あと、今回はハルの出番が少ないです。
「……………」
「……………」
「……………」
とあるファミレス。
そこに、尋常ではないくらいに不機嫌のオーラを放つ三人がいた。
「………おい兵藤、何とかしろよ」
「……………俺に死ねと?」
「ことの発端はお前だろうが!」
「…ハル、落ち着いて」
正確には六人だが。
「えー、あー、その、うん、三人とも?」
とりあえず、その場を何とか修めるために、俺は恐る恐る声をかける。
「「「……………」」」
無言で見つめ返してくる三人。怖ぇ。
「い、色々思うところはあるだろうけどさ、と、と取り敢えず飯にしようぜ? な?」
俺の提案に、一応頷くハル、イリナ、ゼノヴィアの三人。
……………あー、ハル呼ばなきゃ良かったかなぁ………でもハブったらハブったで後々面倒だしなぁ。
先日激しい口論の末に、決闘まで行った彼らがなぜ同じ場所に居合わせたか、その理由は数時間前に遡る。
◆◆◆◆◆◆
「嫌だぁぁぁぁああ!! 俺は帰るんだぁぁぁぁああ!!」
「落ち着け匙! 大丈夫! エクスカリバーをぶっ壊すだけだから! 部長と会長に黙って!」
「全然大丈夫じゃねぇじゃねぇかボケぇぇぇぇ!」
「大丈夫だ、問題ない」
「大ありなんだよ!!」
天下の往来、人々の行き交う駅前で、恥も醜聞も機密も関係なく匙が悲鳴をあげる。
周りの人達が何やら見てくるけど、そんなのは関係ない。
「はぁ、そんなに嫌か?」
「当たり前だ俺まだ死にたくない」
「……………仕方ない」
「おお!」
「小猫ちゃん、卍固め」
「…了解です」
「あんぎゃぁぁぁぁぁあああ!!」
再び匙が悲鳴をあげる。バカめ、素直に頷いておけば良いものを。ふーっはっはっはっ!
「さて匙くん? 会長の手によって(精神的に)死ぬのと、ここで俺たちによって(社会的に)死ぬの、どっちがいい?」
「悪魔か貴様!?」
「お前もな」
「鬼! 悪魔! 人でなし!」
「ふははは、誉め言葉だ」
そこに、小猫ちゃんがポツリと呟く。
「…匙先輩………手伝って、くれないんですか?」
な、泣きそうな声音と涙目のコンボ、だと!?
流石小猫ちゃん! 小悪魔的! 恐ろしい子!
「搭城さん……………って痛だだだだ!! 待ってそろそろ肩が限界! 外れる! 肩が外れちゃう!」
まぁ、卍固めが全部台無しにしてるんだけど。
◆◆◆◆◆◆
「うー、まだ痛ぇよ……………」
匙が体のあちこちを揉みながら恨みがましくぼやく。
「素直に協力すると言えば良いものを」
「お前ホントに俺と同期かよ………悪魔過ぎる」
「まぁ、ぶっちゃけ、ハルのやり方なんだけどなこれ」
「……………あんな顔して中身悪魔かあいつ」
あの後、目的の詳細を話し、平和的に(暴力が無いとは言っていない)協力を取り付け、今はあの教会組二人を探している最中だ。
「しかし、そう簡単に見つかるかね」
「あの二人、結構派手な格好してたからな、案外すぐ見つかr……………」
「えー、迷える子羊にお恵みをー(棒)」
「どうか、天の父に代わって哀れな私たちにお慈悲をぉぉぉ!(泣)」
「「「……………」」」
いた。
めっちゃ簡単に見つけた。
つかなにしてんの? ゼノヴィアは棒読みだしイリナ泣いてるし!
そのあと何やら聖人だのぺトロだのと口論が始まり、その流れから脅すだの襲撃だの大道芸だのと話が転がり、また口論に発展する。
「これは…………」
目立つなんてもんじゃない。うるせぇ。
そんな二人に声をかけた後、なんやかんやあって、匙の提案で何故か俺の奢りで昼飯を取ることになって(解せぬ)、何を思ったか俺はハルに連絡してファミレスで待ち合わせて、
そして冒頭に戻る訳だ。
◆◆◆◆◆◆
「「「……………おかわり」」」
三人が同時にこちらに皿を突き出してくる。
「お前らホントは仲いいんじゃねぇの!?」
なんなのコイツら。胃袋どうなってんの? なんで定食五回もお代わりすんの? おかしくない?
止めて! 僕の残金はもう0よ! 小猫ちゃんに軽く借金するから実質マイナスよ!
