やっぱり師走は忙しいんじゃぁ……………
今までめんどくさかったから付けてこなかったけど、今回ほどサブタイを入れたくなる回は無かったなぁ
サブタイ
『そうある意思』
翌日の早朝、僕らに緊急の召集がかかった為、朝早くに部室へ向かうと、既に僕以外は生徒会も含めて今回の関係者全員集まっていた。
「あ、すみません、遅れました?」
「いいえ、時間通りよハルト」
申し訳なくて謝った僕に、グレモリー先輩は笑顔で返し、座った僕の前に姫島先輩の紅茶が置かれる。
ソファーに座り、紅茶をすすり一息ついた僕は、改めて、グレモリー先輩に訊ねた。
「どうしたんです? こんな朝早くから」
僕の問いに、この場にいた皆の視線が、グレモリー先輩の方へ集中する。
すると先輩は、短く咳払いをして口を開く。
「昨夜、宣戦布告をされたわ」
その一言で、僕らの間に緊張が走る。
「グレモリー先輩! せ、宣戦布告っていったい……………」
生徒会の一人が声を上げ、他のメンバー、特に、会長先輩や匙先輩ではない、事の顛末を知らないメンバーも何ごなんだかわからない、と言う顔をしている。
「言葉が足りなかったわね。
正確には、堕天使幹部、コカビエルが私たちに戦争を吹っ掛けて来たのよ」
グレモリー先輩は感情を押さえているのか、抑揚すらも感じない淡々とした声音でそう告げる。
堕天使幹部。
その言葉の意味に、僕はまだ現実感を抱けなかった。どうやら生徒会のメンバーも同じようだ。会長先輩を除いて。
「コカビエル………ですって!?」
「会長、知ってるんですか!?」
明らかに顔を青くして声を震わせた会長先輩。
「………ええ、知っているわ。
堕天使コカビエル。かつての大戦を生き抜いた、最強の猛者、その一角。人間に天体の
そこまで語った会長先輩の言葉を、グレモリー先輩が引き継ぐ。
「その力、特に星々と星座の名を持つ光は、それこそ流星に匹敵する一撃と言われているわ」
この空間にいる誰もが、息を飲んだ。
星の光、流星の一撃。
これを聞くだけでも圧倒的な強さを感じるのだ。実際あえば、どれ程の威圧感があると言うのか……………。
「………リアス、彼の目的はなんなの?」
「戦争の再開………だそうよ」
『―――――――』
重い沈黙が、狭い部室の中に流れる。
皆、顔を青く、あるいは白くして、震えている。泣きそうな人もいるくらいだ。
「そんな……………」
「砕かれたエクスカリバーを集めて完成させ、それを壊すことで戦いは再び訪れる。彼はそういっていた」
そうか、だから聖剣を……………。
「戦争…………」
ポツリと、誰かが呟いた。
たった一言。普段なら皆の声に掻き消されてしまうような呟きでも、今の部室には、嫌と言うほど響く。
誰もがうつむき、嗚咽を漏らし、帰りたいと、逃げたいと、怯えている。
それも仕方が無いことだと思う。なぜならここにいる大半が、戦争なんて画面の向こうでしか知らない社会で育って来たんだ。
僕だって怖い。
戦うこととはまた違う怖さだ。
だって、敵が一人なら目の前に集中すればいい。それなまだ頑張れた。
だけど戦争は違う。敵が沢山いて、どこから攻撃されるかもわからない故の、漠然とした、けれども圧倒的な死の恐怖。
怖い。嫌だ。死にたくない。
誰もがそんな感情に飲まれ、怯え、心が折れかける。
だけど、
だけどそんな中で、そんな中だからこそ、あの人の輝きが、眩しく見えたんだ。
「顔、上げろよ、皆」
震えていて、強がりだとわかる、それでも頼もしい声。
「なぁ、聞いてくれよ皆」
