ハイスクールG×E   作:フリムン

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猫と少年の休日 その2

 

 駒王町駅ナカのゲームーセンター。

 そこに名を刻む、一人の伝説ゲーマーがいた。

 

 登録名は『WhiteCat』

 格闘、射撃、音楽等々、ありとあらゆるゲームで驚異的なハイスコアを叩きだし、コアなゲーマーからは神と崇められ、その姿を知る一部のゲーマーからは『女神さま』と崇め奉られる。悪魔だが。

 ゲームに挑むその姿はまさに武神。射撃ゲームや格ゲー、パンチ力測定器でハイスコアを叩き出すその姿はまさに鬼神。しかしその容姿は花も恥じらう可憐な乙女。まさに天使。悪魔だが。

 

 その『WhiteCat』の正体こそ、今僕の隣で鼻唄歌いながら楽しそうにゾンビを銃で薙ぎ倒していく少女である。

 

「(あっれ!? なんか思ってたのと違う!! もっとこうさ、女の子らしくプリクラとかクレーンゲームに興じるかと思ったら! さっきから殺伐としたゲームばっかりだ! しかも上手いし!)」

 

 使用する銃はスナイパーライフル。狙いは違わずヘッドショット。その白髪とも相まって、かのゴッドイータースナイパーを思い浮かべてしまう。胸部装甲は比べるべくもないが。

 あ、でも、あの嘆きのh…………じゃなくて、防衛班の紅一点とは同じくらいかな?

 

「…なんか失礼な事を思ってない?」

「そ、そそそんなことないよ! ………あっ」

 

 言い訳をするために目を離したその一瞬の間に、僕のライフが一気にゼロへ。恐るべし、最終ラウンドのゾンビ。序盤のボスより強い雑兵って怖くない?

 

 っていうか、

 

「この手のゲームにラストステージなんてあったのか……………」

「…ほら、時間はまだまだあるんだし、次いくよ」

「あ、うん」

 

 ちなみに、僕が抜けても小猫ちゃんは危なげなくクリアしました。

 僕がここまで食いつけた理由? ぶっちゃけ後半ほとんど何もしてません………ってか出来てませんでした。アサルトライフルなのにスナイパーライフルよりも撃破数が少ないって、ある意味凄いと思わない?

 

 

 

「ちょ、まっ、小猫ちゃんドライビングどんだけ上手いの!?」

「…ふふん」

 

 次にやったのはレーシングゲーム。僕に合わせて一番難易度の低い奴なんだけど、小猫ちゃんがちょっとヤバイ。なんかこう……一度もぶつからないどころか、減速してないんじゃない? って疑うレベルのテクニック。

 小猫ちゃん、すっごい楽しんでるなぁ。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「はー、楽しかった」

 

 小猫ちゃんには驚かされっぱなしだったけど。

 つい、と不意に服の袖が引っ張られる。後ろを向くと、小猫ちゃんが上目遣いで僕を見上げてくる。

 

「…………ホントに楽しかった? なんか私ばっかり楽しんでたような……………」

「こんなことで嘘なんか吐かないよ。僕もゲーム好きだしね」

 

 楽しそうな小猫ちゃんも見れたし。

 そう言ったらまた脇腹を抓られた。解せぬ。

 

「…じゃあ、そろそろ行こ?」

「その前に、小猫ちゃん、どっちが欲しい?」

 

 小猫ちゃんにそう言って僕が鞄から出したのは、黒猫と白猫のぬいぐるみ。

 何を隠そう、これはさっき、ゲームで早々にリタイアしてしまったため、その暇な時間をクレーンゲームで潰したのだけど、二つ同時に取れてしまったんだ。あれは奇跡だった。

 

 ちなみに、一プレイ二百円で六百円を消費して取れました。

 

「…え? でも、今朝も貰ったし、なんか貰ってばかりなのも……………」

「いいのいいの。二つ持ってても嵩張るだけだし、記念にと思ってさ」

「……そ、そういうことなら…………こっち」

 

 彼女がとったのは黒猫のぬいぐるみ。珍しいな。彼女なら白猫を取ると思ったんだけど。

 

「…じゃあ、行こ?」

「――――――」

 

 ぬいぐるみに口許を埋めて小さく首を傾げた彼女が可愛くって見とれてしまったのは僕だけの秘密。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ふふふ……ふふふふ!」

「…ついに来た。この時が」

「さあ行こうか、小猫ちゃん」

「…うん、行くよ、ハルト」

 

