テスト前、現実逃避の投稿です。
「お集まりの皆様! 本日はこの私ライザー・フェニックスと、この度我が妻となるリアス・グレモリーの式にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます」
舞台の上で、正装をしたライザーさんが仰々しくお辞儀をする。
「些か性急すぎる事ではありましたが、これから私たちは晴れて夫婦となります」
その表情は、なんだか勝ち誇ったような物で、幸せよりも優越感に浸っているような顔で。
「これからはこの冥界の為に、純血な悪魔の為により一層、愛を深めて行きたいと思います」
嘘つけ。心の底から誰かを愛したこともないくせに。
「それでは、ご紹介いたしましょう! 我が妻となる、リアス・グレモリーです!」
ライザーさんの呼び掛けで、舞台の下手側から出てきたのは、赤いドレスを身に纏い、髪をアップに纏め上げた、美しい花嫁装束のグレモリー先輩。
『…………ぎりっ』
誰かの歯軋りする音が聞こえた。
それはもしかしたら僕だったのかもしれないし、眷属の誰か、あるいは皆かもしれない。
悔しい。あの先輩が、あのグレモリー先輩が、あんなやつの花嫁衣装を着ていることが。
いつも堂々として、皆の主であろうとするあの先輩が、あんな悲しそうな顔で俯いているんだ。
悔しくない訳がない。
拳を作り、きつく握りしめる僕の服の袖を、小猫ちゃんが摘まむ。
「…ハルト、落ち着いて」
「うん、大丈夫。僕は落ち着いてるよ」
「…でも」
「信じてるから」
「…え?」
「きっと、ヒーローは来てくれるってさ」
そうだ、僕は信じてる。
だってあの人は、自分がやるって決めたことを諦めない人だから。
それに、耳を澄ますとほら、聞こえてくる。
「部長ォォォォォォッ!!」
この状況をぶち壊してくれる、ヒーローの足音が。
◆◇◆◇◆◇◆
「まて!」
ドアを蹴破って会場に乱入した俺の後ろから、近衛らしき兵隊の一人が槍を振りかざして取り押さえようと飛びかかってくる。
しかし、それは叶わない物となる。
なぜなら振りかざした槍は砕け、その瞬間を小猫ちゃんが吹き飛ばす。
振り向いた先には、神機を銃にして構えるハルの姿が、そこにはあった。
「…遅いです」
「でも、ナイスタイミングだね、イッセー兄ちゃん」
「へっ、どっちだよ」
しかしハルのやつ、あの一瞬でこの人垣の向こうから狙い撃ったのか…………すげぇ。
「イッセーくん、ここは僕らに任せて!」
「早くリアスのところへ!」
周りの兵隊を押さえるように、皆が俺の周りに立つ。
俺はそれに、頷き、部長の下まで駆け出す。周りの悪魔達は突然の事でパニクっているのか、俺を止めようとはしない。
「き、貴様ッ!」
ライザーがひきつった表情で俺を指差す。
「いいか、この焼き鳥野郎! 部長の、リアス・グレモリーさまの処女は、俺のもんだ!」
言った、言ってやった!
たとえ勢いに任せたものとはいえ、これでもう後には引き返せない。
「ら、ライザー殿、これは一体…………」
その場にいた関係者の一人が狼狽えた様子でライザーに話しかける。
しかし、それに答えたのはライザーでは無かった。
「ああ、驚かせてしまって済まない。私が用意した余興ですよ」
「魔王さま!?」
問いかけた悪魔の男性が驚いた声を出す。
そうか、この人が魔王サーゼスク・ルシファーさま…………部長のお兄さんか。
「あの時見れなかったドラゴンの力が見たくて、ついつい呼んでしまったよ」
「ルシファーさま! いくら魔王さまでも、そのような勝手は…………!」
ライザーが少し控えめに、けど憤慨した様子で魔王さまに食って掛かる。
「良いではないか、ライザーくん。先日の戦い、私も見させてもらったが、あれはなかなかに楽しめたよ」
「それならば何故!」
「ただし、それは彼のことだ」
「彼?」
「この場で唯一の人間であり、あの場で最も活躍した少年」
それって、ハルの事か? ハルのやつ、魔王さまに目を掛けられるなんて裏山…………じゃない! あいつ魔王に目ぇ付けられたら死ぬぞ!? 多分!!
