ハイスクールG×E   作:フリムン

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今回、視点がコロコロ替わります。ご注意下さい。


第37話

 

 あの一瞬で、僕が認識できたことは僅かな出来事ばかりだ。

 

『リアス・グレモリー様の【女王(クイーン)】、リタイアです』

 

 そんな、絶望に近い宣告と、

 

「―――危ない!」

 

 僕よりも何かに一瞬早く反応し、目の前のイッセーくんとレイヴェル・フェニックスを突き飛ばすハルトくんの姿。

 

 そこまで見た僕を襲ったのは、とてつもない轟音と衝撃、そして激痛。

 

 何が起こったのか、理解することは出来なかった。

 いや、正確には、理解しようとしたけど、理解するまで意識がもたなかった。

 

 ただ一つ覚えてるのは、彼の声だった。

 

 

 

 ――――彼の、獣のような雄叫びだった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「―――危ない!」

 

 一瞬空を見やったハルが、俺と、隣にいたライザーの眷属を突き飛ばす。

 

 そしてその直後―――――、

 

 

 響いたのは轟音。

 見たのは爆炎。

 感じたのは熱風。

 

 

 その三つが、ハルと木場を飲み込んだ。

 

 ―――今の一瞬でハルが俺を突き飛ばさなかったら、俺もあの中に…………。

 

 そう思うと、背筋が凍った。

 

「っ! ハル! 木場!」

 

 凍ると同時に、それに飲み込まれた二人の名を呼ぶ。

 

 煙が晴れた先には、浅い呼吸を繰り返す木場と、血を流して呻くハルの姿が。

 

「――――っ!」

 

 その余りの痛々しさに、俺が絶句すると、隣から怒りの声が上がる。

 

「ユーベルーナ! これはどういうことですの!?」

「どう、とは? レイヴェルお嬢様」

「とぼけないで! 先程の攻撃、明らかに私にも当たる物でしたわ!!」

「あら、勘違いなされては困りますわ、お嬢様。私はただ、確実に倒せる相手を攻撃したまでです」

「…………ええ、それは正しいわ、理論としては。だけど、フレンドリーファイアを…………」

「貴女なら大丈夫かと」

「は?」

「いえ、お嬢様が不死だから、などと、そのような理由ではなく、お嬢様なら避けられて当然かと思いましたので」

「…………よくも、ぬけぬけと……っ!」

 

 おい、じゃあなにか? あのケバいオバさんは、味方が巻き込まれるかもしれない攻撃をしたってことか? それも、何の打ち合わせも無しに?

 

「それではお嬢様。そこの二人はいずれリタイアするでしょう。ですから、そこの赤龍帝をよろしくお願いします」

「貴女は―――っ!」

 

 そこで女の子――レイヴェル・フェニックスの声が途切れた。

 怒りで声がでなかったとか、俺から攻撃を受けたとかじゃない。

 

 

 

 ただ、動ける筈の無い人間(・・)が、立ち上がっただけだ。

 

 

 

「は、ハル?」

 

 ハルの纏う、その尋常じゃないオーラ、それこそ、悪魔になって日の浅い俺ですら感じ取れてしまう程のオーラを感じ取って、俺は恐る恐る声をかける。

 

 

 ――――知っている。

 

 

 この気配は、知っている。

 

 そうだ、あの日。

 俺がレイナーレに殺されたあの日、化け物の姿になっていたハルから感じた気配。

 

 怒りのような、喜びのような、悲しみのような、荒ぶる気配。

 

「な、なんですの、この気配は!?」

 

 レイヴェル・フェニックスが狼狽えたように質問を投げ掛ける。

 

「んなもん、こっちが知りたいくらいだ!」

 

 ゆっくりと、ハルが顔を上げる。

 

「――――」

 

 その目には、なにも映していなかった。

 なにも映していなかったが、その表情は、憤怒にまみれていた。

 

 口を開く。中が切れているのか、血液が一筋、顎を伝う。

 

 

「おおおおおああああああああ!!!!」

 

 その口から飛び出したのは雄叫び。

 まるで獣のような、雄叫び。

 

 

 そして、その背には―――――、

 

 

 

「光の、片翼?」

 

 

 黄金と黒で彩られた、片翼の光の翼が広げられていた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「あれは!」

「……この気配」

 

 僕はその光景をモニター越しに見た瞬間、椅子を蹴飛ばして立ち上がる。

 

