プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

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何時もアーヴァンクとアンフィビアン3が頭の中で混じります。鱗っぽいエビちゃんと生っぽいエビちゃんと覚えることにしました。


BX-4“ARVANCHE”

BX-4“ARVANCHE”

 

 

アーヴァンクは特殊なR機である。

バイド機を示すBナンバーと、試験機を意味するXナンバーを持ちながら枝番の無い機体。

それはバイド装甲機の正統進化、その第4世代たれとして開発された証拠である。

それまではバイド装甲機の祖ダンタリオンを始点として、バイドの知見を得るために様々な観点から研究・観測が進められていた。樹形図の様に広がったそれは、何かしらの形で次代に受け継がれ、このBX-4アーヴァンクで一つにまとまった形になる。

 

第一世代機のA系統ジギタリウスシリーズからは生体型バイド装甲の基礎を

B系統マッドフォレストシリーズからは植物性バイド装甲の自己修復機能を

C系統アンフィビアンシリーズからは動物性バイド装甲の整形理論と応用を

D系統バイドシステムシリーズは少し特殊であるが、バイドそのものの知見が取り込まれている。

 

第二世代機以降からもそれぞれ研究結果を持ち寄っている。

それによってできるものは……まあ、パイロットにとって地獄の一つだった。

 

 

***

 

 

ここはTeam R-TYPEの施設にあるテストパイロットのブリーフィング室。

テストパイロットが栄誉ある職であるのはかつての話。バイド装甲機が開発されて以降はいわゆる“R機”は開発がストップしており、敵であるはずのバイドの似姿にコックピットブロックをぶち込んだものをテスト機と呼んでいる。化け物を飼い慣らす仕事であるが、パイロットの技量に関係なく命が消費されていくパイロットの墓場であった。

 

もちろん、そんな部署にバリバリのエリートが宛がわれることはなく、部隊内で持て余された人員のくる場所、懲罰部隊的なものとなっている。しかも、懲罰部隊の走り強行偵察隊より人気が無い。横領、敵前逃亡、暴力事件など、様々な臑に傷のある人員が所属する。ちなみに強行偵察隊とは、バイド中枢へのルート構築のため、バイド勢力圏内にミッドナイトアイで単機突入し、定点まで進軍し情報を持ち帰るか、情報ポッドを味方回収部隊方面に射出するお仕事である。だいたい死ぬ。

 

リッチーは操縦は回避運動は部隊一であったが、大群のバイドから逃げまくっていた結果、敵前逃亡し味方に損害を与えたとして、ここに来ることになった。怪我だってしてたのにと思ったが、不名誉除隊ではなく、一度受けた身柄は最後まで活用しようという軍の方針により、このテストパイロットに異動を打診(強制)された。強行偵察隊ではないのは腕に怪我を負ってR機の操縦が少し難しくなったからだ。ちなみにここの同僚達は大体同じようなものである。現在Team R-TYPE開発機では神経系からの直接操縦がメインになっているため、頭がしっかりしていれば多少の怪我は問わないという福祉対応もバッチリだ。しかも寮完備である。バイド素子管理のため他者との接触を制限しているとも言う。

 

今日のブリーフィングでリッチーは新型のテスト機BX-4への搭乗を命令された。同僚達は不憫そうな顔をして慰めを掛け、早々に席を外した。どんな無法者でも明日は我が身なのだ。リッチーはブリーフィングルームに残されて、テストパイロット用の資料を渡された。端末に表示された資料を確認する。最初の訳の分からん概念的なことが書かれている場所は読み飛ばして操縦法から。

 

まず不穏なのが、操縦法に関する記述、脊髄接続による思考シミュレート操縦(接続端子埋め込み不要)とある。

通常は脊髄接続するのには、外科手術により脊髄に穴を開け神経直通の端子を取り付けるのだが、端子不要とあるのは怪しい。無接触で思考コントロールという筋も考えられるが、リッチーは信頼をもってそんなことしていないと断言できる。ユーザーフレンドリーにする余裕があったら性能に全部振りにするのが地球連合軍なのだ。要確認である。

 

次に武装面を確認する。

まだテストデータが採れていないので名称と簡易説明のみとなっているが、スケイルレーザー、スケイルミサイル、波動砲もだ。鱗(スケイル)状の何かをテーマに開発していたのは明らかだ。名称からは普通だなと安心したリッチーだが、よく考えると鱗を飛ばすとか無いし、スケイルレーザーに至っては最早概念状の何かかなという具合なので、やはり要確認であった。

 

次にフォースは、やはりというかスケイルフォースの文字。この機体の開発者は偏執狂に違いない。埋め込み画像にはフォースの周囲に張り付くようにある赤黒い鱗。リッチーの考えるフォースは、その高エネルギー体で敵を蒸発させながら磨り潰すものなのだが、これでは高エネルギー体が前方に露出していないのでフォースアタックがやりにくいのではないだろうか。そこまで考えて、要確認だなと結論した。

 

