ハイスクールG×E   作:フリムン

25 / 81
スキル12個全て決定しました。
ご意見をくださった方々、ありがとうございました!


第23話

 祭壇下の階段を下り奥へ続く通路を抜けた僕達の前に、巨大な扉が現れる。

 

「いいかい兵藤くん、神結くん。ここから先は恐らく、敵の真っ只中だ。覚悟はいい?」

 

 木場先輩のその言葉に、僕たちは力強く頷く。

 

「わかった、じゃあ、行くよ――――」

 

 イッセー兄ちゃんと木場先輩が扉に手をかけると、その扉が勝手に開く。

 

「いらっしゃい。悪魔に化け物の皆さん」

 

 開け放たれた扉の向こうから、堕天使レイナーレが言葉をかけてくる。

 

 部屋中には、神父とおぼしき格好の人達が沢山いて、その部屋の奥に、僕達は十字架に磔にされている少女を見つける。

 

「アーシア!」

「アルジェントさん!」

 

 僕達の呼び掛けに、俯いてグッタリしていた彼女は顔を上げる。

 

「…………イッセーさん? ハルトさん?」

 

 その声は酷く弱々しくて、今にも消え入りそうだった。

 

「ああ、助けに来たぜ、アーシア!」

 

 イッセー兄ちゃんが笑いかけながらそう言うと、アルジェントさんは涙を流す。

 

 しかし、そんな空気も、レイナーレが壊してしまう。

 

「感動のご対面だけど、遅かったわね。いま、儀式が終わるところよ」

 

 突然、アルジェントさん体から光が溢れる。

 同時に、彼女の苦しそうな悲鳴が聞こえる。

 

「なにを!?」

 

 僕らが駆け寄ろうとすると、神父達が道を塞ぐが、小猫ちゃん達が僕達の道を切り開く。

 

 それでも少し時間が掛かり、アルジェントさんの下へ行く頃には、彼女から大きな光が飛び出していた。

 

 それを、レイナーレが手に掴む。

 

「これよ、これだわ! これこそが、私が長年欲していた力! 神器(セイクリッド・ギア)! ああ、これさえあれば!」

 

 レイナーレの表情は、歓喜と狂喜と、恍惚に彩られていた。

 対して、その光を抜き取られたアルジェントさんは、グッタリと気を失い、顔を青ざめさせていた。

 

 

 ………………………………。

 

 

「……………………何をした」

 

 ポツリと、僕はそう呟く。

 

 アルジェントさんから出てきた光。そしてそれを取り込んだレイナーレから出た光。

 その二つはどちらも淡い緑の光で…………――――。

 

 

「今、アルジェントさんに何をした」

 

 だけど、僕の声は届かない。

 レイナーレは今、歓喜の感情にうち震え、周りが目に入っていないのだ。

 

 だから僕は、声を張り上げた。

 

「今彼女に何をしたのかって訊いているんだ! 堕天使!!!」

 

 跳び上がり、斬りつける。

 

 だけど、空中を戦場とする彼女には、僕の剣は届かなかった。

 

「何って、神器(セイクリッド・ギア)を抜いたのよ。ふふ、残念ねぇ」

「どういう意味だ」

「だって、あなた方がどんなに頑張って助けても、その子、死ぬわよ?」

「なん…………っ!?」

神器(セイクリッド・ギア)を抜かれた者は、死ぬしか無いのよ」

 

 

 …………つまり、なにか?

 

 こいつは今、アルジェントから神器(セイクリッド・ギア)を抜き取った。

 そして、それを抜き取られた人は、必ず死ぬ、と?

 

 

 なんだそれは。

 

 

 ふざけるな。

 

 

 

 

「レイナーレェェェエエ!!」

 

 

 イッセー兄ちゃんの怒号が響く。

 

「二人とも! 一度上に上がってくれ! 守りまながらじゃ分が悪い!」

 

 木場先輩が神父を斬り払いながら呼び掛け、小猫ちゃんと道を作る。

 イッセー兄ちゃんがアルジェントさんを抱き上げ、僕に目配せをして走り出す。

 

 僕もそれに無言でついて行った。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「アーシア! アーシアはもう自由なんだ! 俺達といつでも遊べるようになるんだ!」

 

 イッセー兄ちゃんが、長椅子に横たえたアルジェントさんの手を握り、必死に呼び掛けている。

 

 僕は唇を噛みながら、ただひたすら、彼女の手を握りしめることしかできない。

 

