こんなに遅くなったのはFGOの水着イベントのせいだと責任転嫁をしつつ通信制限と戦いながらなんとか書けました!
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誤字訂正しました。なんだよ昆布の味噌汁ってw
大切だと思える人がいた。
愛してると、心から言える人がいた。
その人と寄り添う平凡な日々は何よりも楽しくて、暖かくて、安らかだった。
顔も名前も思い出せない、大切な姉ちゃん。
世界は地獄だった。非情だった。
だから僕は力を欲した。
思い出せない記憶が抱かせる感情に、焦燥感に急かされるように、その力に手を伸ばしたんだ。
今度こそ守れるように、って………。
◆◆◆◆◆◆
――――その世界は地獄だった。
荒れ果て、喰い尽くされ、破壊され尽くした世界には、生命の生存圏などほとんど皆無に等しかった。
例え人類がどれ程強くなろうとも、新たな戦力の開発に成功しようとも、ましてや、聖域と呼ばれる、安全地帯が作られたとしても、だ。
人類は何時だって窮地にあった。
戦える人間が強くなっても、それでも守れる人間に限りはある。配給できる物資にもだ。
だから僕は決意した。
『姉ちゃん。僕、ゴッドイーターになるよ』
病で床に伏せる幼馴染みの姉ちゃんに、残り僅かとなった薬を飲ませた後、僕はそう告げた。
『……………え?』
その言葉に、姉ちゃんは呆けた顔をする。
『どう、して……………?』
震える声と手で、僕は問いかけられる。
それもそうだ。最近は安定して戦えるようになってきたとは言え、やはりゴッドイーターは死と隣り合わせの存在なのだ。
戦いで死ぬこともあれば、神機に適合出来ずに死ぬこともある。
そんな世界に僕は自ら足を踏み入れようとしているのだ。姉ちゃんだって戸惑うに決まってる。
でも、
『姉ちゃんの薬は、もう残り僅かだ。でもこれ以上配給での入手は望めない。
でも、配給はゴッドイーターの家族に最優先に配給されるんだ』
『でも、だからってハルトが、そんな、ゴッドイーターにだなんて……………っ!』
姉ちゃんは、僕の両腕を掴んで身を乗り出してくる。
『僕たちは互いの親に適正があったからここに入れたんだ。なら、僕にだって適正があるはずなんだ』
『だからって!』
『僕は!』
尚もいい募る姉ちゃんの言葉を遮るように、僕は声を張り上げる。
『決めたんだ、僕はゴッドイーターになるって! このままだったら、姉ちゃんが死んじゃう! そんなの僕は嫌なんだ! 姉ちゃんには笑っててほしい、大好きな■■姉ちゃんには、生きていて欲しいんだ!』
声を張り上げて、目を真っ直ぐに見つめて、僕の思いの丈を正直にぶつけた。
『ハルト………』
『苦しいんだ。辛そうな姉ちゃんを見るたびに。そのたびに、なにも出来ない無力な自分が恨めしくなる。
だから……………』
そこまで言ったとき、僕の言葉は遮られた。
姉ちゃんが僕の腕を引っ張って、顔を自分の胸に埋めさせたから。
『………ありがとね、ハルト』
『姉、ちゃん』
『ハルトがそこまで言ってくれて、私は嬉しいわ。でもねハルト。覚えておいて?』
姉ちゃんはそのまま、僕の頭を優しく撫でながら、囁くように綺麗な声で僕に語りかける。
『私が死んだらハルトが悲しむように、私だってハルトが死んだら悲しいの。だからね、必ず帰ってきてね。無理はしないで、ちゃんと生き残ることを最優先に考えて?』
『………うん』
『私はハルトが活躍するより、生きて、笑って帰ってきてくれることが、一番嬉しいんだから』
『うん』
姉ちゃんが、僕の背に手を回す。
僕も同様に手を回して、抱き締める。
微かに、鼻腔を太陽の香りが擽った気がした。
『愛してるわ、ハルト』
『僕も愛してるよ
――――――■…か姉ちゃん』
◆◆◆◆◆◆
鼻腔をくすぐる芳しい香りに応じるかのように、僕の意識は浮上していく。
目を開けば、和風の天井が目に写る。
「……なにか、夢を見ていた気がする」
とっても大切な、大事な夢を。
《やはりまだ、思い出せないのか?》
うん、マルドゥーク。
君達が言った夢はまだ、僕にはわからない。
《そう、か……》
と、その時、襖の向こう側から声が聞こえる。
「ハルトくん、起きてますか?」
姫島先輩の言葉に僕が返事を返すと、そっと音を立てないように襖が開かれる。
「おはようございます、ハルトくん」
そう言って僕の元まで来て微笑んだ先輩に、少し見とれてしまう。
いつもとは違い、ただ結わえただけの髪を左肩の上から前に垂らし、紫の着物に白のエプロンと襷をかけた姿は、まさしく大和撫子と言った具合で、旅館の女将や武家屋敷の奥方と言われても納得できてしまう出で立ちだった。
「お、おはようございます姫島先輩」
その姿に見とれ、その直後に昨日自分が何をしたのかという自覚が滝のように流れ込み、羞恥心で今にも転げ回りたくなる。
「……………」
「先輩?」
いつもならおはようと返してくれるハズの先輩は、ただニコニコと微笑みを浮かべてこっちを向いたままだ。
「どうしました、先輩?」
