色々と身の危険を感じた入学式から数日が足ったある日のこと。
「ここは…………どこ?」
僕は道に迷っていた。
別に方向音痴とかではない。ただ…………。
「姫島先輩ほんと、なんであんなにエンカウントするかなぁ…………」
あの先輩、神出鬼没過ぎる。朝校門でバッタリであったかと思うと、休み時間にトイレ前で鉢合わせ、放課後図書館に行けば出くわし、帰ろうとしたら昇降口で声をかけられる。
それだけならいい。むしろ二大お姉様の一人にそれだけ会うから、どちらかと言えばラッキーと言えるだろう。
だけど、二言三言目には大体が勧誘なのだ。
だから入らないっての。
最近の流れは、出会う→挨拶する→勧誘される→逃げる(ダッシュ)。
という具合。そして今日は逃げる時間が長かった。なんであんなに足早いのさ。胸とか邪魔にならないの?
まあなんとか勝てたけども。
けど僕? 火事場の馬鹿力はあんなときに出さなくていいからね? ビックリしたよ。だってジャンプしたら、人一人飛び越えられるくらいの高さだったんだもん。あのまま二段ジャンプもできそうな気がした。
ちょっと話がそれたから、話を戻そう。
僕は今完全に迷っていた。
学校の中じゃない。校外でだ。生まれたときから住んでる町だけど、学園周辺にはあまり来たことが無くて、だからここがどこなのか良くわからない。
この町、結構広いんだよなぁ。ショッピングセンターはあるし、学校も小学校から大学まで揃ってるし、なんか山というか、丘の上に教会まである。
ちなみにあの教会。すでに無人の廃教会で、そうとう廃れている。
だから僕は子供の頃の一回しか行ったことが無い。
「うーん…………どうしたものか」
「どうかしたのかしら?」
「ちょっと道に迷ってしまって…………ん?」
座りながら頭を抱えて悩んでいると、頭上から声をかけられた。
一瞬、姫島先輩かと思って体が硬直したが、顔を上げるとそこに会ったのは紅だった。
「えっと…………?」
「あら、私を知らないのね。自惚れる訳では無いけれど、割りと有名だと思っていたのに」
「すみません。どうも人の顔とか名前を覚えるのが苦手で」
「謝らなくていいわ。そもそも初対面で馴れ馴れしかった私が悪いのだし。
始めまして、私はリアス・グレモリー。あなたが神結悠斗くんね?」
「はい、そうです……けど、なんで知ってるんです?」
そこまで目立つ何かをやらかし…………てるなぁ。姫島先輩関連で特に。
あの先輩とイッセー兄ちゃんのせいで、僕は男女から少し敬遠されているのであった。
って言うか、リアス・グレモリーって姫島先輩と並ぶ二大お姉様じゃないか!! なんだろう、凄いレア体験してるはずなのに嫌な汗が吹き出してくる。
「あなたの事は朱乃から聞いているわ。なんでも、朱乃に勧誘されては逃げているそうね」
やっぱりそっち繋がりか!! そうだよな! なんかやっぱそういうのって繋がりあるよな!
「オカ研、私が部長なのだけと、やっぱり入らない?」
「入りません」
即答した。当然だ。
だって怖いもん!!
「そ、即答なのね…………。わかったわ、ひとまず諦めるけど、いつでもおいでなさいな」
「気が向いたら行きます」
「その返答はなんか来なさそうね…………」
その後、僕は道を教えてもらい、帰路に着いた。
しかし別れ際、何か紙を渡されたんだけど、なんだったんだろう?
―――貴方の願いを叶えます。
…………流石オカ研。オカルトチック。
よし、捨て…………たらバレたときに殺されそうだから、これは部屋の机の中に厳重封印をしておこう。
それにしても、
「お腹、空いたなぁ…………今日の晩ごはんなんだろ?」
僕は今、物凄く、
―――――オナカガスイテイル。
何だって食べられそうだ。最悪コンクリートでも…………無理だな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
あの子が、神結悠斗くん。
確かに朱乃の言う通り、無性に可愛がりたくなる雰囲気を纏っていたわね。
弟、といった感じかしら?
でも、あの気配はなに? 人間の気配ではあるんだけど、なんというかこう、人ならざるモノの気配が混じっている気がした。
神性に近い、けど神聖なモノでは無い気配。かといって、悪神や邪神のような神性とも違う。
…………まさか、
だとしたら、朱乃に感謝ね。彼女が見付けてくれなかったら、私は彼の存在に気付かなかったはず。
最初はビックリしたわ。なんせあの朱乃が男子に興味を持つんですもの。
それだけじゃなく、部活への勧誘まで始める始末。我が部に勧誘することはつまり、悪魔への勧誘と同義。あの子がそれをわからないはずがないから、多分、彼の神器に気づいてやっていたのだろう。
…………多分、そのはず、よね?
まぁ、とりあえずこれで、この学園で見つけた神器持ちは二人。
ハルトくんへの挨拶は済ませたから、後一人ね。どうアプローチをかけた物か…………。
後、朱乃にはどういう心算だったのか問い詰めるとしよう。
そういえば小猫も、彼の名前を聞いた時からなんだかそわそわしていたわね。