「見ろ、グレイフィア! これが君の言っていた力かい!?」

「………ええ。確かにあの翼のような物を出して気配は強くなりました。ですが、あの傷です。早くリタイアを」

「わかってる。木場くんはリタイアさせてやれ。ただ彼は…………」

「ルシファーさま。お戯れも程々に」

 

 グレイフィアのその言葉に、僕は冷静に答えを返す。

 

「グレイフィア、僕はなにもふざけている訳じゃない。ただリーア……妹の近くにいる人間が、どれ程の者なのか見極めたいだけなのさ。害悪か、否かをね」

「…………畏まりました。ではそのように」

 

 うんうん、どうやらわかってくれたみたいだね。

 

 さあ、見せてもらおうか、神結悠斗くん。

 君の力って奴を。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「なんだ、この気配は!?」

「これは…………」

 

 ライザーとの戦闘中、フィールド全体を覆い尽くすような異様な気配に、私たちは互いに動きを止める。

 

「この感じ…………ハルトさん?」

 

 後ろにいるアーシアが思い出したようにそう呟く。

 

 そうだわ、これはハルトの気配。

 彼の、あの神に近い、けれども神とは違う、混じり物の気配。

 それが、大きく膨れ上がっている。

 

「…………リアス。お前の小飼にしているあの人間はなんだ。おおよそ人間が持ってていい気配じゃねえ」

 

 ライザーが、まるで苦虫を噛み潰したような顔をしながら冷や汗を流している。

 多分、私も似たような顔をしているのだろう。

 

 なんせこの気配、まるで全てを壊しつくそうという意思すら感じる、狂暴な物だ。

 後ろにいるアーシアが、顔を青くさせて小刻みに震えている。

 

「あの小僧。見た目はまるで犬のようだが、存外狼かも知れんぞ」

 

 少し震えているその声に、私は震える体を誤魔化して不敵に笑う。

 

「ええ、そうかもしれないわね」

 

 

 

 そして私たちは、気配の方向を見続けた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「…ハルト!」

 

 不意を突かれてリタイアした私は、序盤でやられたこともあり、意識を取り戻していた。

 

 隣では、まだ目を覚まさない朱乃先輩と、さきほど転送されてきた祐斗先輩。

 

 だから、ここで彼を見ているのは私一人。

 

 

「……なに、この感じ?」

 

 モニター越しでも伝わってくる、荒ぶる気配に身を竦める。

 

 怒り、悲しみ、喜び。

 そんな感情が、猫魈(白音)である私の中に流れ込んでくる。

 

 でも、

 

 

「…ハルトの感情じゃ、ない?」

 

 

 そう、本能が告げていた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

『我が君!』

『主君!』

『主!』

 

 三体の神が、同時に叫ぶ。

 

『おのれ忌々しい女悪魔め、我が君になんと言うことを

!』

『食いつくしてくれる!』

 

 痛みに呻く宿主を見て、王と女王が怒りを露にする。

 

 だが、その時、

 

 

 

 ―――――スキル発動。

 

 

 

『なに?』

 

 

 そんな音声が、精神世界に響き渡る。

 

 

 

 ―――――スキル発動。

 

 

『なっ!? これはどういうことだ!』

『わかりません! ただ、これは…………』

『我が君のスキルが、暴走している?』

 

 ―――――スキル【剣聖】発動。

 ―――――スキル【穴熊】発動。

 ―――――スキル【死中の一撃】発動。

 ―――――スキル【飛将】発動。

 ―――――スキル【スタウトファイト】発動。

 ―――――スキル【乱戦の心得】発動。

 

『まずい、これはまずいぞ!』

『早く、止めなくては!』

『はい、このままでは、主君の体が!』

 

 これまで、ハルトのスキルが二つ以上同時に発動しなかったのは、発動出来なかったのではなく、彼女らが押さえていたからだ。

 

 未だゴッドイーターになって日が浅く、まだまだ未熟な彼が12個ものスキルを使うとなれば、当然その体に負荷がかかり、【自動治癒】のスキルでも補うことが出来なかったからだ。

 

 

 ―――――スキル【インフィニティ】発動。

 ―――――スキル【捨て身の剣】発動。

 ―――――スキル【砲撃手】発動。

 ―――――スキル【超越者】発動。

 

 

『止まれ! 止まりなさい!』

『女王! 落ち着いて下さい!』

『だが、このままでは我が君は!』

 

 そこで、白狼王が別の事に気づく。

 

『これは…………っ!』

 

 遅れて、他二体も気づく。気付いてしまう。

 

『これはどういうことだ! 《紡ぎ手》よ!!』

 