そう告げると、奴らは自分のお皿を者足りなさそうに見つめた後、
「「「なら、あれで」」」
指差したのはこのファミレス名物、『10kgパフェ。時間内に食べきれたら賞金諭吉二人』
躊躇いなく、一糸乱れぬシンクロ率100%で同時に指を指す彼ら。
バケモンかよコイツら。
「…あ、これなら私も」
バケモン一人追加。
結局、話は四人がパフェを食べ終わるまで始まらなかった。
挙げ句途中には少し機嫌の治ったハルと小猫ちゃんがあーんしたり、イリナとゼノヴィアがパフェに乗ってるイチゴやらチョコレートを取り合ったり。
ホントなんなの、お前らの胃袋。ブラックホールかよ。
……………嗚呼、斯くも儚き哉、男子高校生の御財布。
などと嘆いていると、俺の目の前に座ったゼノヴィアが口を開く。
「それで、私たちに接触した理由は?」
「おいおい、礼も無しかよ」
横柄にそう切り出した彼女にちょっとカチンと来て、俺はそう返した。
「む、確かにそうだな。悪魔に感謝するのは業腹だが、救ってもらったのは事実だしな」
「そうねぇ、ああ、主よ、心優しき悪魔に感謝を。アーメン」
目の前で十字を切る二人。頭痛の走る三人。
「あ、ごめん」
イリナがてへっと、自分の頭を軽く小突く。
気を取り直して、俺はさっきの質問に答える。
「エクスカリバーの破壊に協力したい」
瞬間、二人の雰囲気がガラリと変わり、戦士のそれとなる。
「イッセーくん、それってどれだけ危ないことか、わかってる?」
「危ない? そりゃ確かに聖剣は
「そうじゃない、兵藤一誠。問題は壊した後だ」
「壊した後?」
ゼノヴィアの言っていることの意味が分からずに首を傾げる俺に、二人は溜め息を吐く。
「まあ、悪魔になりたてなら分からないのも当然…………かな?」
「つまりだな兵藤一誠、『悪魔』が『聖剣』を壊す。それが問題なんだ」
「「「……あっ」」」
俺以外の三人。ハル、小猫ちゃん、匙が同時に声を上げる。どうやら合点がいったようだ。
かくいう俺も、流石にここまで言われればある程度の予想はつく。
つまり、
「
質問したのは匙だ。流石生徒会だけあって、頭の回転が早い。
「…それだけじゃありません。今回敵対するのは堕天使。これが堕天使の組織的な活動だとしたら」
「その二つを、兄ちゃん達は敵に回すって事だね」
うーむ、そう考えると実に厄介だ。
「私たちは別に構わない。むしろ賛成だ」
「正直、私たち二人でコカビエルと戦うのは無理だからね」
「食事の借りもあるからな、出来るだけ擁護はするつもりだ。だが」
「堕天使がいちゃもん着けてきたら、私たちにはどうしようも無いけどね」
確かに、これは余りにメリットが少なすぎる。
いや、損得で動いている訳じゃないけど、ここまで後々面倒になるんなら……………
「兄ちゃん」
思考に沈む俺の耳に、隣に座ったハルが声をかけてくる。見れば、ハルは何かを訴えるような強い意思の籠った眼差しで、俺を見ている。
……………バカか、俺は。
なんで、ダチを助けんのにこんなグダクダ考えてんだか。
「ああ、それでもやらせてくれ」
「良いのかい? 君の主が不利になるぞ?」
「そんときゃ、はぐれにでもなって討伐されてやるさ」
「イッセーくん、そんな軽く……………」
「ダチを助けるんだ、これくらいどうってこと無いね」
そう言って俺は笑う。笑って見せる。
「ハルも匙も小猫ちゃんも、危なくなったらいつでも降りて良いからな」
「…先輩」
「兵藤、お前………」
「これは元々俺の独断だ。そこまで付き合わせる必要は無い」
「なら俺は今すぐおr―――「バカだね、兄ちゃんは」
不意に、さっきまで黙っていたハルが口を開く。
「木場先輩は僕らにとって大切な仲間でしょ? その仲間のために行動するんだ。どんなに危険でも絶対に降りないよ。僕は」
「…私も、降りません。祐斗先輩に、いなくなって欲しくないから」
ハルと小猫ちゃんの、一年生組二人がそう告げてくる。全く、良くできた後輩と幼馴染みだよ。
「なるほど、それが僕を呼んだ理由かい?」
不意に、後ろから声がかけられる。
ってまぁ、俺が呼んだんだけどな。
「おう、木場。遅かったじゃねぇか」
そこには、イリナとゼノヴィアを不機嫌そうに見つめる木場が立っていた。
「全く、イッセーくん、君って奴は」
「っせーな、良いだろ」
「良くないよ。僕の事情に君たちを巻き込むなんて」
「けっ、一人でカッコつけてんじゃねーよ、このイケメンが」
