ハイスクールG×E   作:フリムン

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第7話

 

 体が軽い。今なら、なんだってできそうな気がする。

 

「なんなの…………なんなのよ、お前は!」

 

 天野さんだった…………えっと、堕天使? が僕を指差して喚き散らす。他の三人は唖然とした表情で固まっている。

 

「いや、そんなこと僕に言われてもね」

 

 正直、僕にも何がなんだか全くもって分からない。

 何故、僕は神機を持っているのか。何故、ゲームの事が現実になっているのか。

 

 分からないことだらけだ。さっきから目の前で、と言うか、今自分が置かれている状況すら分からないのだから。

 

 でも、そんな中でも分かっていることが幾つかある。

 

「グレモリー先輩。イッセー兄ちゃんは、助かるんですよね?」

 

 僕はグレモリー先輩に、振り返らずにそう訪ねる。

 

「え、ええ。今からすぐに取りかかれば、彼は息を吹き返すわ」

「じゃあ、早くやってください。僕はこれから、アイツらの相手をするので」

「む、無茶よ! 一人でなんて!」

「だったら、イッセー兄ちゃんを治療して、参加したらいい」

 

 ひどく冷静だ。体は燃えたぎるように熱くて、鼓動はこれまでに無いほど脈打っているのに、心はまるで静かな水面のように穏やかだ。

 

「目標変更よ! さっきのガキより、こいつの方が危険だわ!」

「「「はっ! レイナーレ様!」」」

 

 あぁ、天野さんじゃなくて、レイナーレっていうのか、あの破廉恥女。

 

 臨戦態勢を取る彼ら。

 それに答えるように、僕も神機を構える。

 

「いくら特殊な神器(セイクリッド・ギア)を持っていようとも、空の私たちには届かないわよね、翼を持たない化け物さん?」

 

 光が放たれる。それは凄まじい速度で、それはもう、人間の目では追うことの出来ない速度でここまで来るが、僕にはそれが見えていた。

 

 だから、今度は切り裂くのではなく、性能を確かめるために装甲を展開した。

 

 直後、とてつもない重さの衝撃と、耳をつんざくような爆音が響く。

 だが、それだけだ。

 僕には一切の被害がない。

 

「ええい、小賢しい!」

 

 今度は光が次々と射たれてくるが、今度はそれを切り払い、躱し、受け止める。

 

「なんで当たらないのよ!」

「じゃあ今度は、僕の番だね、堕天使」

 

 神機の形態を変化させる。

 今度は剣でも盾でもない。それは銃だ。それも、スナイパーライフル。

 僕はそれを持ち、狙いを定める。

 まずはむさ苦しい男からだ。

 

「墜ちろ!」

 

 強い反動が手に伝わった瞬間、男堕天使の右の翼が吹き飛んだ。

 

「ぐぁぁぁあああ!!」

「ドーナシーク!? 貴様!」

「やめろ! ミッテルト! 一人で先走るな!」

 

 男がやられたのを見て激昂した金髪ツインテールの堕天使が、僕めがけて突進してくる。

 

 それを見据えながら、僕は神機を大上段に構える。

 

「ブラッドアーツ、発動」

 

 このモーションから放たれる技は一つだけだ。だが、その一撃は、ロングブレードのブラッドアーツ中、上位の威力を誇る。

 

「ゼロスタンス派生」 

 

 刀身に紅いオーラが纏われ、堕天使が射程圏内に入った瞬間、僕は神機を勢いよく降り下ろした。

 

「【落花ノ太刀・紅】!!」

 

 放たれた巨大な斬撃は、轟音と共に堕天使を飲み込み、その黒い羽根を舞い散らせる。

 刀身からオーラが消えたとき、そこには白銀の刃と、辺りに散らばる黒い羽根しか残っていなかった。

 

「そんな…………ミッテルトが、一撃で…………」

 

 殺した。

 僕は今初めて、命を奪ったんだ。

 人じゃなかったけど、憎い相手だったけど、僕は今、命を殺した。

 だけど不思議なことに、その事に対する感慨は、全くと言っていいほど無かった。

 

 まるで、そういった部分を無くして(喰われて)しまったかのように。

 

「…………次は、どっち?」

 

 自分でも驚くくらい、低くて冷たい声がでた。

 

 それで怯んだのか、レイナーレが唇を噛み締める。

 

「くっ、退くわよ、カラワーナ、ドーナシーク。体勢を立て直さない限り、今の私たちじゃあの化け物に殺され(喰われ)てしまうのがオチよ」

「そんなっ!」

「落ち着きなさい。大丈夫、ミッテルトの仇は必ず討つわ。でもまずは、ドーナシークを治療しなくては」

「…………申し訳ない」

 

 話し合いが終わると、レイナーレはこちらを向く。

 

「名前を教えてもらえるかしら、化け物さん」

「…………ハルト。神結悠斗」

「そう。なら神結悠斗。今日は引いて上げるわ。でも、次に会ったときがあなたの最期よ、化け物」

 

 そう言って、彼らは飛んでいく。

 

 正直、あれくらいの距離なら充分届くのだが、さっきから体に力が入らなくなっている。

 多分、体力を使いすぎたんだろう。退いてくれて良かった。あれ以上戦っていたら、こっちが死んでいた。

 

 だから、ホッと一息着いた瞬間、緊張が一気に解けて、全身から力が抜けて崩れ落ちる。

 

 …………あ、ヤバイこれ気絶する。イッセー兄ちゃんが無事かどうか確認してないや。

 まあでも、グレモリー先輩が大丈夫って言ったから、大丈夫なんだろう。

 

 僕もちょっと、眠ろうかな……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ん゙? ちょっと待ってよ? さっきのアイツら、堕天使って言ってたよね?

 それに、グレモリー先輩を悪魔だって。しかも聞いた感じ、何かを比喩したり揶揄したりしている感じではなかった。

 

 ってことは、つまり…………―――――、

 

 

 

 

 

 

 本物の悪魔? AKUMA?

 

 

 

 

 

 

 …………………………………………。

 

「きゅう。ごぼぼぼぼ…………」

 

 

 

 

 意識が途切れる最後、グレモリー先輩と姫島先輩と、もう一人、誰かの声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 悪魔、怖い。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 全く、本当に驚かせてくれるわ、この子達は。

 

 まず、今目の前で横になっている兵藤一誠くん。見た目は普通の、どこにでもいるような子なのに、まさか転生に『兵士(ポーン)』の駒すべてを使いきってしまうなんて。どれ程のポテンシャルを秘めているのやら。

 

 そして、何より驚いたのは彼、神結悠斗くんだ。見た目で言えば兵藤くんよりひ弱そうで、どちらかと言えばギャスパーに似た雰囲気を感じる印象だったのだけれど、それもさっきの戦いで覆されたわ。

 

 今は、途中から駆けつけた眷族達の、朱乃と小猫に介抱されているけれど、彼のポテンシャルは恐らく、転生させようとしても、変異の駒(ミューテーション・ピース)でなければ無理でしょうね。

 

 

 

 

 …………全く、面白い子達ね。明日からが楽しみだわ。

 

 

 

 

 

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