!」
シャマルははやての誤解を解く為に、急いではやての後を追った。
その後、夕食が済んだ後にはやては八神家緊急家族会議を開催し、その日の図書館であった出来事の一部始終を他の家族に伝えた。他の家族は、最初こそ余りの事態に戸惑っていたものの、はやてがリヒトの助言に従ってもう家族に遠慮はしないと宣言した事でリヒトの事を好意的に受け入れ始め、最終的にはシャマルの恋を応援するという結論に至った。……その間、シャマルは必死に誤解であると訴え続けたが、それを言葉通りに受け取る者は一人もいなかった。
「私、本当にどうしちゃったのかしら……?」
やがて就寝の時間となり、自分に割り振られた部屋へと入ったシャマルは、自分の胸に宿った淡い何かに一人戸惑っていた。
Overview end
図書館ではやてとシャマルに出くわした時、私は愕然としたと言ったな。……気付いてしまったのだ。はやての体が、最初に確認した時よりもかなり悪化していた事に。
闇の書がはやての体を蝕んでいる事は、一目見てすぐに解った。だが、その時は命に別状はない上に体への侵食が進行する様子も見られなかった事で安心していたのだ。だが、わずか三月程で事態は急変した。おそらく雲の騎士達を実体化し続ける為に魔力を常に使用する事で、体への侵食速度が一気に上がったのだろう。
あのままではもって三月だと判断した私は、図書館を出た後ですぐさまミッドチルダに戻り、夜天の書に関する情報の徹底調査を始めた。私の知る夜天の書と向こうの世界の夜天の書の類似点と相違点を洗い直し、その上で闇の書と化した原因を突き止め、元の夜天の書へと回帰させる。その際には、雲の騎士達が消滅する事のない様にする。その為の調査だ。
……唯の感傷である事は、当時の私も解っていた。だが、それでも心を持った雲の騎士達を見捨てる選択肢など、私には無かったのだ。
「我ながら情けない話だ。あの時点で既に割り切っていなければならなかった筈なのに、雲の騎士達を救えなかった事を引き摺っていたのだからな。だが、ヒドゥン襲来の時に主兄殿の倍加の蓄積が終わるまでの時間稼ぎを成し遂げられたのは、実は雲の騎士達のお陰なのだ。その恩を忘れる事など、私にはできなかった」
私がヒドゥン襲来時における雲の騎士達の献身について触れると、リインは首を傾げてしまった。
「リヒト?」
このリインの表情で、リインにはおろか主上や主兄殿にもこの事を話していなかった事に気付いた私は、当時の私に何があったのかを話し始めた。
「リイン。外からでは解りにくい為にお前が気付かなかったのも無理はないが、私が限界を超えてドンナーシュトラールを放ち続けられたのは、私が解放された時に備えて密かに構築していた雲の騎士達の人格プログラムが私とカイゼルシュベルトに限界を超える力を与えてくれたからだ。そして、全ての力を使い果たしたカイゼルシュベルトが砕けた時、人格プログラムもまた私の元から失われてしまった。……結局、私は雲の騎士達を二度も見殺しにしてしまった訳だ。だからこそ、三度目など絶対に認めない。今度は必ず救ってみせる。当時の私はそう決意していたよ」
私がそこまで話すと、リインは私に頭を下げて詫びて来た。
「リヒト、申し訳ありません。私がもっとしっかりしていれば、貴方にその様な重荷を背負わせる事など無かった筈なのに……」
少しばかり涙声になっていたリインに対し、私はその肩にそっと手を置き、自分も同じである事を伝えた。
「それを言い出せば、そもそも防衛プログラムである私が悪しき主の姦計に嵌まって封印などされなければ、という事になってしまう。……気にするな、などと言うつもりはない。私自身、同じ事を言われても返事に困るからな。だから、私はお前にこう言おう。重荷を背負ったまま、共に歩みを進めていこうとな」
私がそう言うと、リインは下げていた顔を上げた後、とても優しい笑みを浮かべた。
「そういう貴方だからこそ、私は妻になる事を望んだのですよ。リヒト」
私にとっては世界で最も美しいと言える妻の微笑みを見て安堵した私は、話を再開する事をリインに伝えた。
「そうか。……では、話を再開しようか」
「えぇ」
リインの承諾を得た私は話を再開した。
……後に「闇の書事件」と呼ばれる事となる事件の始まりであった、魔導師襲撃事件。その標的としてなのはが狙われた時の事を。
Overview
リヒトが平行世界のはやてとシャマルの二人と言葉を交わしてから三ヶ月後。
リヒトは魔法の訓練を続けるなのはの様子を見る為、海鳴市に来ていた。リヒトは半月に一度の間隔で海鳴市を訪れる様にしていたのだが、この時はユーノがフェイトの裁判に関係者として呼ばれてミッドチルダに出向いていた事から、一週間前に訪れていたにも関わらずにこの地に訪れていたのだ。
……この時のリヒトの心中は、けして穏やかなものではなかった。
そもそも、リヒトは弟子となったクロノの伝手で無限書庫と呼ばれるアナログデータベースを使わせてもらい、元の世界に帰還する手立てを探していた。しかし、はやて達と言葉を交わして以降は帰還の手立ての探索を一時中断し、夜天の書と闇の書に関する情報の収集を行っていた。
リヒトは夜天の書の防衛プログラムである事から、流石に管制プログラムのリインフォース程ではないものの、その情報処理能力は群を抜いている。だが、それでも無限に情報を集め続ける為に情報が未整理のまま放置されている無限書庫で望んだ情報を探し出すのは一苦労だった。
