くっ、流石にキツイわね。朱乃でも呼んでくれば…………ってそういえば朝から彼女、いなかったわね。
「あははは!! どうしたのかしら、紅髪の悪魔! 流石のグレモリー家でも、多勢に無勢のようね!」
「そう思うんだったら、三人くらい帰してもいいんじゃないかしら?」
そろそろ、軽口を叩けるほどの余裕も無くなってきた。致命傷は負っていないものの、光は悪魔にとって猛毒だ。掠っただけでも全身を焼くような痛みが走る。
「ねぇ、グレモリーの悪魔? どうしてあなたは、そこの化け物と、死にかけを守っているのかしら?」
はっ、笑わせてくれる。
「そんなの、私たちの縄張りの住民で、同じ学園の後輩だからよ!!
それに、彼らは死なせない! 滅びなさい!!」
私は空に向けて、特大の魔力を放つが、それは空中を飛ぶ彼らにとって避けやすい。またもアッサリと避けられてしまう。
「グレモリーは情愛が強いとは聞いていたけれど、まさか眷族以外にもその愛を向けるとはな」
「勘違いしないでもらえるかしら、堕天使。私たちグレモリーは、眷族への愛が強いのではない! 私たちは、自分の家族への愛が強いのよ!」
もう一度、今度は連射式に魔力を打ち出す。
「家族? はっ! 笑わせないで! いくら同じ学舎に通っていようとも、そいつらは結局赤の他人じゃない! 悪魔が綺麗ごと言ってんじゃないわよ!」
光の槍が更に数を増して降り注ぎ、徐々に防御魔方陣が削られていく。
「そろそろ、決めて上げるわ!」
四つの光の槍が1ヶ所に集まり重なり、混じりあい、その質量と大きさを増していく。
「これで終わりよ! 光に飲まれて消えなさい! 紅髪の悪魔!!」
その極大の光の槍、まさに上級堕天使が放つような光の槍が、私に迫り来る。
これは、まずい…………っ!
防御を咄嗟に止めて、私は回避行動入ろうとする。
しかし、
「避けていいのかしら? 後ろの二人に当たるわよ?」
「卑怯な!」
…………ああ、ここまでか。
そんな、諦めの言葉が口から漏れてしまう。
…………ゴメンなさい、朱乃。彼を守れなかったわ。
…………ゴメンなさい、小猫。あなたをこれ以上守ってあげられなくて。
…………ゴメンなさい、祐斗。また、復讐の対象を増やしてしまって。
…………そしてゴメンなさい、二人とも。あなた達を巻き込んだ上に、守れなくて。
そう思うと、眦から涙が溢れ落ちる。
―――――そして、私の視界を、光が覆った。
だが、
「グレモリー先輩ッ!」
突如として、私の視界が開けたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆
彼らは語る。
僕を見定めて、仕えるかどうかを決めるためにも
『これが、新しき主か』
彼らは結論する。
その答えを。
『では我ら、《紡ぎ手》と
『汝を我らが王とし』
『ここに、忠節の意を表しましょう』
そして詠う。
『我らはそなたが望んだ物』
『汝が夢見て、憧れた物』
『あなたの願いを叶える物』
囁くように、歌うように、言い聞かせるように、彼らは言葉を紡ぐ。
僕が望んだ物。
―――それは力だ。ありきたりだけども、誰かを守れる力。
僕が憧れた物。
―――それは武器だ。神にも届き、そして神をも下せる強い武器。
僕が願った物。
―――それは超常殺しだ。僕の目の前で、僕の憧れを奪っていった超常を、この手で殺すこと。
体は依然熱くて痛くて、今にも気を失ってしまいそうで、狂ってしまいそうだけど。
それでも今、僕の中にある想いの炎は消えることなく、僕の胸中を焼き焦がす。
これは憤怒であり、悲哀であり、そして歓喜だった
『そなたに問おう』
『汝は、力を欲するか?』
『それとも、恐れを抱く?』
「――ぼ、くは…………」
『その身を憤怒に染めるか?』
『その心を悲哀に沈めるか?』
『その全てを歓喜に委ねる?』
憤怒はある。
恩人で大切な、兄貴分を目の前で殺された。だから同時に、悲哀もある。
そして、憧れである力を得られる歓喜もある。
―――だったら、僕はどうする?
