井戸の場所から南の方角をみると見たことのある景色が見え、本当に戻ったんだと実感し、バザー会場へと戻っていった。民芸品はお兄ちゃんがドジしなきゃバザー会場でとっくに売り終わっているはずだったんだけれどね……
「おいお兄さん達、この盗賊の鍵を買わないかい? 今なら3000Gのところ、2000Gで売るぜ!」
そんなにお金持ってないよ!
「バカ言わないでくれ。もっと安けりゃ買えるんだけどな」
お兄ちゃんがそう言って頭をポリポリとかく。
「それじゃ1000Gでどうだ!」
「もっともっと!」
「300だ! これで買ってくれるよな!?」
「あと一押し!」
「餓死しろってのか? 流石に無」
「おじさん……」
流石に無理といいそうになったから私は少しでも安くする為に上目遣いでおじさんを見た。
「ぐっ……負けたぜ! 200Gだ! だが流石にこれ以上は下げられんから覚えとけよ!」
「ありがと♡おじさん!」
「くぅーっ!! お嬢ちゃんの笑顔が憎らしいぜ!!」
おじさんの笑顔は光輝いていた。
とまあこんな感じで盗賊の鍵を買って民芸品を売りさばき、私達は精霊の冠を貰った。
「おじさん、本当にいいの?」
その作った職人はなんとお兄ちゃんが助けた人であり、お兄ちゃんを落としちゃった罪悪感からタダで譲ってくれた。
「いや受け取ってくれ! でないと俺は他に詫びる方法がないんだ!」
おじさんは職人というだけあってなかなか頑固だったので私達はそれを素直に受け取った。
「それじゃ頂きます」
お兄ちゃんが受け取り、私達は元の場所へと戻ることになった。
「よいしょっ!」
早速さっき貰った盗賊の鍵を使ってドアを開き、宝箱を見つけた。
「これって微妙」
世の中そんなに甘くはなく、宝箱から出てきたのは薬草とか服とか微妙な物ばかり……すでに手に入れている物もあるから微妙と言わざるを得なかった。
「ターニア、もう行こう」
お兄ちゃんがそういってうんざりしていた……確かにこれまではスカだったけど、何かあるかもしれないのに……
「あと一箱!」
私はそう言ってお兄ちゃんを納得させた。
「ふう……わかったよ。これで最後だぞ」
「うん」
そうして開いたのは600Gのお金だった。
「ほらね! あったでしょ!」
「ハイハイ。それじゃ村のみんなも心配しているし、帰るぞ」
お兄ちゃんが喜んでくれない……
村に帰ると私はすぐに村長さんの家に入れられると村長さんの娘さん……ジュディさんに手を縄で縛られた。
「さあ、ターニアちゃん。何か言い訳はある?」
ジュディさんがそう言って手をワキワキさせ、私は汗をダラダラと流していた……
「お兄ちゃんのドジのせいで遅くなりました」
私はできる限りの抵抗をするけど……
「お仕置きーっ!」
「やめてぇぇえっ!!」
ジュディさんに服を脱がされ、擽りの刑を3分ほどやられ、私の顔はヨダレと涙でベトベトになった。
「うう……こんな顔で人前に出れない……」
「大丈夫よターニア」
「何が大丈夫なの?」
「その顔を直すのに私がいるんだからね」
ジュディさんはそう言って化粧道具を取り出し、湿ったタオルで私の顔を拭いた。
「んっ……」
そのタオルが私の顔をスッキリさせてスー……と顔に風が心地よく当たる。
「それじゃまずは……」
ジュディさんは信じられない速さで鏡の前の椅子に座らせた。
「ん〜っ……やっぱりターニアっていい顔よね……ランドが振り向くのも無理ないわ……」
最後の方は聞こえなかったけど私を褒めていることはわかった。
「そうかな?」
「そうよ。さ、お化粧の時間よ」
ジュディは化粧道具を使って、私を変身させた……やっぱりランドが好きなだけあってこういうのも得意なんだ……ランド本人はそれに気づかないけど。
「それじゃ私はお暇するわ。精霊の使い様は祭りが始まるまで姿を見せちゃいけないしね」
あ……そうだった。精霊の使いの服は……なんか着替えにくそうだけど大丈夫だよね。
そして夜……いよいよ、精霊の使いとしての仕事がやってきた。
「それじゃターニア、行こう」
「はい」
村長さんに連れられ、私達はゆっくりと歩き、教会へと向かった。
「ターニアちゃん! 綺麗だよ!」
「よっ! 村長、男前!」
私と村長さんは皆の歓声を受け、笑った。本当は笑っちゃいけないけどこのくらいならあの精霊様だし大丈夫だよね。
「一年の時を経て、今夜再び精霊の使いがこの村を訪ねてくださいました」
全員が教会に入ると神父さんが決められたセリフを言って、手を差し出した。
「大いなる精霊の使いよ! さあその冠を我らにお与えください」
神父さんのセリフで私は冠を取り外し、高く捧げ目を閉じる。
「山の精霊よ。貴方の冠を確かにお受け取りします。そしてこの女神像を通してまた一年の間我らをお守りください」
そして神父さんが後ろを振り向くと精霊の冠を放り投げると女神像の頭にぴったり入った。
「精霊の使いよ。これで貴方の役目は終わりました。どうぞ山の精霊の元へお帰りください」
「わかりました。また来年参りましょう。では……皆様に平和を……」
普通、ここで引き止めて歓迎させるなりなんなりするとは思うけれどそれが村のしきたりだから仕方ないよね……
「えっ!?」
私がその声を出したのかどうかわからないけどお兄ちゃんと私以外が固まると何か暖かいものが入り込んだ感覚がした。
「レック、ターニア……私の声が聞こえますね」
お兄ちゃんがそれに頷くと私も頷くと私の口から透き通った声が出る。もしかしてさっきの精霊様……?