いつも通りに、つとめてそうあるように振る舞う兄ちゃんの声に、皆の視線が集まる。
「俺さ………皆も知ってるように俺さ、バカでスケベで、なんにもねぇ空っぽな奴だったんだけどさ」
笑っている。その顔に、無理矢理の笑顔を張り付けて、それでも軽くならないように。
「大切な場所を見つけたんだ。大切な人がいるんだ。目指したい目標ができたんだ」
語る内に、その表情から恐怖が消えていって、その目に光が灯り始める。
その光は段々と強く輝いて、僕らの
「俺は逃げない。逃げたくない。
だって、そんなことしたら、全部失うし、何も変わらないじゃないか。空っぽだったあの頃と。そんなのは絶対に嫌だ。
だから俺は、逃げない!」
兄ちゃんの言葉が、姿が、在り方が、僕らを『鼓舞』していく。
血の力も使わず、僕らを励ましている訳でもないのに、それなのに僕らの心に、その意思が染み込んでいく。
「そう、だよな。逃げらんねぇよな。だって、後ろに大切なもんがあるから。前に目標があんだから、こんなことで逃げらんねぇよな」
それに同調するように、匙先輩が拳を作り立ち上がる。
「生徒会長として、学園と生徒に手を出す輩には灸を据えねばなりませんものね」
「私の可愛い下僕が立ち上がったもの。私が立たずにどうするの」
「怖いです。でも、イッセーさんやハルトさん、皆さんと一緒なら!」
「…絶対に、負けない」
「証明しますわ。私は違うと」
「ああ、やっぱりカッコいいね、君は」
「ふん、悪魔が奮っているのに、何を呆けているのだイリナ」
「違うわよ! これは武者震い!」
一人、また一人と、折れ曲がっていた心達が立ち上がる。
誰かは言うだろう。折れた枝は戻らない、曲がった鉄にはあとが残るって。
ならば僕は、そんなちゃちな物にはならないようにしよう。
どれ程の苦しみの前で転んでも、絶対に這い上がって見せよう。
僕らならきっと大丈夫。
一人じゃ無いから。
◆◆◆◆◆◆
「いい、皆。敵は強大よ」
皆が立ち上がり、その瞳に光を灯したとき、グレモリー先輩がそう切り出す。
「けれども、恐れないで。相手は少数。仲間を信じて、背中を託して、そして、
そして、守りましょう。私たちの学園を、町を、大切な場所を!」
それは、とても力強い、王の言葉。
皆を支え気を配る、【支配者】の言葉。
『はいッ!』
だから僕たちは、そう、力強く返事を返すのだった。
◆◆◆◆◆◆
「ねぇ、ハルトくん」
放課後、部室でグレモリー先輩と会長先輩が作戦を立てているのを見ながら、神機の調子を確かめていると、不意に姫島先輩から声をかけられる。
「はい、姫島。どうしたんですか?」
僕が返事を返すと、姫島先輩はすこしだけ笑って、僕の隣に腰を下ろす。
「少し、お話してもいいかしら?」
「? はい、いいですよ?」
どこか普段と様子の違う先輩に、首を傾げながらも、僕は頷く。
「………ハルトくんは、堕天使は、嫌い?」
「え?」
突拍子もなく投げ掛けられた質問に、少し戸惑ってしまう。
でも、そんなことは関係なかったらしく、先輩は訥々と語り始める。
「私はね、大ッ嫌い。堕天使は、この世で最も嫌いな存在なの」
「……………」
「あいつらさえ居なければ、あの人さえ居なければ。そう、いつも考えてしまう。
だって、私の大切を奪う切欠を作ったのも、イッセーくんを殺したのも、あなたを傷つけたのも、全部堕天使」
そう語る先輩の目は、なぜだかわからないけど苦しくて。
「だからね、ハルトくん。見てて。
私、頑張るから。堕天使を殺すために、私頑張るから。だから見てて?
