『聖剣計画』
兄ちゃんの部屋でグレモリー先輩から聞かされたその計画の内容は、余りに反吐が出るような内容だった。
聖剣に適合できなかったと言うだけで、人としての権利を奪われ、殺される。
確かに人体実験は人類の進歩に大きく関わっている。けれど、この『聖剣計画』とやらは非道にも程がある。
「被験者達はね、適合できなくても生きて行けるはずだったの。聖剣は魔剣と違って、適合できなくても呪ったり食ったりしないの」
それでも、殺された。
木場先輩も、その仲間達も、『不良品』として、あっさりと殺された。
「そ、そんな………主に遣える者が、そんなことをしていい筈がありません」
「でもね、アーシアさん。悲しいことに、心を持つ全ての存在には心がある筈なんだ。心があれば、必ず悪心と良心、その2つが存在する。アーシアさんにだって、欲とかあるでしょ?」
「それは…………」
僕の言葉にアーシアさんが口ごもる。
「………そうか、だから木場の奴、あそこまで聖剣に執着していたのか」
兄ちゃんがポツリと溢した言葉に、僕らの空気がさらに重くなる。
あの日から、木場先輩は学校にすら来ていない。
「施設から命からがら逃げ出して、私の眷属になったとき、祐斗は教会への激しい憎悪と、聖剣に対する復讐心に囚われていたわ」
そう語るグレモリー先輩はとても悲しそうで、とても辛そうだった。
「だから私は、彼に普通の男の子として生きていて欲しかった。友達を作って、遊んで、笑って、恋をして、そうして、憎悪も復讐も全て忘れられたらと、そう思っていたの」
つい最近までは忘れてると思ってたんだけどね。
そう言って皮肉げに笑う先輩は、今にも泣き出してしまいそうだった。
◆◆◆◆◆◆
「復讐、か」
翌日、部室へ向かう途中、僕は昨日聞かされたことを思い出していた。
あんな先輩は見たくない。けど、どうすれば良いのかもわからない。
「あー、どうしよう………」
自分の無力さと言うか、何もできない事へのもどかしさにそうぼやきながら、僕が部室のドアに手をかけると、ドアの向こうからくぐもった何かの音が聞こえてくる。
『―――、―――――』
……………えっと? なんで水の音がするんだろう? しかも結構粘着性のありそうな音が。
「…………」
開けるの、怖いなぁ。
なんか扉の向こうはピンク色のカオスな気配がすると、僕の第8感辺りが告げている。6と7どこいった。
よし開けよう。落ち着け、これは決してやけっぱちじゃない。ただの確認だ、そう、TDN確認。
「そー……っと」
「―――んちゅ、はぁ……れろ、はむ……………んん、ぷはぁ……………」
……………………………………………………。
そうして僕は、そっと扉を閉めたのでした。
そして
なんだあれなんだあれなんだあれなんだあれ!!
え? なに? なんで部室でR-18的展開が展開してんの!? なにこれエロゲ!? そういえばRってAから数えて十八番目だよね! だからR-18なのかな! 考えた人ってすげえや! ところでなんで部室で兄ちゃんと姫島先輩ががががぎぐげくぁwせdrftgyふじこlp!
「ど、どうされたんですか、ハルトさん?」
「…ど、どうしたのハルト?
「やぁ、小猫ちゃんにアーシアさん。今日もかわいいね。僕は大丈夫、少しカオスがヘヴンしてレッツぱーりーぴーぽーしただけだから」
「……………なんて?」
おっといけないいけない。とりあえず落ち着け僕。
「いやぁ、ごめんごめん、ちょっと発狂しちゃった☆ てへぺろ☆」
「発狂!? なにがあったんですか!?」
「色んな意味で凄まじいものを見たせいでダイスロールすっぱ抜いてSAN値直葬しちゃったZE☆!」
「…とりあえず落ち着こうか。なに言ってるか全然わかんない」
「い、一応
……………あぁ、精神が落ち着いていく。
◆◆◆◆◆◆
「…それで、なにごと?」
「実は斯々然々で」
「…なるほど、右頬と左頬、どっちがいい?」
「ごごごごめんなさい」
大分落ち着いてきたから、ついうっかり軽口を叩いてしまい、ついうっかり小猫ちゃんのシャドーパンチを見せられてしまったでござる。
「じ、実は……………」
と、僕が口を開きかけた瞬間、
「いた! ハル! 朱乃さん! こっちです!」
ふぁっ!?
