ハイスクールG×E   作:フリムン

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んー展開、早いかなぁ?
早いかもです。


第55話

 極光が、視界を白く染め上げ始める。

 

 あぁ、終わる。負けて(終わって)しまう。

 何もできず、手も足も出せず、ここで―――――

 

 

『本当に、諦めるのか?』

『本当に、それでよろしいのですか?』

『貴方にはまだ、戦う力が残っていると言うのに』

 

 

 

 ―――だから僕は、君達に手を伸ばしたんだ―――

 

 

 

 甦る。自分の声が。

 ここを守ると、この戦いに勝つと決めた言葉が、誓った想いが、脳裏を駆け巡る。

 

 

 目の前は絶望的で、

 勝ち目なんか見えなくて、

 心は折れかけているのに、

 

 それでも、この魂は叫んでいる。

 

 

 守れと。諦めるなと。

 たとえ血反吐を吐いて、泥水を啜ることになろうとも、何度でも立ち上がって、何度でも守るために剣を握れと、そう叫んでいる。

 

 

「僕は――――守りたい」

 

 

 ならば立とう。

 心は絶望に染まった。けれども魂が希望を渇望するから、だからこの心に喝を入れて、この体に気合いを入れて、立ち上がろう。

 

「僕は、諦めたくない―――――っ!」

 

 

 スキル【穴熊】、発動。

 

 

「諦めたいけど、逃げ出したいけど、それでも―――――っ!」

 

 

 スキル【超越者】、発動。

 

 

 

 守るんだ。絶対に。

 

 この、僕の力で!

 

 

 

 

 皆とコカビエルの間になんとか駆け込み、神機の装甲を展開する。

 直後、耳をつんざく轟音と、骨を激しく震わせる衝撃が、僕の体を襲い、突き抜けて行く。

 

「ハル!!」

「…ハルト!?」

「ハルトくん――っ!」

 

 兄ちゃん、小猫ちゃん、朱乃さんの呼び声が聞こえた。

 その声を背に、さらに踏ん張る力を強める。

 

「う、ぉぉぉぉお!!」

 

 ここで全て止める! 後ろへは一切溢さない!

 

 僕の装甲はシールドで、このままだと後ろへの影響が出てしまう。

 

 それなら、前に出るだけだ。なるべく前に出て、受けきって見せる!

 

 盾から溢れた光が、僕の体を切り裂いていく。

 けれども、足はしっかりと地に付き、歩を進める。

 

「【鼓舞】!」

「【支配】!」

 

 後ろで倒れているはずの二人から、血の力の支援が届く。

 

 

『主よ』

「…………な、に……………いま、ちょっと、余裕が……………」

『今あの紅髪から送られてきた魔力、これを我輩らが補食して連結解放を行う。よいな?』

「まか、せた…………っ」

 

 すると、その言葉の通り、僕の体が発光を始め、力が溢れてくる。

 

「バカな………我が【七星の裁決(ウルサマヨル・サンクティオ)】の中を抜けてくるだと!? たかが人間が!?」

「たかが人間って、侮るなよ!」

 

 神機使い達は、あの絶望に染め上げられた世界で、たった一粒の、米粒に等しい希望(ひかり)を掴まんと、世界に、神に抗う誇り高き人類の戦士達だ。

 

 そして僕も、正規の物じゃなくても、その誇り高き力と武器を受け継いだ、一人の神機使い(ゴッドイーター)なんだ!

 

「この力が、この神喰らい(ゴッドイーター)の力が、お前(神話)に負けるなんて、許されないんだ!」

 

 だから、この誇りにかけて、

 

「僕はお前を食い尽くす!」

 

 雄叫びを上げて、更に一歩踏み込む。

 

 と、そこで盾にかかっていた強大な負荷が一瞬にして消え去る。どうやら相手の効果時間が切れたようだ。

 

 光の力が消失したことにより支えを失った僕の体は、そのまま傾き倒れ始める。

 

「あ……れ……?」

 