あなたが見ていてくれたら、私はもっと頑張れるから。だから、お願い」
そう、まっすぐ僕を見て、僕の腕を握ってくる先輩。
その手に震えはなくて、その瞳に揺らぎはなかった。
「―――――嫌です」
だけど僕は、その手を解いた。
「ぇ…………?」
途端に、先程まで強い意思を宿していた瞳は揺らぎ、か細い声が口から漏れる。
「どう、し、て……………」
僕の腕に添えられた手が震える。
不安に飲まれた幼子のように、か弱く震える。
「だって、先輩には、そんな風に笑ってほしくないから」
震える先輩の手を取り、強く握りしめる。
「―――――ぁ」
「こんな時に笑って、なんて言いません。無理をしないでとも。ただ、そんな風に、
泣きそうな顔で笑わないで下さい」
そんな笑顔は、もう見たくないから。
これまで沢山見てきたから。
守れなかった時も、救えなかった時も、間に合わなかった時も、何もできなかった時も、皆、そんな顔をしていたから。
だから見たくなかった。
そんな顔で許して欲しくなかった。納得して欲しくなかった。受け入れて欲しくなかった。
「僕は何も言いません。先輩が話してくれるまで、何も聞きません」
震える肩をしっかりと支えて、彷徨う視線をまっすぐ見つめて。
「ただ、無理はしないで下さい。心も、体も、無理だけは絶対に」
「……………ぁぅ」
そう告げると、口から小さく吐息のような声が漏れる。
しばらくするとそれは大きくなり、嗚咽となった。
僕の肩に顔を埋めて泣く先輩は何も言わない。堕天使の事も、自分の事も。
それでも僕はただ、静かに先輩の頭を撫で続けるのだった。
◆◆◆◆◆◆
夢を見ている。
幻を見ている。
そこは、上も下も、左も右も、前も後ろも、すべてが真っ白の世界だった。
ともすれば平衡感覚を失い、自我すらも忘れてしまいそうな、
けれども僕は知っている。この場所をよく知っている。
『主よ』
僕を呼ぶ声がする。
厳かに、気高く、誇り高い声。
振り向けば、そこには巨大な獣達の姿。
つい、苦笑が漏れてしまう。
「
『ええ、そうですわね』
目を閉じた無表情なのに、サリエルが優しく微笑んだような声で肯定する。
けれども、そんな穏やかな気配はすぐに霧散する。
それに気付いた僕は、居住まいを正して問いを投げ掛ける。
「僕がここに呼ばれて、そして君たちがその姿ってことは、大切な話なんだね?」
『その通りであります、主君よ』
問いに肯定で答えたカムランは、そのまま今度は僕に質問を問いかける。
『主君は、これからもその道を、闘争の道を歩むのですか?』
「え?」
質問の意味………いや、意図がわからない。
なぜ今、そんなことを聞く?
わからなかった。なぜそんなことを聞くのか。なぜ今さら、そんな質問をするのか。
でもそんな疑問は、すぐに晴れた。
『主が今、歩もうとしているその道は、決して優しい物ではないぞ?』
王が、低い声で脅してくる。
その圧力に、以前の僕なら震えて、腰を抜かしたかもしれない。
『いずれあなたを傷付け、あなたを泣かせ、あなたに絶望を与えるやもしれぬ、そんな道なのです』
魔女が、優しく諭してくる。
その言葉に、以前の僕なら甘えて、辞めていたのかもしれない。
『それでも主君は、戦うのですか?』
騎士が、真っ直ぐ見据えてくる。
その眼力に、以前の僕なら怯えて、躊躇していたかもしれない。
でも、そうはならなくて、むしろ、
――――ああ、そうか。
って思った。
「ふふ」
だからつい、笑みが零れてしまう。
『なにがおかしいのだ、主』
なにがって、そんなの、
「いや、だって、まさか君たちがそれを聞いてくるとは思わなくってさ」
『なに?』
「僕がなんのために、君たちに手を伸ばしたと思ってるの?」
『は?』
ポカンと、呆けた顔を晒す三人に、ついつい、また笑みが零れる。
―――ほんと、なんて心配性な神様達だろうか。
僕に力を与えておきながら、僕に手を伸ばせと傲慢に言っておきながら、僕が本当に危なくなることには口を出す。
厳かさや恐ろしさ、
これが可笑しくなくて、なにが可笑しいって言うんだ。
でも、だから伝えよう。僕の想いを。
僕が戦う、その理由を。
「君たちが僕を心配してくれてるのは嬉しいよ、本当に。