そうして得られた結果として、まず平行世界の闇の書の本来の名称は夜天の魔導書と少し異なっているだけで、基本的な機能は元の世界の夜天の書とほぼ同じである事が確認された。しかし同時に、魔力の生成方法が元の世界と異なる事もあってか、蒐集については一定以上の魔力を吸収するのではなく、リンカーコアと呼ばれる魔法機関を吸収する事で魔力と魔法を蒐集していた。こうした蒐集方法の違いを始め、元の世界との相違点が少なからず存在していたのだ。
ただ、こうした元の世界との相違点の中に救いがあった。雲の騎士達が夜天の書に搭載された時期が闇の書と化す前だった事で暴走の原因になっていなかった事だ。しかし、雲の騎士の搭載以降に防衛プログラムを利用した管制人格の強化プログラムを強引に追加した記録が見つかり、これが不適合を起こして暴走の切っ掛けとなっていると思われた。その上、ちょうどこの二つの追加機能が搭載される間にも何らかの追加機能を搭載されたと思われる記録の痕跡が見つかった。どうも念入りに記録を抹消した様で詳細については解らなかったが、平行世界の夜天の書である夜天の魔導書が暴走したのはこうした過剰な追加機能の搭載が最大の原因である事はほぼ間違いなかった。
その為、仮にフルムーンレクトを使用した場合、万全の状態がどの時点に当てはまるのか、また怨念や怨霊といったオカルト的な要素がない場合、フルムーンレクトが本当に有効なのか、その判別がリヒトには不可能だった。
……だが、それ以上にリヒトの心中を穏やかならざるものとしていたのは、ここ二ヶ月の間で連続して発生している魔導師襲撃事件だった。それだけなら連続通り魔事件として片付けられたのだが、被害者である魔導師のリンカーコアが著しく消耗している事から、リヒトは雲の騎士達が再び修羅の道を歩み始めた事を悟った。
「馬鹿者め。自分達の行いが敬愛する主を死に追いやろうとしている事に何故気が付かない。……ならば、もう迷うまい。貴公達の過ちは私が止める。それが夜天の守護騎士である私の使命であり、二度に渡って貴公達を見殺しにしてしまった事へのせめてもの償いだ」
悪意の闇に沈みながらもなお消える事の無かった夜天の光は、悪意の闇に囚われてしまった雲達との対決を決意した。
……その夜。
空中に浮遊する赤一色のゴシック風の衣装を纏った少女は、その後ろに控えていた蒼い毛並みの狼に話しかけてきた。
「おい、ザフィーラ。お前、ここ三ヶ月ずっと何か考え込んでるけど、一体どうしたんだ?」
すると、少女にザフィーラと呼ばれた狼は人間の言葉で返事をした。
「何でもない。ただ、何かを忘れている様な気がしてならないのだ」
狼から答えを聞いた少女は呆れた様な様子で話を続ける。
「何だ、そんな事してたのかよ。三ヶ月も思い出そうとして思い出せねぇんなら、大した事じゃねぇんじゃねぇのか?」
「いや。何故かはわからんが、俺の中の何かが激しく叫んでいるのだ。……思い出せ。それはけして忘れてはならないものだと」
ザフィーラの余りに真剣な様子に、少女はザフィーラに思い出した事を自分にも教える様に頼んだ。
「……そうか。じゃあ、思い出したら、アタシにも教えてくれ。その「けして忘れてはならないもの」ってヤツ」
「あぁ……」
ザフィーラの了承を取った少女は、そこで三ヶ月前という時期について思い至った事を口にした。
「しかし、三ヶ月前ってアレか? シャマルに春が来たってヤツ。確か、相手はリヒトって奴だったっけ。ソイツのお陰で、はやてが痛かったりや辛かったりした時にはちゃんとアタシ達に教えてくれる様になったからな。それについては、ホントに感謝してるよ。だから、もしはやてが元気になったら、シャマルもソイツと上手くいってくれるといいよな」
そうしてシャマルがリヒトに淡い恋心を抱いている事について、少女が触れた時だった。
「リヒト? リヒト・ツァイトローゼ……?」
……ザフィーラの様子が一変したのは。
「どうしたんだ、ザフィーラ? 急に驚いた様な顔して、何かあったのか?」
ザフィーラの様子の変わり様に疑問を抱いた少女は、何かあったのかを尋ねてみる。しかし、ザフィーラはそれよりもまず目的を果たすべきだと提案する。
「……いや、何でもない。それよりも、早く魔力反応の持ち主を捜しに行こう。余り時間をかけるのも良くない」
「それもそうだな。それじゃ、手分けして探すぞ」
少女はザフィーラの言う事も尤もだと納得した。そこで、ザフィーラは自分達の拠り所となっている物について言及する。
「あぁ。や、いや闇の書はお前が持っていてくれ、ヴィータ」
「解った」
ヴィータと呼ばれた少女は、その手に黒い本を大事そうに抱えながら移動を開始した。
ヴィータがその場を去った後、ザフィーラはその身を狼から人間へと変えた。ただし、狼の耳と尾はそのままである事から、人間というよりは獣人というべきだろう。……だが、その表情は深い後悔と慙愧の念に満ちていた。
「何という事だ。何故、俺は主があの方の名を仰った時にすぐさま思い出さなかったのだ。あの時に思い出してさえいれば、今なお主は心身健やかにお過ごしになられ、我等も手を
ザフィーラが己の命を
「我等、夜天の王の元に集いし雲を率いる親衛の長にして、夜天の誓約を携えし真なる守護騎士。リヒト・ツァイトローゼ・フォン・ナハトヴァール様」
……本来なら関わりなど全くない筈の夜天光の騎士だった。
Overview end
いかがだったでしょうか?
ここから大きく改変が入り始めますが、ご容赦のほどを。
では、また次の話でお会いしましょう。