ハイスクールG×E   作:フリムン

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第44話

 

「くそっ! くそっ! なんだってこんなことに!」

 

 俺、兵藤一誠は現在、四方から命を狙われていた。

 

「うぉぉぉぉ!! 野郎共! 狙うは兵藤一誠のみ! タマを潰せぇぇぇ!!」

「ふざけんなぁぁぁあ!!」

 

 種目はドッジボール。

 そしてジャンルは部活対抗戦。

 

「くっ、ちょこまかと、逃げるなぁ!」

「逃げるわアホンダラ! 死ぬわ!」

「死ね!」

 

 ドッジボール。直訳すれば「球避け」

 そして現在の俺はまさにドッジボールをしているわけだが、そのドッジボールで俺は今命の危険を感じている。

 理由は簡単だ。

 

 その理由を述べる前に諸君、一つ聞きたい。

 幼少期、正確には小学校の高学年辺りくらい。

 その頃体育や休み時間などにドッジボールをしたことは無いだろうか? もしやったことがあるのなら覚えがあるかもしれない。

 

 いつの時代も、どの世代も、相手の身体能力に限らず、男子は女子に手加減をしなければならない、という不文律を。

 

 そしてこんな覚えは無いだろうか? ドッジボールにおいて女子に当ててしまったり、女子に人気の男子に当ててしまった時のあの気まずさを。買ってしまった顰蹙の居心地の悪さを。

 

 故に男子は女子や女子に人気の男子を狙わずに、その他の男子を狙い、女子は男子だろうと女子だろうと構わずに本気で投げてくる。

 

 今現在、俺に起きている現状は、つまりそういうことである。

 

「兵藤さえ潰せば、たとえ負けようとも勝てるんだ! いいか!? 試合に負けても勝負に勝つんだよ!」 

 

 部長―――狗王学園の二大お姉さまの一人。大人気の学園マドンナ。当てられない

 朱乃さん―――部長と同じ二大お姉さまの一人。清楚な学園アイドル。当てられない。

 アーシア―――二年生No.1の癒し系天然美少女。しかも金髪。当てられない。

 小猫ちゃん―――学園のマスコット。そのおみ足で踏まれたい。当てられない。

 木場―――イケメン死すべし慈悲はない。ってやると女子の顰蹙を買う。当てられない

 

 そしてハルト―――小猫ちゃんとならぶ学園マスコット。男子なのに男でも守りたくなる。当てたら可哀想。

 

 

 以上の事から導き出される結論は、

 

 兵藤一誠―――羨ましい羨ましい裏山死。なぜこいつがおにゃのこだらけの天国に入れたのか謎だ。理由はわからんがまぁとりあえず狙え、当てろ。目標(ターゲット)は股間だ、タマだ潰せ。さぁ殺れ。いいから殺せ。慈悲など要らぬ。

 

 という、悲しい消去法であった。

 

「殺せぇぇぇぇ!!」

「死ねぇ!」

「アーシアたんのために!」

「yes!! ロリータ! no!! タッチ!! ショタもあり!」

「狙い撃つぜ!」

「いいぞー! もっとやれ! 兄ちゃんに当てろー!」

 

 くっ、ギャラリーからもヤジが飛んできやがる……………って、

 

「おいテメ、ハル! どっちの味方だぁ!!」

「面白い方」

「即答か!!」

 

 と、俺とハルがそんなやり取りをしている間に、アーシアが投げたボールが向こうに取られてしまう。

 

 ボールを取った奴(確か野球部エース)は俺とハルと木場をそれぞれ見て、暫しの逡巡の後、

 

「く……う、恨まれてもいい! イケメン氏ねぇぇぇ!!」

 

 よっぽどイケメンに恨みがあるのか、女子のブーイングを受けながらも、そいつは木場を狙ってボールを投げる。

 

 しかし、ボールを投げられた当の木場は、それに気づいていないのか、ボケッと空を仰ぎ見ていた。

 

「危ない! 木場先輩!」

 

 瞬間、俺の隣にいたハルトが駆け出した。直後、腕を引っ張られる感覚があった――――――っ!?