「つまり私が言いたいのは、今度はしっかりと見たいのだよ。
「…………それは、あの時俺にボロボロにされたこいつが、全力を出していなかったと?」
「いや、きっと全力は出したのだろう。けれど彼は、
何も考えずに乗り込んだけど、なんだかトントン拍子で話が進んでいく…………俺を残して。
え? つまりなに? これもしかしたらリベンジマッチなパティーン?
「と言うわけで兵藤一誠くん、ライザーくん、私と、そしてこの会場の人達のために、もう一度戦ってくれるかな?」
…………ッ!
その言葉を、待ってました!
「いいでしょう、わかりました。魔王さまがそこまで仰られるのなら、このライザー・フェニックス。全身全霊、全力でご期待に答えられる炎の宴をお見せしましょう! いいな、小僧!」
「おう! 望むところだ! 今度こそぶっ飛ばしてやる!」
俺たちが互いににらみ合い、啖呵を切ったところで、魔王さまが俺に声をかける。
「兵藤一誠くん、もしも君が勝てた場合、対価は何がいい?」
「サーゼスクさま!?」
「なぜこのような輩に!?」
周囲の悪魔から批判の声が上がるが、魔王さまはそれを片手で抑える。
「彼も悪魔なのだから、頼み事をする以上、こちらも対価を支払うのが道理でしょう。さて、何が欲しいのかな、君は」
俺が欲しいもの? そんなもん決まってらぁ。
「俺は部長が、リアス・グレモリーさまが欲しいです」
真っ直ぐと目を見て、臆すること無く、恥じること無く、堂々と言い切る。
「俺たちの部長を、返してください」
その言葉に、周囲が大きくどよめく。
少し視線をずらして、魔王さまの奥にいる部長をみれば、彼女は手袋に覆われた手で口許を押さえ、目には涙が光っていた。
「良いだろう。君が勝てれば、連れていくといい。それで構わないかい? ライザーくん」
「ええ、もしも勝てれば、の話ですがね」
言ったなこの野郎。その言葉、撤回なんかさせねぇからな!
◆◇◆◇◆◇◆
「出来うることなら、神結ハルトも戦わせたかったな………………………などとお考えではありませんか? ルシファーさま」
「たははは、顔に出ていたかな? グレイフィア」
「いえ………あなたの事などお見通し、と言うだけです」
「おお、それは怖い」
「それで、なぜあのような事を? お嬢様のご結婚が嫌だからって、いくらなんでもあれは…………」
「違うよ、グレイフィア」
「え?」
「確かにリーアのこんな結婚は、できれば破棄してほしかったし、丁度都合よくあの子を慕う我の強い子もいたから使わせて貰ったけど、本当はそれだけじゃないんだよ」
首を傾げ訝しめな彼女の視線を受けながら、僕はモニターを見る。
モニターの前、最前列にはリーアの眷属と神結ハルトが、モニターの向こうには、兵藤一誠くんとライザー・フェニックスくんが対峙している。
「僕はね、知りたかったんだ。悪魔と天使と堕天使の戦線を壊滅させた、それこそ世界を崩壊させうる力を持った彼の、覚悟ってものを」
理由を述べると、彼女は理解したのか頷き、そして呆れたのかため息をついた。
「全く、あなたのその探求心にはいつも困った物です」
「とかいって、実は君も楽しみなんだろう?」
茶化しを入れて訪ねると、彼女は無言でそっぽを向いてしまう。
そして、それこそがこの問いへの答えである。
「ははは、全くもって、僕らは似た者夫婦だよ、グレイフィア」
「……………もうすぐ始まります。お静かに」
そう、どこか憮然とした表情で言ったその頬が朱に染まっているのを見れたのは、僕の役得だと思うね。
……………あれ? おかしいな? なんでこんなキャラになってんの、魔王さまに女王さま。
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