プロジェクトR!   作:ヒナヒナ

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B-3C“SEXY DYNAMITE”

B-3C“SEXY DYNAMITE”

 

 

 

Team R-TYPEの誇るバイド実験施設。

分厚い強化アクリル製のシリンダーが林立しており、その幾つかには中身が入っている。

そのうち一つの培養槽の中に湛えられているのは、流動性の低い高分子が結合した液体のようだった。

特定の可視光を反射するため、人間の目には鮮やかなピンク色に見える。

 

実験棟の明かりで照らされる様子は、前衛的なオブジェのようだ。

シリンダーを通して向こう側を見ていると、それがゆっくりと収縮したりシリンダーいっぱいに広がったりと、

揺らぎがみえることから、中の流体が蠢動していることが伺える。

 

 

培養槽に防護服を着た若い男が近づき、横に備えつけられた操作ボードを弄る。

短い警告音を発して、培養槽に備えつけられた排出バルブが開いた。

ビチャリという形容し難い音を立てて、排出バルブから滴る高粘度の液体。

液体が滴る先には、底の浅い容器が用意してあり、トロトロと容器の形に添って液体が溜まっていく。

 

 

その様子を見ているのは三人の防護服の男達。

 

 

「これは……」

「いや、材料はともかく」

「粘度といい、滑りといい、間違いなくローションだな」

 

 

三人のある意味健康的な研究者たちはゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 

***

 

 

「………ふぅ」

「おい、男の吐息とか聞きたくないからやめろ。レクエルド班長」

「精神的抑圧から身体を開放した後に発する感嘆詞だ」

 

 

そろそろ青年という言い方が間違いになる年齢の男が、ベルトを締めながら個室から出てくる。

それを聞いたジェガールが刺々しい小言を投げつける。

そして、横で端末を叩いている同僚のテラーに同意を求めるが、こちらも空振りだった。

 

 

「精神的? 肉欲的の間違いだとおもうのだが、どう思う? テラー」

「どうでもいいよ」

「ジェガール。テラーも賢者モードだから、何を聞いても無駄だとおもうぞ」

「変態どもめ」

「いや、お前も魔法使い候補だろ」

 

 

白衣のそろそろ30才前後の三人の男達。

研究室に集まって妙にけだるい雰囲気を出している。

なんともいえない雰囲気が支配していたが、班長のレクエルドが仕切り始める。

 

 

「さあ、みんな研究を始めよう。古くからインスピレーションは性欲と密接に関わっているというからな」

「まあ、いつまでもこうしているわけにも行かないよな。やろうか。テラーもほら」

「ああ」

 

 

未だ、此方に帰って来られないテラーをほおって話を始めるレクエルド班長とジェガール。

端末にデータを呼び出し、ホワイトボードに字を書き連ねる。

『新型バイド装甲の可能性について』

すべてが面倒になっている精神状態なので、字も乱雑だ。

 

 

「さて、今回失敗と思えたバイド素子培養実験だが、俺としてはアレもありじゃないかと思う」

「流石に液体状では使えないだろう」

「いや、さっきわかったのだが、あのゲルは外部からの衝撃で固化するようだ」

「ダイラタンシーかい?」

「うわっ、テラー復活したのか」

 

 

ジェガールとレクエルドが勝手に打ち合わせを始めていると、唐突にテラーが復活した。

ちなみにダイラタンシーとは片栗粉などの粒子と液体を混ぜたときによくできる現象で、

小さな力を加えたときは液体のように振舞い、大きな力を加えると固体のように振舞う。

 

 

「それに近い性質だ」

「ふうん、装甲表面に固体相をもってこられれば装甲化は一応可能だな」

「……ところで、レクエルド班長。なんでそんな事を知っている? さっきの液体は実験する暇なんてなかったろ」

「……」

 

 

テラーの素朴な疑問に、目を逸らすレクエルド。

それを見て不審に思ったジェガールが更に突っ込む。

 

 

「レクエルド? 何をしたんだ。怒らないから言ってみろ」

「実はちょっと、どんな感触なのかとか、こう、ムラムラ来てさ」

「………感触? お前まさか…!」

「ちッ違う! 流石にバイドの中に直接なんかじゃない。ちゃんと防護したさ!」

「そういう問題じゃない!」

「分かるだろう。そういう時の男がいかに頭が悪くなるか!」

 

 

ジェガールが少し椅子を引き、引きつった顔でレクエルドの股間あたりを気味悪そうに眺める。

簡易バイド測定器の数字を確認し、自分たちの班長がバイド化していないのを確認した後、尋ねる。

 

 

「で、どうだった?」

「一応特殊フィルムごしだからな。まあ、初めは暖かくて良かったが、いざ圧力を加えたら固くなって折れそうになった」

「………病気だな」

「Team R-TYPEだからな。全員病気だよ」

 

 

冷たい空気が流れる中、今まであまり会話に参加していなかったテラーが元も子もない発言をした。

目の泳いでいたレクエルドと、ジト目のジェガールも理性を取り戻す。

 

 

「で、どうするの?」

「ん、ああ、面白い性質だし研究してみよう。もしかしたらもしかするかもしれない」

「そうだな、目処が立ったら新型バイド装甲機に上げてみよう」

「とりあえず、計画を立てようか」

 

 

***

 

 

