ハイスクールG×E   作:フリムン

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第15話

 

 その日の夜、俺はいつになく険しい表情の部長に強く注意された。

 

「教会は私たち悪魔にとって敵地。踏み込めばそれだけで問題になるの。

 今回は人間のハルトもいたし、あなたの厚意を素直に受け取ってくれたみたいだけど、いつ光の槍が飛んでくるかわからなかったのよ?」

 

 マジかよ。

 もしかしたら俺は、ハルまでもを危険に晒していたかも知れないのか。

 

「は、はい」

「あなたの人間としての死は悪魔転生で免れたかもしれない。けれど、悪魔の死は消滅よ。無に帰すの。

 それだけじゃないわ。今の私では、ハルトを悪魔にすることはできない。悪魔のあなたと一緒にいると言う理由で彼が襲われて殺されても、私は彼を蘇らせる事はできないの」

 

 そうだ、ハルは死んだら、俺みたいに転生って言う裏技が使えないんだよな。

 

「………ゴメンなさい。熱くなりすぎたわね。とにかく、今後は気を付けてちょうだい」

「はい、俺もハルを危険に晒したくは無いので」

「あなた自身の心配もしなさい? 私の眷属なのだから」

 

 俺と部長の会話がそこで終わると、朱乃さんが部室に入ってくる。

 

「あらあら、お説教は済みました?」

「朱乃、どうかしたの?」

 

 部長の問いに、朱乃さん少しだけ顔を曇らせた。

 

「はぐれ悪魔の討伐依頼が大公から届きました。対象名はバイザーとのことです」

 

 すると、部長もどこかバツの悪そうな顔をする。

 

「………ゴメンなさい、イッセー。さっきの話からアレなのだけれど、ハルを呼んでくれないかしら? 正直、この相手は私たちだけじゃ厳しそうよ」

 

 倒せないことは無いんだけどね。

 と、部長は少しだけ悪戯っぽく笑う。

 

「私達の戦いを、皆にも見せて上げたいわ」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 なんか夜中に呼ばれた。て言うか拉致られた。姫島先輩に。

 

「眠い…………」

「あらあらごめんなさいね?」

「だったら帰して下さい」

「うふふふ」

 

 いや、うふふふじゃなくてね?

 僕は今、姫島先輩に腕を組まれて歩いている。

 

 夜中に美女と腕を組んで歩く。

 

 文字にすると何とも甘美で素晴らしい事なのだが、状況が状況だ。喜べない。

 て言うか怖い。

 

 悪魔でも、オカ研メンバーの皆は怖くないんだけど、姫島先輩は悪魔とかそういうのを無しにしてもなんか身の危険を感じる。

 

 悪意とかそういうのじゃなくて、なんと言うか、こう……肉食獣に感じるような危険臭。

 

「ほら、後少しですわよ」

 

 気がつけば、僕は町の外れまで来ていた。

 先程のように住宅は殆ど無く、街灯がちらほらとあるだけ。

 

 つまり、暗い。

 

「どこに向かうんですかー!? 帰るー! こーわーいー!!」

「向こうに皆いますわよ?」

 

 向こう!? 三途の川の!?

 

「おーい、ハルー」

「…ハルト」

 

 あ、イッセー兄ちゃんに小猫ちゃん。

 …………二人を見たらなんだか落ち着いてきた。

 

「ご苦労様、朱乃。それにハルト、急に連れ出して悪かったわね」

「うぅ……大丈夫です…………」

「私達はこれから、はぐれ悪魔の討伐をするのだけど、情けない話、私達だけじゃ厳しいの」

 

 ―――だから、少しでいいから手伝ってくれない?

 

 そうグレモリー先輩がお願いしてくる。

 すると、普段は無表情の小猫ちゃんが、どこか怒ったような表情でグレモリー先輩に詰め寄る。

 

「…部長、どういうことですか。ハルトを戦いに巻き込むなんて」

「小猫?」

「…ハルト、イヤなら断っても良いんだよ? 私達に依頼が来たと言うことは、私達で倒せる相手と言う事だから」

 

 小猫ちゃんが、少し早口で僕に言ってくる。

 まだ事情はよく飲み込めていないけど、これから皆は何かと戦うのだろう。

 

 確か、はぐれ悪魔と。

 『はぐれ悪魔』と言う言葉の意味はわからないけれど、僕より強いはずのグレモリー先輩が、僕にも協力を扇いできたと言うことは、つまり、

 

「それって、小猫ちゃん達も危険だって事だよね? だったら僕も行くよ」

「…ハルト?」

「だって、皆が危ないのはイヤだし、それに」

 

 僕は一旦、そこで言葉を区切る。

 あの日、皆に僕の昔話をした時から決めてた事があるんだ。

 

「…それに?」

「僕、皆のこと怖がりたくないんだ」

 

