ドアが開く音を聞いて振り向くとお兄ちゃんがそこにいた。
「あっ! おかえり! ところで村長さん、お兄ちゃんになんの用事だったの?」
「民芸品を売った金で精霊の冠を買いに行ってこい。だって」
「へえ……お兄ちゃんが精霊の冠を買いに? すごーい! 大役じゃない」
伝統で精霊の冠は年々買わなきゃいけない。その精霊の冠は山の麓──つまりこの村は山の頂上付近にあるから体力が必要になるし、その上魔物に襲われることもあるから大変なんだよね。
それにしてもこれまで精霊の冠を買ってきたお爺さんは去年の傷が元で出来なくなったって噂は本当だったんだ。
「そんな大役じゃないよ。魔物もそんな凶暴じゃないし僕からしてみればお使いみたいなものだよ」
お兄ちゃんは満更でもなく得意げに笑った。
「ねえ、お兄ちゃん。私も付いて行っていい?」
「ダメに決まっているだろ!?」
お兄ちゃんは私の提案を即却下した。
「だってお兄ちゃん、近くの店にお使いに行くだけで何回も財布なくしたりしているよね?」
私はジト目でお兄ちゃんを見る。本当にお兄ちゃんはドジなんだよね。例えば薬草を買ってくるように言えば財布をなくすのは当たり前。その代わりに薬草を自前で取ってきてボロボロになる、なんてこともあった。今回、村長さんには悪いけど人選ミスだと思う。
「うっ!? それはそうだけど……ターニアには精霊の使いって役割があるだろう?」
お兄ちゃんは話を逸らし、私の役割、精霊の使いのことを追求してきたけど大丈夫。
「あれならお兄ちゃんが帰ってきた時に準備するらしいから問題ないよ。むしろ私がフォローするから予定よりも早く出来るかもしれないよ?」
「ぐっ……だけど……」
「お兄ちゃんも男らしくないわね。男なら魔物から襲われても守ってやるよ! くらいの気迫でないと!」
「あーもーっ! わかった、わかった! 連れて行くよ連れてく! その代わり、僕から離れないでよ!」
「わーい! ありがと、お兄ちゃん♡」
こうして私はお兄ちゃんとともに精霊の冠を買いにいくことになりました!
「きゃっ!?」
いきなり魔物に後ろから襲われ、私は尻餅を付いてしまいました。
「危ない! ターニア!!」
そう言ってお兄ちゃんは魔物を倒して私を助けてくれた。
「大丈夫? ターニア」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「ターニア、無理にとは言わないけど魔物が襲いかかってきたらちゃんと反撃するんだよ。このひのきの棒をあげるからそれで攻撃して」
お兄ちゃんは私にそう言ってひのきの棒を渡した。
「うん。できるだけ自分の身は自分で守れるようになる」
「それじゃ行こう──と言いたいところなんだけれど、早速お出ましのようだね」
お兄ちゃんがそう言うと木のようで根っこのような魔物が現れた。
「ターニア! とりあえず魔物に向かってその棒を振って!」
「うん!」
私はその魔物に近づき、ブンブンと棒を振った
「ギッ!?」
すると棒が当たり、一発で魔物がいなくなった……
「会心の一撃を最初の一発でやるなんてターニア、結構素質あるんじゃない?」
「えへへ、そう?」
「僕だって急所はマグレでしか当たらないんだからそうだよ」
そう言ってお兄ちゃんは私の頭をポンポンと撫でた。良いな……この感触。
「そういえばランドの姿が見えないけどどこいったのかな?」
それから道中、魔物がこなくなったのでお兄ちゃんに話しかけランドのことを聞くと眉を顰めて指を指す。
「ランドはあそこだ……」
そこにはランドがいて、ぐーすかと昼寝していた。確かに魔物もあんまり凶暴じゃないし、気持ちいいけど仕事はどうしたの?
「ん? その髪の色、レックか……」
ランドは大きなあくびをして私に話しかけた。寝ぼけているんだね……そう言うところはお兄ちゃんと一緒かな?