 白狼王の怒号が響く。

 

『なぜ、なぜ我々の封印が…………【拘束フレーム(・・・・・・)】が解放されている! 主はまだ、己のスキルですら十全に発揮できぬのだぞ!』

 

 彼らの怒りの声に、届いた声は一つ。

 

 否、それは声と呼べるような物ではなかった。

 届いたのは、言わばテレパシーのような、声ではない、信号のようなもの。

 

『《限界を超えられぬ者に、意味は無い》だと? そんな理由で、貴様は!』

 

 その返答が気にくわなかったのか、魔女王が激昂の声を上げる。

 

 だが、最早答えることなど何もないと言わんばかりの沈黙が返ってくるのみであった。

 

 

『…………主君』

 

 鋼騎士のその呟きと共に、彼らは意識の底からハルトを見上げた。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「ぁぁぁあがぁあああああ!!!」

 

 そんな雄叫びを上げて、ハルは跳び上がった。

 狙うはただ一人と言わんばかりに、一直線に向こうの【女王】を狙う。

 

「くっ、この!」

 

 【女王】が手を振るうと、ハルの周辺が爆発する。

 

「ハル!」

 

 だが、爆炎が晴れると、そこには蝶のような盾を広げたハルの姿が。

 さらによく見ると、少しずつだが、ハルの傷も治り始めていた。

 

「ふふふ! いくら攻撃を受け止めて切れても、所詮は人間。飛べる私たちには勝てないのよ!」

 

 …………その台詞、レイナーレも言ってたぞ。

 

 つまり、それはこの場においてはフラグであり、

 

「なに!?」

 

 ハルは当然のように空中でジャンプをして見せた。

 

「…………ブラッドアーツ【韋駄天】」

 

 空中でハルが回転したかと思った次の瞬間には、すでに【女王】の後ろまで通りすぎていた。

 

 早い!? 正直、目で追いきれなかった。

 けど向こうは辛うじて見えたのか、少しだけ反らした顔の横、つまり左肩から血飛沫が飛び散る。

 

「お、のれぇ! 人間の分際で! 爆ぜろ!!」

 

 怒りの表情を見せた【女王】は、両腕を同時に振るう。

 

 先程とは比べ物にならないほどの爆裂が起き、ハルの体全てを飲み込んだ。

 

「は――――!」

「ブラッドアーツ、【エアリアル・キャリバー】」

 

 ハル、と叫ぼうとした俺の声を掻き消したのは、音ではなく光景。

 爆炎を切り裂くように飛んできた複数の光の刃が、【女王】の服を切り裂く。

 

「きゃああ!!」

 

 服が避け、肌を露出させた【女王】が体を押さえたその瞬間、

 

「ブラッドアーツ【IE伍式・照射】」

 

 一条、というには太すぎる光の筋が、【女王】の体を貫いた。

 

「が、ふ…………おのれぇ!」

 

 リタイアの光に包まれ始めた【女王】は、最後の見舞いとばかりに、両手を降り下ろす。

 

 狙いは俺。

 本来なら俺はこの瞬間にリタイアするはずだった。

 

 でも、

 

「…………お嬢様、なぜ…………」

「別に、貴女のやり方が気に食わなかっただけですわ、ユーベルーナ」

 

 俺は、レイヴェル・フェニックスに守られていた。

 

 

 

 

『ライザー・フェニックス様の【女王(クイーン)】、リタイアです』

『カミユイハルト様、リタイアです』

 

 

 

 

 そんなアナウンスを聞きながら、俺の胸中は悔しさで溢れていた。

 

 ――――何も出来なかった!

 ――――敵に助けられた!

 ――――守るべき弟(ハルト)に守られた!

 

 

「ふん、お兄様たちのところもそろそろ終わりかしらね」

 

 

 レイヴェル・フェニックスのその一言で、俺は我に帰る。

 そうだ、まだゲームは終わってなかった!

 

 自覚すると、いても立ってもいられず、俺は目の前の彼女を無視して走り出した。

 

 

 待っててください、部長! 今行きます!

 

 

 

「ちょ、無視しないで――――ま、良いですわ。どうせお兄様には勝てないのですし」

 

 

 そんな、勝ち誇ったような声は、俺には届かなかった。

 

 

 

 




ゴッドイーターのアニメ始まりました!!

ゲーム原作のアニメって当たりハズレが大きいけど、まあufoだし大丈夫だろって思ってたら、予想以上に面白くて流石ufoってなりました。

以上、アニメ視聴の感動による感想でした。
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