サタニック・ラプソディー(R-TYPE⊿)発生前です。
RX-10“ALBATROSS”
・とあるオフィス
「みんな。やったぞ。わが社が新型コンペ枠を取れたぞっ!」
十数名の人間の作業するオフィスに、大声を上げて飛び込んできたのは、
スーツを着たこの部屋のボスだった。
いきなり駆け込んできた自分たちのボスのテンションに驚くが、
その言葉の意味を考え、一瞬の後、彼の声を聞いた部局員達は口々に歓喜の声を上げた。
「やったー。リストラが遠のいたぞ」
「これでうちの会社もまだ持つな」
「今年こそボーナスを!」
「ヘッドハンティング蹴って良かったー」
このオフィスを擁するのは航空機メーカー、マクガイヤー社の開発部局だ。
マクガイヤー社は最新技術を盛り込んだ航空機を作成することで有名で、
いままでも、何機種もの傑作飛行機を世に送り出し世界の空を席巻した。
戦闘機なども一部手がけているが、特に中~大型の旅客飛行機に定評があり、
“マクガイヤーが世界中に人を運ぶ”とまで言わしめた企業である。
航空機産業では最大手にはいるメーカーの一つであるが、近年は絶賛倒産の危機に直面していた。
マクガイヤー社が何に失敗したわけでもないのだが、時流に取り残された形だ。
宇宙進出が進んだこの時代では、移動には大気圏航行能力のある輸送コンテナ船が使用され、
民間航空機といったジャンル自体がほぼ無くなった。
軍用戦闘機に転向したが、それとほぼ同時にR機が取りざたされだし、
すぐに既存の航空力学に依った戦闘機は、過去のものとなりつつあった。
画期的な慣性制御機関であるザイオングシステムは一気に普及することとなり、
結局マクガイヤー社は後発組として数多の企業に埋もれる結果となった。
今まで企業が存続してきたのは、大企業だったが故に体力があり、
研究陣や営業、経営陣が一丸となって何とか下請け生産などで食らいついてきたからだった。
技術蓄積をした後、開発に乗り込む。というのが経営陣の描いた起死回生の一手だった。
バイドミッションが発動してからは、Team R-TYPEが軍用機の開発を取り仕切っており、
各航空機メーカーは、その下請けをして何とか生き残ることに成功していると言った塩梅で、
マクガイヤーがなんとか生き残っているのもR-9Fなどの試験機部品などを手がけているからだ。
今生き残っているだけでもかなりの幸運である。
「ただし、フォースを扱う必要もあるのでTeam R-TYPEと共同開発することになった。
軍としても、新型フォースとの組み合わせで、新型機を開発したい意向だそうだ」
が、ボスが続けた一言で、幸運も陰りが見えた。
ボスである開発部局長としても、独自開発を行いたかった。
今まで軍の下請けとしてR機の生産自体は行っていたので、R機生産技術自体はあるのだ
しかし、問題はフォースだった。
バイド素子を利用しているフォースは、基本Team R-TYPEでしか生産開発できない。
技術情報が機密として制限されているのだ。
なので、開発でも機体本体を担当するマクガイヤー社に、
フォース担当のTeam R-TYPEに分かれて行う事になるが、
力関係からしてTeam R-TYPEが本体設計に関わってくることは目に見えていた。
***
そのままマクガイヤー社では緊急開発会議が持たれた。
研究員らはもとより、社運を掛けたプロジェクトなので営業や経営上位陣も出席している。
開発部局長が今回の共同研究についての情報を聴衆に伝達する。
「さあ、みんな。わがマクガイヤー社の社運をかけたプロジェクトだ。意見をどんどん出してくれ」
「単機運用がメインであれば、主翼は大型化して、航続性能を求めましょう」
「やはり、我が社の機体ならば大空を行く翼は必要だと思います」
「波動砲ももっと使い勝手よく出来たらいいのですが」
「ならば、広域を攻撃できるようにしませんか?」
「機体が少し大きくなりますが、人間工学に基づいて、パイロットの負担を軽減しましょう」
倒産の危機から一転、希望に燃えた技術者達は貪欲に、経営・営業陣は目をぎらつかせて
それぞれ知恵を出し合って機体の素案を形にしていった。
***
所変わってTeam R-TYPEの研究施設のラウンジ。
研究員達が、それぞれの情報を持ち寄って意見を交わしていた。
そこに新しい燃料を投下するものが居た。
「さあ、みんな新しい仕事だ。今回はフォースのみになりそうだが、
上からテストフォースだから自重しなくていいと通達があったぞ!」
そんなことを張り切って言うのはマクガイヤー社と組んで研究することになった研究員だった。
未だ制式機体はR-9AアローヘッドやR-9Eミッドナイトアイなどしかなく、
特に主力戦闘機はアローヘッドのみである。そこにこんなにおいしい研究をぶら下げられたのだから堪らない。
