俺に向かって勢い良く飛んでくる光の槍。
その的である俺は、癒されたとはいえ、光で両足を焼かれ、動くことはできない。
「なに!?」
だが、突如として、その光は撃ち砕かれた。
「…………何をしているのさ、堕天使」
その声は、ここから少し離れた場所から聞こえてきた。
「バカな!? その距離から撃ち抜いたとでも言うの!?」
「この距離を当てられなくて、スナイパーは名乗れないね」
この声は…………ハルだ!
あいつ、なんで逃げてねぇんだよ!?
「この、人間風情が!」
レイナーレが頭上に手をかざし、光を集め始める。
だが、大きな音がハルの方から響いた瞬間、その光は霧散した。
「アルジェントさんを離せ。次は当てるぞ」
その声は酷く低くて、重くて、俺の知っているハルの気配では無かった。
「くっ…………」
なんとか体をずらし、ハルの姿を見るとそこには、怒りのオーラを纏ったハルが、神機を手にレイナーレを睨み付けていた。
「あらぁ? 良いのかしら?」
だが、レイナーレはそれに怯えること無く、アーシアの首筋に手を添える。
「私を撃てば、もしかしたらアーシアに当たるかもよ?
それでも良いのかしら? まぁもっとも、あなたが引き金を引くよりも早く、私はアーシアの首を落とせるわよ?」
「なん…………!?」
その言葉に、俺とハルは絶句し、動きを止める。
「アーシアを殺されたくなかったら、動かないことが懸命ね」
「卑怯な!」
「あははは! なんとでも言いなさい? 帰るわよアーシア。
イッセーくん、今回は彼とアーシアに免じて殺さないでおいて上げるわ。感謝なさい」
そして今度こそ、堕天使レイナーレは、アーシアを抱えて飛び去ってしまう。
「待てよ、堕天使………アーシアァァァア!!」
俺は手を伸ばし、アーシアの名を呼ぶ。
だけど、後に残ったのは黒い羽根と、俺達三人が楽しそうに写っている写真だけだった。
――――また何も、できなかった。
ちくしょう…………ちくしょう…………。
「ちくしょぉぉぁぉおおおおお!!!」
俺達以外誰もいない公園に、俺の声が響き渡った。
ああ、ハルの気持ちが良く解ったよ。
弱いのは嫌だ。
誰も守れないのが、ただ見てる事しかできないのが嫌だ。
―――――ああ、強くなりてぇなぁ。
◆◇◆◇◆◇◆
部室に、乾いた破裂音が連続して響いた。
発生源は僕とイッセー兄ちゃんの頬。
叩かれた。僕たちはグレモリー先輩に平手打ちをされた。
「何度言えばわかるの? ダメよ、あのシスターの救出は認められないわ」
あの後僕たちは、事の顛末を皆に話した。
話した上で、アルジェントさん救出を提案した。
当然、悪魔と堕天使の問題で、部長はそれに関して、手を出すな、と言った。
それが納得できない僕たちは、何度も何度もお願いをし、その結果が今のビンタだ。
「これは下手をすると、悪魔と堕天使の戦争にまで発展しかねない問題なのよ? それを私達のみで決める事なんて…………」
そうか。そう言うことなら。
「なら、僕が行きます」
「ハルト?」
「僕はこの中で、唯一の人間です。僕なら、何も問題は無いでしょう?」
「あるわよ!」
悪魔と堕天使で問題が発生すると言うのなら、僕が。
しかし、それも先輩に却下されてしまう。
「いくら貴方が規格外でも、相手は大勢いるのよ? それにあなた、命を奪えないじゃない!」
そうだ。確かに僕は殺すのが怖い。
でも、それでも僕は行かなきゃいけないんだ。
アルジェントさんが、僕の友達が待ってるんだから。
「なら、俺は『はぐれ』になります」
「イッセー!?」
「グレモリーの眷属から、悪魔の社会から外れて、俺達だけでも向かいます!」
「ダメよ! そんなの、私が許さないわ!」
「なら部長は俺に、俺達に、友達を見捨てろっていうんですか!?」
「あなた達は死んだら、生き返れないのよ!!」
イッセー兄ちゃんとグレモリー先輩が激しく言い争う。
「家族を、友達を、仲間を愛して、敵を消し飛ばすのがグレモリー眷属じゃなかったんですか!?」
イッセー兄ちゃんのその言葉に、グレモリー先輩は黙り混み、静かに睨み合いが始まる。
「…………あの子は私には無関係の子よ。イッセー、彼女の事は忘れなさい。ハルト、あなたもよ。あなたが死んだら、悲しむ人たちが沢山いるの」
そこへ、姫島先輩がやって来て、グレモリー先輩に耳打ちをする。
姫島先輩から何かを聞いたグレモリー先輩は、部室にいる僕たち全員を見渡すように言った。
「大事な用事ができたわ。私と朱乃は少し外へ出るわね」
「部長、話はまだ―――!」
踵を返した先輩を兄ちゃんが追いかけると、先輩はクルリと振り返り、兄ちゃんの口元に人差し指を当てる。
「イッセー、あなたに話しておくことがあるわ」
グレモリー先輩がイッセー兄ちゃんに教えたのは、兄ちゃんに使われた駒、【
そしてもう一つ。
「イッセー、
強い想い、強い意思こそが、
それだけ言うと、グレモリー先輩は踵を返して部屋から出ていってしまう。
…………今のは、もしかして?
そう思って、ドアの所へ視線を向けると、まだ部屋から出ていない姫島先輩と目が合う。
すると、姫島先輩はニッコリと笑い、素早くウインクをして部室から出ていってしまう。
…………やっぱり、そう言うことか。
全く、グレモリー先輩のツンデレめ!
「行くよ、イッセー兄ちゃん」
「おう」
僕と兄ちゃんがドアへ向かうと、二つの人影に遮られる。
「待つんだ、二人とも」
「退いてくれ木場、小猫ちゃん! 俺達は行かなきゃいけないんだ!」
「…殺されますよ? 相手ははぐれとは言え、悪魔殺しのプロ達ですから」
「それでも行くさ」
「いい覚悟、と言いたいけど、やっぱり二人じゃ無謀すぎるね」
「だったら、いったいどうしろってんだ!」
痺れを切らせて怒鳴るイッセー兄ちゃんに、木場先輩は優しく微笑む。
「僕は、『二人じゃ』って言ったよ? 僕らも行く。ほら、これで四人だ」
木場先輩がそう言って笑う。
…………ちぇ、イケメンはなんでも絵になるなぁ。
「僕らはアーシアさんを良くは知らない。けれど、キミ達は僕らの仲間だ。だからこそ、僕はキミ達二人の意思を尊重したい」
「木場…………」
「それに、個人的に神父や堕天使は嫌いだからね」
そこで、僕の裾がクイ、と引っ張られる。
「…それに、部長も言ってました。教会は敵地だって。なら、先輩はプロモーションできます」
「あ」
イッセー兄ちゃんもようやく気付いたようだ。
「さ、行こうか。キミ達の友達の、アーシアさんを助けるために!」
「…出発」
あぁ、 なんて頼もしい人達なんだろう、この悪魔たちは。
嬉しいなぁ。
ね、イッセー兄ちゃん。
「ああ、行こうぜ! 待ってろよ! 今助けに行くからな 、アーシア!」
イッセー兄ちゃんのその号令で、僕たちは部室を飛び出した。
前話も含め、少し寝惚けながら書いていた部分もあるので、もしかしたら変な部分があるかも知れません。
気づき次第訂正しますが、何かお気付きになられた方はご連絡下さい。