ハイスクールG×E   作:フリムン

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大変長らくお待たせいたしました。

進級試験も期末試験も恙無く終え、残るは来月から始まる就活と、来年度から始まる卒業研究だけとなったので、執筆を再開することになりました。

これからもよろしくお願いします。



といっても就活がありますので、更新は前ほどでは無くなるかと思います。申し訳ありません。


第68話

 我らがオカルト研究部の居城たる旧校舎には、『開かずの教室』と呼ばれる部屋が存在する。

 普段部室として使っているシャワーのついた学校の機能としてみたら謎すぎる教室と呼べるのかよくわからない部屋が二階にあり、件の『開かずの教室』が一階の奥に存在していた。

 

「帰る!!!」

「いきなりか!?」

 

 当然の帰結である。何がうれしくておどろおどろしい魔方陣で封印が施され、剰えこれ見よがしに「KEEP OUT」のテープが張り巡らされている部屋に、わざわざ入らねばならないのだろうか。

 

「お前、こういうの慣れたんじゃなかったのかよ!」

「悪魔と! ホラーは! 別物だよ! はーなーしーてー!」

「オカルトっていうならどっちも同じだろ! ていうか種別じゃ悪魔もホラーだよ!」

「いーやーだー! HA☆NA☆SE!」

「…ハルト、大丈夫、中にいるのは悪魔の子だから」

「あ、なら安心だね」

「おい待てや」

 

 なんだ、それならよかった。

 

「ったく……それで部長、中には誰がいるんです?」

「ええ、それなのだけれど」

 

 兄ちゃん尋ねると、グレモリー先輩はこの『開かずの教室』には、なんと一人、グレモリー眷属の、もう一人の【僧侶(ビショップ)】の子がいるそうな。

 

 曰く、強力な【神器(セイクリッド・ギア)】を持つが使いこなせず、暴走する。

 曰く、先のコカビエル戦を含めたこれまでの活躍が評価され、封印解除の許可がおりた。

 曰く、我らがオカ研の稼ぎ頭。

 曰く、引きこもり。

 

 ……………うん、なんというか、濃い。相変わらずここのメンバーは個性が濃い。

 

「さて、開けるわよ」

 

 朱乃さんと扉を封印を解きながら説明していたグレモリー先輩が、ゆっくりと扉を開ける。

 

「ギャスパー、入るわよ」

 

 そして開かれる扉。響き渡る絶叫。

 

『イヤァァァァァァ! お外出たくないお外怖いぃぃぃい!』

『ごきげんよう、今日も元気ね。それはそれとして外へ出ましょう?』

『やですぅぅぅぅぅ!』

 

 あ、何か通じるものを感じる。

 声的には女の子、かな? 扉越しでくぐもってるせいもあって、少し中性的だ。

 

『あらあら、ようやく封印が解けましたのに…………悲しいですわ』

『あ、ご、ごめんなさ……』

『さ、行きますわよ』

『イヤァァァァァァァァァァ!!』

 

 中から聞こえるお姉さま二人の説得………説得? に盛大に抵抗している声を聞きながら、僕ら新入り四人は顔を見合せ首を傾げる。

 古参の小猫ちゃんと木場先輩は事情を知っているらしく、苦笑を浮かべている。

 

 正確には苦笑を浮かべているのは木場先輩だけで、小猫ちゃんは、舌打ちをしていた。

 

「こ、小猫ちゃん?」

「…なに」

「怒ってる?」

「……怒ってない。ちょっとイラッと来ただけ」

「あっはい」

 

 いつもよりタメが少し長い。これは本気のやつだ。触らぬ小猫に祟り無しって古事記でも言ってた。

 

 中から聞こえる会話から、出てくるのにはもう少し時間がかかりそうだと当たりを着けた僕らは、そっと中の様子を伺ってみる。

 

 見えたのは、ファンシーなぬいぐるみや調度品と、締め切られたカーテンで薄暗いなかの唯一の光源であるパソコン、そして棺桶。……………うん? 棺桶?

