ハイスクールG×E   作:フリムン

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第25話

 

 イッセー兄ちゃんが堕天使を殴り飛ばした。

 それはいい。凄くいい。

 

 でも僕は一つ、気になることがあった。

 それは、イッセー兄ちゃんが使った【破撃ノ拳打・龍】。あれは絶対、ブラッドアーツだった。

 しかも、兄ちゃんの籠手が発したあの光。あれを僕はよく知っている。

  

 あれは、血の力だ。

 血の力の発現時に、体から溢れる光。

 

 なぜ、ゴッドイーターでもない、ましてや偏食因子すら持たないイッセー兄ちゃんが血の力に目覚めたのかは解らない。

 

 

 

 

 でも、今はどうでも良い。

 今はただ、あの堕天使を倒せたことだけを理解しておこう。そちらの方が、重要なんだから。

 

「お…………っと」

 

 体の力が抜けて、僕は後ろに倒れていく。

 

「…頑張ったね、ハルト。カッコ良かったよ」

 

 でも、後ろから小猫ちゃんが抱き付いて、僕を支える。

 

「よかった…………無事だったんだね、小猫ちゃん」

「…うん」

 

 一通りの会話がすむと、涙がまた零れてくる。

 さっきも泣いた。戦ってる時も泣いていたはずだ。

 

 それなのに、僕の涙は止まることも、枯れることも知らないように、次から次へと溢れてくる。

 

 嫌だなぁ…………もう泣きたくなんか無いのに。

 

「…いいんだよ。泣いても。痛かったね、辛かったね。…………悲しいね」

 

 優しい、慈愛に満ちた小猫ちゃんの言葉が、僕の心に染み込んでくる。

 

「うん……うん…………」

 

 涙が止まらない。

 僕は、友達を守れなかった。

 

 言葉は通じなかったし、年齢も、好きな食べ物も、あの人の事は殆ど分からなかったけど、あの人は、あの優しい女の子(アルジェントさん)は、それでも僕の大事な友達だった。

 

 仇は討った。

 でも、それで彼女が帰ってくることなんて無いんだ。

 

 

 

 

「部長、連れてきましたわ」

 

 いつのまにか来ていた姫島先輩が、同じくいつのまにか来ていたグレモリー先輩の前に、レイナーレを落とす(・・・)

 

「ありがとう、朱乃。起こして貰えるかしら」

「はい」

 

 グレモリー先輩の頼みに、姫島先輩は空中に水の塊を作り、それをレイナーレの顔面に叩きつけた。

 

 …………姫島先輩、怒ってる?

 

「ゴホッ、ゴホッ!」

「ごきげんよう、堕天使レイナーレ」

「リアス・グレモリー…………」

「久しぶりね。早速だけど、あなたのお仲間の二人…………ドーナシークとカラワーナと言ったかしら? あの二人なら来ないわ」

 

 グレモリー先輩が事も無げに言ったその言葉に、一瞬理解できなかったのかレイナーレは固まり、次いで顔色を蒼白へと変える。

 

「う、嘘よ…………」

 

 すると、先輩は懐から二枚の羽根を取りだし、レイナーレに渡す。

 

「これが彼女たちの羽根よ。あなたならわかるでしょう?」

「そんな…………」

「そこそこ手強かったけれど、所詮は下級堕天使。しかも一人は手負い。2対2で負ける方が難しいわ」

 

 グレモリー先輩はニッコリと笑顔を向ける。

 けれど、その目は笑っておらず、侮蔑と怒りに満ちていた。

 

「さて、堕天使レイナーレ。私が何を言いたいか、わかる?」

「え?」

 

 羽根から視線を先輩に戻す堕天使。

 そして視線を戻した瞬間、彼女は固まる。

 

 なぜなら、

 

「消えて貰うわ、堕天使レイナーレ」

 

 グレモリー先輩の体から、これまで見たことがないくらいの魔力が吹き出ていたからだ。

 魔力で髪は踊り、周囲は紅のオーラで照らされる。

 

「もちろん、その神器(セイクリッド・ギア)は回収させてもらうけれど」

「い、嫌よ! わ、私は、私はこれで、あの方々に……アザゼル様とシェムハザ様に―――――」

 

 彼女の言葉に構わず、先輩は右手をかざす。

 レイナーレは焦るように辺りを見回し、イッセー兄ちゃんを見ると、途端にその足元にすがり付くように這いつくばり、媚びたような声を出す。

 

「イッセーくん! 私を助けて!」

 

 

 ―――――は?

