「お前達は兵隊になりに来たのか?」
さっきとは違う門番さんがそう言って聞くと私達は頷いて答えた。
「よろしい。これより兵士長ソルディ様がお前達とお会いになる。城の中へ入るがいい」
お城の中へ入ると今まで見たことのないような景色が見え、私は興奮した。
「これがお城なんだね。お兄ちゃん」
私がそう聞くとお兄ちゃんは何か不思議そうな顔をして黙っていた。
「お兄ちゃん?」
私はそれを不審に思い、尋ねてハッとして私の方に振り向いた。
「何? ターニア」
「急がないと遅れちゃうよ。他の志願者はもう上行ったみたいだよ!」
「そうだね。行こう」
私とお兄ちゃんは上へ上がるとそこにはさっき私達に絡んできた人とハッサンさん、私と同じ女の人も並んでいた。
「これが志願者……うっ……!?」
私はそう呟くとその場にいた全員から睨まれるような視線を感じ、萎縮してしまった。
「……」
お兄ちゃんもその数に驚いて私に声をかけることすらせず並んだ。仕方ないよね……それが私達田舎者だもん。むしろお兄ちゃんは頑張った方だよ。
そして金髪の兵隊さんが満足気に頷くと口を開いた。
「よく集まってくれた我が王宮の兵士に志願する心ある者達よ! だがしかし誰もが我が城の栄誉ある兵士になれる訳ではない。そこで私に君達を試させて貰おう」
私はそれを聞いて喉を鳴らし、志願者達も緊張した目で見ていた。
「この城より東南へ橋を二つ渡った先に試練の塔と呼ばれる塔がある。その塔よりある物を取ってきて貰いたいのだ」
「その物って、なんですか?」
私は緊張の余り、手を挙げてそう尋ねるとソルディさんは私に注目した。
「それは各々で考えるように。さあ行けっ! 試練の塔の扉は開かれたぞ! 試験開始だ!」
私とお兄ちゃんを除いた全員が後ろの扉から出て行った。
「行こうか。ターニア」
「うん」
私とお兄ちゃんも続いてその場所へと向かった。別に志願者同士が協力してはいけないって言われてないし問題ないよね?
~試練の塔~
試練の塔にたどり着くと多くの志願者がある物を探していた。
「お兄ちゃん。ある物ってなんだろうね?」
「とにかく探そう。ただでさえ遅れを取っているのにこれ以上遅れをとったら絶対に受からないよ」
「お兄ちゃんがまともなこと言っている。新鮮すぎて何も言葉が浮かばないわ」
「まああんなものを見せられたらそうなるさ」
あんなものって、もしかしてハッサンさんのこと?
「別れ道が出るまで僕と一緒に行動した方がいい。分かれ道が出た場合は僕が指示する」
「OK!」
「それじゃ行こう」
そして扉を開けると……早速別れ道があった。
「い、いきなり別れ道か。それじゃターニアここでお別れだね。会う時は試験が終わった時だ。頑張ってね」
「お兄ちゃんも頑張れ!」
こうしてお兄ちゃんと別れ、私一人で探すことになった。
とはいえお兄ちゃんは試験に合格できるかどうかも怪しい。お兄ちゃんは戦闘に関しては問題ないんだけどドジさが問題。すぐ転ぶ、何かを忘れる、酷い時には私の服を着て女装したことに気づかない。改めて考えるとお兄ちゃんは兵隊さんに向いてないのかもしれない。
2階に上がりキメラの翼を回収して3階に上がると兵士さんが仁王立ちしていた。
「ふっふっふ……やっとここまでたどり着いたか。どうだ? ワシを倒せばだいぶ近道が出来るぞ? おなごよ戦ってみるか?」
近道……つまり、この先にある物があるということ。私は即答だった。
「やる!」
この兵士さんはきりかぶこぞうやアロードック、ギズモとは強さは別格だけど私だって強くなったんだから!
「よかろう……いざ……参る!」
兵士さんは槍を持って私に襲いかかってきた。
モンスターとかは戦ったことはあるけど対人戦はこれが初めてだから慎重に行きたいのは山々だけど……そうも言ってられないわ! お兄ちゃんよりも、ハッサンさんよりも早く見つけないと不合格……そうなったらお兄ちゃんを養うのは無理になっちゃう。だから私が合格しないとダメ!
「はぁぁぁっ!!」
私は不合格になりたくない気持ちで一杯になり、無我夢中で突いた。
「ぬぉっ!? げほっ……」
兵士さんは腹をくの字に曲げて咳き込む……
「えーいっ!!」
ドカッ!
その隙を見計らって私は思い切り銅の剣で頭を殴って兵士さんを気絶させた。
「えっと……通りますよ?」
兵士さんの様子を見る限り、本当に気絶したみたいで私は兵士さんの上を通って近道した。
上へ上へと上がっていくとハッサンがそこにいた。
「ハッサンさん!」
私はハッサンさんに声をかけるとハッサンさんは振り向いてくれた。
「ターニアちゃんじゃないか? 本当に兵士になりに来たのか?」
「うん! だからハッサンさんには負けないよ!」
「そう言われちゃ俺も負けらんねえな……よし! 気合い乗ってきたぜ! じゃあなターニアちゃん! 頑張れよ!」
そういってハッサンさんは向こうの扉に向かってしまった。
「あっ!? 待ってよ!!」
私はそれを追いかけるとお兄ちゃんとハッサンさんがそこで立ち止まっていた。
「よく来たな。ここから先は3つの扉にそれぞれ1人ずついる。それを聞いてどれを選んでもいい。ただし本当のことを言っているのは3人のうち1人だけだ」
左から兵士さんに声をかけられ、その言葉通りなら3人に聞くしかないよね……
左から順に……
「この先は何もありませんよ。一番右の扉が正解です」
「この先にいくと痛い目に合うぞ! 行くでない!」
「一番左の人は正しいことを言っています」
……これ簡単じゃない?