「………私、少しの間だけでも、友達ができて…………本当に、幸せでした…………」

 

 僕には、彼女が何て言ってるのかわからない。こんなことなら、もっと英語を勉強しておけば良かった。

 でも、言葉は通じなくても、彼女が何を言いたいのか、何となく、わかる。わかってしまう。

 

 そして同時に、彼女が助からないことも。

 

「な、なに言ってんだよ! そんなこと言うなよ、アーシア! これから俺たちは、もっと沢山遊んで、笑って、楽しく過ごすんだよ! どこにだって連れていってやるさ! ゲーセンも、カラオケも、ボウリングだって! 他にもあるぞ! もっと沢山の事を、俺たちはするんだよ! アーシア! 俺たちは三人でさ!」

 

 イッセー兄ちゃんも泣いていた。

 きっと、気づいたのだろう。

 彼女の命の灯火が、すでに消え始めていることを。そしてそれを今、全力で否定しようとしている。

 

「俺らはダチだ! ずっとずっと、友達なんだ! ああ、松田や元浜にも紹介しなくちゃ! これからアーシアは幸せになるんだよ! 沢山の人に囲まれて、笑顔で過ごすべきなんだ!」

「…………きっと、この国で生まれて、イッセーさんや、ハルトさんと、同じ……学校に行けたら…………」

「なら行こうぜ! 一緒の学校に行くんだよ! 日本語なら、俺たちが教えてやる!」

 

 アルジェントさんの手が、僕とイッセー兄ちゃんの頬を撫でる。

 

「…………もう、前が見えませんけど…………私のために、私なんかの為に、泣いてくれてる…………あぁ、もう、何も……」

 

 その手が、ゆっくりと落ちていく。

 

「…………ありがとう…………幸せでした…………」

 

 

 

 

 ――――――それが、彼女の最期の言葉だった。

 

 

 ゆっくりだったから、僕にも聞き取れた。

 

 

 何が、ありがとうだ。

 何が、幸せだ。

 

 結局救えなかった! 死なせてしまった! 

 

 守るって、助けるって、そう決意したばっかりなのに! なのに、僕はッ!!

 

 

 

 

 イッセー兄ちゃんは、泣きながら空に、天に叫んでいる。

 悪魔なのに、神様に救いを求めて。

 

 

 

 

 

 

 

「滑稽ね。悪魔が神に救いを祈るなんて」

 

 

 

 

 

 

 嘲る声が聞こえる。

 

 堕天使が、地下から上がってくる。

 

「見てごらんなさい? 下であの騎士につけられた傷なんだけどね?」

 

 その傷口にレイナーレが手をかざすと、淡い緑の光が放たれ、傷を塞いでいく。

 

 

 

 

 ――――おい。

 

 

 

「見て? 素敵でしょう? どんな傷も癒してしまう、美しい光。なんて素晴らしい神器(セイクリッド・ギア)なのかしら!」

 

 

 

 

 ――――なんで、なんでお前がそれを使う。

 

 

 

 

「…………返せよ」

 

 声が震えた。

 

「嫌よ。これは私の物なのだから」

 

 認められるものか。

 

「ふざけるな………ふざけるなよ! それはお前みたいな腐れ外道が使っていい光じゃない!」

 

 語気が荒れる。怒りで、視界が真っ赤に染まる。

 

「返せよ! それはアルジェントさんの光だ! 優しいアルジェントさんの、優しい光だ!

 それをお前が使うな! お前が汚すな! その光を、あの人に返せよ、レイナーレェェェエエ!!」

 

 

 こいつだけは許せない。赦しちゃいけない。

 

 僕はもう、僕達はもう、怒りを抑えきれない。

 

「薄汚い化け物が、私の名を呼ぶんじゃない!」

 

 光が降り注ぐ。

 僕とイッセー兄ちゃんを貫こうとする、優しくない光。

 

 アルジェントさんのそれとは、比べ物にならないくらい、汚い光。

 

 

 

 

「邪魔だ!」

 

 

 

 神機を横薙ぎに一閃し、光を消し去る。

 

 憎い。

 こいつが、憎い!

 

 

 

『ならば手を伸ばせ』

『恐怖などとうに喰い尽くした』

『あとは、敵を破壊するだけ』

 

 

 

 うん、わかってるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕がこいつを、殺す(・・)為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――スキル【剣聖】発動」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は、力を振るう事を躊躇わない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。