 体に力が入らない。

 バーストの効果はまだ続いている。けれども、足がもつれ、腕が震える。

 どんなに力を込めても、立ち上がろうとしても、それらは叶わず、僕は地に倒れ伏した。

 

「………それだけか? 人間?」

 

 気がつけば、コカビエルは僕の前に立ち、冷たい目で僕を見下ろしている。

 

「私に負けられないだの、神話を打ち負かすだのと大きく出たわりには、なんともあっけないじゃないか、ええ? どうした、さっきまでの威勢はどこにいった?」

 

 そう言いながら、コカビエルは僕の首を片手で持ち上げ、そのまま締め上げる。

 

「ぐぅぅ……あ、がぁぁ……………」

「ほら、足掻いてみろよ。その剣で、私を斬れよ、人間! ほら、斬れよ!」

 

 締め付ける力が更に強くなり、いっそう呼吸が出来なくなる。

 

「ハルトくん!!」

 

 朱乃さんの悲痛な声が聞こえる。

 

「なぁ、私を………俺を楽しませろよ、人間! 抗えよ! 足掻けよ! 俺と戦えよ、俺と争えよ、なあ!!」

 

 そんな怒声と共に、僕は校舎の方向へと投げ付けられる。

 当然、抵抗力を失っていた僕の体は呆気なく吹き飛び、校舎へと叩きつけられ、その壁を突き破って、血反吐を撒き散らす。

 

「いやあぁあぁぁあああっ!!」

 

 そんな悲鳴を上げたのは誰だろうか。

 意識の朦朧とした僕にはそれすら判別がつかず、その意識を暗闇へと落としていった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「いやぁぁあぁあぁ!!!」

 

 およそ普段からは考えられない大声で悲鳴を上げながら、小猫ちゃんがハルの元へと駆け出そうとするが、足が縺れたのか、その場で倒れ混む。

 

「いや、ハルトッ! ハルト、ハルト、あぁあぁぁあああっ!!」

 

 涙を流しながら、ヨロヨロとハルの元へと向かうその姿は、とても痛ましかった。

 

 そして、俺たちもあのハルが手も足も出せずにやられたことに沈黙し、悲痛な表情を見せている。

 特に、朱乃さんのが酷く、ハルが飛ばされた方を呆然と、それこそ、表情が抜け落ちたと表現するのが正しい虚ろな顔で見つめていた。

 

「うそよ………あのハルトくんが、負けるなんて、そんなのうそよ……………また、またあの子に守られて、また何もできないなんて、そんなこと…………………………」

 

 その光景に、俺は拳で地面を殴り付けた。

 悔しくて、悲しくて、何もできない自分に腹が立って。

 

「くそっ、くそっ、くそっ!」

 

 立たなきゃ。

 弟が立ったんだ。誰よりも臆病で優しくて、強い弟が立ったんだ。なら兄貴がこんなところで寝ててどうする!

 

 この前だってそうだった。

 レイナーレの時も、ライザーの時も、いつも最初に立ち上がったのは、臆病なハルトだった!

 

 もう情けないところは見せないって思ってたのに! 俺はまた、あいつを先に立たせちまった!

 その上、挙げ句にはあんな大怪我までさせるなんて!

 

 情けねぇな、俺は。

 

 

「……………おい、ドライグ」

『――――どうした、相棒?』

「もう一度禁手(あの姿)になるには、次は何を捧げればいい?」

『正気か?』

「正気じゃなかったら、問答無用で捧げてらぁ」

『くははははっ! 面白いなお前。だがダメだ』

 

 俺がそう告げると、ドライグは愉快そうに笑う。笑うが、その案は却下されてしまう。

 

「なんでだよ!」

『確かにそれは楽しいだろうな、面白いだろうな。だが、それではお前が死んでしまう』

「っ!」

『お前は面白い人間だ。欲望にまみれながら、しかしその精神は真っ直ぐ。これまでの所有者のなかでも、希に見る精神性だ。ここでお前を失うのは惜しくてな』

「だけど、このままじゃ!」

 

 

 その時だった。

 

 俺達の前方、コカビエルの後ろから、強烈な光が炸裂した。

 

「コカビエル様! 全ての準備が整いました!」

 

