ハイスクールG×E   作:フリムン

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遅々()として進まぬこの物語…………


第10話

 

「目を醒ますとそこは地獄だった」

「のっけからなに言ってんだお前」

 

 目を覚ました僕の第一声に、イッセー兄ちゃんがそんなことを言ってくる。

 

「目は覚めたかしら? 神結悠斗くん」

 

 心配そうに優しくそう声をかけて来るグレモリー先輩。

 しかし僕は知っている。

 

 彼女は悪魔(本物)だ。

 

「…………」

 

 僕は無言でイッセー兄ちゃんの後ろに隠れる。

 

「あら? 嫌われてしまったかしら?」

「あー、いえ、ただ単にコイツ、滅法怖がりなんで、この部屋の雰囲気が怖いそうです」

 

 イッセー兄ちゃんが代わりにそう答えるけど、違う、違うよ兄ちゃん。

 

 そんな風にイッセー兄ちゃんの後に隠れている僕を見て、グレモリー先輩が困ったように笑う。

 

「…かわいい」

 

 ふと、後ろからそんな声が聞こえた。

 ………大丈夫。ビックリしたけど、今度は大丈夫。

 

 跳ね上がる心臓を落ち着けて、後ろを振り返る。

 

 するとそこには、黙々と羊羹を食べながら僕を見つめる白髪の少女が一人。

 可哀想に。小学生(あんな歳)白髪(しらが)だなんて…………苦労してるんだな。

 確かに、身近に悪魔がいる生活は辛そうだなぁ…………。

 

「…なんか失礼なことを考えてる?」

 

 そこで、僕たちのやり取りを見た姫島先輩が、声をかける。

 

「あらあら、やっぱり同じ一年生同士、気が合うのかしら?」

「え? 高校生!?」

 

 

 …………殴られた。

 いや、確かに僕が悪いんだけどさ。ごめんなさい。

 

 

「えっと、ごめんなさい。一年の神結悠斗です」

「…―――ッ! そ、そう。同じく一年の、塔城小猫。よろしく」

 

 あれ? なんかぎこちないな。まだ怒ってるのかなぁ…………うう。

 

 ん? 小猫?

 

「…どうしたの?」

「いやぁ、なんか昔飼ってた飼い猫と同じ名前でさ、ちょっとビックリしただけだよ」

「あら、ハルトくん、猫を飼っていた事が?」

 

 僕の言葉に、姫島先輩が質問してくる。しかしその視線は何故か塔城さんに向けられている。

 

「そうなんですよ、姫島先輩。昔、コイツん家に毛並みの綺麗な白猫がいて、コイツにスゴい懐いてたんですよ」

 

 イッセー兄ちゃんがそう答える。

 ………なんで塔城さんが朱くなってんの?

 

 でも、

 

「違うよ、イッセー兄ちゃん。アレは多分、懐いてたとかじゃなかったと思うよ。いつの間にかいなくなってたし」

 

 猫ってのは気ままで自由な生き物だからさ。人には懐かないって言うし。

 

 …………元気にしてるかな、アイツ。

 

「…違う」

「え?」

「…きっとその猫は、あなたの事大好き」

「……はは、なんで塔城さんが答えるのさ」

 

 気を使ってくれたのかな? 優しい女の子だ。

 ストレスとか大変だろうけど、応援してるからね。

 

「…小猫」

「ん?」

「…名前、小猫。名前で呼んで。私もハルトって呼ぶから」

 

 塔城さんから、そんな提案が出される。

 まあ、一年生同士だから仲良くしようって事なのかな?

 

「うん、わかったよ、小猫ちゃん」

「…う、うん。よろしく、ハルト」

 

 

 

 まあこの部活には入んないけどね!

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ―――カミユイハルト。

 私のご主人様。私の、大好きな人。

 

 彼は昔、私を助けてくれた。

 姉様が殺した悪魔の関係者達に、復讐として襲われて、傷付いて、ボロボロになりながら、私は何とかこの町まで逃げてきた。

 

 体は痛くて、心は寂しくて、心身ともにボロボロで、もう、自分の命すら諦めかけていたとき、私は彼に救われた。

 

 傷の手当てをしてくれて、温かいご飯をくれて、優しく撫でてくれた。

 本当にボロボロだった私は、それだけで恋に落ちた。

 

 その時はまだ幼かったし、今では自分でも、本当に単純な理由だなって思う。

 でも、それでも、私は彼が大好きだった。

 いや、過去形なんかじゃない。今でも大好きだ。忘れるわけがない。

 

 ご飯をくれた。優しく撫でてくれた。

 

 ―――そして、何より、小猫(名前)をくれた。

 

 黒歌(姉様)と対の白音()とは違う、新しい小猫(わたし)。それを、この人がくれた。

 

 

 彼と過ごす日々は楽しくて、幸せで、ずっとこんな日々が続けば良いと思ってた。

 思って、しまっていた。

 

 なんて馬鹿なんだろうと思う。

 

 私は賞金首の妹で、私自身も追われる身なのに。その家が心地よすぎて、彼の隣が暖かすぎて、私はそれを失念してしまっていた。

 

 

 

 だから、私は家を出た。

 誰にも気付かれないように、皆が寝静まった夜に、コッソリと。

 

 彼に危害が及ばないように。彼の家族を危険に晒さないように。

 辛かった。悲しかった。寂しかった。怖かった。

 

 それらの想いで胸が張り裂けそうで、それでも私は逃げ続けた。

 なるべく彼から遠ざかる為に。奴らの目を、彼らに向けないために。

 

 

 

 

 そして野良猫()は、小猫になった。

 

 リアス部長にであって、悪魔になって、そして、追っ手もいなくなった。

 

 

 

 

 

 そして、今度は、彼に再会した。

 

 会いたくて愛しくて、だけども彼は人の姿をした私を知らなくて会えなかった彼に、私は今日、ここで、再会した。

 

 同じ学校にいるのは知っていた。同じ学年だと言うことも知っていた。

 

 だけど勇気がなかった。

 

 だから感謝しよう。

 悪魔だけど、神様に。

 悪魔だから、魔王様に。

 眷族だから、部長に。

 

 ありがとうございます。

 

 私にチャンスをくれて。

 

 もう一度、彼に会わせてくれて。

 

 

 

 

 

 だけど、私って、そんなに子供っぽく見えるのかな?

 

 怒るよ?

 

 

 

 




小猫ちゃんのこの圧倒的ヒロイン感。
いやヒロインだけどさ。
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