アーシアさんがイッセー兄ちゃんの家で暮らすようになってから数日後。
「おはよー、イッセー兄ちゃん、アーシアさん」
二人は毎日一緒に登校していた。
もうデキてんじゃないの? って疑惑がかけられるくらい毎日、同じ方向から来て、同じ方向に帰っている。
そして考えても見てほしい。
片や校内一の変態、片や金髪美少女。
その絵面たるや、まさに美女と野獣。
そりゃ、イッセー兄ちゃん恨まれもするよ…………。
「おっす、ハル」
「おはようございます、ハルトさん」
だけどここ最近、アーシアさんは本当に嬉しそうに、幸せそうに、イッセー兄ちゃんと言葉を交わす。
その光景は、端から見たら好奇、嫉妬、羨望の対象だが、あの出来事を知ってる僕たちからしたら、本当に微笑ましい光景だ。
「それじゃ二人とも、
校舎に入るなり、僕は急ぐように二人にそう声をかけた。
「お、おう。また放課後な!」
「はい、放課後に」
そして僕が二人から離れたあとも、あの二人の楽しげな会話が所々聞こえてくる。
「……………………ふぅ」
それに対して、僕は小さくため息をついた。
―――――ああ、なんだってこう、モヤモヤするんだろう。
◆◆◆◆◆◆
「…どうしたの? ハルト」
「え? 何が?」
その日の放課後、イッセー兄ちゃんとアーシアさんが自転車でチラシ配りに行っている夜、小猫ちゃんが僕の顔を覗き込んできた。
「…なんか、変な顔してるよ?」
「変な顔って…………」
頬に手を当ててみるが、特に違和感は感じられない。
「…なんか、少しイライラしてる?」
そんなことを言って、小猫ちゃんは僕の目元に手を添える。
「んー、そんなことは無いと思うけどなぁ…………って小猫ちゃん! 近い近い!」
軽くおでことおでこが当たるような距離じゃないか!
そんなに顔近づけられたら恥ずかしいって。
でも、イライラって言うか、なんかよくわからないモヤモヤならしてるんだけどね?
「…ご、ゴメン」
言うと、小猫ちゃんは少し顔を赤くしてスッと顔を離して僕の隣に座る。
と、そこへ、
「ただいま戻りました!」
イッセー兄ちゃんが元気よく部室に入ってきた。当然、その後ろには同じくチラシ配りに行っていたアーシアさんもいる。
「やぁ、夜のデートはどうだった?」
なんて、木場先輩が言うと、
「最高に決まってんだろ?」
イッセー兄ちゃんがそう返した。
……………………。
なんでかな。
僕はみんなの事が大好きなのに、今のやり取りで凄くモヤモヤした嫌な気分になってしまった。
最近、こんなことが多くて、ヤだなぁ。
◆◇◆◇◆◇◆
ここ最近、ハルトの様子がおかしい。
話しかけても上の空の事が多いし、今日だって、いつもより食べるお菓子の量が少なかった。
さらには、自分のお皿の上にもうケーキが乗っていないのにフォークで突っついたりしたほどだ。
どうしたんだろう? 朱乃先輩も心配していた。
ハルトの様子がおかしくなったのはいつ頃からだろうか? 考えてみると、割りとあっさり思い出せた。
ハルト、顔に出やすいから。
様子が変わったのは、アーシア先輩が部活に、眷属に加わった辺りからだ。
もっと正確に言うなら、そう、アーシア先輩がイッセー先輩の家で一緒に過ごし始めた辺りからだろうか?
確か、部長もその辺から上の空になっていたはず。
……………………まさか、ね。
だってハルト、アーシア先輩のこと友達だって言ってたし、二人の事を応援するって言ってたし。
…………でも、ハルトはアーシア先輩と話すとき、とっても楽しそうで、そのときはいつも通りのハルトで…………。
やっぱり、アーシア先輩のことが…………。
悔しいなぁ。
しかも多分、ハルトの事だから自覚が無いんだ。
その事が、無意識にハルトから好意を向けられている事が、羨ましくて、悔しくて。
だから私は、隣に座るハルトの腕を掴んで凭れかかる。
ハルトがなんか慌てたような声をあげるけど、知ったことか。
伝えてないけど、私の想いに気付かないハルトが悪い。
なにより、自分の想いに自覚がないハルトが悪いんだ。
「…………ハルトの、ばか」
さっさと自分の想いに、気付いてしまえ。
ばかハルト。
申し訳ありません。
そろそろガチでテスト勉強とレポートをしなきゃいけないので、一週間ほど更新ができないと思います。
…………ふぅ、ちょっと大学に逝って来ますね。