ベッドで眠った筈なのに、気が付くと辺りは白一色に染まっていた。
空も地面も見当たらず、上下左右前後、その全てに果てしない白が続いていた。
「ここは、どこだろう?」
発した声は、跳ね返す物など何もない空間で、不自然なくらいに反響した。
『目が覚めたか、主よ。と言っても、体が眠っている状態で目覚めると言うのも、妙な話だがな』
不意に、後ろから厳かな声が響いてくる。
振り向くと、そこには、
「……マル、ドゥーク?」
巨大な、白い狼がいた。その姿は荒々しく、猛々しく、しかしどこか威厳があり、恐怖よりも先に、畏怖が沸いてくる。
その白狼が口を開く
『如何にも。我輩はマルドゥーク。そなたの神機に宿る、白狼王マルドゥークである』
そう言った彼は、どこか誇らしげに鼻を鳴らす。
『このようにお会いするのは3度目でございますね、主君』
今度は違う声が左隣から聞こえてきて、顔を向けると、そこには騎士がいた。
鋼の体を持つ、蠍の騎士が。
『鋼騎士ボルグ・カムラン。今はそう呼ばれております、我が王よ』
騎士は、四本の足と二枚の盾を器用に使い、騎士の礼を取る。
『まさか、こんなにも早くあなた様が自力でここまで来られようとは』
右隣からの声はどこか妖艶な響きを含んでいた。
その声の主は、一言で言えば蝶だ。妖艶な蝶。
『魔女王サリエル。ここに馳せ参じました。以後、お見知り置きを』
自らのスカートを上品にたくし上げ、礼をした彼女は、艶やかに笑う。
「君達は…………そっか、いつも君達が、僕を見ていてくれたんだね」
彼らの事は知っている。
グレモリー先輩を助けた時も、レイナーレを斬った時も、彼らは僕に力を貸してくれた。
「どうして、僕はここにいるの?」
『………なるほど、無意識か。だが、無意識とは言え主が自力でここまで来れたと言うことは、つまりそれだけの力が身に付いた、と言うことだ』
「力が、身に付く?」
確かに戦いは何度か経験したし、精神的にも強くなったと思うけど…………。
『自覚が無いならば、まだ良いのです、我が君。いつか、自覚ができるまで、妾達は待ちましょう』
『そして主君。その自覚は、主君が自らの想いに気づいたとき、生まれる事でしょう』
僕の、想い?
なんだろう? 全く想像できないや。
『焦らずともよい。いずれ時が来たれば、否が応にも分かってしまうことだ』
マルドゥークがそういうと、サリエルとボルグ・カムランも頷いた。
時が来たれば? それはいったい、何時なのだろうか?
それに、僕の想い、かあ。
最近のモヤモヤに何か関係があるのかな?
と、僕が思考を巡らせていると、彼らの会話が聞こえてきた。
『さて、堅苦しいのはここまでにして………準備はよろしくて? 白狼王、鋼騎士!』
『はっ!』
『愚問であるぞ、魔女王!』
…………ん゙?
『それでは、まずは妾から…………はぁぁぁぁ、カッ!』
『次は我輩ぞ。こぉぉぉぉぉ、ぬんっ!』
『拙者が最後でありますね! ぉぉぉぉぉぉ、ハッ!』
次の瞬間、ただでさえ眩しい白い空間の中に、より一層眩しい光が放たれる。
「なにごと?」
驚いて振り向くと、そこには、三人の
「我が君!!」
そのうちの一人、露出度の高い青いドレスを着たスタイル抜群の女の人が僕に抱きついてくる。
「え、ええ!? だ、誰!? もごごごご」
む、胸に顔を埋めさせられて喋れない! あ、でも、いい匂いだなぁ。しかも柔らかくてもごごごご。
「これ! 主が苦しそうであろう! 離さんか、魔女王!」
魔女王!? つまりこの人はサリエルってこと!?
て言うか、今の声はまさか…………
「何を言うか白狼王。さては貴様、自分ができないからと妬いておるな? だが断る! これは『大人』な女である妾の特権ぞ!」
マルドゥーク!? アラガミ状態と違ってやたら声が高いよ!?
「な!? だ、誰がやるか馬鹿者! だが主を
「そして何時までその様にしておられるおつもりか!」
ってことは、今の凛とした声は消去法で、ボルグ・カムラン、かな?
…………待って、どうしよう。全く状況についていけない。
とりあえず、サリエルの胸から顔を離さねば。…………イッセー兄ちゃんじゃないけど、鼻血出そう。
「ぷは! ふう、苦しかった…………じゃなくて!! え? これどういう状況!? なんで君ら人間になってるの!?」
「おお! 主よ、無事か!」
「ご無事でなによりです!」
「むう、妾が悪役のようでは無いか」
「話聞いて!?」
ああもう、何がなんだか判らなくなってきた!
訳がわからないよ!
「妾達がなぜ人化しているか? ふふふ、それは愚問と言うものですわ、我が君」
その言葉に、他二人も頷いた。
「じゃあなんでさ」
「それは――――」
「「「愛故に!!」」」
どーん、と。
そんな効果音が付きそうなくらいに堂々と、ドヤ顔で彼女らは言い放った。
「えぇー…………」
誰もが見惚れるようなスタイル抜群で黒蒼髪の美女、サリエル。
赤と白のゴスロリ服を着ている狼耳と尻尾を生やした銀髪ツインテールの美幼女、マルドゥーク。
爽やかなスマイルが似合う、長身で鎧を身に纏った黒髪美少女、ボルグ・カムラン。
そんな三人に囲まれた僕は、ちょっとだけ身の危険を感じたのだった。
「やはり! 主の最たる魅力はこの、愛くるしさだと我輩は思う!」
「愚か者! 白狼王! それは万象の理ぞ! 今は如何にそれ以外の魅力を見出だすかの場ぞ!」
「愚か者は
「落ち着き下され、王、女王。主君が怖がっておられまする!」
「「そう言いながらなぜ貴様が主(我が君)を肩車しておるのだ!?」」
されるがままに肩車の姿勢になったけど、本当、ついていけない…………。
もうキャラ崩壊のレベルじゃないんだよ!!
なんでこんな事になってるのさ!
「「「愛故に!!」」」
…………もうそれで良いよ…………。
…………どうしてこうなった。
◆◆◆◆◆◆
ジリリリリリリ!
目覚まし時計が鳴り響く。
「…………酷い夢だった」
そうだ、あれは夢だ。そうに決まって――――。
《夢ではありませんよ、我が君》
――――オーマイガッ!
あ、胃が痛い。
この間教えて貰っておっぱいドラゴンの歌聴いてきたんですけど、あれアウトだったよ。
童謡風に歌っててもダメだったよ。彼女に変な目で見られた。死にたい。
個人的には好きだけどね!
※とある方からの感想により目から鱗がドロップしたので、性別が変わりました。悔いはありません。