ハイスクールG×E   作:フリムン

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第16話

 

「きゅう…………」

「ハル!」

 

 恐怖で意識が遠退く。

 いつもなら、僕はこれで気を失っていただろう。

 

 でも、

 

「…………ふりゃ!」

「耐えた!?」

 

 今も恐ろしくて、怖くて仕方がないけど、でも、ここで気を失ったら意味がないんだ!

 

 僕は決めたんだ、変わってやるって。

 もう皆を怖がりたくないから、自分に嫌気を感じたくないから、だから僕は、ここで気を失ってはいけない。

 

 足はこれ以上ない位に震えてて、今にも神機を取り落としそうだけど、僕は前を見つめる。

 

 敵を、見据える。

 すると、僕の両肩に手が置かれる。

 

「…大丈夫だよ、ハルト。私達が付いてるから」

「そうですわ。ここには、皆がいますのよ?」

 

 小猫ちゃんと姫島先輩が、優しい笑顔を僕に向けながら、そう言って来る。

 

 

 ―――うん、わかった。

 

 

 そう頷き返すと、二人は安心したように、僕から手を離し、前を向く。

 

 その視線の先では、グレモリー先輩とはぐれ悪魔が言葉を交わしていた。

 

「その紅の髪のように、お前の身を鮮血で染め上げてやるわぁぁぁ!」

「悪役ほど洒落のきいたセリフを吐くものね。祐斗!」

「はい!」

 

 グレモリー先輩の呼び掛けに、木場先輩が飛び出す。

 

 正直、速すぎて殆ど見えなかった。木場先輩の姿が霞んで見えたくらいだ。

 

「ハァッ!」

 

 いつのまにか木場先輩の手に握られていた長剣の銀閃が走る。

 そして、その光景に遅れて、金属と金属を打ち合わせるような音が何度も響く。

 

「くっ!? 部長、コイツ、物凄く硬いです。まるで全身が金属のような硬さです」

「そう。なら小猫、朱乃!」

「…はい」

「はいですわ」

 

 今度は、僕の隣にいた小猫ちゃんが駆け出し、姫島先輩が歩を進める。

 

「…斬れないなら、砕けろ。えいっ」

 

 何とも力みの無い言動とは裏腹に、小猫ちゃんの鋭い踏み込みから放たれた一撃は、その矮小さからは想像もできない轟音を響かせて、化け物を吹き飛ばす。

 

「…ハルトに良いところ、見せるんだから」

 

 何か小猫ちゃんが言っているようだけど、何て言ってるかは聞き取れなかった。

 だって声ちっちゃいし…………。

 

「あらあら、張り切ってますわね、小猫ちゃんったら。これは私も、良いところ見せなくてはいけませんね」

 

 姫島先輩が手を上に翳す。

 

 瞬間、眩い閃光とともに雷が化け物に直撃した。

 化け物は激しく痙攣し、体から煙を上げる。

 

 ………ちょっとどころじゃないくらいグロい。

 

「あらあら、まだ元気そうね? まだまだ行けそうですわ」

 

 再び雷が化け物を襲い、感電させる。

 

「うふふふふふふ」

 

 姫島先輩は笑っている。それはもう、本当に愉しそうに。

 

「ひぃっ!?」

 

 あまりの恐ろしさに、僕は悲鳴を上げる。あの人やっぱり怖いよ。

 

「…………大丈夫よ、ハルト。朱乃は身内には優しいから。あなたのこと気に入ってるみたいだし、甘えたらきっと優しく抱き締めてくれるわ。多分」 

 

 グレモリー先輩、最後の一言で台無しだよぉ…………。

 

 姫島先輩、ホントはオカ研じゃなくて、愉悦部なんじゃ無いのだろうか…………。

 

ぢょうじにのるばよ(調子に乗るなよ)ごぶずべどもが(小娘どもが)ぁぁぁ!」

 

 所々黒焦げになりながらも、化け物は魔力を放出して姫島先輩の雷を消し飛ばす。

 

「【淫猥なる魔酸(アシッド・リチェリー)】!!」

 

 化け物が魔方陣を構築して、僕たちに反撃をしてくる。

 

 …………いや、一応ちゃんとした技なんだろうけどさ、それはないわー。

 

 だってさ、おっぱいもんで乳首に魔方陣だして、そのまま乳首から攻撃してくるんだもん。

 なんか色々と、おかしい攻撃だなぁ。

 

「のぉうわ!?」

 

 だけど、やっぱり【(アシッド)】って言うだけあって、その液体に触れたコンクリートがアッサリと溶けてしまう。

 意外と強力な酸だ。

 

「きゃぁ!!」

 

 僕たちは何とか避けられたが―――僕は小猫ちゃんに、兄ちゃんはグレモリー先輩抱えられて、だけど―――、姫島先輩は近くにいたために少し反応が遅れて、右足に少し酸がかかり、火傷してしまう。

 

「朱乃!」

「姫島先輩!!」

 

 僕とグレモリー先輩の声が重なる。

 

「まずは貴様から溶けて消えろぉ!」

 

 化け物が両手を構えると、先程と同じ魔方陣が構築される。ただし、大きさはさっきの倍以上だ。

 

「まずいわ! あけn――「姫島先輩ッ!」え?」

 