店員が持ってきた椅子に座る木場は、俺の言葉に少し戸惑ったようだ。
「べ、別にカッコつけてる訳じゃ……………」
「へっ、一人で抱え込んでシリアス気取って俺達に心配させる。これのどこがカッコ付けてないってんだよ」
「僕は、そんな」
「だー、ウジウジうるせぇ! いいから協力させろ! 卍固めすんぞオラ! 小猫ちゃんが!」
そういうと、少し驚いたように目を見開いた木場は、そのあと何か眩しい物を見るように目を細めて、俺を見てくる。
「んだよ」
「……いや、カッコいいなって」
「やめろ気色悪い! それはハルにだけやれぶるふぁ!!」
小猫ちゃんに殴られた。ついでにハルに蹴られた。死ぬほど痛い。
「…バカな事言うと殴りますよ、イッセー先輩」
「アホなことばかり言うと蹴るからね、イッセー兄ちゃん」
「……………はい」
床に倒れる俺を一瞥したあと、小猫ちゃんが木場に居なくならないでと、匙にやった涙目涙声コンボよりも心の籠ったそれをやり、ハルが
「だって先輩がいなくなっちゃ、部活の楽しさが減っちゃうよ。皆揃ってのオカ研でしょ?」
と笑顔を見せ(ここで見た木場の鼻血は無かったことにしてやろう)、結局木場は了承し、俺達とイリナ達との限定的な同盟が成立したのだった。
「……………あれ? 何この雰囲気? 何この、俺は降りる! って言えない雰囲気……………えぇー」
◆◇◆◇◆◇◆
『お兄ちゃん!』
木の上で昼寝していたオレの耳に、声が届く。
『あん? んだよガキんちょ』
見下ろすと、そこには栗毛に眼鏡、そして白い服を着た少女が立っていた。
『ガキんちょじゃないよ! 私にはキャサリンって名前があるもん!』
『名前くらい知ってらぁ。ガキはガキんちょで良いんだよ。で? 俺に何の用だ?』
『用じゃなくてね、そんなところで寝てたら風邪引くよ?』
『けっ、鍛え方が違うんだよ』
そう言って木から飛び降りる。
『やっぱり、聖剣が使えるから?』
『あん?』
急に声が小さくなった少女を、俺は上から見下ろす。
『私も、いつかなれるかな、お兄ちゃんみたいに』
『俺みたいって……………けっ、やめとけやめとけ、こんなロクデナシ』
『ロクデナシじゃないよ! お兄ちゃんは凄いもん! 私たちに色んな事教えてくれるし、優しいし、強いもん!』
『……………』
やめろ。そんな目を向けるな。
そんな尊敬されるような奴じゃねぇんだよ、俺は。
『……ま、何にせよ、俺みたいには絶対になるんじゃねぇぞ』
キャサリンの頭をグリグリと撫で付け、そのまま背を向ける。
『行っちゃうの? お兄ちゃん』
『おう。日本って国でお仕事だ。皆によろしくな』
俺がそう告げると、彼女は少し寂しそうな顔をする。
だから少し立ち止まって、振り返る。
『心配すんなよ。土産話沢山抱えて帰ってくるからよ』
『………うん、わかった』
キャサリンが頷いたのを見届けて、今度こそ歩き出す。
『いってらっしゃい! フリードお兄ちゃん!』
その声に、俺は振り返らずに手だけを上げて応えた。
◆◆◆◆◆◆
「ふぁぁ………」
眠っていた布団から起き上がり、欠伸と背伸びをする。
外はもう真っ暗で、月明かりが電気の点いていない室内を照らす。
日中まともに外を出歩ける訳がないので、ここ最近昼間は寝てばかりだ。
ここは、コカビエルから与えられた部屋で、ベッドと机以外、枕元の聖剣しか無い小さな部屋だった。
「あいつら、元気にやってっかな」
先程まで見ていた夢の内容を思い出す。
あそこは、俺が良く行く孤児院で、コカビエル直轄の施設。
あいつらは、聖剣因子を持っているため、放っておけば教会につれていかれ、因子を取り出されてしまう。
因子を取り出せば、俺の同胞たちの様に殺されてしまう。それを防ぐために、コカビエルが施設をつくり、孤児を引き取っているのだ。
「ふぅ、今日も今日とて頑張りましょうかねっと」
黒いコートを羽織り、腰に剣を携えれば準備完了。
こうして俺、狂ったはぐれエクソシスト、フリード・セルゼンは今日も、夜の町に繰り出すのだった。
皆さんの暖かさに僕は涙そうそうです。
10評価が二つも付くなんて!
ありがとうございます。そして頑張ります!
ところで、最近ヒャッハーする内容のssにハマってるんですけど、この小説じゃできないよなぁ、書こうかなぁ、でも二つも抱えきれねぇよぉ、と悶々してる日々です。
DDでヒャッハーする内容の小説、誰か知りませんか?