被弾率欄はブランク。これは自分のテスト結果により数字が入るのだろう。

読み飛ばした要旨は……、ウロコ状装甲テスト機。まあ、まだマシな気がする。

名称案はアーヴァンク。どっかの地域の水棲UMAだった気がする。おそらく、ワニか何かだろうかウロコ状装甲というところから取られたのだろう。まあ、アンフィビアン(両生類)とかミスティレディ(霧の淑女)や、セクシーダイナマイト(直球!)よりは兵器の名前として適当かもしれない。

リッチーはそのように評しながらデータを閉じる。

 

機密だらけのため余分なことを省かれた内容の薄い資料はすぐに読み終わり、端末からデータを削除する。分からないことだけ分かった。いつものことである。

 

「よし、碌でもない機体だな。いっそ安心する」

 

独り言を言った後、変態に変態に変態に変態を掛け合わせたら変態になるんだなぁ。と他人事の感想を持った。

 

 

***

 

 

テスト当日、リッチーはモニタリング端子だらけの薄いスーツを着込む肌が露出している部分が多いのが気になるが、どうせ抗議しても無駄なので、黙っていた。伝導を良くするためと首筋の毛を剃られた。これは絶対アレだなと思いながら準備を進める。

 

準備を整えて覚悟と諦めを持って、リッチーが搭乗室に進むと、タラップを昇らされコックピットらしきものにたどり着く。少し前から見えていたが、赤黒い鱗と、鞭のような尾をもったミミズか蛇か、海老の様な何かが、尾をしならせて動いている。ドラゴンというにはちょっとアレな何かが乗ってないのに動いている。

 

「バイドじゃないか」

『テストパイロットNo.72は直ちに試験機に搭乗しなさい』

 

言われなくとも分かるのは、タラップの先、バイド装甲機アーヴァンクの首裏にあたる部分にあるキャノピーが開くと液体に満たされた培養槽の様なものがあった。リッチーが呼吸補助器はと問うと、機体側で代わって行うから問題ないと返される。黙って入るリッチー。ここでは諦めが肝心なのだ。

 

肺が液体に満たされるが、首筋に何かが入ってくる様な感覚とともに、リッチーは話せるようになった。実際には話す様に言葉を出力できるようになった。便利な機能の割りに一般普及されないところを見ると、絶対駄目なバイド系の技術なんだろうなと見当を付ける。研究陣の指示の元、バイタルチェックを行い試運転を始める。慣れたR機の形状から大幅に外れているので手間取るかと思ったが、手足を動かすように動かせる。新しい関節や器官が増えたようで、神経と直結とはこういう事かと考える余裕もあった。

 

ミサイルとスケイル波動砲は事前テストで調整されていたのだろう。有用ともいえる性能で、ターゲットに接触するごとに分裂弾が発生しテストターゲットをなぎ払う。リッチーは心の中で優を付ける。噂で聞いていたバイド機の波動砲の使いにくさとは何だったのかと思った。

 

武装試験が進むと、満を持してフォースが運ばれてくる。本体とおそろいの赤黒い鱗で覆われた見た目、フォース特有の燐光が見えないほどに鱗だ。それがマウントから切り離され装着される。神経に見えない四肢が増えたかのような感覚があった。それを切り離す感覚も理解できてしまう。すでに自分がバイド化していないかとバイタルを見るが、一応まだ人間らしい。そんなことをしているうちに新しい標的が補充され、まずはレーザーのテストをするよう告げられる。まあ、レーザーは普通だった。形状こそ良くわからない鱗状であったが、軌道もミスティレディの様に霧状の訳のわからないものではなく、ちゃんと攻撃できた。

続いてフォースシュートで潰すよう命令された。見た目から物理ですり潰すのだろうかと思ったが、打ち出してみると、そこはちゃんとフォースのエネルギー場があるようで、蒸発するように標的が抉れる。

 

その他、いろいろなテストを告げられたが、研究者達のオーダーをクリアして試験終了となった。降りる際に自分の生身の感覚に切り替わるのに戸惑い、何度も蹴躓いたがバイタルチェックも許容範囲内らしい。そのまま除染室に突っ込まれて、薬を打たれて眠ることとなった。

 

次に意識が回復したのは出撃が決まった後だった。

 

 

***

 

 

試験後、機体性能よりも現在進行形でデータを取り続けている被検体のデータを見ながら研究者達は討論を行った。

バイド中枢へたどり着いても、R機をそのままバイド化させられて送り返される事例が多発している。それを克服するにはどうするか。もちろん、最終結論はもうじき開発計画が立ち上がる予定の究極汎用機を完成させ突っ込ませることだが、その前にデータを取るべき事項がある。バイドと同化されるのを防ぐためにはバイドをぶつければいいのではないだろうかという発案である。

その論の答えを知るためには、R機そのままではなくバイドの皮をかぶって突っ込めば良い。バイドの形状をそのままにバイド素子を可能な限り滅菌し、汚染性能を抑えた装甲をもったバイド装甲機という名の、人が乗れるバイドを。

 




次のクロークローで101機だよね? もう忘れてる子いないよね?

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