「ハルトくん!」
僕がビックリしたのも束の間。あっという間に視界が真っ黒に奪われる。ついでに顔に柔らかくて暖かくて甘い匂いがするものを押し付けられる。
「驚かせてしまいましたか? でも安心してくださいハルトくん。あれはそういうことではありませんのよ? あれはただ、イッセーくんの左腕に溜まった龍の気を散らしていただけですの。だからハルトくんが想像しているような事ではありませんの。確かに私、この部活ではエロ要員ですが、そこまで尻軽なつもりはありませんもの。大丈夫です、私はまだ処女でしてよ? ええ、それはもう紛れもない生娘。なんなら確かめて見ますか? では私のお家に――――――」
僕の頭を撫でながら、姫島先輩が早口で捲し立てて来るけど、今はそれどころじゃない。
「んー! んんー!!」
悪魔ぱぅわー(物理)で頭を押さえつけられてるせいで、さっきから息ができなくて死ぬほど苦しい。
……あ、これは死ねる。
「…朱乃先輩、ハルトが苦しそうです離して下さい」
「――――そうですわ、まずは身を清めて、その後に……………あら?」
「ぶっはぁ! 九死に一生! あ、危なかった……………」
途中から意識が朦朧としてて危なかった。
て言うか、姫島先輩の様子がおかしいんだけど? 顔を青ざめさせて、少し震えている。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいハルトくん! 本当にごめんなさい! そんなつもりは無かったの! ただ私は誤解を解きたかっただけで……………ごめんなさい!」
「お、落ち着いて姫島先輩! お、怒ってませんし、いま誤解とけましたから! だからほら、落ち着いて! 涙もふいて! ね?」
……………どうしてこの人はここまで……………
このあと、落ち着けるのに30分位かかって、騒ぎを聞き付けたグレモリー先輩が来るまで、そうとうカオスだったと言っておこう。
◆◇◆◇◆◇◆
違うの、そんなことがしたいんじゃないの。そう言うことが言いたいんじゃないの。
ただ、私は――――――
「落ち着いたかしら? 朱乃」
「………ええ、リアス、お陰さまで……………みんなは?」
「もう帰らせたわ。それにしてもどうしたの? 貴女らしくもない」
リアスはまだ湯気の立つカップを私に手渡してくる。中には私を落ち着けるためか、ココアがなみなみと注がれていた。
「ハルトくんの、誤解を解こうとして……………」
「それで、あそこまで暴走したわけね」
「……………」
私がそこで黙ると、リアスはため息をついて、私の目の前の椅子に座る。
「朱乃、貴女がハルトに好意を持ってるのは、多分あの子以外の全員が知ってることだけど、あの子は多分鈍感だから、きっと口にしないとわからないはずよ?」
「……………ええ、わかってるわ」
「それなら、どうして伝えないの? 小猫に遠慮してるの?」
「違うわ」
そういうことじゃない。
私が彼にこの気持ちを伝えないのは、遠慮とかそんな事じゃない。
「私は、彼にそんな事を言っちゃいけないの。この気持ちを見せちゃいけないの」
「どうして? あんなにいつも彼の事を見てるのに?」
リアスが私の顔を覗き込みながら、グイグイと質問をしてくる。
正直、鬱陶しい。
「なにが貴女をそうさせるの? 何かあったの? 相談に乗るわ!」
「………放っておいて」
「そういうわけにはいかないわ。だって、あなたは私の家族だもの。幼馴染みで、親友で、眷属で、【
「放っておいてって、言ってるでしょ!」
つい、そんな言葉が出てしまった。
その衝動に駆られるまま、ソファーから立ち上がる。
「貴女になにがわかるの!? ねぇリアス! なによ、自分が好きな相手と同棲してるからって、そんな余裕そうにしちゃって、だからそんな上から目線なの!?」
「あ、朱乃?」
リアスが困惑して、たじろぐ。
「だいたい何よ! 貴女だって告白してないじゃない!」
「そ、それは……………」
「貴女はまだ良いわよ! 何のわだかまりも無くて! 私はわだかまりだらけよ! ハルトくんの大切な物を壊したのは堕天使! そして私も堕天使! こんな私が、彼に意地悪もしていた私が、そんなこと言えるわけないじゃない! 私は決めたの! この気持ちを伝えないって! 一人で終わらせるんだって! そこに余計な茶々を入れないで!」
「ち、ちが! 私は、ただ……………」
口ごもるリアスに背を向け、魔方陣を展開する。
「今日はもうほっといて……………一人でいたいの」
「朱乃!」
リアス呼ぶ声がしたが、それに振り返ることもなく、私は自宅まで転移をしたのだった。
あぁ、明日からどんな顔であの二人とあえばいいんだろうか……………。
そしてあんまり話が進んでいないと言うこの事実に愕然とした。
※人物紹介の朱乃の項目を少し更新しました。