今、僕は三つの激情を抱いていて、それなのに頭はいたって冷静だ。
冷静だからこそ考えろ。
確かに僕は力に憧れた。でも、それで力に溺れるのは愚かなことだって、僕は知っている。実感は無いけれど、僕はそれを様々な物語で知った。
目の前で、恩人の兄貴分が血を流して倒れている。僕を助けるために、目の前の黒い超常に殺された。
そして今、僕が見ているものは、白狼でも、騎士でも、魔女でも、ナニカでもない。
今見ているものは、超常同士の戦い。
イッセー兄ちゃんを殺した、憎い黒。
そして、今なお僕達を守ってくれている優しい紅。
黒の数は四。鴉のような翼をひろげ、空から光を撃っている。
対する紅は一人。僕とイッセー兄ちゃんを守りながら、必死に戦っている。
僕はどうしたい?
もう一度、自分に問いかける。
僕は、仇を討ちたい。
僕は、誰かが傷つくのが嫌だ。
僕は、優しい紅を助けたい。
僕は、そうだ、僕は彼女を、グレモリー先輩を助けたい!!
それだけじゃない! 僕は超常に奪われた! 今日のことで、超常はどこにでもいるんだって僕は知った。
これからもきっと、超常は僕達の大切を壊していく! だったら、だったら僕は!
「奪われたくない! 失いたくない! 僕に力をくれるでしょ? くれよ! 僕の大切を守れるだけの力をさ! くれよ! 君たちの全てを―――――ッ!」
僕に、くれよ!!
『よかろう! そなたの想い、しかと受け取った!』
『ならば我ら、王と騎士の誇りにかけて!』
『あなたに、神喰いの力を授けましょう!』
右腕の熱さが全身に広がる。
でもそれは、さっきまでの苦痛の熱さじゃない。
心の底から、体の奥から駆け巡る、熱い熱い激情の炎だ。
「お、おお…………」
口から声が漏れる。
押さえつけることなんか出来ない。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
故に叫んだ。想いの限り、激情に任せて、雄叫びを上げた。
『さぁ呼べ!』
『我らの名を!』
『あなたの
『『『今ここに、《
「来いよ、《マルドゥーク【アモン】》!
《ボルグ・カムラン【アルバレスト】》!
《サリエル【キング・リア】》!」
それは、僕がゲームの中で使っていた装備だった。
右腕に黒い腕輪が現れ、そこに飲まれるように、僕の黒い部分、アラガミ化した箇所が消えていく。
「いくよ、神機!!」
体に迸る熱さのままに、僕は駆け出した。
目指すは目の前の、グレモリー先輩を殺しかねない、光の槍。
それを、
「グレモリー先輩ッ!」
先輩を後ろに引きながら、下から神機を切り上げる。
初めて使う武器だけど、不思議なくらいに手に馴染む。
そして、これで何ができるのかも。
「ブラッドアーツ発動!」
使うのは、走り込みから打てる技。
「【ドライブ・ツイスター】!!」
切り上げる。
槍と剣が拮抗したのはほんの一瞬。
まるで、柔らかいものに刃を通した時のように、アッサリと光の槍は切り裂かれた。
僕は、空に浮かぶ四つの黒を見据えながら口を開く。
「お仕置きの時間だ。
―――――泣いて悦べ、クズども」
…………僕って、怒ると結構口が悪いかも知れない。
え? 今更だって?
えっと、使っている装備に関しては、何も言わないでくれると嬉しいです。
GE2、GE2RBを通して使っていたから、愛着があるんです。
あと、意思を持たせる上で『王』『女王』『騎士』とバランスが良かったので。