…………。ゴンッ!
「あだぁ!?」
ベッドから落ちて頭を強打することで、僕は目を覚ます。痛い。
「うぅ………クラクラする…………」
打ち付けた頭頂部を押さえながら、僕は時計に目をやる。時間は六時前。
お母さんは起きているだろうが、いつもなら僕もお父さんもまだ寝ている時間帯。
「…………僕、いつの間にベッドで眠っていたんだろう?」
何か夢を見ていた気もするが、よく思い出せない。
あと昨日の事も。
寝ぼけた頭が覚醒しきらない状態で、僕は昨日の事を思い出そうとする。
「確か昨日は、デパートで買い物して、姫島先輩に追いかけられて、それから…………」
そこから先は少し曖昧だ。
もの凄くお腹が空いていた事は覚えてるし、何か怖い思いをしたことも覚えてる。
でも、いったい何が…………。
「ん?」
そこで僕は、右腕に違和感を覚える。
なんとなく重さを感じた右腕に目を向けると…………。
「え?」
そこには、見覚えのある、大きな黒い腕輪。
…………ってことは、待てよ? あ、ちょっと思い出して来た。
四つの黒。生臭い赤。優しい赤。そして、腕輪と武器。
「…………あぁぁぁあ!?」
思い出した。昨日の事全部。
まるで現実味の無い現実。むしろ夢だと言われた方が安心できる出来事。
そしてこの手で握った、
「神機…………」
その握りの感触はまだ生々しくこの手に残っている。
心臓が高鳴る。
本物の悪魔や堕天使に出会った恐怖と、憧れていた武器を握った興奮。
「来い、神機」
その高揚のままに、神機を呼ぶ。
すると、眩い光が迸り、ズシリとした心地よい重さが右手にかかる。
そのまま光が薄れると、僕の右手には昨日と同じ神機が握られていた。
「スッゲー!」
僕は無邪気に喜んだ。
大好きなゲームの、憧れた武器。
「あ、でもどうやってこれ消すんだろ」
とりあえず、漫画とかでよく見るように、強く念じてみた。
「あ、消えた。やってみるもんだね、何事も」
腕輪が消えたことに安心して、僕は伸びをする。
「よし、早起きは三万の得って言うし、起きるか!
…………三万? なんか違う気がする」
そんな割りとどうでも良い独り言を呟きながら、僕は部屋を出た。
たまにはお母さんの手伝いでもしようかな。
◆◆◆◆◆◆◆
…………さて、今起きたことをありのままに話そうか。
玄関を出ると、微笑みを浮かべた
何を言っているか分からないと思うけど、僕も分からない。
ってか、なんでここにいるのさ。なんで僕ん家知ってるのさ。
挙げ句、
「おはようございます、ハルトくん」
なんて、天女の如き笑顔でそう言うもんだから、それを見た両親がてんやわんやの大騒ぎ。
やれハルに春が来ただの、やれよくやったぞ息子よだの、好き勝手に軒先で大騒ぎする始末。
やめて近所迷惑だから! あとお母さん寒いから!
「ほら、行きましょう?」
そしてここで止めの一撃である。
…………あ、さよなら。僕の平穏なMy lifeよ。これから騒がしくなりそうだ。
泣きたい。
だけどオカ研には絶対に入らない! 絶対に、絶対にだからな!!
フラグじゃないぞ!!
あと姫島先輩、笑顔がとても
◆◇◆◇◆◇◆
ああ、そんな顔を見せられると、もっと虐めてしまいたくなりますわ。ふふ、可愛い子。
それに、リアスから聞いた話によると、彼、堕天使を一人倒したようね。
見かけによらず強い子ですこと。やっぱり目をつけて正解でしたわ。
今日は兵藤一誠くんと一緒に部室へお招きするから、そのときの反応も、凄く楽しみですわ。ふふ、ゾクゾクしてしまいます。
あぁ、早く放課後にならないかしら。
◆◇◆◇◆◇◆
ようやく放課後になった。
今日は一段とみんなの視線が痛かった。だって、入学して間もない一年生の僕が、清楚で大和撫子と名高いあの姫島先輩と肩を並べて登校してきたのだから。
よし、
と思ってたら、
「君が、神結悠斗くんだね? ちょっと一緒に来てもらえるかな?」
なんかイケメンに捕まった。
あ、この人知ってる。王子様って呼ばれてる先輩だ。確か…………き、き、木田? なんかそんな感じの名前だったはずだ、うん。
「初めまして、僕は木場祐斗。部長………グレモリー先輩から君を呼んで来いとの事だからね」
木田じゃなかった木場だった。良かった、口に出さなくて。
って待って!? グレモリー先輩からのお呼びだし!? 字面だけ見たらなんか素晴らしい事のように感じるけど、あの人が
ホラーは
すぐさま逃走体勢に入った僕に、木場先輩がイケメンスマイルからの爆弾を投下する。
「あ、逃げても君の家まで僕たちが迎えに行くからね?」
そうだったー!! 姫島先輩に僕ん家バレたんだったぁ!! 逃げ道なしかチクショウ!
「大丈夫、兵藤くんも一緒に部室へ来てもらうから」
「え? イッセー兄ちゃんも?」
そうか、昨日の事を話すなら、イッセー兄ちゃんもいた方が良いのか。
なんか、そう思うと怖くなくなってきた。いや怖いけど、安心感というか、そういうものを感じた。
「うぅ…………わかりました…………」
そう項垂れながら、僕は渋々、イッセー兄ちゃんのいる二年生の教室へ向かうのだった。
物語の都合上、イッセー腹ぶち抜き事件が一回分無くなります。ご了承下さい。