体が軽い。今なら、なんだってできそうな気がする。
「なんなの…………なんなのよ、お前は!」
天野さんだった…………えっと、堕天使? が僕を指差して喚き散らす。他の三人は唖然とした表情で固まっている。
「いや、そんなこと僕に言われてもね」
正直、僕にも何がなんだか全くもって分からない。
何故、僕は神機を持っているのか。何故、ゲームの事が現実になっているのか。
分からないことだらけだ。さっきから目の前で、と言うか、今自分が置かれている状況すら分からないのだから。
でも、そんな中でも分かっていることが幾つかある。
「グレモリー先輩。イッセー兄ちゃんは、助かるんですよね?」
僕はグレモリー先輩に、振り返らずにそう訪ねる。
「え、ええ。今からすぐに取りかかれば、彼は息を吹き返すわ」
「じゃあ、早くやってください。僕はこれから、アイツらの相手をするので」
「む、無茶よ! 一人でなんて!」
「だったら、イッセー兄ちゃんを治療して、参加したらいい」
ひどく冷静だ。体は燃えたぎるように熱くて、鼓動はこれまでに無いほど脈打っているのに、心はまるで静かな水面のように穏やかだ。
「目標変更よ! さっきのガキより、こいつの方が危険だわ!」
「「「はっ! レイナーレ様!」」」
あぁ、天野さんじゃなくて、レイナーレっていうのか、あの破廉恥女。
臨戦態勢を取る彼ら。
それに答えるように、僕も神機を構える。
「いくら特殊な
光が放たれる。それは凄まじい速度で、それはもう、人間の目では追うことの出来ない速度でここまで来るが、僕にはそれが見えていた。
だから、今度は切り裂くのではなく、性能を確かめるために装甲を展開した。
直後、とてつもない重さの衝撃と、耳をつんざくような爆音が響く。
だが、それだけだ。
僕には一切の被害がない。
「ええい、小賢しい!」
今度は光が次々と射たれてくるが、今度はそれを切り払い、躱し、受け止める。
「なんで当たらないのよ!」
「じゃあ今度は、僕の番だね、堕天使」
神機の形態を変化させる。
今度は剣でも盾でもない。それは銃だ。それも、スナイパーライフル。
僕はそれを持ち、狙いを定める。
まずはむさ苦しい男からだ。
「墜ちろ!」
強い反動が手に伝わった瞬間、男堕天使の右の翼が吹き飛んだ。
「ぐぁぁぁあああ!!」
「ドーナシーク!? 貴様!」
「やめろ! ミッテルト! 一人で先走るな!」
男がやられたのを見て激昂した金髪ツインテールの堕天使が、僕めがけて突進してくる。
それを見据えながら、僕は神機を大上段に構える。
「ブラッドアーツ、発動」
このモーションから放たれる技は一つだけだ。だが、その一撃は、ロングブレードのブラッドアーツ中、上位の威力を誇る。
「ゼロスタンス派生」
刀身に紅いオーラが纏われ、堕天使が射程圏内に入った瞬間、僕は神機を勢いよく降り下ろした。
「【落花ノ太刀・紅】!!」
放たれた巨大な斬撃は、轟音と共に堕天使を飲み込み、その黒い羽根を舞い散らせる。
刀身からオーラが消えたとき、そこには白銀の刃と、辺りに散らばる黒い羽根しか残っていなかった。
「そんな…………ミッテルトが、一撃で…………」
殺した。
僕は今初めて、命を奪ったんだ。
人じゃなかったけど、憎い相手だったけど、僕は今、命を殺した。
だけど不思議なことに、その事に対する感慨は、全くと言っていいほど無かった。
まるで、そういった部分を
「…………次は、どっち?」
自分でも驚くくらい、低くて冷たい声がでた。
それで怯んだのか、レイナーレが唇を噛み締める。
「くっ、退くわよ、カラワーナ、ドーナシーク。体勢を立て直さない限り、今の私たちじゃあの化け物に
「そんなっ!」
「落ち着きなさい。大丈夫、ミッテルトの仇は必ず討つわ。でもまずは、ドーナシークを治療しなくては」
「…………申し訳ない」
話し合いが終わると、レイナーレはこちらを向く。
「名前を教えてもらえるかしら、化け物さん」
「…………ハルト。神結悠斗」
「そう。なら神結悠斗。今日は引いて上げるわ。でも、次に会ったときがあなたの最期よ、化け物」
そう言って、彼らは飛んでいく。
正直、あれくらいの距離なら充分届くのだが、さっきから体に力が入らなくなっている。
多分、体力を使いすぎたんだろう。退いてくれて良かった。あれ以上戦っていたら、こっちが死んでいた。
だから、ホッと一息着いた瞬間、緊張が一気に解けて、全身から力が抜けて崩れ落ちる。
…………あ、ヤバイこれ気絶する。イッセー兄ちゃんが無事かどうか確認してないや。
まあでも、グレモリー先輩が大丈夫って言ったから、大丈夫なんだろう。
僕もちょっと、眠ろうかな……………………。
…………ん゙? ちょっと待ってよ? さっきのアイツら、堕天使って言ってたよね?
それに、グレモリー先輩を悪魔だって。しかも聞いた感じ、何かを比喩したり揶揄したりしている感じではなかった。
ってことは、つまり…………―――――、
本物の悪魔? AKUMA?
…………………………………………。
「きゅう。ごぼぼぼぼ…………」
意識が途切れる最後、グレモリー先輩と姫島先輩と、もう一人、誰かの声が聞こえた気がした。
悪魔、怖い。
◆◇◆◇◆◇◆
全く、本当に驚かせてくれるわ、この子達は。
まず、今目の前で横になっている兵藤一誠くん。見た目は普通の、どこにでもいるような子なのに、まさか転生に『
そして、何より驚いたのは彼、神結悠斗くんだ。見た目で言えば兵藤くんよりひ弱そうで、どちらかと言えばギャスパーに似た雰囲気を感じる印象だったのだけれど、それもさっきの戦いで覆されたわ。
今は、途中から駆けつけた眷族達の、朱乃と小猫に介抱されているけれど、彼のポテンシャルは恐らく、転生させようとしても、
…………全く、面白い子達ね。明日からが楽しみだわ。