ハイスクールG×E   作:フリムン

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第12話

 

「もうやだぁ! ここやだぁ! 僕帰る!!」

「が、ガチ泣き!?」

 

 怖い怖い怖い!

 なにここ! 悪魔だらけじゃん!

 

「だ、大丈夫かい?」

「ひいいい! イケメン悪魔!」

「ええ!?」 

 

「お、落ち着きなさい」

「あ、あかいあくま!」

「それは何か違わないかしら!?」

 

「…落ち着いて、ハルト」

「落ち着いてるよぉぉお!!」

「…えぇー…………」

 

「あらあら、これは…………ふふ」

「びぇぇえん!」

「私だけ本気泣きですの!?」

 

 ここは地獄? 人外魔境? どっちでも良いからここから脱出しなくては!

 

「うわぁぁぁあん!」

「お、おお落ち着けハル!」

「イッセー兄ちゃぁぁぁん!!」

 

 僕は泣きながらイッセー兄ちゃんの後ろに隠れる。

 

 しかし、そこには悪魔の翼が。

 

「兄ちゃんも悪魔じゃないかぁぁあ!!」

 

 僕は逃げ惑う。

 

 その影響で、室内の調度品が倒れたり割れたり、結構な被害が出てしまうが、今の僕にはそれに気を配る余裕なんて無い。

 

 そして僕は部屋の隅に退避する。

 というか、逃げ場が無い。

 

 

 

 

 ああ、お父さん、お母さん。僕、ここまでかも知れない…………。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 ハルが泣いた。

 しかもガチだ。本気と書いて本気(ガチ)だ。

 

 ここにいる全員が悪魔だと知った瞬間、泣き叫びながら錯乱する。

 ってか、俺にも脅えるのかよ!?

 

「ね、ねぇイッセー? どうして彼はあんなに私達、というか悪魔とかを怖がるのかしら? 言いづらいけれど、正直なアレは異常なレベルよ?」

「あー、それなんですけどね…………」

 

 これはぶっちゃけ、俺がそもそもの原因と言えるのでは無いだろうか。

 

 ハルは昔から、驚くほどに純粋で無垢だった。

 一緒にいると、自分がスゴく汚れてると思ってしまうほどに。

 

 事の発端は、俺とハルが小学生の時。当時は俺が六年生で、ハルが五年生だった。

 そして俺は、そのころエロ以外にも、何故かスゴくホラーに嵌まっていたんだ。

 

 だから、自分が嵌まったホラー映画をハルにも教えた。

 流石にR-18指定ではなかったけど結構怖いと評判の映画を、だ。

 

『ハル、面白い映画、一緒に見ようぜ!』

 

 当時はまだ、戦隊物とか仮面ライダーを好んで見ていたハルだ。今はどうだか知らないけど、ホラー映画などとは縁遠い生活をしていたハズだ。

 

 そんなハルに、俺はそのとても面白(こわ)い映画を勧めた。

 確か、悪魔が出てくる話だったはずだ。

 

 俺が勧めたということもあり、ハルは何の疑いもなく、ただ面白い映画だと思ったんだろう。

 

 だけど、高校生になってもサンタクロースを信じているような奴だ。

 そんな奴が何の覚悟もなしにホラー映画を見たらどうなると思う?

 

 それはもう、筆舌にし難いトラウマになるハズだ。実際、ハルはトラウマになった。

 もう、ホラーのホの字でも感じ取った瞬間にはその場からいなくなるくらいに。

 

 その結果が、今の状況だ。

 

「―――という訳なんです」

「つまり、オカルトもダメって事だよね?」

「ああ、そうなるな」

「…私達、存在自体がオカルト」

「だからこそあの状態なのでしょうね」

「これは流石に、弄れませんわね」

「多分、そんな事してるから本気泣きされるのよ、朱乃」

 

 さて、どうしたものか。

 ここは一つ、兄貴分として俺がビシッと決めるか。

 …………原因を作った張本人でもあるし。

 

「なあ、ハル」

 

 部屋の隅で小さくなって震えているハルに、膝をつけて、目線の高さを同じくして、俺は優しく声をかける。

 ハルの肩が一瞬跳ね上がったが、恐る恐る顔を上げて俺の方を見る。

 