 

 

「この悪魔が私を殺そうとするの! 私、あなたの事が好きよ、愛してる! だから、一緒にこの悪魔を倒しましょう!」

 

 

 

 ――――――こいつ。

 

 

 

 僕は無言で歩き出し、神機を頭上に構える。

 

 

 

 ――――――どうしてこいつは、ここまで僕を怒らせる。

 

 

 しかし、振り上げた神機を降り下ろすことは無かった。

 

「やめなさい、ハルト。あなたが手を汚す必要は無いわ」

「部長、俺もう限界っす…………。お願いします」

 

 イッセー兄ちゃんがそう言った瞬間、レイナーレは顔を絶望に染める。

 

「私のかわいい下僕に近寄るな、ゲスが。消し飛べ」

 

 グレモリー先輩の手から放たれた魔力の一撃は、堕天使を跡形もなく吹き飛ばし、教会に黒い羽が舞い散った。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「さぁ、この指輪をアーシア・アルジェントさんに返しましょうか」

 

 レイナーレが死んだ後、回収した神器(セイクリッド・ギア)を手にグレモリー先輩が言う。

 

「で、でも、アーシアは、もう…………」

 

 そうだ。

 確かに神器は取り返せた。でも、それで彼女が生き返ることなんか無いんだ…………。

 

「イッセー、これがなんだかわかる?」

 

 落ち込む僕らにグレモリー先輩が見せたのは、赤いチェスの駒。

 グレモリー先輩の【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】だ。…………あ、その手があったか!

 

「これで、この子を悪魔として転生させるわ」

「ほ、本当ですか、部長!」

「…………この子の回復能力、私が欲しいと思ったの。だから別に、この子の為じゃないわ」

 

 …………んー? なんぞ今のツンデレは。

 

 するとグレモリー先輩は僕の視線に気がついたのか、恥ずかしそうに咳払いをした。

 

「んん! それとイッセー。突然で悪いけど、あなたの神器についていくつか分かった事があるわ」

「へ? 俺の神器って、ありふれた物なんじゃ?」

「私も最初はそう思ったわ。けど、それじゃあなたの駒の数が割りに合わないのよね」

「駒の数?」

 

 何でも、イッセー兄ちゃんは【兵士(ポーン)】の駒を八つ全て使いきったそうで、ポテンシャルとしては【女王(クイーン)】である姫島先輩に次ぐんだそうだ。

 

 そして、ありふれた神器でそのポテンシャルは出せず、イッセー兄ちゃん本人にも、そのポテンシャルを見いだせなかったんだと。

 

 うん、軽くdisられたね、兄ちゃん。

 

 

「イッセー、あなたの神器は、神すらも滅せる道具…………つまり【神滅具(ロンギヌス)】と呼ばれる、最強の武具よ」

 

 マジで? 兄ちゃん神さま殺せるの?

 何それチート? しかもなんかデザインカッコいい。

 

「名前を【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】。最強と呼ばれたドラゴンの片割れよ」

 

 …………それともう一つ。兄ちゃんは血の力を手に入れている。

 まあ、それはまた今度の機会にだね。

 

 今は、アルジェントさんが最優先だ。

 

「グレモリー先輩」

「わかってるわ。この話は一旦ここまでね」

 

 そう言って、グレモリー先輩は駒をアルジェントさんの胸の上に置く。

 途端、駒から紅い光が発せられ、アルジェントさんの体を包み込んだ。

 

「蘇りなさい。私の新たな眷属として」

 

 先輩のその言葉に呼応して、より一層強くなった光と共に、駒はアルジェントさんの中に沈み込んでいく。

 

 同時に、彼女の神器も光となって、体に入っていった。

 

 それは、紅と緑の光が入り乱れる、どこか幻想的な光景で、僕たちは無意識に息を飲んだ。

 

 

 

 

 ―――――これで、アルジェントさんは…………。

 

 

 

 光が全て収まると少しして、アルジェントさんの瞼が持ち上がる。

 

「あれ?」

 

 ちょっと気の抜けた、彼女の声が聞こえる。

 

 それになにより…………

 

「アーシア!」

「アルジェントさん!」

「……イッセーさん、ハルトさん、私はいったい…………」

 

 なにより、そう、言葉が解るんだ。彼女の。

 僕たちは無意識に、彼女の体を抱き締めた。

 

「よかった…………うん、本当によかった!」

「は、ハルトさん…………言葉が…………」

 

 アルジェントさんの声も震えている。

 だんだん、頭も状況に追い付いて来たのだろう。嗚咽も聞こえ始める。

 

 僕とイッセー兄ちゃんはアルジェントさんから体を離し、互いに顔を見合わせる。

 

 そして、

 

「帰ろう、アーシア」

「僕たちと一緒に」

 

 彼女に手を伸ばした。

 

 

 

 

 さっきは届かなくて、掴めなかった手を、今ここで、僕たちは伸ばしたんだ。

 

 

 

 

「……………………はいっ!」

 

 

 

 

 

 そしてその手を、彼女は泣きながら嬉しそうに取ったのだった。

 

 

 

 

 




日に日にクオリティが下がっていってるような気がする…………どうしよう。
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