 気がつけば僕は駆け出していた。

 殆ど無意識に小猫ちゃんの腕から抜け出し、無我夢中で姫島先輩のもとまで駆け寄る。

 

「死ね! 雷撃の小娘ぇぇ! 【魔酸砲(アシッド・カノン)】!!」

「さ、せ、る、かぁぁぁあ!!」

 

 僕が姫島先輩の前に飛び出した瞬間、大量の酸が砲弾のように襲いかかってくる。

 

 例え神機の装甲を展開しても、本来なら間に合わないはずだった。

 もし間に合ったとしても、僕の装甲はシールドで、後ろへダメージが通るはずだった。

 

 

 だけど、

 

 

 僕の神機は、握れば握るほど、その神機の情報が頭に入ってくる。

 何ができるのか、何をすべきなのか。

 

 

 だから、わかるんだ。

 

 今のこの、絶望的な状況を切り抜ける為の方法が。

 

 

 脳裏に声が響く。

 

 

 

 

 

 ――――()()()発動。

 

 

 

 ――――【穴熊】

 

 

 

 体が動く。

 何かに導かれるように、確信を持って。

 

 発動したのはスキル。

 それも、防御系最強のスキル。そうだ、これは僕がゲームで使っていたスキルじゃないか。

 

 

 

 凄まじい衝撃が装甲を襲うが、僕らには一切のダメージは通らない。

 

【穴熊】に含まれているスキルたちが、すべてのダメージを無効化していく。

 

「ば、バカな! 無傷だとぉぉぉ! 人間めぇぇぇ!」

 

 

 化け物は、先程の攻撃が効かなかった事に驚愕し、今度は僕から潰そうとしてくる。

 

「逃げて、ハルトくん!」

 

 姫島先輩の悲鳴に近い声が聞こえる。

 でも、そういうわけには行かないんだ。

 

「大丈夫ですよ、姫島先輩。僕だって、戦えるんですから」

 

 神機を構えると、神機を握る両手に脈動を感じる。

 まるで、獲物を目の前にした獣のように。

 

「行くよ、神機! 喰い千切れ、【捕食形態(プレデター・フォーム)】!」

 

 神機は形を変え、化け物に食らい付く。

 相手はアラガミじゃないけど、神機が教えてくれる。

 僕は悪魔や堕天使のような超常を喰らうことで、

 

「リンクバースト、発動!」

 

 限界を超えられるのだと!

 

 体を光が包み込む。力が溢れる。

 

 

 

 

 ――――同時に、少しだけ、お腹が満たされたような感覚が訪れる。

 

 

 

 

「小賢しぃぃぃい!」

 

 その質量を持って押し潰さんと走ってくる化け物を前に、僕は一つの構えを取る。

 

 それは、ゲームで『ゼロスタンス』と呼ばれていた構え。

 

「ブラッドアーツ発動」

 

 イメージするのは、神速。

 すれ違いざまに切りつける、あの技。

 

「切り刻まれろ。【疾風ノ太刀・鉄】!」

 

 化け物が刻まれる。

 『騎士(ナイト)』の木場先輩が斬れなかった相手を。もちろん、弱っていたと言うこもあるが。

 

「ぎゃぁぁぁぁあ!」

「これで(とど)めだ! ブラッドアーツ発動!」

 

 1歩、僕は踏み込んだ。

 剣の切っ先を相手に向け、力を溜める。

 

 刀身に纏うのは、金色のオーラ。

 

「穿ち砕け! 【轟破ノ太刀・金】!!!」

 

 直後、響くのは轟音。

 突き出した剣は、化け物よ腹を突き破り、化け物部分と人型部分を切り離した。

 

 よって、断末魔の叫び声を上げる。

 それを見ながら、僕は銃形態(ガン・フォーム)へと神機を切り替える。

 

「だめ押しだけど、返すよ」 

 

 そして打ち出したのは、先程食らった、酸の【アラガミバレッド】…………いや、悪魔だから【イーヴィルバレッド】とでも名付けようか。

 

 

 そしてついに、化け物、はぐれ悪魔バイザーは、この世界から完全に消滅したのだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 バイザーが完全に消滅したのを見届けた僕は、その場で尻餅を付く。

 正直、アドレナリンが出てたから戦えたけど、もうヘトヘトだ。

 

 戦うのは怖いけど、もしかしたら、これからもこんな闘いがあるのかも知れない。だったら、この慢性的な体力不足をどうにかしなくちゃな。

 

 

「ハルトくん!」

 

 いきなり、後ろから抱き付かれる。

 なんかデシャヴ。

 

「ありがとうございますわ、助けてくれて」

 

 やっぱり姫島先輩か。

 

「いえ、無事で何よりです。足、大丈夫ですか?」

「ええ、このくらいなら。本当に、ありがと う……………カッコ良かったですわよ、ハルトくん」

 

 

 

 

 

 

 そんなこと耳元で言わないでください。

 

 凄くこっ恥ずかしいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ハルト、デレデレしないで」

 

 痛い痛い痛い!! 小猫ちゃん耳引っ張らないでよ取れちゃうって!

 

 

 

 

 

 

 これで少しは、皆の事、怖くなくなったかな?

 

 うん、なくなったかも。

 

 

 




敵強化【小】とか言いつつ、バイザーが結構強化されてましたすみません。

それと、オリジナル技まで出しちゃいました…………。






朱乃さん、陥落。
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