『その通りです』
私の頭の中に声が直接聞こえてきた!?
『これから私は貴方のお兄さん達に説明するので貴方の身体を少し借りますよ』
もしかして冒険するって言っていたアレのこと。それならいいけど……
『ありがとうございます』
「レック、ターニア……貴方達は不思議な運命を背負い生まれてきた者……やがて世界が闇を覆う時貴方の力が必要となるでしょう。その時が来る前に解き明かすのです。貴方達が打ち破ることが出来た筈の魔王のまやかしを……そして貴方達の本当の姿を取り戻すのです……! レックよ、ターニアよ旅立ちなさい。それが貴方達に与えられた使命なのですから……」
一方的に私の口を使って喋り終わると私の中にまだ精霊様が残っていた。
『ターニア……貴方に私の加護を与えます』
精霊様はそう言って私の身体からいなくなった。
「ターニア! すげーよ! 本物の精霊様みたいだったよ! 今すぐ俺とけっごはっ!?」
ランドが私のことを褒め、次の言葉を告げた瞬間ジュディさんに殴られた。
「ランド! 貴様の血の色は何色だーっ!!」
ジュディさんのキャラが変わり、ランドをフルボッコにしていた……それが愛の鉄拳だとわからないんだからランドは鈍いよ……
「ゴホン! 皆さんお静に!」
神父さんの一言で騒然としていた教会が静かになり、ジュディやランドも止めさせた。
「とにかくターニア……いや精霊の使いよご苦労様でした」
「では失礼します」
私が出て行くと儀式は終わった。その代わり村祭りが始まり、私は着替えて普段着に戻り花火を見ていた。
「やあ……ターニア」
ボロボロになったランドが私に声をかけ、隣で花火を見ようとしたけど私はそれを避けた……
「えっ!?」
「ねえ、ランド。ジュディさんと結婚した方がいいよ? 私、お兄ちゃんと旅立たなきゃいけないから一緒にはいれないよ」
「さっき言っていた魔王がどうたらとかか? あんなものターニアが嘘をついたんだろ! それに年のことなら問題ないだろ? 俺はもう17でターニアは今年16歳だろ? ……だから結婚してくれ!」
「ごめんなさい。ランド」
そう言って私は頭を下げる。
「ターニア!」
「もうよせ。ランド」
お兄ちゃんが私達の目の前に現れ、ランドを止めた。
「なっ、レック!?」
「……ランド、僕とターニアは村長さんの推薦でレイドック城へ行くことになった」
レイドック城は治安を維持する為に推薦でしか入れないようになっている。つまりお兄ちゃんと私しか今は行けないからランドは連れていけない。
「なら俺も通行証を貰っていく!」
「村長さんが許すと思うか?」
「行ってみなきゃわかんないだろ!」
ランドは村長さんの家に突撃しに行った……
〜翌日〜
「シクシク……」
当然普段働いていないランドが通行証を貰えるはずもなく、影を落として泣いていた。自業自得って言葉はランドの為にあるのかもしれない。
「それじゃ行ってくる!」
「がんばれよーっ!」
「ターニアちゃんも元気でなー!」
お兄ちゃんの掛け声で村の皆(ランドを除く)が応援した。
「さあ、行こう! ターニア!」
お兄ちゃんが珍しくドジを踏まなかった……?! 肝心なところでドジを踏むのに……とはいえお兄ちゃんがドジを踏まないのはいいことだから私は笑って返事を返した。
「うん」
これから私達の長い長い冒険が始まった。
「あっ!? 通行証忘れた!」
……前言撤回。お兄ちゃんはやっぱりお兄ちゃんだった。これから先が心配。
ターニア&レック「ターニアとレックのあとがきコーナー!」
ターニア「はい、というわけで私達の長い長い冒険がついに始まりました!」
レック「やった!これで冒険が始まる!」
ターニア「ところでお兄ちゃん…更新が遅れた理由って作者から聞いた?」
レック「もちろん。作者がいうには『他の小説を書いていた上に色々あってⅥをやる暇がなかった』らしいよ。」
ターニア「でも3日坊主ならぬ3話坊主にならなくて良かったね!」
レック「本当だよ…下手したらエタっていたかもしれないから…おっと時間みたいだよ。ターニア。」
ターニア「それじゃ次回も楽しみに待っててね!」
レック「感想・評価の方もよろしく!」