「フォースアタックや弾幕だけじゃ物足りない」
「やっぱり、バイド係数を上げてみようぜ」
「ロッドも折角生体部品なんだからもっと凝った造形に……」
「触手型のコントロールロッドとかどうよ?」
「バイド係数が少しやばくなりそうだが、バイド素子を更に増やして、コントロールロッドも動くようにしようぜ」
Team R-TYPEでは同時にR-9Aアローヘッドの正統進化であるR-9A2デルタの研究をしている。
ならば、この一件は自由課題というか、棚から落ちてきた牡丹餅なのだ。もちろん手は抜かないが。
新しいオモチャを与えられた研究者達は、趣味を全面に出して、新規フォース案を詰めていった。
***
Team R-TYPEとの打ち合わせ後、それぞれ研究期間をとって、
Team R-TYPEとマクガイヤー社では現状データを交換し合っていた。
が、マクガイヤー社では悲鳴が上がっていた。
「なんだこのゲテモノフォースは!?」
Team R-TYPEとの打ち合わせ後、部局長が持ってきたデータを見て、
部下達が口々に不満を口にする。
そのフォースは上下に柔軟な腕が伸びて、妙に有機的に動いており、
硬質な感じのするラウンドフォースと比べて異様な存在感を誇っていた。
「部局長、俺あまりフォースには詳しくないのですが、これは余りにも攻撃的というか」
「まぁ、でも見方を変えればディフェンス面は強化されているのか」
「しかし、主力の赤レーザーの威力を集中させるのに防御を犠牲にする必要がありますね」
「青は目標追尾型か、使えるのかな?」
「この黄色レーザー……この形状はすでにレーザーじゃないでしょう。
触手レーザーとかTeam R-TYPEは何を考えているのですか!」
続いてレーザーに注目する部局員たち。
文句をいうが、一応技術力は認めているようだった。
趣味はまったく合わないが。
「部局長。このフォースは何ていうのですか?」
「Team R-TYPE曰く、テンタクルフォースだそうだ」
「触手ですか」
「中学生か!?」
「なんか、俺達の作ったアルバトロスが汚されるようで嫌です」
***
マクガイヤー社との打ち合わせ後、それぞれ研究期間をとって、
Team R-TYPEとマクガイヤー社では現状データを交換し合っていた。
が、Team R-TYPE側でも悲鳴が上がっていた。
「なんだこのR機の皮を被った航空機は!」
新型R機の素案を見た研究者の一人の声を聞いて、
Team R-TYPEの面々が集まりだした。
R機(やフォースやバイド研究)に異様な情熱を注ぐ彼らにとって、いい話のネタなのだ。
「宇宙戦闘や閉所での戦闘が見込まれるR機であれば、水平主翼は邪魔にしかならないんだが」
「衝撃波動砲か……雑魚掃討用だな。射程短いし大型バイド相手だと打撃力不足じゃないか?」
「機体の安定性って、民用機じゃないんだぞ」
「航続性能は、まあ、単機突入に寄与できる特徴ではあるが……」
Team R-TYPE班員がわいわい集まって好き勝手に批評する。
同じTeam R-TYPEですら容赦の無い研究者達なので、部外者にはもっと容赦なかった。
「班長。この機体は何ていうのですか?」
「マクガイヤー開発部局長曰く、アルバトロスだそうだ」
「アルバトロス…アホウドリですか」
「アホの子とか」
「なんだか、我々の作ったテンタクルフォースが活かしきれない気がして嫌ですね」
***
さらに研究が詰められていく段階でマクガイヤー社から怒りの声が上がる。
「何処が高性能化だ。フォース性能尖り過ぎだろう」
「更に動きがキモくなったな」
「こんなの、俺達のアルバトロスにつけられるか!」
***
Team R-TYPEでも、意見のすれ違いは通常運行だった。
「前回いった所直ってねー。それどころか変な所を詰め過ぎだろ」
「小回りは捨てたのか」
「こんなの、我々のテンタクルちゃんに見合わん!」
***
そんな、両者のかみ合わない意見を全力でぶつけ合うことによって機体が形になっていく。
マクガイヤー社は最後の勝負と、何が何でも食らいつく勢いと社名を賭けて全力だったし、
Team R-TYPEでもR-9Aの成功に続けとばかりに、研究者のプライドを賭けて研究していた。
両者は会議の度に怒鳴りあっていたが、途中からは見栄も何もなく本音のぶっつけ合いとなり、
急速に完成度を高めていった。
こうして、百の怒声と千の罵声の末に、アホウドリの名前を冠したRX-10が完成した。
紆余曲折はあったが、航空機メーカー・マクガイヤー社と
Team R-TYPEの共同開発(意地の張り合い)によって開発された機体は、
斬新なコンセプトを持ちながらも奇跡的なバランスでまとめられ、テストでも高評価を得た。
そして、この評価(主にフォース)に気をよくしたTeam R-TYPEは、
更にそのバイド素子への傾倒を深めてゆくことになる。