一週間後、研究室には実験結果を睨む男達。

端末には多くのグラフや数値が浮かび、処理結果を吐き出し続けている。

モニタには実験のスローモーション映像。

 

 

「なんというか、意外と高性能だな。コレ」

「低速のデブリくらいなら、衝突面を固化させれば良いし、

小型レールガンクラスの銃弾までくらっても、液化させれば装甲は再生可能だ」

「ああ、エネルギーを疑似質量変換して、切り離す事もできる」

 

 

バイドゲルは意外と高性能で、三人の本能に根ざした冗談で始めた研究は、

いつの間にかメインの研究テーマとなり、本気でBシリーズへの登用を考え始めていた。

三人はこの特殊な性質のバイド物質にBJ(Bydo Jerry)物質という名称をつけた。

 

 

「これ波動砲に応用できないかな」

「?」

「波動エネルギーをバイドゲルで疑似質量変換するのか?」

「そう、あの相対速度で疑似的とはいえ、相当量の質量をもった物体と衝突させれば、かなりの破壊力を期待できる」

「…有り、だな。」

「見た目がきっとアレな事になるが、いいんじゃないか?」

 

 

試しに、このバイド素材を利用した機体から発射した波動砲はなんともいえない

ゲル状の何かだった。こんな攻撃では絶対に死にたくない。

 

 

「あと問題はあれだな」

「……ああ、あったな致命的なのが」

 

 

三人は半眼になって、テラーが端末を操作すると、画面に実験映像が再生される。

画像を面倒臭そうに覗き込むレクエルドとジェガール。

 

 

R機のコックピットブロック内部のカメラで撮影された画像。

グチャリという衝撃音や、振動が見て取れる。

簡易テストでの装甲耐久実験の映像だ。

しばらく、単調な画面が続くが、ある時を境に異変が起こる。

コックピットブロックのパッキンの隙間からBJ物質が侵入してきているのだ。

そのまま、じわじわと内部に侵入してくるBJ物質。

15分経過したころにはコックピットは半分以上がピンク色のゲルに侵蝕されていた。

そこで、ブツリと映像が切れる。

 

 

「コックピットでパイロットのローション漬けが出来上がるな」

「気持よさそうだな。きっとそのまま本当に昇天できるだろうさ」

「死ねるのか。それ?」

 

 

レクエルド、ジェガール、テラーがそれぞれ適当な意見を言う。

三人の中でこのバイドゲルを素材とした機体を作ることはすでに決まったようなものなのだが、

このままでは、どのようにしてもコックピットに侵入してくるBJ物質の所為で欠陥装甲となってしまう。

 

 

「とりあえず開閉部を溶接して物理的にBJ物質とコックピットを切り離そう」

「当面はその方法しかないな」

「もったいないな、せっかくの神経伝達触媒物質なのに利用できないなんて」

「無茶言うなよテラー。非接触でも反応速度の向上がみられる。これから研究すればいいさ」

 

 

***

 

 

【課長室】

 

 

デスクに座っているのは、汚い白衣ときっちりとキメたワイシャツ、スラックスを装備した、開発課長のレホス。

サンダルはとうとう寿命を全うしたらしく、真新しい便所サンダルに新調されている。

何故か普通の靴は履きたくないようだ。

 

 

「誰かと思ったらー、レクエルド君かぁ。ん、R機案ね」

「はい。Bシリーズの案を持ってきました」

「みんなしてバイド機、バイド機ってバイドは逃げないよー」

「Bシリーズの開発枠は逃げるじゃないですか」

 

 

資料を手渡すレクエルド。レホスは記憶カードを端末に差し込むと、データを精査していく。

ふーん。とか独り言を言いながらデータを眺めているが、気になる事があると突然質問が飛んだり、ダメ出しが入るので、

ヒラ研究員にとっては緊張する瞬間である。

 

 

「さてとぉ」

「課長、ゼリー状フレーム機はどうでしょう?」

「うーん、これでふざけたデータだったら、実験のままに君たちにBJ物質漬けになってもらおうかと思ってたんだけどー。

意外に行けそうだから許可だそうかぁ」

「ありがとうございます。でもローション漬けは勘弁して下さい」

「君の所感にも書いてあるけど、まだまだ伸びる可能性があるからBJ物質の研究は続けてね」

「はい!では細かい仕様を詰めてきます」

 

 

意外にも、BJ物質とそれを装甲に利用したバイド機はレホスに気に入られたらしく、

幾つかの質問と、確認があったが驚くほどあっさりと開発許可がでた。

意気揚々と課長室を出てゆくレクエルド。

30近くの男が、今にも鼻歌を歌いだしそうな調子でいるのは、傍から見て気味が悪い。

課長室の扉が閉まったあと、レホスは端末を弄り動画を呼び出す。

画素数の足りないその画像は、どうやら監視カメラで撮影されたものらしい。

BJ物質の培養槽の前で怪しい動きをする人影が映っている。

 

 

「ふふん、レクエルド君はバイド実験室に監視カメラがある事分かってなかったのかなー。

まぁ、何にせよこれで僕のオモチャが一人増えたなぁ。これで無茶振りをしても良く働いてくれそうだなぁ」

 

 

端末には30前童貞男の悲しい生理現象を証明する映像が再生されていた。

 

 

***

 

 

B-3C セクシーダイナマイト完成。

 

 

 




セクシーダイナマイト2はどうしようか思案中。
どうしてもエロ方向に話が向いてしまう。
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