 それは、悪魔恐怖症の克服。

 

 僕は皆が大好きだ。

 みんな優しくて、一緒にいると楽しくて。

 

 でも僕は悪魔が怖いから、ふとした拍子で皆の事を怖がってしまう。

 そしてそんな自分を、嫌悪してしまう。

 

「だから僕は、一緒に行くよ」

「…そう。ハルトが決めたなら、私は止めない。でも、怪我だけはしないでね?」

「大丈夫だよ。僕にもちゃんと、神機(戦える力)が、もうちゃんとあるんだからさ」

「…うん、ならよかった」

 

 そう言って、小猫ちゃんは微笑む。

 

 僕はそれに少しだけ驚く。

 だって、彼女はいつも無口で、表情の少ない子だったから。

 

「だから小猫ちゃんも、怪我しないでね?」

「…大丈夫。これでも私、戦車(ルーク)だから」

「ふふ」

 

 ふんす、と息を吐き、どこか気合いの入ったような彼女を見て、僕はつい笑ってしまう。

 

「…笑うのは、酷いと思う」

「ゴメンゴメン」

 

 そこでいきなり、僕の肩が後ろに引かれてバランスを崩し、次の瞬間には僕の頭は何か柔らかい物の上にあった。

 

「あらあら、二人ともとても仲が良さそうですわね」

 

 その柔らかい物は、姫島先輩のおっぱいだった。

 

「ッ!?」

「ほら、暴れないの。うふふ、可愛いわね」

 

 咄嗟に離れようとした僕を、姫島先輩が抱き締めるように押さえつけ、僕の頭が余計おっぱいに沈み込む。

 

 まって! いや、こういうのは男子として嬉しいんだけどさ! ほら! イッセー兄ちゃんは血涙を流してるし、何より小猫ちゃん!

 

 無表情だけど、なんかオーラ出てるから! あれ絶対怒ってるよ! なんでかは分からないけど、絶対怒ってる!

 

「…朱乃さん。ハルトを離してください」

 

 小猫ちゃんが僕の両手を掴み、引っ張る。

 

「うふふ、やーだ、ですわ」

 

 なんか楽しんでる!? いや、楽しくなかったらやらないんだろうけどさ! この人アレだ、小猫ちゃんを怒らせると言うか、おちょくって楽しんでる!

 

「…ハルト、ほらこっち」

 

 いたたたたたた!! 首もげる! 腕千切れる!

 

 僕が声を出せずに苦しみ、二人が不機嫌顔とニコニコ顔で睨み合っているとき、救世主(ただし悪魔)が現れる。

 

「こら二人とも、その辺にしときなさい? ハルトが死にそうよ」

 

 グレモリー先輩のその一言で二人の動きが止まり、僕を見る。

 

 そして二人はすぐに僕を離し、顔を青くしたり、冷や汗をかいたりする。

 

「…ゴメンなさい、ハルト。本当にごめんなさい」

「ちょっとおふざけが過ぎましたわ。ごめんなさい」

「ああ、うん。大丈夫」

 

 何とか絞り出した声は、自分で驚くほどに弱々しかった。

 

 二人が僕に駆け寄り、謝りながら体のあちこちを触ってくる。

 いや、大丈夫だって。あれ以上やられてたら流石にヤバかったけどさ。

 

 

 

 その時、小猫ちゃん顔が一瞬険しくなる。

 

 

「…血の臭い」

「そう、来たのね。皆、準備なさい! イッセーとハルトも構えて!」

 

 グレモリー先輩に促されて、僕は神機を、兄ちゃんは籠手を装備する。

 

「イッセー、あなたには下僕の特性と悪魔の戦い方を教えてあげる。ハルトは…………」

「戦います。もう、怖がりたくないから」

「そう。なら、構えなさい。来るわよ!」

 

 

 グレモリー先輩がそう言うと、皆の空気が引き締まる。

 

 …………来る。

 

 

『不味そうな臭いがするぞ? でも美味そうな臭いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?』

 

 不気味な声が辺りに響く。これだけでもう気を失いそうだった。

 

「はぐれ悪魔バイザー。あなたを消滅しに来たわ」

 

 グレモリー先輩のその言葉に、ケタケタケタと、人間の発することのできない笑い声が響く。

 

 血の気が引く。

 

 

 

 

 

 そして、

 

 

「おっぱい!」

 

 

 

 とりあえずイッセー兄ちゃんをぶん殴る。

 

 

 

 

 

 だがしかし、次の瞬間現れたのは、女性の体の下半身に巨大な化け物が付いている異形だった。

 

 

 

 

 それを見た僕は、

 

 

「……………………きゅう」

 

 

 

 

 

 なにこれ怖すぎる。

 

 

 

 

 




大丈夫、ハルくんはちゃんと頑張りますから!


それと、この小説に付いているタグの一つは『敵強化【小】』です。
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