「そんなに、悪魔(オカルト)が怖いか?」

 

 その問いに、ハルは頷く。

 

「じゃあ、悪魔になった俺も怖いか?」

 

 その問いの答えには少しだけ時間がかかったが、ハルは首を横に振って否定する。

 

「じゃあ、人間の姿をしてるあの人たちが怖いのか?」

 

 これにはもっと時間がかかっている。

 

 多分、悪魔への恐怖と、皆の容姿とさっきまでの態度への感情がせめぎ合ってるのだろう。

 

「さっきまで、お前、皆が怖かったか?」

 

 首が横に振られる。

 

「悪魔は怖いか?」

 

 今度は縦にだ。

 

「じゃあ、今は皆が怖いんだな?」

 

 今度は、反応がない。

 

「大丈夫だ。皆優しかっただろ? どんなに悪魔が怖くても、今お前の目の前にいる人達は、お前に優しかっただろ?」

 

 頷く。

 

「だったら、そこまで怯えなくても良いんじゃないか? 皆お前を心配してるぞ?」

 

 俺がそういうとハルは、ゆっくりと周囲を見渡す。

 

 きっとそこには、自分が錯乱したせいで荒れた部屋と、それに怒るでもなく、心配そうに自分を見ている皆がいるはずだ。

 

「な? 怖くないだろ? 大丈夫だって。それに何かあったら、兄ちゃんを頼れ、ハル。俺も悪魔になっちまったけど、弟分を守れなくて何が兄ちゃんだよって話だからな」

「…………うん。ゴメンなさい」

 

 小さくか細い声で、ハルが謝る。

 俺はハルの頭をグリグリと少々荒っぽく撫でながら、歯を見せて笑う。

 

「よしよし、良い子だ。でも、謝るのは俺じゃ無いだろ?」

「うん…………」

 

 そういうとハルは立ち上がり、俯きながら皆の方に体を向ける。

 

「あの、その…………ゴメンなさい。皆に怯えちゃって。あと、色々散らかしちゃって」

 

 もじもじと、涙目の上目遣いで皆を見つめながらハルは謝罪の言葉を口にする。

 

 すると、それに皆は慌てたように「大丈夫」という言葉を口にし、謝罪を受け入れる。

 

 うむ。正直、ハルのあの仕草で許さなかった奴を俺は見たことがない。

 しかもアレ、本人が無意識にやってるから、中々にタチが悪い。

 恐るべし、我が弟分。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 ようやくハルも落ち着き、部室の片付けも粗方済んだところで、リアス部長がとある提案(爆弾投下)をしてくる。

 

「ねぇ、ハルトくん。よかったらあなたも私の眷属にならない?」

「え? …………ふぇ」

 

 一瞬にして涙目になったハルを、俺たち全員で宥め、リアス部長が姫島先輩と小猫ちゃんに叱られるという一幕があったのは言うまでも無い。

 

 全く、何やってるんですかリアス部長。

 

 

 ちなみに、ハルが眷属になることはできなかった。

 

 眷属になるには、チェスの駒の形をした『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を使うのだが、リアス部長が今持っている、『戦車(ルーク)』『僧侶(ビショップ)』『騎士(ナイト)』の駒すべてがハルに反応しなかった。

 

 曰く、ハルのポテンシャルが高いせいで、駒一つに対してハルが役不足になるからだそうだ。

 

 ハルを駒一つで眷属にするには特別な駒が必要で、でもその駒はもう使ったあとだから無理で、二つ使おうにもそれぞれ一つずつ使ってるから駒が足りなくて無理なんだと。

 

 すげぇな、ハルの奴。

 そこまで凄い奴が弟分だなんて、兄貴分として鼻が高いぜ、俺は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、ハル。

 俺は悪魔になっちまったけどよ、これからもよろしくな!

 

 

 

 




本作主人公(ハルくん)が可愛い弟系だから、そのお陰で原作主人公(イッセー)が頼もしい兄貴にジョブチェンジしてしまった…………。
スケベなのに。

ちなみに、ハルくんの異常な怖がり方については、色々訳があるのです。
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