 

 

 

 響いたのは、なんとも言えない直撃音。

 続いて衝撃。

 最後に、これまでの戦いの中でもっとも辛い痛み。

 

 

「………っ! ………っ!」

 

 声にならない悲鳴が漏れる。

 

「あれ? ハルトき……くん?」

 

 俺やハルの存在に今気がついたのか、木場はそんな間抜けた声を出す。

 

「大丈夫? 木場先輩? …………ふぅ、イッセー兄ちゃんが………いや、イッセーシールドが無かったら即死だった」

「は、ハルてめぇ………覚え、て、ろ……………」

 

 俺の股間を見事に抉ったボールは地に落ち、周囲の大歓声を聞きながら、俺はそこで意識を失った。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 球技大会が終ると同時に、元々雨模様だった空から、ついに雨が降り始め、今や土砂降りだ。

 

 雨が部室の窓を叩く心地のいい音のなか、部室内にパンッと、乾いた音が響いた。

 

「目は覚めたかしら? 祐斗」

 

 音の原因は、グレモリー先輩が木場先輩の頬をひっぱたいたから。

 グレモリー先輩は少し怒りを滲ませた声と眼差して木場先輩を見つめている。

 

「祐斗、あなた最近変よ?」

「申し訳ありません。少し調子が悪かったようです」

 

 丁寧な言葉使いでそう答える木場先輩だけど、その口調はどこか面倒臭そうに答えていた。

 

「木場、お前マジでどうしたんだよ?」

 

 イッセー兄ちゃんの質問に、僕も便乗してウンウン、頷くが、それを見た木場先輩はすぐに僕らに背を向けて、

 

「何でもないよ」

 

 と答えた。

 

 その言葉や態度はどこか不機嫌で、拒絶されたように感じてしまった。

 だから僕は、何の考えもなしに部屋から出ていこうとする先輩の手を取った。

 

「何でもなくないよ! だって木場先輩、いつも通りじゃないもん!」

 

 いつもは確かに奇抜な行動の多い人だし、ちょっと身の危険を感じる視線を送って来るけど、それでも皆に優しくて、何でもそつなくこなす頼もしい先輩だ。

 そんな人が今日みたいなことになって、心配しない訳がない。

 

「だから、何でも無いってば」

「ううん、そんなことない。見ればわかるよ。先輩、なにか悩んでるの?」

 

 その言葉に一瞬動きを止めた先輩は、僕の手を振り払い振り向いて、

 

 

 

「だから!! 君には関係ないって言ってるだろ!! しつこいんだよ!!」

 

 

 

 そう、怒鳴られた。

 

 普段、声を荒らげる事のない先輩だからこそ、その形相と怒声に僕は身を竦めた。

 他の皆も驚いたように身を竦め、固まっていた。

 

「……………失礼します」

 

 そう言って部屋を出ていく木場先輩を、僕らは無言で見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 降りしきる雨のなかを、僕はその身を濡らしながら歩いていく。

 

「――――最低だ」

 

 最低だ最低だ最低だ!

 

 僕はなんてことをしてしまったんだ! いくら苛立っていたからって、よりにもよってあの子に怒鳴り散らしてしまうなんて! 

 

 感情の制御はできていると思ってた。望みの抑制もできていると思ってた。

 

 けど、この様はなんだ!

 大恩のある部長に対して失礼な態度をとって、僕を案じてくれたイッセーくんの言葉を拒絶して、引き留めようとしてくれたあの子の手を振り払って、挙げ句には怒鳴り散らしてしまうなんて!

 

 

 ふと、そこまで考えて僕はあることに気がついた。

 

 

「ああ、そうか。やっぱり、僕は………」

 

 エクスカリバーに、復讐したいんだ。

 

 それを目的として悪魔になったはずだった。

 その為だけに生きているはずだった。

 

 その為ならば、誰とも関わらずに生きていこうとまで、思っていたはずだった。

 

 けど、皆と出会って、彼と出会って、いろんな人と関わって、言葉を交わして、いつの間にか僕は、目的を忘れかけていた。

 だってあそこは、あまりにも暖かくって、優しくって、居心地が良かったから。

 そんなもの、僕には許されないはずなのに。求めてはいけないモノなのに。

 

「ああ、馬鹿だ僕は。本当に、大馬鹿だ」

 

 歩くのを止めて壁にもたれ掛かる。

 こんなずぶ濡れだ。雨宿りしても意味がないだろう。

 

「そうだ、僕はこんなことをしている場合じゃないんだ」

 

 皆の、同士の恨みを晴らすまで、僕は―――――

 

 

 

「おんやぁ? おひさじゃないの! くそ悪魔っち!」

 

 

 不意に、そう声をかけられた。

 こんな近くに来るまで気配を感じられないなんて、気が抜けていた。

 

 だが、僕の知っている人物で、敵味方問わずこんな言葉使いな奴を、僕は一人しか知らない。

 

 

「………フリード・セルゼン」

 

 苛立ちと共に顔をあげると、気味の悪い笑みを張り付けたはぐれエクソシストが、そこにいた。

 

 

 

 

 




この間久しぶりに小説情報の評価の部分を見るとですね、

なんとまぁ対照的な形をしてやがることで。

見てちょっと笑っちゃいました。
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