プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

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お ま た せ
エタらせる気まんまんだったけど、帰ってきました。


B-3C2"SEXY DYNAMITEⅡ"

『バイド機ってなんですか?』

 

スピーカーを通して聞こえてきた音声はクリアに耳に届いた。

Team R-TYPEの奇行に慣らされ過ぎて、R機本体からバイド係数が検知されることに誰も疑問に思わなくなってきた今日この頃。初心に立ち返ったような疑問はある種の哲学さえ感じさせるものだった。

 

「難しい質問だね。まずはR機の定義とバイド由来のフォースの関係性から……」

『あ、別にそういう事が聞きたい訳ではなくてですね。なんで、これの後続機を作ることになったんですか?』

 

研究員のクワドとテストパイロットのネアが試験をしながら会話をしている。

クワドの目の前のモニターには見慣れたバイド実験施設の実験区画と、ピンク色の良く分からないヌルヌルから機械部品がつき出したもの。

一般的なバイドのカルスじみた肉感とは別で、蕩ける様な、それでいてゆったりと流動して機体にまとわりつくBJ物質のゼリー状の装甲一体型フレーム。人間のままでいたいなら決して触ることはできないが、各種測定値から想像するに、人肌より少し温かく、表面には粘り気のある分泌物で薄く覆われており、力を入れると指が沈み込むような弾力を感じるが、ある程度からは内部に侵入させない透き通った素材。

バイドとは……という疑問を呈するにもっともだろう。

 

通常、装甲板などの素材を形成するのは均一性が課題になる。偏りがあると言うことはそれだけで強度の差ができるということで、良いことではない。強度差があると力は弱い部分に集中し、破壊されることになる。この形状では装甲が破壊されることは、そのままコックピットが破壊されることになるので、致命傷である。

 

『これを装甲として考えられないのですが』

「まあ、衝撃吸収剤でコックピットブロック覆っているような外見だしな。でもミスティレディよりマシだろ。あれ霧状装甲って意味分からないし」

『両方大概ですよ。霧中だからって裸になりますか? バスタブの中に身を沈めれば恥ずかしくないですか? 私は嫌です。人間の身体は固体によって外界と区別されるべきなんです』

「このB-3C2はよくみえないだけで、コックピットはあるんだけど。あと、お前の羞恥心に興味はないんだが」

 

 

クワドとネアはだらけた会話をしながら、テスト項目をチェックでつぶしていく。

妙に艶めかしいセクシーフォースの触腕を開いたり閉じたりと挙動テストが終わり、急制動のテストをしながらもゆるい話はつづく。

 

 

『だからなんでゼリー状の装甲を作っちゃったんです?』

「思いつき、フィーリング、インスピレーション。好きな言葉をどうぞ」

『クソが』

 

 

罵倒を残して通信がブツリと音を立てて切れる。

物理的なスイッチではなく、脊髄信号から直接操縦しているので、本来音を立てて通信が切れることは無いが、テストパイロットがワザと音を立てて怒りを示したのだろう。そもそもこのテストにおいて、コックピット内に充填されたBJ物質を通した神経接続を行っているのでパイロットは口を開いて会話はできない状態なのだ。神経系の接続部である頭部は綺麗に剃り上げられていて、ゴーグルや呼吸器補助具なども付けていない。まあ、神経接続から会話ソフトを経由して音声出力をしているため、体の負荷にも関わらずゆるゆる通信で感情を示したのだろう。

 

 

「めっちゃ慣れてんじゃん。上出来上出来」

 

 

R機の特性として基本的な慣性は無視できるので動作は軽快。そのファンシー過ぎる色からは考えられないほど、バイド係数の高いレーザーと波動砲。前作からマイナーチェンジといえる程度の改良なので、テストはすいすいと進む。だからこそ、パイロットからは愚痴と罵倒が吐き出されている訳だが。

 

 

『……ところでこのテストいつ終わるんですか。私暇じゃないんですけど』

「ははは、あと23項目テストした後、48時間の経過観察だ」

『私の休日……というより疲労なんて溜まってませんよ』

「いや、君の観察はBJ物質の効果測定」

『なんて?』

「とりあえず観察時間では研究区画で安静ね。ま、モニターコード大量につけるからそもそもまともに動けないけど」

『お前等、ほんとクソだな』

 

 

バイド機のテストパイロットを行っているだけあって、ネアはエリートパイロットというよりは脛に傷を持っているタイプの人員だった。今までの人生経験から権力を持った変態には自分の意見など聞いてもらえないことは把握しているので、自分に降りかかるだろう未来も他人事として考えていた。

クワドはクワドで、自分たちの研究に従順ないい拾い物をしたと思っている。

 

 

何時もはチームで開発を行い、テスト時にも多数のTeam R-TYPE研究員や技術員が詰めているのだが、今日の試験はクワドと技術員数名だけ。だからこそテストパイロットと呑気な会話が行われている。

実のところ、この試験は機体挙動を試験するためでは無く、搭乗者の挙動・容態を試験するための物だった。

今までバイド機といえど、装甲とコックピットは(一応)区別されてきた。前身である B-3C1でもBJ物質の走行の中に浮かんでいるコックピットは密封されており、装甲材とは別のバイド素子を除いた別のゼリー状物質で充填されていた。今回は違う。

 

 

前回失敗した事案として、コックピットがゼリー状物質に汚染された事件があったが、それならば初めからコックピット内をそれで充填しておけばいい。という逆転の発想により作成された。

「BJ物質の特質とバイト素子制御系によるバイド素子の偏在」が今回の研究開発のミソなのだ。推進系など機械系が必須の構造以外は装甲とパイロットがシームレスにつながっている。普通なら高過ぎるバイド係数を持つBJ物質に曝されれば1時間と待たずに人間の境界を越えてしまう。そういう結果はすでにでている。

パイロットの接触部位に限りバイド素子を含まない状態にできれば?

バイド機運用上の最大の問題。パイロットのバイド汚染が解決されるかもしれない。

それが、このB-3C2"SEXY DYNAMITEⅡ"の研究課題であった。

 

 

すべては究極汎用機のために。

 

 

バイド機を開発し始めたころから、追加されたミッションは上級研究員の間では共有されている。

「バイドの可能性を探り尽し、バイドの可能性を潰す」

基礎研究部門であるバイド研究所が早々に壊滅したため、応用の先端であるはずのTeam R-TYPEが基礎研究を吸収し、上から下まで手を出していることに端を発する捻れであった。末端の研究者達はバイドを機体そのものに流用することを覚えてしまってから、ともかく可能性の枝葉を広げる作業に勤しんでいる。いつの日か最終的にそのすべてを剪定し切り落とすために。

 

 

 




ギャグの書き方忘れました。というより書き方全般と設定全般を忘れました。
戻ってきた理由はFINAL2……ではなく、最近新しいR-TYPE二次が出来てたので、懐かしくなって戻ってきてみました。
リハビリなのでかなり短めです。

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