 バルパーと呼ばれるじいさんが、輝く円陣の中心から呼び掛け、その後ろにはフリードが無表情で控えていた。

 

「まさか………完成したというのか!?」

 

 木場が魔剣を握りながら、そう叫ぶ。

 

「無論だとも、グレモリーの【騎士(ナイト)】。……………ふむ、貴様、その髪を見るに、あの施設の生き残りか?」

「ああ、そうさ! ………ぐぅっ!」

 

 剣を杖にして、傷だらけの体を引きずりながら、木場は立ち上がる。

 

「お前たち堕天使と、バルパー・ガリレイによって行われたあの実験にのって僕の同胞たちは皆、無念のままに死んでいった! だから僕は、お前達を許しはしない!」

 

 木場が剣を構え、コカビエルへと飛びかかる。

 

「フリード」

 

 しかしそれは、コカビエルとの間に入ってきたフリードによって防がれてしまう。

 

「フリード、聖剣を渡せ。私はバルパーと共に聖剣を完成させる」

「えー、でもでも上司さまぁ~、コイツ光喰らう剣とかなんかチートクセぇもん持ってんすよぉー、あの光の剣じゃ無効化されちまうっすよ?」

「ならば私が直々に光を込めてやる。それで文句はあるまい」

 

 フリードは、人差し指を顎に当て、しばし思考する。

 だが、その間も木場の剣戟を防ぎきっている。それはヤツが強いのか、木場が弱っているのか、それとも両方なのか。

 

「んーぅ、それならありオッケー? というわけでホイ、聖剣ぽいっと! 約束は守ってくんなまし?」

「無論だとも」

 

 手渡された聖剣を手に後方へ下がったコカビエルに対し、俺と木場、部長三人の攻撃が集中するが、しかし、

 

「あらよっと! ざーんねーん! バリア張ったからききましぇーん!」

 

 あの光の膜によって悉くが防がれてしまう。

 

「ほらほらほらほらぁ! 立ってるの木場っちだけ!? 他は!? ねぇねぇ、戦おうよぉ! ねえ、結局手も足も出ないとかぷゲラで抱腹絶倒なんですけど! ねぇ今どんな気持ち? ねぇねぇ、今どんな気持ち? ねぇねぇねぇねぇねぇ!」

 

 うるさい。

 相変わらずコイツは、うるさい。

 

「フリード・セルゼン! そこをどけ!」

「どけと言われてどくアホウがいるかい! 行かせねぇよ! ヒャッハー!」

「ああもう、うるさいな!」

「とーぜんよぉ! せっかく願いが叶うんだぜ!? そらもうテンションアゲアゲよ!」

 

 そこで、いったん二人の剣戟が終わり、距離が離れる。

 

「いいか木場祐斗。聖剣を壊すのはお前じゃねぇ。この俺だ」

「なに!?」

 

 フリードから放たれた一言により、俺たちはその動きを止めた。

 

「なっ、お前の目的も、聖剣の破壊だって言うのかよ!?」

「そーだよイッセーちん! 僕ちゃん、聖剣をチョンパするの!」

「なら何故、あなたは堕天使(そちら)側にいるの?」

「はて? なぜと言われても? そらあんた、コカビエルに恩があるし、教会のあのやり方に真っ向から反対してるからだけど?」

「は?」

 

 そこで、俺たちは違和感を覚えた。

 

「そっち側にいるってのはガッツリこっちの台詞なんだけどあんだすたん? だって、聖剣計画は教会のもんだし、バルパーのジジイとコカビーさまがそんなんで人を殺すなぁ! って施設をぶっ壊ヒャッハーして回ってんだけど?」

 

「お、おい、ちょっと待て……………」

 

 違う。明かに違う。

 俺たちがゼノヴィア達から聞いた話と、今、フリードの口から語られる情報が、全く持って違う。

 

「天界が因子だけぬいて、被験者を殺してたから、俺ちん、こっちに回ったんだけど? コカビエル達はそんな被験者達を助けてたし」

 

 ……………これは、どういうことだ? なぜ、こうも話が食い違う?