 

 そしてパソコンのあるデスク前に朱乃さんとグレモリー先輩がしゃがみこんでいた。もしやあの下に逃げ込んだのかな?

 

 ここからじゃ二人が壁となって見えないため、僕らは部屋の中へ入り、そこへ近づく。

 

 すると、そこには………

 

「びゃぁぁぁぁぁぁあ! 人が増えたぁぁぁぁ!?」

 

 段ボールが一つ、叫んでいた。

 

「……………なるほど、グレモリー眷属のもう一人の【僧侶(ビショップ)】は段ボールの付喪神か」

「違うわよ!?」

 

 違ったらしい。

 ということはくそう、もう一つ障壁があったとは。

 

「ほらギャスパー、出てきなさい。新しい眷属も増えたんだから、挨拶なさいな」

「すごい、グレモリー先輩がお母さんみたいなこと言ってる。おかん味やばい」

「わかる」

 

 と、そこで動き出したのは段ボール付喪神でも先輩方でもなく、

 

「…ギャー君、出てこないとこのパソコンがどうなっても知らないよ?」

「………え?」

「…私、パソコンのことは良くわかんないけど、これがすごい高いやつだって言うのは見たらわかる」

「こ、小猫ちゃん?」

「…だからね、ギャー君」

 

 そこで小猫ちゃんは段ボールへと近づき、良く聞こえる声で言い放った。

 

「…出てこなかったら、物理的に破壊する」

 

 

「こんにちわ皆さん僕はギャスパー・ヴラディ! グレモリー眷属の【僧侶(ビショップ)】でウヒィィィ!? 人がいっぱいいるぅぅぅぅ!」

 

 あ、この子面白い子だ間違いない。

 ってあれ? 目の前が白く――――

 

「ん? あれ?」

 

 瞬きをする一瞬の間に、先程までそこにいたギャスパー……ちゃん? くん? の姿が見えなくなっていた。

 

「お? おお?」

 

 どうやら同じことを体験したらしく、兄ちゃんやアーシアさん達も同じように首を捻っている。

 

「それがあの子の神器(セイクリッド・ギア)の力ですわ。今はほら、あそこの棺桶の中に」

「ひぃぃ!」

「ってことは、瞬間移動?」

 

 そう疑問を口にしてみると、隣にいたグレモリー先輩が首をふって答えた。

 

「いいえ、彼の能力は時間停止。神器(セイクリッド・ギア)の名前は【停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)】」

「なるほど、時間停止ですか……ん? 彼?」

「ええ。彼はギャスパー・ヴラディ。見た目はアレだけど、歴とした男よ。男の娘。あ、それと吸血鬼のハーフね」

「男の娘」

「えっ」

 

 瞬間、兄ちゃんの動きが固まる。

 なるほど、これがギャスパーくんの神器(セイクリッド・ギア)、【停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)】か。すごいや。

 

 

 

「男の子……女装の見た目はハルをも超える美少女………だが男だ……………えええええええええええ!?!?」

「おい待てや何故いま僕を基準にしたぁ!」

 

 時間停止から回復した兄ちゃんの絶叫と、巻き添えを食らってしまった僕の叫びが、旧校舎内に響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ゲイッセー兄ちゃん」

「誰がゲイだ!」

「行け! 木場先輩! 君に決めた!」

「やらないかい?」

「ヤメロォ!」

 

 

 

 

◆◆◆閑話休題(そんなこともありました)◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「しかし、時間停止とかまた反則な力っすね」

「そうね、二天竜の力も大概だけれど、使いこなせればこれほど厄介な神器(セイクリッド・ギア)は無いわ」

 

 その言葉に、僕はなぜかの……彼が封印されていたのかを思い出した。

 

「あぁ、確かにそんな厄介なのが暴走するのは危ないですね」

「でしょう? 彼より遥かに実力が上の者なら停められないのだけど、そうでないものほど長く停まってしまうのよ」

 

 つまり、もしみんなが停まっているときに停まらなかった人に悪意があった場合、かなりヤバイって事だね。

 