そう問いかけても微動だにせず、一瞬時が止まってしまったのかと錯覚してしまいそうな……………あっ。
え、もしかしてそういう………? あ、ちょっと待って勇気が………。
「お、おはようございます、あ、朱乃…さん」
「はい、おはようございます」
そして世界は動き出した。
………そっかぁ、先輩の事はこれから名前呼びか、そっかぁ。
いや、別に構わないんだけど、きっと周りから色々言われるんだろうな。
朱乃さんに案内されて通されたのは、既に朝食の準備ができている居間だった。
それを見て、得も言われ得ぬ感動が僕を襲う。
「わぁ……!」
ちゃぶ台にのせられた焼き鯖に肉じゃが、味噌汁と白米、そして椎茸の煮物。
なんとも純和風の朝食に、昨日夕飯を食べていないことも相まって、量が多いなぁという感想を押し退けてお腹が小気味の良い音を鳴らして空腹を主張した。
「あぅ」
「あらあら、うふふ」
なんだか恥ずかしくなって少しうつむくと、クスクスと朱乃さんが笑う。
「むぅ、笑わないで下さいよ」
「いえいえ、ハルトくんも男の子なんだなぁ、と思っただけですわ。おかわりはまだありますので、沢山食べてくださいな」
「はぁい」
座布団にそれぞれ座り、両手を合わせる。
「「いただきます」」
脳を刺激する香りに誘われるまま、お箸を手に取り、鯖の身を崩して口に運ぶ。
鼻を抜けるような、焼けた脂の香ばしさ、程よい塩気と鯖の淡白な旨み、そしてそれを引き立てるように一粒一粒が立っている米の甘み。
そのすべてが僕の脳を刺激する。
「お、美味しいです! とっても!」
ついうっかり服が脱げてしまえそうなほどに。
一度その美味しさを知ってしまうと、もう止まることはなく、食事に没頭してしまう。
味の染み込んだジャガイモとのホクホクさ、噛む度に出汁が染み出てくる椎茸と甘い人参、合わせ味噌と豆腐とワカメの単純だけど、だからこそ美味しさが際立つ味噌汁。
気がつけば、3杯のご飯を平らげている僕がいた。
「ごちそうさまでした!」
「はい、お粗末様でした。ふふふ」
両手を合わせてそういうと、途中からニコニコと僕を見ていた朱乃さんがどこか嬉しそうに笑う。
「沢山食べたわねぇ」
「あっ、すいません……もしかして朱乃さんの分も食べちゃいました……?」
「あらあら、そんなことは無いですわ。むしろ、そこまで美味しいと言って頂けて何よりですわ」
そう言いながら食器を片付ける朱乃さんの顔はとっても嬉しそうに微笑んでいた。
「あ、手伝います」
「良いのよ。ハルトくんはテレビでも見て待ってて?」
僕の提案を断った朱乃さんはテキパキと食器をまとめて台所へ待っていく。
仕方なく言われた通りテレビでも見ようかとリモコンを探したとき、ふと庭へ視線を向けると、そこには魔力で粗方治したであろう制服が、日光に照らされながら風にはためいていた。
そして部屋の隅には裁縫道具が置かれ、よくよく制服を見ると、手縫いをしたようなあとを見ることができた。
……………これが、女子力というやつか。
もし女子力スカウター何てものがあったならば、朱乃さんを図ったその瞬間に爆発してしまうだろうな、何て思ったのは多分僕だけではないはず。
そのあと、テレビを見ていると、洗い物をしているはずの朱乃さんがひょっこりと顔を出して、
「ハルトくん、なんならお風呂も入りませんか? 昨日の事があって入ってないでしょう?」
「え? いや、さすがにそれは、その…………」
「下着なら魔力で綺麗にするので気にしないで下さい」
「いやしますよ!?」
むしろ綺麗に出来るんかい。魔力の力ってスゲー。
というか、そう言って来るってことは、ちょっと匂うってこと?
それなら、入った方が良いのかな…………?
「そ、それじゃあ、お言葉に甘えて………」
「はい。タオルは脱衣場に置いてありますので。あと、湯船も沸かしておきましたわ」
なんという至れり尽くせり。
ヤバい、自堕落になってしまいそうで怖い。
「あ、ありがとうございます」
朱乃さんにお礼を言って風呂場へ向かう。
そこで真っ裸になって、腹を見ると、あれだけ貫かれたのにも関わらず傷は殆ど残っていない肌が露になる。
「これもゴッドイーター化の影響なのかな?」
そんな独り言をぼやきながら風呂に入り、体を流そうととすると、脱衣場の扉が開く音がする。
なんだろう? 朱乃さん、何か取りに来たのかな?
頭を洗いながらそう思っていると、後ろで風呂場の扉が開く音がした。
「………え?」
慌てて振り向くと、そこにはなんと………
「背中、流してあげますわ」
頬を赤らめて、蠱惑的な笑顔を浮かべた朱乃さんがそこにたっていた。
何を言っているのか以下略。
しかも―――――
全 裸 で 。
何を以下略。
それを見た僕が鼻血を吹いたのは言うまでもないだろう。
なにこの据え膳。
ヘタレには刺激が強すぎるよ朱乃さん………。
湯気に逆上せたのと、昨日の分も含めて血を流し過ぎた僕は、そのまま意識を落とした。
これは女子力というよりは最早嫁力。つよい勝てない。
書き上げて思ったこと。
どこの新婚夫婦だ爆発しろ。