「よし! 僕は真ん中だ! 痛い目に合うんだから探し物もそっちにあるはず!」
と思ったらお兄ちゃんが真ん中の扉を開けて僅かにみえた階段を登るのを見るとハッサンさんはポンと左手に右手の拳を置いた。
「一番右だ! それしかねえ!」
ハッサンさんは右の扉を開いてそっちに向かってしまった……お兄ちゃんもハッサンさんも違うでしょ!?
「正解は一番左!」
そう……これは簡単なクイズ。1人しか本当のことは言っていない。
一番左の人が正しいことを言っていると仮定すると一番右の人が本当のことを言っているので兵士さんの言っていることが嘘になるので矛盾する。逆に一番左の人が嘘だとするなら一番右の人も嘘をついているので2人嘘をついていることになり真ん中の人の証言は左の人や右の人に全然関係ないので矛盾しない。
ハッサンさんのミスは矛盾に気がつかなかったこと。お兄ちゃんのミスは矛盾に気がついたけど真ん中の人の証言である「行くな」ということを無視してしまったこと。……なんともお兄ちゃんらしいミスだね。
「よくぞたどり着いた。私、副兵士長ネルソンが最後の試練を与えよう。だがしかしもはや戦う力が残っていないというのならそっちの崖から降りて戻るのもいい。そうすれば塔の入り口まで戻れるぞ。さあどうする? 私の試験を受けて見るか?」
あの2人のことだから自力でここまで来そうな予感がするし、ここまで来たのにわざわざ戻るのも気がひける……
「受けます!」
私はネルソンさんにそう答えていた。
「よろしい。それでこそ王宮の兵士を志願する者だ! 行くぞっ!」
「はぁぁぁっっ!!」
ネルソンさんは激しく切りつけにかかってきたけど……あのダークボビットに比べれば……なんでもない!
「はっ! やぃぁぁっ!」
私は銅の剣で防御し、反撃する。そもそも銅の剣は切りつける物ではなく叩く物。だから下手な剣術よりもひのきの棒のように扱った方が効率がいい──とはお兄ちゃんの談。ひのきの棒なら何度も使っているし、なによりもさっきもひのきの棒のように使って兵士さんを倒した。
「甘いっ!」
ネルソンさんは私の足元をすくい、転ばそうとしたけどそこには私の足はない。何故なら既に私はジャンプして飛びかかっていた。
「甘いのはそっちの方よ!」
ガキンッ!
銅の剣と槍の鍔迫り合いが始まったけど私は力そのものはないのですぐに力を抜いてネルソンさんの身体のバランスを崩した。
「なっ!?」
「やぁぁーっ!!」
銅の剣で頭を殴ってさっきと同じように気絶させようとしたけど流石は副兵士長。おとなしく気絶させて貰えなかった。
「おなごの身でここまでやるとはな。男として生まれていたら間違いなくやられていただろう」
私は男至上主義者ではないからその言葉に流石にカチンと来た。
「さっきから聞いていればおなご、おなご、おなごってうるさい! 女が男よりも劣っているの!?」
「……すまぬ。失言だったな。名前は?」
「ターニア! ライフゴッドのターニア!」
「ターニアか。ではターニアよ。続きを始めよ……うっ!?」
いきなりネルソンさんが糸の切れた人形のように倒れた。
「……ターニア。私が身体を動かせぬ以上、お前の勝ちだ」
「一体どうして……?」
私はなんで気絶しなかったのか。そしてこれは本当にそうなのかという現象を知るために聞いた。
「先ほど頭を打った時の作用でこうなったのかもしれぬ。時たま気絶しなくとも頭を打てば身体が動けなくなるという噂があったが本当のようだな。さあ中に行け。その中の宝箱にお前の求める物はある」
なるほど。頭はやっぱり重要なんだね……
「ネルソンさん。それじゃ通ります」
そしてその先の宝箱にあったのは……見たこともない装飾品だった。
〜おまけ〜
その頃……レックとハッサンはというと。
「痛でててて……あそこ痛いだけでなんにもなかった……ハッサンは?」
「俺はこんなの貰ったぜ!」
そう言ってハッサンが取り出したのは指輪だった。
「……それ明らかに違くないか?」
「だよな〜……そう言えばターニアちゃんは?」
「ハッサンと一緒に行ったんじゃないの?」
「うんにゃ。そんなことはない……てことは……一番左の扉に進んだみたいだな。あっちが正解だったのか……くそっ!」
ハッサンは悔しがるものの笑顔でいた。
「どうする? このまま帰る訳にもいかないし……」
「なんか功績になるようなことをすればいいんじゃないか?」
「それだ!」
こうして2人は意気投合してとある場所へと向かった。
「あいっててて……ハッサン薬草ない?」
やはり最後は締まらないレックだった。
ターニア&レック「ターニアとレックのあとがきコーナー!」
ターニア「無事試験が終わったけど…お兄ちゃんどうするの?」
レック「いつまでもターニアの世話にならないよ。僕が足を引っ張る訳にもいかないしね。」
ターニア「結局そう言って足を引っ張るお兄ちゃんなんだよね…おまけでもそうだったし。」
レック「ほっといてドジが悪いんだ…くそう…」
ターニア「お兄ちゃん…そろそろ時間だけど前回は出来なかったしきちんとやろっ!」
レック「おっ?そんな時間か…それじゃやるか!」
ターニア「感想や誤字報告は感想にお願いします!」
レック「次回もお楽しみに!」