「しかし部長、そんな強力な神器(セイクリッド・ギア)持ちをよく駒一つで眷属にできましたね」

「ええ、彼には【変異の駒】を使っているのよ。【変異の駒】については前に話したわね?」

 

 あー、僕を眷属にしようとして出来なかった時のあれか。

 

「なるほど……………そう言えば部長、さっきコイツのこと吸血鬼のハーフって言ってましたけど」

「そうね、たまに忘れそうになるけど、彼は一応吸血鬼よ」

「それなら引きこもるのもわかる気が」

「ああ、大丈夫。彼はデイリーウォーカーっていう日の光を浴びても大丈夫な上位種の血を引いてるから。それにハーフだから、そこまで吸血鬼の弱点が引き継がれてないの」

 

 その代わり吸血欲求が薄いのと、吸血鬼の高い身体能力も無いのだけれど。

 

 と、グレモリー先輩が締め括ったとき、後ろから絹を裂くような悲鳴が響いた。

 

「いやぁぁぁぁあ! お外でなくないぃぃ! 棺桶開けようとしないでぇ、らめぇぇぇぇえ!」

 

 振り向けば、小猫ちゃんが棺桶の蓋を持ち上げ、ゼノヴィアさんがなかに入っていた段ボールを持ち上げている。

 

「ふむ、吸血鬼か。教会時代はその類いのグールや下級の吸血鬼をよく殲滅したものだ」

「ひぃぃぃぃぃ!」

「案ずるな、今は同じ眷属の仲間だ。狩りはしないさ」

 

 そう言って微笑んだゼノヴィアさんは、段ボールを床に置く。

 

「だが、それはそれとして、軟弱な男はダメだぞ。木場に狙われてしまう」

「待って最近僕の扱い酷くないかな」

「何を今更」

 

 木場先輩が落ち込んだ。でも反論できないと思うんだ僕。

 

「そ、それは確かに嫌ですけど!」

 

 あ、追い討ち。

 

「ふむ、それなら鍛えてやろう。どうせ外へ出ねばならんのだ、調度いい」

 

 そう言うとゼノヴィアさんは、デュランダルを仕舞い込んでいる空間の裂け目に手を突っ込み、『ソレ』を引っ張り出した。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「ほらほら、もっと走れ!」

「いやぁぁぁ! いやぁぁぁぁあ! らめぇ! ニンニク振り回しながら追いかけるのらめぇぇぇぇえ!」

 

 斜陽の光差し込む雑木林、どこか幻想的な雰囲気をもち、きっとここで心暖まるボーイ・ミーツ・ガールを繰り広げたのだろうと考えてしまう、そんな光景のなか、二人の少年と少女がはしゃぎながら駆け抜ける。

 

「ニンニク、らめなのぉぉぉぉおおお!」

 

 陽光に煌めく涙を振り散らし走るのは、すれ違う人が必ず一度は振り返るであろう、目を瞠るような美少女を思わせる少年。

 

「はははははははははははははは!!! 楽しくなってきた!」

 

 そんな少年を追いかけるのは、眩しい笑みを浮かべて楽しそうに走る、道行く人すべてが目を覚ますであろうイケメンな少年を思わせる少女。

 

「あっあっあっ、十字架だめなのぉ! 悪魔と吸血鬼で相乗効果だからぁ!」

「はっはっはっはっ! 頭痛がかなりヤバいが知ったことかぁ!」

 

 少年と少女が出会った時、その物語は始まったのだ。

 これぞ正しく、ガール・チェイス・ボーイ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「酷い、何が酷いって絵面が酷い」

 

 一組の少年少女が織り成す光景に、僕がそれとなく何かそれっぽい解説を入れていると、横からそんな言葉が聞こえた。

 

「お、匙」

「よう兵藤。それと神結。解禁された眷属が入るって聞いたから見に来たんだが……………あれはなんだ?」

「キマシの搭」

「あんなきたn…酷いタワーなんか嫌だわ! ゼノヴィア嬢目がちょっと怖いし! てかあの美少女誰だよ!」

「まあまあ、落ち着けよ匙。逃げてる方がさっき解禁された子だ」

「……慣れてんな。ってか、おいおい、金髪美少女かよ! 羨ましいねぇ!」

 

