いや、あの別に忘れてた訳では……………訳、では…………………………
はい、夏休みが楽しくって普通に忘れてました。
昨日まで聖剣の刀鍛冶読み直して「アリアさんスタイルまじエロス」とかやってました。すんません。
とりあえずリハビリも兼ねて三章第一話をどうぞ。
第43話
「…ハルト、打ち取る」
「やれるもんならやってみなよ、小猫ちゃん!」
空は晴れ、夕日は傾き雲は茜に染まる中で、僕と小猫ちゃんは向き合い眼光を飛ばしあっていた。
僕は今、頭部に防具を着用し、両手には剣ではなく、鉄の打撃武器を持ち、対する小猫ちゃんの装備は左手に防具、右手に投擲武器だ。
「「……………」」
暫しの沈黙が、僕らの間に訪れる。しかし、その静けさは謂わば嵐の前のそれであり、これから始まるのは、お互いがそれぞれに欲するものを賭けた真剣勝負。
「………っ!」
先に動いたのは予想通りと言うか当然と言うか、自明の理で小猫ちゃんだった。
両手を合わせた状態で頭の上に持っていき、それに引っ張られるように彼女のスレンダーな左足が、頭の上までほぼ180度になるくらいに振り上げられる。
その姿勢を取った数瞬後、スムーズな重心移動から振り上げた左足を踏み込み、彼女は右手の投擲武器を勢いよく投げた。
その速度やまさに豪速球。並大抵の人なら反応すら難しいだろう。だが、
「“並大抵の”ならね」
小猫ちゃんが動き始めた時、僕もほとんど同時に動き始めていたんだ。
左足を引き、タイミングを見計らい、そして踏み込み、右足を捻りその反動で腰を回し、その勢いを殺さぬまま武器を振るう。
「…しまった! ど真ん中!」
「ジャストミートぉぉ!!」
カキーン! と甲高い音を響かせて白球は高く跳ね上がる。
え? 何やってるのかって? そんなの野球に決まってるじゃないですか全くもう。
「よっしゃあ! ナイスバッティングだぜ、ハル!」
「裕斗! そっちいったわ! お願い!」
くそ、ホームランにはならなかったか……………さすがオカ研一の強肩!
「…よし、打ち取った」
と、小猫ちゃんがガッツポーズをした瞬間……………
「あいた!」
ぽけー、とつっ立っていた木場先輩のおでこに見事ボール(硬球)がぶち当たる。
「裕斗! しっかりなさい!」
「え? あ、はい、すみません、ぼーっとしてました」
……………あれが当たって平気とか、悪魔ってすごいなぁ……………あっ。
「はい、ハルトくん、アウトね」
「なん……………だと!?」
わ、忘れてたぁぁあ!! この人めっさ動き早いの忘れてたぁぁあ!! まさか投球じゃなくてタッチプレイで来るとは思わなかったよ!
ん? タッチプレイ?
「木場先輩、悪魔の力を使うのはルール違反じゃ……………?」
「あ、ごめん、忘れてた」
んー、なーんか最近、木場先輩の様子がおかしいなぁ。
いや、変な行動は結構前からあったけどさ? 例えばいきなり鼻血出したり、変なことを口走ったり、背筋が寒くなるような視線でこっち見てたりとか。
でも、基本的にはなんでもあっさりこなす天才イケメンの筈なんだけど、ここ最近はやたら凡ミスが多いような?
なにかあったんだろうか?
◆◆◆◆◆◆
そんなこんなで。次の日のお昼休み、僕らは旧校舎に集まっていた。
て言うかグレモリー先輩は酷いと思いまーす! なんで部活の集まりに部員である僕に来なくて良いって言うんですかね!?
いいもん! 小猫ちゃんに付いていくもんね!
僕と小猫ちゃんが入ると、そこには見慣れぬ集団が。
「えっとー、どちら様?」
分からないので素直にそう訪ねると、その集団における唯一の男子生徒がため息をついた。
まるで、「なんだお前、そんなことも知らねぇのかよ」って顔で。
「なんだお前、そんなことも知らねぇのかよ」
失敬な。僕はまだ一年生だから学校のこととか良く分からないんですー。
「匙、そんなことを言う物ではありませんよ。彼はまだ一年生なのですから」
「す、すいません」
そう男子生徒をたしなめたのは、眼鏡にセミロングの、見るからに出来る女! な人。
「ハルト、彼らは生徒会よ」
「生徒会? どうして生徒会がオカ研に?」
オカ研なんて怪しい部活動と生徒会がこんな時間に一緒の部屋にいるなんて……………はっ! まさか!
「イッセー兄ちゃんがまたなんかやらかした!?」
僕がその答えに行き着いた瞬間、扉が荒々しく開かれる。
「やらかしてねぇよ!」
「あ、イッセー兄ちゃん。それにアーシアさんも」
「遅かったわね、二人とも」
「すいません」
遅れて来た兄ちゃんと僕らがそんなやり取りを交わしていると、先程の男子生徒がイッセー兄ちゃんをじっとみつめていた。
それに気づいた兄ちゃんが、その男子生徒に声をかける。
「ん? なんだ? 俺の顔になんか付いてんのか?」
すると、それを見た彼はまたため息をつく。
「はぁ、この気配にも気付かない奴が俺と同期なんて、張り合いがねぇな」
「同期? 確かに俺らは二年だけど?」
どうやらこの人、先輩だったようだ。
「しかたありませんよ匙。我々は基本的に、『表』では干渉しませんし、何より彼らはここ最近は忙しかったのですから」
…………つまり、どゆこと?