でもね、譲れないんだ、この道だけは」
まっすぐに前を向いて、笑顔で語る。
「確かにこれから先、沢山戦う事になるだろうし、悲しいことや怖いこと、痛いことだってきっと沢山ある。それに誰か、あるいは僕が大怪我をするかもしれない」
ずっと前からわかっていた事。ずっと前から、覚悟していたこと。
「確かに怖いよ。とっても怖い。現実感も実感もなくて、でも経験してきたからこそ、すごく怖い。
だけどね…………」
マルドゥーク、サリエル、カムラン。
それぞれの瞳を、真っ直ぐにみつめながら、言葉を紡ぐ。
「一緒にいたい人達がいるんだ。背中を追いかけたい人がいるんだ。守りたい人達ができたんだ。
そして、ずっと居たい、そんな場所があるんだ」
思い浮かべる。
あの暖かい場所を、暖かい人達を、憧れた人を、守りたい彼女達を。
「僕は弱くてちっぽけで、弱虫で臆病で、それでも皆の後ろで泣いていられるほど、プライドが小さいわけでもなくて」
矛盾してる。
してるからこそ、僕は頑張れる。足掻いていられる。
「今諦めたらダメなんだ。今諦めたら、あの場所が壊れちゃう。大切になったあの場所が。
それだけは止めたいんだ」
拳を握る。
強く強く、爪が食い込むくらいに。
「たとえここで諦めなくて、引き返せなくなったとしても、それでも構わない。
僕は失いたくない。なにも、もう二度と」
なにが二度となのかはわからない。
分からないことだらけだ。
でも、僕の心がそう言ってる。
守れと、今度こそ守れと。
そのために、力を得たんだ、と。
分からないだらけで、頭がぐちゃぐちゃになるけれど、それでも心は、ただそれだけを叫んでいて。
「怖い。守りたい。泣きたい。失いたくない。逃げたい。笑っていたい。
矛盾だらけで、情けなくて、張りぼてだらけの意志で、鍍金だらけの勇気だけど」
でも、だけど、だからこそ、
「―――――僕は君たちに、手を伸ばしたんだ」
『―――ッ』
初めて神機を握ったあの日から。
初めて刃に殺意を込めたあの時から。
初めて誰かを救えなかったあの夜から。
僕の心は決定的に、固まった。定まった。
息を吸い、肺に空気を送り込んで、
「戦いは怖い。でも、恐れない。
たとえその道が茨道でも、その先が絶望だったとしても、皆と……そして君達と一緒だから、なにも恐くないんだ」
そう、僕は言い切った。
◆◆◆◆◆◆
『ならば』
語り終えて暫くの沈黙ののち、口を開いたのはマルドゥークだった。
『ならば主は、これからも、戦い続けると』
「うん、そういうこと」
『そうか……………』
呟いた白狼は、深々と息を吐き、立ち上がる。
その動きに会わせるように、カムランも立ち、サリエルは浮かび上がる。
『よかろう。主がそれを望むのならば、我輩達にそれを阻む権利などない』
『我が君が征くその道を、妾達は覇道として支え尽くしましょう』
『主君が、それを望むのであれば』
「なら、僕は望む。力を貸して。この先、今のままじゃダメなんだ」
そういうと、その言葉に彼女達は苦笑した。
『貸すとはまた、何とも他人行儀なのだな、主よ』
『妾達は一度も、我が君に力を与えたことなどありませぬ』
『拙者達は常にお返しするだけです。主君の力を』
「返す?」
僕が首を傾げると、カムランがどこか気まずそうにたじろぐ。どうしたんだろう。
『主君の中に眠る神喰いの力は、あまりにも大きすぎます故、僭越ながら我々が制限しておりました。特に負担の大きいスキルなどは』
ああ、だからスキルが一つずつしか使えなかったのか。
『だが、先の戦いで予期せず主の枷が一つ外れて、不本意ながら、主は鍛えられた。
それが《紡ぎ手》の思惑通りと言うのが業腹だが』
『故に我が君よ、今一度、我らをお求め下さい』
『さすれば、主君の望むままに、欲するままに、得られましょう』
「得られるって、なにが?」
『望むままに、力が』
『欲するままに、技が』
『求めるままに、血が』
『『『汝の、衝動が』』』
それにしても、長らく書かないと文章力って本当に落ちるんですね。
流れが浮かんでも全く文章にできなかったでござる(´・ω・`)
あ、多分これが今年最後になるかも、です。
※人物紹介を更新しました