 

 イリナたちは、堕天使とバルパー・ガリレイが内通し、聖剣因子を抜いた被験者を殺していたと聞いている。

 だが、フリードの語るそれは、見かねたコカビエルとバルパー・ガリレイが子供達を救ったと言う。

 

 

 どちらかが嘘を……………いや、コカビエル達だ。そうに違いない。

 

「フリード! お前、騙されてるぞ!」

「はぁ?」

 

 俺の言葉に、フリードは心底「なに言ってんだコイツ」なんて顔をする。

 

「聖剣因子をぬいて、子供達を殺したのはバルパー・ガリレイだ! お前の後ろで、聖剣を合体させてるやつだ!」

「……………」

「バルパーは僕の仲間を殺した! 因子を抜き出して、用済みとして、処分したんだ!」

 

 俺に追従するように、木場も声を投げ掛ける。

 

「はっ! そんなハッタリ聞くかよ! どうせ後ろのエクソシストどもに聞いたんだろうがよ、所詮綺麗事だらけの天界だ! 嘘でもついたんだろうよ! 人間は嘘つきだからなぁ!」

 

 しかし、そんな言葉も虚しく、フリードは鼻笑いでそれを一蹴し、俺達に斬りかかってくる。

 

「本当よ、フリード・セルゼン! 私たち悪魔側でも確認済みなの! 天界、教会は被験者を殺してない!」

「悪魔の言葉なんざ、信じられるかよぉ!」

 

 

 

 

 その時だった。

 光が更にまし、神聖な気配が辺りに充満した。

 

 

 

 

「おぉ………これが、聖剣……………」

 

 

 バルパー・ガリレイの、感嘆の声が聞こえる。

 

「美しい…………七本のうちの一本が欠けているとはいえ、これは素晴らしい剣だな……………さすがは星の一振りと言ったところか」

 

 コカビエルがその手に持つ長剣は、青白く神々しい光を放ち、煌めいていた。

 

「見よ、悪魔ども。これが聖剣の中の聖剣、エクスかリバーである!」

 

 高く掲げられた聖剣は、月夜の中一際明るく輝き、辺りを包み込む。

 

 そのあまりに神聖な気配に、下級悪魔である俺は足が震え、立つことが難しくなる。

 後ろでは、小猫ちゃんや朱乃さん、ハルトの治療に当たっていたアーシアが、とても苦しそうな表情を浮かべている。

 

「あれが、統合されたエクスカリバーの光なのか……………」

「ゼノヴィア! お前、大丈夫なのか!?」

「ああ、彼女の治癒の力は凄まじいな」

 

 いつの間にか意識を取り戻し、俺の後ろまで来ていたゼノヴィアがそう言う。その表情はどこか複雑な物だった。まぁ、無理もないか。

 

 

「は、はは……はははははっ、ひゃひゃひゃひゃ! 完成したのかよ、コカビエル様! いいねぇいいねぇ、凄く憎たらしいよ、その光が!」

 

 フリードが狂気の笑顔と笑い声を上げ、コカビエルを見上げる。

 

「さあ、コカビエル! 約束通り、俺にそれをぶっ壊させてくれよ!」

「……………」

 

 コカビエルは、フリードの言葉に無言のまま降りてくる。

 

「フリード、こっちへ」

 

 そう言われたフリードは、喜び勇んでコカビエルの元へと駆け寄り、

 

「ひゃっほう―――――――………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………―――――――あ?」

 

 

 

 

 その光景に、この場の誰もが言葉を発せられなかった。

 

 

「ごぶっ……………」

 

 

 血が溢れ、地面で弾ける音と、刃が肉を切り裂く音がした。

 

「……………なん、で?」

 

 

 

 そしてフリードは、()()()()()()()()()()()()()を見て呆然としていた―――――――

 

 

 

 




これぞまさしく「ハルトォォォォオ!」って奴ですね!(元ネタ未視聴)

フリード君への答え会わせ回でしたー


※割烹に前話で使ったバレットのバレットエディットが乗ってます。気が向いたらどうぞ。
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