「あのー、話が見えないのですが?」
「ああ、ハルト、えっと、彼らはその、ね、えっと……………」
「悪魔です」
ワッツ?
「ちょ、ソーナ!」
「いいではありませんかリアス。というか、何をいい淀んでいるのですか? あなた達と一緒にいるのですから、そう隠すことも……………」
「……………きゅう」
「え?」
「はぁ、やっぱり……………だから来なくて良いって言ったのに」
あ、悪魔がひとーりふたーり……………わあい、最近僕の回りは人外だらけだー……って
「でりゃあ!」
「…あ、耐えた」
「に、人間って、案外慣れるもんなんだよ小猫ちゃん……………いやいやそんなことより」
1度深呼吸をして、
「ぇぇぇぇえええええ!! 生徒会が悪魔の集団!?」
「ええ、そうよ」
「この学校、悪魔だらけじゃないですかーやだー」
え? じゃあなに? 常日頃から一緒にいるクラスメイトや先生方のなかにも悪魔がいたり?
やだなにそれ怖い。
「ああ、この学校の悪魔はオカ研と生徒会にしかいないから安心して?」
そ、そうか、それはよかっ……………
「きゅう」
どうやらここが僕の限界だったらしく、そこで僕の記憶が途切れていた。
あとで聞いた話によると、これにより生徒会メンバーが大騒ぎし、危うく救急車を呼ばれる事態になりかけたそうだ。まあ確かに目の前でいきなり人が気絶したら、大騒ぎにもなるよね。
目を覚ました頃には生徒会の人達は引き上げていて、どうやらあの人達はうちの部に宣戦布告をしに来たらしく、それに触発されたグレモリー先輩がメラメラと燃えていた。
姫島先輩曰く、グレモリー先輩はすごく負けず嫌いらしい。うん、何となく分かる気がする。
ところで、
「匙の野郎はぜってーぶっ倒す」
どしたの? イッセー兄ちゃん。
◆◆◆◆◆◆
そして球技大会当日、僕らは凄いものを見ている。
「はぁぁ!」
「せぇい!」
目の前を、緑の線が幾つも駆け抜ける。
種目はテニス。ラケットを握るは我らが部長、グレモリー先輩。
対するは生徒会長、支取蒼那先輩ことシトリー先輩。
どうやらシトリー先輩も、グレモリー先輩と同じく上級悪魔らしく、また、二人は幼馴染みでライバルらしい。
そりゃ、本気にもなるよ。
ところで、少し話は変わるけど、基本的にテニスのボールは黄緑色だ。この色の理由は、他の色だと屈折率の問題でボールが遠く見えたり近く見えたりするため、プレイしにくいから、という事らしいのだが……………
「……………えー」
先ほど、僕は目の前を緑の線が駆け抜けると表現した。
そう、“線”だ。プロの試合で、いくら球速が速かろうと、それが残像を残すなんてことは余程の事がない限りあり得ない。
さて、なんでさっき僕が色の話をしたと思う?
テニボールの色は、目の錯覚を防ぐための物だ。でも、今僕の目の前で繰り広げられる試合は……………
「錯覚もなにも、これを目で追える人なんて、ごく少数なんだろうなぁ」
速い。何が? 球速が。
ボールが風を切るあの『シューッ』という音ではなく、まさに『ゴォォォ!』と表現するのが正しい音を出しながら、僕らの目の前をテニスボールが行き来する。
そしてそれを産み出しているのは、見るからに腕の線の細い二人。
「私は、負けられない! 負けたくない!」
「それは、私も同じことよ、ソーナ!」
「「はぁぁぁ!!」」
その当人たちは、周囲の反応など気にもせず、お互いの譲れない物を巡って争いを繰り広げる。
「「小西屋のトッピング全乗せうどんを食べるのは、私よ!!」」
んん?
「庶民的過ぎない?」
「言ってやるなハル。お嬢様がたはきっと、そう言うものが好きなんだろうさ」
「………グレモリー先輩らしいや」
ちなみにこの勝負、お互いのガットが同時に弾けとんだ為、引き分けとなった。
だってどちらも一セットも取らずにデュースばっかりになってたんだもの。
「さすが私のライバルね、ソーナ」
「そっちこそ、リアス」
「約束、どうするの?」
「…………今度、二人で食べに行きましょうか」
「…………そうね」
あ、結局そうなるんですね。
さて、次は部活対抗の集団戦だし、僕も準備しなくちゃ!
……………ガッコ、行きたくないでござる……………
また宿題とレポートと予習の地獄が始まる……………予習せねば……………主に数式計算の復習予習をせねばぁぁあ……………
ウボァー