 僕たちの目の前には、僕たちのパライゾである『セラフォール』が。

 その店先には神々しく、それでいて艶やかで鮮やかなケーキの見本が立ち並ぶ。

 

 僕と小猫ちゃんのゴクリ、と無意識に溢れる唾液を嚥下する音が重なる。

 

 僕らは顔を見合わせ、重々しく頷く。その表情はまさに戦場へ向かう戦士のそれであり、多分、ライザーさんとの試合の時よりも気合いが入っていたのかもしれない。

 

「「いざ、()達のエデンへ!」」

 

 そして僕たちは、楽園(戦場)への一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 その日、ケーキレストラン『セラフォール』に、一つの伝説が打ち立てられた。

 

 曰く、『一組の小柄なカップルが食べ放題の招待券を手に訪れ、そして、彼らの姿が見えなくなる程に山積みにされた種々のケーキを全て美味しそうに、それはもう幸せに満ちた顔で全て平らげ、さらには特製の特大ケーキ(5kg)すらも、クリームも残さず食いつくした』

 

 と言うものだった。

 いずれは都市伝説として真しやかに駒王町で囁かれるこの出来事が真実か否かは誰にもわからない。

 

 ただ一つ言えることは……………

 

「はー、美味しかったねー、小猫ちゃん」

「…うん。でも、もう少し食べたかったな」

「確かにそうだけど、仕方ないよね、他のお客さんの分も残さなくちゃ」

「…そうだけど」

「まあまあ、また今度来ようよ」

「……二人で?」

「その方が良いならそうする?」

「…二人でがいい」

 

 満足そうに、けれど少し物足りないと言った表情のカップルがその店から出てきたとき、後ろにいる店員たちが本当に申し訳なさそうに、それでもどこか安堵した表情で頭を下げている光景がお昼前の駒王町駅前の商店街で見られたという。

 

 

 余談だが、その二人がケーキを食べるとき、その量から周囲の人間が見てるだけで胃もたれを起こし、さらにはバカップル特有の甘々な空間を作り出し、二人で食べさせ合いっこなどしたものだから、周囲の人間が胸焼けと砂糖吐きを起こしたのは、本当に余談である。

 

 

 

 

 

 

「映画までもう少し時間あるね」

「…お昼ご飯、どうする?」

「え!? まだ食べるの!?」

「…食べないの?」

「流石に無理ですごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 楽しそうなハルトと小猫がケーキレストランから出てきたところを見ている人影が5つ。

 

 そのうちの一つが物陰から二人を見つめ、黒い笑みを浮かべる。

 

「あらあら、本当に楽しそうですわね、うふふ」

「あのー、朱乃さん? オレらが呼ばれた意味ってあります?」

 

 五人のうち、二人いる男性の一人が小さく手を上げて質問するが、答える声は無い。

 

「ハルトきゅんはぁはぁ……………おっと、鼻血が」

「あの、部長。木場が怖いです」

「大丈夫よ、イッセー。あなたとハルトは私が守って上げるわ……………ええ、絶対に」

「祐斗さん、大丈夫ですか? 今治しますね?」

「ダメだアーシア! このまま逝かせてやれ!」

「え? あの、どう言うことでしょう?」

「あなたが理解しなくてもいいのよアーシア」

 

 彼らは上手く隠れているつもりなのだろう。

 

 だがしかし、考えて欲しい。

 五人中、日本人に多い黒髪を持つのは二人。そのうちの一人は誰もが振り向く美女で、残りの三人も金髪二人に珍しい紅髪が一人、そしてその三人とも美男美女と来た。

 

 正直言って目立たない訳がない。

 

 事実、すれ違う全ての人々が彼らを見つめ、その奇行に驚きの表情を浮かべている。

 中には子供の目を隠す母親まで現れる始末。

 

 それほど目立つ集団に、ハルトはともかく小猫が気づかない訳もなく。

 かといってその二人は逃げることもせず、

 

「は、ハルの野郎が、小猫ちゃんと腕を組んでる………だとっ!?」

「うふふふふふふふ………」

「あぅぅ、朱乃さんが怖いです、部長さん」

「あ、朱乃、落ち着きなさい。ね?」

「少し黙ってて、リアス」

「あっはい」

 

 

 

 

 その集団を一言で表すとすればまさに……………カオスであった。

 

 

 

 

 

 彼らのデートと尾行はまだまだ続く。

 

 

 




大切な事なので前回に引き続にもう一度言います。

ハルトの中でこれは『デート』ではなく『おでかけ』なのです。

頑張れ小猫ちゃん。

そして木場、テメーはダメだ。
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