「この辺は危ない魔物もいねーし、気持ちいいから昼寝するには絶好のポジションなんだぜ。おっと、親父には内緒にしてくれよ? 仕事しろってウッセーしな」
そろそろカミングアウトしよ。
「ランド? 私ターニアだよ?」
ランドは目をバッチリと開け、私をまじまじとみた。
「……なんでターニアちゃんがここに!?」
「精霊の冠を買いにね」
私がそう言うとランドは腕で×を作り、私に迫った。
「ダメだよ! ターニアちゃん。今すぐ村に戻んないと危ないよ!!」
村に戻ってもずっと待っているのはつまらないし、何よりもお兄ちゃんが心配。
「さっき危ない魔物もいねーしとか言ったのは誰?」
「それは俺だけど流石にターニアちゃんは危ないよ!」
どうしてランドはこうも過保護なんだろう。子供扱いされているみたいで嫌だよ……
「じゃあお兄ちゃんの面倒見切れるの? お兄ちゃんって相当ドジだから私がこうやって付いて行っているって訳」
「確かにレックのドジさは半端ないけど!」
「ターニアもランドも本人の前でこんなこというなんて結構酷いよね」
「お兄ちゃん事実は認めようよ。それよりもランドは仕事しないとお父さんに言いつけちゃうよ?」
「その時はターニアちゃんも村に戻る!」
「私を連れて村に戻ろうとしたら覚悟してね? 有る事無い事言うから」
「黒っ!? 俺のターニアちゃんがこんなに黒くなっているよ!?」
「誰がランドのターニアだ!!」
あ、ようやくお兄ちゃんが突っ込みを入れた。
「とりあえず、ランドは村に戻っててよ。ターニアは僕が守るから」
「はぁ……わかったよ。レック、ターニアちゃんのことを頼んだぞ」
ランドは村に戻り、私達は途中襲いかかってくる魔物を倒しながら順調に進んでいった。
「これはこんぼう? 結構良い武器だけどターニアには向かないよね?」
宝箱の中身を取り出すとこんぼうが中に入っていたけれど私には無用の長物だった。
「うん、そんな武器だったらこのひのきの棒を振り回してた方が良いと思うよ」
こんぼうは見た目からして叩き潰すような感じで非力な私には合わないと感じ、お兄ちゃんに譲った。
「そっか、それじゃかっこ悪いけど僕が使うよ」
お兄ちゃんはそう言って武器が素手からこんぼうになり頼もしく見えた。
「カッコ悪いからって好き嫌いする人よりかはカッコいいよ、お兄ちゃん」
「ハハハ……照れるなそういうのは……っと来たよ!」
デカいイモムシに、さっき私が倒した魔物、それとぶちスライムが現れ襲いかかってきた。
「よっ!」
お兄ちゃんはイモムシを潰し、私はというとぶちスライムを相手にしていた。
「このっこのっ!」
二発当たってぶちスライムは消え、もう一頭の魔物を探してみるとお兄ちゃんを不意打ちしようとしていた。
「危ない! お兄ちゃん!!」
私はひのきの棒をできる限りの力で振り、その魔物を倒した。
「ふぅ……助かったよターニア」
「さっき私を助けてくれたお礼だよ! お兄ちゃん」
「ありがとうな、ターニア」
またお兄ちゃんの頭ナデナデが炸裂し、私を心地よくさせる。
「えへへ……」
そんなこんなで麓の村に着いて、お兄ちゃんに確認を取った。
「そういえば民芸品は大丈夫なの?」
お兄ちゃんは袋を漁ると、顔がどんどん真っ青になっていった。
「……ハハハ」
お兄ちゃんは私に対して乾いた笑いしか取れずにいた。
「お兄ちゃん?」
私は有無を言わせない声でお兄ちゃんに尋ねた。
「民芸品落とした!!」
「そんなことだろうと思った……」
私達は落とした民芸品を探す為に元に戻った。
「民芸品〜民芸品〜どこだ〜?」
お兄ちゃんはそんなことを言いながら探す。流石にゴミ箱にはないと思うよ? お兄ちゃん?
「あんた達、ライフコッドの出身かい?」
するとお婆さんが私達に声をかけてくれた。
「そうですけど……?」
「あんた達の民芸品なら確か魔物が持っていた気がするよ」
「ホントですか!?」
それを聞いて私は思わず身を乗り出して尋ねる。
「でも結構強そうだったから装備は揃えて置かないと危ないよ」
「確かに……」
今の装備ではあのタマネギの魔物や盾を持っているホビットもどき、ドクロを常にかかえている魔物も手こずっていた。
「その魔物は西の先の森にいたから気をつけていくんだよ!」
そう言ってお婆さんは立ち去り、私達は西の先の森に行くよりも先にバザー会場へと戻ることにした。
ターニア&レック「ターニアとレックの後書きコーナー!」
ターニア「早速ですがお気に入り登録、評価してくださった方々ありがとうございます!」
レック「作者は前回は文字数が少ないのでそんなに期待していなかったからお気に入り登録あるいは高く評価してくださったことに感動してます!」
ターニア「はい、という訳で私の冒険はお兄ちゃんのドジから始まりました。」
レック「ドジ言わないでよ…結構ナイーブなんだよ?」
ターニア「前回も今回もそうだったけどドジに始まってドジに終わる…それがお兄ちゃんなんだから仕方ないと思うよ?」
レック「確かにこの小説内では僕のドジはすごいけどさ…」
ターニア「言い訳無用!だいたいお兄ちゃんは」
レック「ほらターニア、もう時間だよ!」
ターニア「うっ…仕方ないけどこれからもよろしくお願いします!!」
レック「お気に入り登録、感想や評価もよろしくお願いします!」