 ギャスパーくんを見てテンションを上げる匙先輩が

 

「だが男だ」

「えっ」

「だが男だ」

「  」

 

 言葉を失い頽れる匙先輩。

 

「なんだよソレ、詐欺じゃねぇか! 何であの子といい神結といい、オカ研には女子並みに可愛い男子が二人もいるんだよ! 始まってんな!」

「あんたの脳は終わってるけどなぁ!」

「落ち着けハル! やめろ! 神機を抜くんじゃない!」

 

 

 

 

 

 そのとき、僕らは誰かの気配を察知した。

 

 コカビエルとの経験が活かせたのか、匙先輩とギャスパーくん以外の皆が一瞬で戦闘態勢をとり、各々の武器を構える。

 

 何故なら、察知した気配が堕天使の物だったからだ。

 

「おーおー、反応の速いこった。コカビエルを倒すだけの事はある」

 

 すると、兄ちゃんが一歩前に出て拳を構える。

 

「ここに何の用だ、アザゼル!」

「よう赤龍帝」

 

 場に緊張が走る。

 匙先輩もなにかを顔を引き締め、神器(セイクリッド・ギア)を構え、ギャスパーくんは木の後ろでガタガタ震え、ソレを守るようにゼノヴィアさんが彼の前に立っている。

 

「まぁまぁまぁ、落ち着けよ。別に戦いに来た訳じゃねぇんだ。ちょっと、聖魔剣とやらに興味が湧いたんで見に来ただけだ」

「木場が狙いか!? ここには居ない!」

「なんだ、いないのかよ。つまんねぇ………ん?」

 

 アザゼルの視線が僕を、正確には僕の持つ神機を捉えた。

 

「お前、その武器は………いや、でも、そんなハズは………」

 

 な、なんだ? 急に目を見開いたかと思えば、口許に手をあててブツブツいい始めるし、何がしたいんだ?

 

「神機についてなにか知ってるの!?」

「……確証が取れない事を話すつもりは無い。悪いが用事ができた、これで帰らせて貰う」

 

 そう言うと、アザゼルは少し険しい顔をしてこの場を去ろうとし、

 

「ああ、そうそう、そこのヴァンパイアと赤龍帝じゃない方の【兵士(ポーン)】」

 

 ギャスパーくんと匙先輩を呼ぶと、アザゼルは唐突にそれぞれの神器(セイクリッド・ギア)の特徴を説明し、効果的な使い方を捲し立てるように説明していった。

 

「あとはヴァンパイアには血でも飲ませときゃ力も付くさ。それじゃあな」

 

 散々場をかき回し、言いたいことを言うだけいって、堕天使のトップは去っていった。

 

「な、なんだったんだ一体……」

「しかし、流石堕天使の総統と言ったところか」

「ゼノヴィアさん?」

「ここまで私たちどころか、先輩がたにも気配を悟らせず、尚且つ私たちだけにわかるように気配を垂れ流す。これは並の技術じゃない」

「そ、そう言えば部長たちが来ねぇ!」

 

 言われてみれば。あの二人ならすぐさま飛び出て来そうなのに。

 

「それに結界の類いも感じられなかったから、あれは純粋な技量で行ったものだろう」

「すげぇな………」

「業腹だが、今の私たちでは勝てんのも事実だろう。アレは確実にコカビエルより遥かに強い」

 

 武器を構えはしたけど、だからこそよりわかった。アレは勝てない。戦意を見せない状態であの威圧感だ。戦場で相見えたなら、アレほどの驚異は無い。

 

「そ、そうだ! 一旦先輩達に相談しよう!」

「なら、俺は会長達に話してくる!」

 

 

 

 

 兄ちゃんのその言葉に、場は一斉に動き出し、各々の主へと相談に行くのだった。

 

 

 

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